ピコ通信/第33号
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1.文部科学省が「シックスクールに対応するよう」文書を出す 学校の増改築で使われた新建材や塗料、学校で日常的に使われているワックスやフェルトペン、洗剤、校庭の樹木への農薬散布、プールの塩素などが原因で化学物質過敏症やアレルギーになって学校へ行けなくなる”シックスクール病”に苦しむ子どもたちが増えています。 本紙29号でも紹介しましたが、昨年11月に子どもの健康と環境を守る会(北海道江別市代表 黒嶋 恵さん)やシックハウス連絡会のシックスクール部会など16団体が文部省に要望書と症例集を出しました。文部省では回答を文書で出すことを約束したということですが、4月28日現在、未だ届いていません。 1月29日、文部科学省が依頼文書出す しかし、1月29日に文部科学省は各都道府県教育委員会の学校保健担当課長などに対し、”シックスクールについて適切に対応するように”という内容の依頼文書を出していました。 文書では、「学校施設の整備に際しては、室内空気を汚染する化学物質の発生がない、もしくは少ない建材の採用および換気設備の設置等について配慮するよう」求めています。さらに、「化学物質にごく微量でも反応する過敏症の子どもの実態を把握し、支障無く学校生活を送ることができるように配慮すること」も求めています。 この文書は、厚生労働省からの通知(注:財団法人日本学校保健会のホームページ http://www.hokenkai.or.jp に全文が掲載)を受けて出されたものですが、その通知とは室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び総揮発性有機化合物の室内濃度暫定目標値等(本紙27号参照)を知らせるものでしかありません。しかし、それを受けた文部科学省はシックスクールをしっかり念頭に置いた文書を出したわけで、黒嶋さんは「一歩も二歩も前進だと評価している。文部科学省からの回答は未だ来ていないが、この通達文書が回答と思っても十分意味のあるものだと思う。各自治体に向けて働きかけていける」と評価しています。 黒嶋さんたちは、北海道が各市町村教委に対してきちんと伝えているかを調査したり、シックスクールで相談してくる人たちには、今回の文書を使って働きかけるようアドバイスしています。その結果、秋田では春休みの作業を止めることができたそうです。
北海道では、独自に健康調査も 黒嶋さんたちは、文部科学省だけではなく北海道に対しても要望書と症例集を出して交渉してきました。その結果、今年度予算に学校への薬剤散布の予算はつかないことになり、シックスクール調査費(化学物質4物質の空気中濃度測定、健康状態調査)14校分200万円が計上されたということです。黒嶋さんは、「教育費が全体で削減されている中で、このことはすごい事だと思う。こちらが要望と症例を出したことで実態がわかったようだ。これで、要望の幾つかは対応して頂けた事になる」と話しています。 今回の文部科学省の依頼文書は、まだまだ不十分ではありますが、文部科学省が初めてシックスクール問題に対して具体的に対応したもので、黒嶋さんはじめ市民グループの働きかけの成果だといえます。この文書を使ってそれぞれの地域で、学校や教育委員会などに働きかけることを提案します。 旭川市庁舎でシックハウス問題 シックスクールと同じ問題といえる役所のシックハウス問題が北海道旭川市で起きています。 今年2月中旬以降、男女の市職員が頭痛、吐き気、目の痛みなど化学物質過敏症の症状を訴え、うち女性4人(保健婦)が休職を余儀なくされているというのです。原因は、昨年11月から3月まで続いた庁舎の改修工事と見られ、4月11日に6種類のVOC(揮発性有機化合物)について検査したところ、トルエンが高濃度(指針値の1.6倍)で検出されました。建設中の濃度はさらに高かったと予想されます。 市では、4人の所属する市保健所保健指導課をひとまず別の場所に移転する処置を取りました。市の対応は2月下旬に換気の徹底を職員に周知しただけで、検査は4月半ば、4人以外にも症状がある職員が10人いたのに、引っ越しは4月17日と、鈍い対応に批判の声があがっています。 同市は、化学物質過敏症の患者を全国から受け入れる「医療休養地基地構想」を掲げ、今年1月に化学物質過敏症一時転地住宅が完成したばかりです。自分の家(市庁舎)がシックハウスだったことに気づかなかったとは! この問題をみんなが認識するようになるには、まだ時間がかかることを示していると思います。(安間) ![]() 2.