2005年7月13日米上院提出
米子ども安全化学物質法案
子ども、労働者、及び消費者の有害物質への曝露を低減するための
有害物質規制法(TSCA)を修正する法案

ローテンバーグ氏、ジェファーズ氏、ボクサー夫人、ケリー氏、コージン氏、クリントン夫人、ケネディ氏
情報源:To amend the Toxic Substances Control Act
to reduce the exposure of children, workers, and consumers
to toxic chemical substances


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年8月 4日
更新日:2005年8月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/congress/Kid_Safe_Chemical_Act.html

訳注:
 2005年6月13日付でGOAは、米上院議員ジェームス M, ジェフォーズらの求めに応じて、下記の報告書を提出しました。
米会計検査院(GOA)報告書 2005年6月−化学物質規制−健康リスクを評価し、化学物質検証プログラムを管理するためのEPAの能力を改善する選択肢がある」 (当研究会部分訳)
 このGAO報告書に基づき民主党上院議員らが2005年7月13日に有害物質規制法(TSCA)の修正案(通称:子ども安全化学物質法)を議会に提出しました。
 この法案は、安全性の立証を企業側に求める、安全性基準をもうける、既存化学物質の安全性の決定を優先リストに従い段階的に実施し、全ての化学物質の安全性決定を2020年までに行い、安全基準を満たさない化学物質の使用を2010年までに禁止又は制限する−など、EUのREACHの理念に匹敵する高い理念を導入した人間の健康と環境を守るための画期的な法案です。
 法案の通称が”子ども安全化学物質法”となっていますが、必ずしも子どもだけを対象にした法案ではありません。しかし随所に胎児、幼児、子どもに配慮すべき項目を挙げています。
 REACHにあれだけ反対しているブッシュ政権のアメリカで、このような提案が早くも出てくることは驚きです。ブッシュ政権下での成立は無理でしょうが・・・。


アメリカ議会上院議員及び下院議員による法案

第1条 略式名称

 この法の略式名称は、”子ども、労働者、及び消費者安全化学物質法2005”又は”子ども安全化学物質法”である。

第2条 事実、政策、目標

(a)事実

 議会は下記の事実を見出した。

 (1) 化学物質への曝露に関連する疾病や障害の発生が増大している。

 (2) 発達中の胎児、幼児、及び子どもたちの代謝機能、生理機能有毒化学物質への曝露パターンは成人のそれらとは異なり、子どもは成人より人工化学物質による有害な曝露影響を受けやすい。

 (3) 医薬品や農薬とは異なり、ほとんどの化学物質の製造者は現在の法の下では彼らの製品を市場に出す前に人間又は環境への毒性情報を提出することが求められていない。

 したがって、製品中に使用されている化学物質の大部分は、幼児、子ども、発達中の胎児、又は成人に対する潜在的な毒性を評価するための、いかなるアメリカ合衆国の検証を受けたことがない。

 (4) 生物監視テストは、今日のアメリカの胎児、幼児、又は子どもたちの血液や組織中には、しばしば多くの人工化学物質が存在しているということを示している。

 (5) これらの発見が示す警告にもかかわらず、環境保護局(EPA)は、議会が有害物質規制法(15 U.S.C. 2601 et seq.)を成立させた1976年当時に上市されていた62,000種の化学物質のうち、わずか推定2%の化学物質について人間の健康リスクを検証しただけである。この法の管理上及び法律上のハードルが極端に高いために、環境保護局は29年間にわずか5種の化学物質の使用を禁止又は制限しただけである。

 (6) 我々の子どもたちのために毒性のない環境を作るために、アメリカの化学物質管理は抜本的な手直しが必要である。

(b) 政策

 以下のことがアメリカ合衆国の政策である。

 (1) 発達中の胎児、幼児、及び子どもたちはその発達の全ての過程において、有毒化学物質の有害影響に比類なく脆弱であるということを認識して、子どもの健康を国家の最高目標として推進すること。

 (2) 子どもたち、労働者、消費者の環境中の有毒物質を最小にするために下記を行うこと。

  (A) 有害化学物質への曝露を低減するために、ビジネス革新を報奨することで、安全な代替と解決策を推進する。

  (B) 化学物質製造者に対し、個々の化学物質の完全な健康と安全データを、それら化学物質を上市する前に(EPAに)提出する責任を負わせる。

  (C) 環境保護局に対し、化学物質のデータと情報がその化学物質が人間の健康又は環境に害を及ぼさないという合理的な確実性を示した場合にのみ、その化学物質の上市を許可する権限を与える。