【脱塩ビのページ】欧州委員会、塩ビ代替へ 昨年7月、欧州委員会から、「塩化ビニルの環境問題」という試案文書(グリーンペーパー)が出されました。これは1997年に、欧州委員会の環境局が、廃棄物処理などの観点から、新車への塩化ビニル使用に規制を課そうとしたときに、同産業局が激しく抵抗し、ならば、塩化ビニルの環境問題について徹底的に調べようということになった末に、出された試案文書でした。 この試案文書は、欧州内の5つの独立の研究機関に、それぞれ塩化ビニルの「焼却」、「埋立て処分」、「マテリアルリサイクル」、「ケミカルリサイクル」、「処理コスト」の問題を研究委託して出てきた大部の報告書を根拠としています。そして、その試案文書は公聴会を経て、欧州議会に付託され、2001年の4月に、“塩化ビニルの環境問題についてのグリーンペーパー(試案文書)に関する欧州議会の決議”が出されたのでした。 その決議は、塩化ビニルの代替を求める趣旨を含み、また塩化ビニル添加剤の問題に対して、鉛やカドミウム使用の全面禁止や、フタル酸エステルの削減・代替といった措置を求めており、欧州での脱塩化ビニルへの方向性を打ち出したものといえます。以下に、決議の中から、塩化ビニル代替や、添加剤に言及した箇所を訳出してみました。 〈塩化ビニル代替〉 4. 委員会に対し、様々な種類の製品、特に人類の健康に直接関わる製品や、使い捨て製品、分離の難しい製品のライフサイクルを通じての代替品との比較分析に基づく代理政策が導入されることを可能にする様な、長期的な一律の戦略案を出来るだけ早く提出することを要請する。 5. 委員会に対し、現行のフタル酸のリスク分析で、人類と環境のフタル酸への曝露を減らすことが望ましいということが結論されれば、軟質塩化ビニルの置換についての政策を緊急に導入することを要請する。 6. 委員会に対し、火事に遭う可能性の高い建物の建材にはPVCを使用しないことを参加国に求める勧告を出すことを要請する。 〈添加剤〉 14.
めざせ!おもちゃの脱塩ビ 今、世界で22の国が、何らかの形でこどものおもちゃに使われる軟質塩化ビニルに規制を課しています。これは1999年から始まった動きです。規制をしていない国でも、アメリカなど5カ国が政府機関による警告や勧告を出しています。でも日本では、厚生労働省はまだ何の警告も規制も発していません。おもちゃの塩化ビニル対策は、ほとんど業界任せになっているのです。 消費者団体などからなる「見直そうこどものおもちゃ」実行委員会では、規制のない日本で塩化ビニルのおもちゃがどう売られているか、実態を目で見て確かめようと、今年の2月から毎月、塩ビのおもちゃパトロールを行っています。これまでに、東武百貨店のおもちゃ売り場やトイザラスで、おもちゃをチェックしてきました。 その結果、3歳未満のおもちゃでは業界が自主規制しているので表示がかなりあるのですが、3歳以上対象となると、一気に表示のある割合が減ってしまうこともわかってきました。3歳未満の子どもが遊べるようなお人形にも3歳以上と書いてあります。また兄弟姉妹がいたら、子どもにとって3歳以上かどうかなど意味がありません。 実行委員会では、メーカーや小売店に、材質や添加剤などについて質問をし、材質を把握しようとしています。すでに回答のあったおもちゃでは、表示はなくとも塩化ビニルだったものがかなりありました。塩化ビニルという表示のあるおもちゃの中には、“非フタル酸”という表示のものもあり、メーカーに聞くとアジピン酸やクエン酸トリブチル、とのことでした。“非フタル酸”であっても、溶出する可能性は避けられないし、アジピン酸やクエン酸トリブチルといった代替可塑剤は、欧州委員会は「代替として推奨はできない」としています。 おもちゃの業界は、自主規制を設けて、3歳未満のおもちゃにはフタル酸エステル類を使わないようにしています。が、それが徹底されているとは限らないことも、パトロールでわかってきました。業界の努力には一定の評価はできますが、それだけでは不十分なのです。「こどもの問題だから、国がきちんと責任もってほしい」のです。 「見直そうこどものおもちゃ」実行委員会では、日本でも塩化ビニルのおもちゃの法規制を求めて、活動を続けています。賛同団体・個人を募集しています。化学物質問題市民研究会も賛同団体のひとつですが、賛同してくださる方は是非ご連絡下さい。(関根) 「見直そうこどものおもちゃ」実行委員会の構成団体 日本消費者連盟/生活協同組合東京マイコープ環境委員会/ 市民ネットワーク・千葉県/婦人民主クラブ/グリーンピース・ジャパン
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