 (3) 公衆と労働者に対し、彼らが曝露する化学物質の健康影響について完全に知る権利を与えること。

(c) 目標

 上市されている有害化学物質に対する全ての子どもたち、労働者、消費者、及び、感受性の高い集団の曝露を下記を実施することにより、2020年までになくすことがアメリカ合衆国の目標である。

 (1) 検証すべき最も優先度の高い化学物質を2007年までに特定する。

 (2) 少なくとも最初の優先300化学物質の安全性決定を2010年までに行い、安全基準を満たさない化学物質の使用を禁止又は制限する。

 (3) 全ての化学物質の安全性決定を2020年までに行い、安全基準を満たさない化学物質の使用を禁止又は制限する。

第3条 化学物質からの子どもの健康保護

(a) 一般

有害物質規制法(15 U.S.C. 2601 et seq.)は末尾に下記を加えることで修正する。

タイトルX−子ども安全化学物質

第501条 製造者安全証明

(a) 安全表明と情報

 このタイトルが発効後1年以内に、上市されている化学物質の製造者はEPA長官に下記を提出しなくてはならない。

 (1) 誠意ある調査を行った後、入手可能な情報に基づき会社の製造責任者によって署名された下記を保証する表明書。

  (A) 当該化学物質は第503条(a) で規定された安全基準に適合する。又は

  (B) 当該化学物質が安全基準に適合するかどうかを決定するためにはデータが不十分である。

 (2) 会社が保有又は管理する全ての合理的に入手可能な情報で、化学物質の物理的、化学的、毒物学的特性、及び年間生産量、知られている用途、曝露量、及びこの物質の運命I(fate)に関する情報で、EPA長官にかつて提出したことがないもの。

(b) 情報の更新

 (a)項に記述されている化学物質の各製造者は、(a)(2)項に記述される情報の更新を行わなければならない。

 (1) 少なくとも3年毎、及び

 (2) 顕著な新しい次の情報が入手できた時はいつでも:

  物理的、化学的、毒物学的特性、又は曝露情報で、少なくとも、新たな潜在的毒性影響を示すもの、以前の毒性影響を示す又は示唆する情報を確認するもの、又は以前に示したよりも低い用量で毒性影響を示すもの−を含む。

(c) 新規化学物質

 上市される前に会社の製造責任者は(a) 項で記述されるように、当該化学物質の安全性を保証しなければならない。

(d) 毒性の定義

 このタイトルの下において”毒性”とは、実際の又は潜在的な有毒性、生体蓄積性、又はその他の生物学的又は有害な影響であり、次のものに関する影響を含むが、それらに限らない:

  死亡率、罹患率、生殖系、発達系、免疫系、内分泌系、脳又は神経系、又はヒト又は動物への他のどのような生物学的機能

第502条 EPAの安全性決定のための化学物質優先リスト

(a) 優先リスト

 (1) 一般

 このタイトル発効後18ヶ月以内にEPA長官は、第503条に規定されている安全性の決定がなされる最初の化学物質である300化学物質を下回らない優先リスト(以降優先リスト)を作成しなくてはならない。人間に最も大きなリスクを及ぼすかもしれない化学物質は最も高い優先順位としなくてはならない。

 (2) リストの更新

 追加化学物質は少なくとも毎年1度、(b)項に規定される基準に適合する全ての化学物質が優先リストに加えられるまで、優先リストに加えられなくてはならない。

 (3) EPAの最終的措置としての取り扱い

 優先リストの作成は、タイトル5、合衆国法典(United States Code)(管理手順法として知られている)の第5章U節、及び第7章を目的とするEPAの最終的措置であるとみなしてはならないが、EPA長官がこの法で定められた期限までに優先リストを発行又は更新しない場合は nondiscretionary duty を遂行しないものとみなされなくてはならない。

(b) 優先的化学物質を特定するための基準

 安全性決定のための優先リストを決定するに時に、EPA長官は当該化学物質に関して下記を考慮しなくてはならない。

 (1) 当該化学物質が人工のものでなく、人間の血液、分泌液、又は組織の中に自然のレベルで見出されるという場合を除き、人間の血液、分泌液、又は組織に見出されるかどうか

 (2) 当該化学物質が人工のものでなく、食物又は飲料水の中に自然のレベルで見出されるという場合を除き、食物又は飲料水の中に見出されるかどうか

 (3) 年間100万ポンド(約454トン)以上製造される又は環境中に放出されるかどうか

 (4) 生殖毒性、神経毒性、免疫毒性、発がん性、変異原性、内分泌かく乱物性、又は有害な発達影響があると知られている、あるいはその疑いがあるかどうか、又は

 (5) 残留性又は生体蓄積性がないかどうか

第503条 EPAの化学物質安全性の決定

(a) 安全基準の定義

 ここでは、化学物質(又は共通のメカニズムを持つ他の化学物質)に関する”安全基準”とは下記を意味するものとする。

 (1) 胎児、幼児、子ども、労働者、又は感受性の高いグループの集団的曝露によって危害が生じないという合理的な確実性を与える規準

 (2) 胎児、幼児、又は子どもの場合には、成人の基準の10倍の安全係数を適用することにより、出生前及び出生後の潜在的な曝露に対する特別の脆弱性を考慮した基準

(b) 化学物質安全情報

 (1) 一般

  長官からの要求を受け取ったなら、化学物質の製造者はここで求められる全ての情報をEPA長官に提出しなくてはならない。

 (2) 情報

  (c)項のもとに化学物質に関する安全性を決定する時に、EPA長官は下記のことを考慮しなくてはならない。

  (A) 化学物質の、環境中での分解と残留、移動、及び環境媒体中の分布を含む、環境的運命と移動。

  (B) 代謝、生体蓄積性、生体濃縮の可能性、及び毒性動態を含む、生物学的運命と移動。

  (C) 生殖、発達、遺伝、神経、免疫、及び内分泌かく乱の影響を含む、急性、亜慢性、及び慢性の人間の健康への物質曝露影響。

  (D) 複合化学物質への曝露による相加的又は相乗的影響の可能性。

  (E) 鳥類、陸上生物、及び水生生物に対する化学物質の環境毒性。

  (F) 少なくとも下記における化学物質の存在。

   (@) 人間の血液、分泌液、及び組織、及び

   (A) 食物又は飲料水

  (G) 既知の及び潜在的な排出及び曝露に関連する化学物質類の使用。

 (3) 最小限データ・セット

  EPA長官は、(c) 項の下での決定は信頼性のあるデータに基づいて行われるということを確実にするための、最小限のデータ・セット要求を確立しなくてはならない。

 (4) 積み重ねプロセス

  EPA長官は、情報提出のための積み重ねプロセス(tiering process)を開発する権限を持たなくてはならない。

(c) 安全性の決定

 (1) 優先化学物質

  (A) 一般

   化学物質が優先リストに載せられてから3年以内にEPA長官は、製造者がその化学物質が安全基準に適合するということを確立したかどうかを決定しなくてはならない。

  (B) 暫定基準

   (@) 未決定の通知
    EPA長官が (A) 項で定められた期間内に決定しなかった場合には、そのことにより影響を受けた製造者はEPA長官、公衆及び顧客に対し、安全性の決定は未決であるということを書面で通知しなくてはならない。

   (A) EPA 長官の不履行
    化学物質が優先リスに記載された後5年以内に、EPA長官が (A) 項の下による決定を行わなかった場合には、その化学物質は上市されてはならない。

 (2) その他の化学物質

  このタイトルの発効後15年以内にEPA長官は、上市されている各化学物質は安全基準に適合しているかどうか決定しなくてはならない。その後、少なくとも15年に1度はEPA長官は上市されている全ての化学物質の安全性を再評価しなくてはならない。

 (3) 新規化学物質

  このタイトルの発効後90日経過した時点で、新規化学物質が(a)項の安全基準に適合していないなら、EPA長官の決定の通り、それらの化学物質は上市されてはならない。

(d) 生体監視

 (1) 一般

  このタイトル発効後5年以内に、そしてその後3年毎に、化学物質の製造者は、人間の血液、分泌液、又は組織中に下記の化学物質について、その存在を決定するための生体監視調査を実施しなくてはならない。

  (A) 一暦年の間に100万ポンド(454トン)以上生産される化学物質、又は

  (B) 上市されている化学物質で

   (@) 人間がその化学物質に曝露しており、

   (A) (EPA長官により決定される)その曝露に関連して 化学物質の残留又は生体蓄積の可能性のような懸念を生ずるもの。

 (2) 基準

  EPA長官は規制により、下記を含む生体監視調査の基準を確立しなくてはならない−

  (A) 子どもを含む曝露を受けそうな集団が十分見込まれることを確実にする母集団の使用、及び

  (B) 化学物質の適切な検出レベルの決定。

 (3) 物質検出

  第(1)項に該当する化学物質の製造者は、人間の血液、分泌液、及び組織の中の物質又はその代謝物の存在を検出する(EPA長官によって決定されるような)実際的な方法を公開しなくてはならない。

第504条 子ども、労働者、消費者のための健康への危険性の低減

(a) 上市制限

 下記に該当する場合は、何人も化学物質を製造することはできない。

 (1) EPA長官が、当該人が第501条又は第503条にしたがっ措置をとらなかったと決定した場合。

 (2) EPA長官が、当該化学物質は第503条(A)項の安全基準を満たしていないと決定した場合。又は

 (3) EPA長官が第503条(C)項の(1)(B)(A)、(2)、または(3)に規定する期限までに安全決定をしなかった化学物質。

(b) 使用免除

 EPA長官が、そのような使用は第503条(a)項で規定する安全基準を満たしていると決定した場合には、EPA長官はそのような使用に基づく化学物質の製造を許可するかもしれない。

(c) 生体監視の免除

 このタイトル発効日、又はそれ以前に化学物質の生体監視調査をEPA長官に提出した製造者は、第503条(d)項で規定する最初の生体監視を免除されなくてはならない。

(d) その他の免除

 (1) 一般

  大統領が次の声明とコメントを発表した後、代理人に委任できない義務として大統領は5年を超えない期間、特定の化学物質の使用をこの条項から免除することができる。

  (A) その免除が国家の安全上の利益を最大にもたらす、又はその化学物質が入手できなくなると国家の経済に著しい混乱をもたらす。そして、

  (B) その化学物質の特定の使用の実行可能な代替物が入手できない場合。

 (2) 延長

  大統領が、パブリック・コメントの後に免除の延期が必要であると決定した場合には、大統領は(1)項の下に、更に5年間、期間を延長することができる。

 (3) 公開通知

  免除がなされた化学物質の製造者は、既知の顧客に免除の通知を行わなくてはならず、大統領はそのような免除について国民に通知しなくてはならない。

第505条 動物テストの代替

(a) 動物テストの代替

 (1)一般

  化学物質の動物テストを最小にするために、EPA長官は下記の事項を実施しなくてはならない。

  (A) 実施可能な場合には下記を要求すること。

   (@) 全ての既存データの開示を義務化し、既存データ源の徹底的な調査を行うことにより既存データの欠如を埋めること。

   (A) 下記の代替をはかること。

    (T) 化学物質をテストするために動物を使用しない。及び

    (U) 動物テストによる方法と科学的品質が同等であるという情報を供給すること。

   (B) 動物テストの代替が実際的でない場合には、二つあるいはそれ以上の評価項目を統合したテストの採用を含む、従来の動物テストより少ない動物数でテストを行う削減代替。

  (B) 実施可能ならば、下記を推奨すること。

   (@) 類似の化学物質をグループにまとめ、グループを代表する化学物質だけテストを実施すること。及び、

   (A) 重複したテストを避けるために産業界はコンソーシアムを組み共同でテストを実施すること。

  (C) 動物テストの採用を減らし代替するための研究と有効性調査のために基金を設けること。

 (2) 代替テスト法のリスト

  このタイトル発効後1年以内、及び、その後は3年毎に、EPA長官は、第507条の規定で設立される科学諮問委員会と協議して、(1)項で述べる代替テスト法のリストを発表しなくてはならない。

(b) 予算の計上

 本条の遂行のために5,000,000ドル(約5億3,000万円)の予算を計上することを認める。

第506条 より安全な代替とグリーン・ケミストリー

(a) より安全な代替プログラム

 このタイトルの発効後1年以内に、EPA長官は、既存の化学物質に対するより安全な代替物質を開発するために市場の動機を生成するプログラムを確立しなくてはならない。このプログラムは、下記を含むがそれに限定はしない。

 (1) ある使用目的においては新たな化学物質は既存の化学物質よりも安全であるということを示す製造者が提出する代替分析の検証の促進。

 (2) EPA長官によって特定の用途に対しより安全であることが見出された化学物質を、より安全な代替物として市場に出すことを意図した特別の指示による認定及び定期的な公衆への周知。

 (3) EPA長官によって特定の用途に対しより安全であることが見出された化学物質の開発、上市、及び使用を推進するために適切であるとEPA長官が考えるその他の動機。

(b) グリーン・ケミストリー・リサーチ&クリアリングハウス・ネットワーク

 (1) 一般

  EPA長官は、化学物質、特に優先リストに記載された化学物質のより安全な代替開発と採用を支援するためにアメリカ合衆国の様々な地域に4つを下回らないグリーン・ケミストリー・リサーチ&クリアリングハウス・センターのネットワークを設置しなくてはならない。

 (2) 要求

  (1)項で述べるリサーチ&クリアリングハウス・センターは下記を実施しなくてはならない。

  (A) 化学物質を製造する中小企業に対する代替分析、グリーン・ケミストリー、及びグリーン技術に関連する支援を提供する。

  (B) 学生及び職業人に対する代替分析、グリーン・ケミストリー、及びグリーン技術に関連する技術的訓練を提供する。

  (C) 代替分析、グリーン・ケミストリー、及びグリーン技術を実施する。

  (D) 上記(A)、(B)、(C)で特定された活動として代替物の研究、開発、採用、及び使用を促進し支援するために助成金を提供する。

 (3) 予算の計上

  本条の遂行のために下記予算を計上する。

  (A) 会計年度2006年:40,000,000ドル(約42億円)

  (B) 2007年から2010年までの各会計年度:30,000,000ドル(約31億円)

第507条 子どもの健康と有毒物質に関する省庁間科学諮問委員会

(a) 一般

 このタイトルの発効後90日以内にEPA長官は子どもの健康と有毒物質に関する省庁間科学諮問委員会を組織しなくてはならない。この委員会は少なくとも国立環境健康科学研究所、疾病管理予防センター、国家毒性計画、国立がん研究所、国家トライバル協議会、及び先進的大学の3以上の子ども健康センターからの代表者を含まなくてはならない。

(b) 目的

 委員会の目的は下記の通りである。

 (1) このタイトルの要求に関連する問題と論点の科学的及び技術的側面に関しEPA長官及び議会に対し、独立した勧告とピアレビューを行うこと

 (2) この法の下での基準、規則、指針及びその他の決定についての科学的及び技術的なベース及びEPA長官に対する専門家の意見と勧告の具申を検証すること

 (3) このタイトルの要求に従うために製造者によってなされる努力の重複を減らすこと、及び動物テストを減らすこと

第508条 国際的取組みへの協力

 国務長官及び(EPA長官が決定する)他の適切な連邦政府機関の長と協力して、EPA長官は国際的な下記に関する取り組みに協力しなくてはならない。

 (1) 化学物質に関連する共通の規約又は電子データベースの開発

 (2) 化学物質のより安全な代替物の開発

第509条 情報の公開

(a) 長官への情報伝達

 各連邦政府機関と連邦研究機関は、化学物質への曝露の有害性又はリスクに関連して連邦政府機関と連邦研究機関に提供される全ての情報をEPA長官に提出しなくてはならない。

(b) 電子データベース

 (1) 標準−このタイトルの立法後180日以内にEPA長官は関連機関と協力して化学物質の毒性と使用及び曝露に関連する情報共有のための電子フォーマットの標準を確立しなくてはならない。

 (2) データベース−このタイトルの立法後3年以内にEPA長官は関連機関と協力して(1)項で述べられた情報を格納すべきデータベースの維持のための手順を開発し確立しなくてはならない。

(c) 情報公開

 EPA長官は下記情報を公開しなくてはならない。

 (1) EPA長官に供給された化学物質の特性と有害性に関連するいかなる情報

 (2) EPA長官に供給された化学物質への曝露に関連する、第510条で規定するいかなる非機密情報

(d) 情報の信頼性

 EPA長官はデータの信頼性を確実にするための下記を含む手順を確立しなくてはならない。

 (1) 毎年1回以上、EPA長官は、このタイトルで求められる化学物質の様々な特性に関するデータを作成している商業的又は個人的試験所(ラボ)の少なくとも3%以上をランダムに検査しなくてはならない。

 (2) 年に一度、EPA長官はこのタイトルの下に製造者によって提出されたデータに関し統計的に有意な数のデータを総合的に審査しなくてはならない。

第510条 機密ビジネス情報

(a) 一般

 化学物質の製造者がEPA長官又は他の連邦政府機関又は連邦研究所にどのような機密ビジネス情報(このタイトル発効日に有効な連邦行政規則集 Code of Federal Regulations - CFR)Volume 40 Section 350.27 に規定の通り)を提出した場合にも、主任担当官はEPA長官又は他の連邦政府機関又は連邦研究所に対し下記を供給しなくてはならない。

 (1) その情報の機密を維持するための弁明書で、もし適用できるならなら、その情報は製造者の取引上の機密を守るために機密とされなければならないという記述を含む。

 (2) その情報は他の方法では公然とは入手できないという保証書

(b) 外国からの情報

 外国政府の担当官又は雇員によってEPA長官に供給されたどのような情報も、(c) 項の場合を除いて、外国政府の担当官又は雇員によってその情報が機密ビジネス情報であるとみなされる場合には、機密ビジネス情報であるとみなされなくてはならない。

(c) 非機密情報

 化学物質の名前及び人間の健康と環境への影響に関する全ての情報はこの条項における機密ビジネス情報とみなしてはならない。

第511条 他の法令との関連性

 このタイトル中のいかなるものも、このタイトルによって確立された規制、要求、義務又は実行基準より厳しい内容の規制、要求、義務又は実行基準を採択する州又は州の行政部門の権利に影響を与えるものではない。

訳注:(a) 項は記載されていない。

(b) 条項の影響

 (a)(1)項によりなされる修正にもかかわらず、(a)(1)項によって廃止される条項の下にこの法が施行される日時以前に発効されているどのような規制(どのような禁止や制限も含む)も、EPA長官が有害物質規制法(15 U.S.C.2601 et seq.)のタイトルVの下に新たな規制を発効するまで有効でなくてはならない((a)(2)項で追加されたように)。

(c) 関連条項の修正

(訳注:項目と条項のみ示し詳細は省略)

 (1) 化学物質と混合物のテスト−有害物質規制法(15 U.S.C.2603)第4条の修正

 (2) 製造と処理の届け−有害物質規制法(15 U.S.C.2604)第5条の修正

 (3) 差し迫った危険−有害物質規制法(15 U.S.C.2606)第7条の修正

 (4) 情報の報告と保持−有害物質規制法(15 U.S.C.2607)第8条の修正

 (5) 他の連邦法との関連−有害物質規制法(15 U.S.C.2608(a))第9条の修正

 (6) 輸出−有害物質規制法(15 U.S.C.2611)第12条の修正

 (7) アメリカ税関への登録−有害物質規制法(15 U.S.C.2612(a)(1))第13条の修正

 (8) データの開示−有害物質規制法(15 U.S.C.2613(b)A(A))第14条の修正

 (9) 禁止行為−有害物質規制法(15 U.S.C.2614)第15条の修正

 (10) 強制措置と没収−有害物質規制法(15 U.S.C.2616(a)(1))第17条の修正

 (11) 優先買い取り県−有害物質規制法(15 U.S.C.2617)第18条の修正

 (12) 裁判所のレビュー−有害物質規制法(15 U.S.C.2618)第19条の修正

 (13) 市民の公民権−有害物質規制法(15 U.S.C.2619(a)(1))第20条(a)(1)の修正

 (14) 市民の請願−有害物質規制法(15 U.S.C.2620)第21条の修正

 (15) 雇用への影響−有害物質規制法(15 U.S.C.2623)第24条の修正

 (16) 法の管理−有害物質規制法(15 U.S.C.2625(b)(1))第26条(b)(1)の修正

 (17) テスト方法の開発と評価−有害物質規制法(15 U.S.C.2626(a))第27条(a)の修正

 (18) テスト方法の開発と評価−有害物質規制法(15 U.S.C.2629)第30条の修正

 (19) テーブルの内容−有害物質規制法(15 U.S.C.prec.2601)テーブルの内容の修正


訳注: 下記ウェブサイトをご覧ください

米会計検査院(GOA)報告書 2005年6月(本文紹介)−化学物質規制−健康リスクを評価し、化学物質検証プログラムを管理するためのEPAの能力を改善する選択肢が存在する」 (当研究会部分訳)

■GAO報告書の概要(Abstract)
GAO Abstract for Chemical Regulation: Options Exist to Improve EPA's Ability to Assess Health Risks and Manage Its Chemical Review Program

■子ども安全化学物質法案はEPAにテスト要求権限を与える−米会計検査院(GAO)の報告書に基づく法案−
Kids Safe Chemical Act Empowers EPA to Require Chemical Testing

■米上院環境と公共事業委員会プレスリリース2005年7月13日
上院議員ジム・ジェフォーズ アメリカ人を消費者製品中の有害化学物質から保護する法案を提案
Minority Press Release 07/13/2005
SEN. JEFFORDS INTRODUCES BILL TO PROTECT AMERICANS FROM HAZARDOUS CHEMICALS IN CONSUMER PRODUCTS
(HTML)



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