ピコ通信/第29号
発行日2001年1月9日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. POPs全廃へ 条約文書を合意!−第5回政府間交渉会議開催される−
  2. 第3期連続講座 第4回 報告「子どもを蝕むシックスクール」
    黒嶋 恵さん網代太郎さん
  3. 【海外情報】環境保護への新しいアプローチ(4)/Rachel's Environment & Health Weekly 抄訳
  4. 化学物質問題の動き(2000年12月)
  5. 連続講座案内/編集後記

1.POPs全廃へ 条約文書を合意!
 −第5回政府間交渉会議開催される−

積み残されていた数多くの課題が合意
 ダイオキシンやPCBなどの難分解性有機汚染物質(POPs)(注1)を国際的に規制する条約文書をつくるため、国連環境計画のもとで計4回の交渉が行われ、今回その第5回政府間交渉(INC5)が12月4日から10日まで南アフリカのヨハネスバーグで開催されました。
 これまでの会議では、POPsの全廃目標を支持するEUや途上国に対し、米国を始めとするJUSCANZ(注2)が強硬な反対または後ろ向きの立場を唱えてきました。昨年には、米国がEUに、EUがPOPsの全廃目標を支持するなら交渉は決裂するだろう、といった、脅しともいえるメモを渡すなど、一時は条約文書が合意に至るかどうかも危ない状況でした。
 そのため過去4回の会議では、POPsの全廃目標の是非を含め、合意できなかった問題が数多く積み残されてしまいました。そうした課題が今回の最終交渉で決められたのでした。
 合意された条約文書の中から、POPsの全廃目標、素材・プロセスの代替、予防原則、財政支援、新規POPsの扱い、の5つの点について以下にまとめます。

【POPsの全廃】
 ダイオキシンなど非意図的なPOPsについては“継続的に最小化し、実施可能なところでは究極的に全廃するという目標のもとに人為的発生源からの総排出を削減していく”という内容での合意となりました。
 意図的に生産されるもの(PCBや農薬類)については:

  • 農薬のうちDDTを除く7種類は条約発効と同時に生産・輸出入、使用の禁止、
  • DDTは、可能な代替が採用できるのを待って段階的に禁止、
  • PCBは2025年までにPCBを使ったコンデンサーやトランスの使用を禁止
することを合意しました。

【素材・プロセスの代替】
 ダイオキシンなどの非意図的に発生するPOPsの全廃を達成するため、ダイオキシン類を発生する物質、製品、製造工程について、ダイオキシン発生を引き起こさないものへと代替する必要があることも合意されました。これは、締約国がとるべき手段の一つとして記されたものです。
 この、素材・プロセスの代替については、もともと第1回の交渉会議で提案されたのですが、第2回で米国がこれに反対、事実上抹消されたに近い形となってしまいました。それが第4回交渉でナイジェリアの提案によって復活、と劇的な展開を経て、最終交渉でやっと合意されたのでした。

【予防原則】
 会議では、POPs条約が予防原則に基づくことも合意されました。
 条約の前文及び、条文に“科学的な不確実性は規制対象化学物質の追加を考慮する過程を妨げるものではない”という趣旨が含まれています。予防原則に基づくことにより、物質が害を引き起こすと考えるに足る理由があれば、科学的な証明を待たずとも、そうした物質を環境へ放つことを止めるために予防的な手段を講じることが求められています。そして、科学的な因果関係が証明されていないという理由によって、対策がいつまでも引き伸ばされる事態を回避することもできるでしょう。公害が起きても政府は人が死ぬまで動かないといわれる日本。予防原則は、最も日本で必要とされている原則といえるでしょう。

【財政支援】
 条約交渉では、途上国や、経済が移行期にある東欧諸国などがPOPsの全廃を実施していくための、財政的、技術的支援の方法も焦点の一つでした。米国はここでも、新たな資金メカニズムを設けることに反対をしてきました。今回の会合では、地球環境基金(GEFと略称されています)という、31カ国の工業先進国からの拠出金によって設けられている基金を、途上国の支援の費用の拠出先とすることが「暫定的に」決まりました。これは条約が締結され、第1回目の締約国会合が開かれたときに、もう一度見直しをすることになっています。

【新たなPOPsを市場に出さない】
 第3回の交渉会議において、欧州連合諸国は、POPsの性質、即ち蓄積性、毒性、残留性を持つあらたな化学物質の開発と商品化を禁止する提案を行っていました。しかし、米国、カナダ、オーストラリアは、この規定に反対を表明してきました。最終的に合意された文書には、農薬と産業用化学物質について、POPsの性質をもつ「新たな化学物質生産と使用を防ぐという目的をもって規制する」と記されました。これは、上記の予防原則ともつながることですが、もう誰も、これ以上地球環境や人々をPOPsの実験台にしてはならないという決意でもあります。

 当初、今回での合意も危ぶまれ、2001年に第6回会合を持たなければならなくなるかもしれない、との懸念を呼んだたPOPs条約交渉でしたが、ここに挙げた、基本的な要素について合意に至り、条約文書の合意が成ったことは、POPs汚染のない未来への重要な一歩と評価できます。合意された文書は、2001年5月下旬に、スウェーデンのストックホルムで条約として採択される予定です。しかし、それが地球規模で発効するためには、50カ国の批准が必要です。日本は、海洋投棄を禁じるロンドン条約の締約国会議でも、廃棄物の越境移動を禁じるバーゼル条約の会議でも、廃棄物の投棄や途上国への輸出を禁じる討議で最後まで反対した国でした。POPs条約で、日本は早期の調印と批准そして積極的な実施を果たせるでしょうか。
(文責 関根 彩子)

注1:現在対象となっているPOPsは、以下の12種類。これらは、緊急の対策を要するものとして、まず取り上げられたもの。
(1)農薬類:アルドリン、クロルデン、DDT、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、マイレックス、トキサフェン、(ヘキサクロロベンゼン)
(2)化学工業製品:ヘキサクロロベンゼン、PCB類
(3)非意図的生成物:ダイオキシン類、フラン類

注2:日本、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド。この5カ国は、多くの国際的な環境条約交渉において、実効性のある強い規制を設けることに反対を唱えてきた。この各国の頭文字を取って、JUSCANZ(ジャスカンズ)と総称している。今回のPOPs交渉では、韓国もこの一群に加え、JUSSKCANZ(SKが韓国)ともいわれた。

☆ ☆ 〈グリーンピース・ジャパンから〉ありがとうございました ☆☆

 ピコ通信前号で、POPs条約第5回会合に向けて、グリーンピースのサイバーアクション参加のお願いを掲載させていただきました。参加してくださった皆様へ、紙面を借りて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

2.第3期連続講座 第4回 報告「子どもを蝕むシックスクール」
  黒嶋 惠さん(子どもの健康と環境を守る会)
  網代太郎さん(化学物質過敏症ネットワーク)
 12月9日(土)に行われた講演より(文責 当研究会 )

 
 
黒嶋 恵さん

黒嶋 恵さん

 北海道の江別市で「子どもの健康と環境を守る会」という団体の代表をやっています。シックスクール問題は、マスコミなどで大きく取りあげられて、予想もしないほどの追い風に助けられています。

長男の例から
 息子は1985年生まれの高校1年生です。生まれてすぐひどい下痢でした。胃腸管がアレルギーを起こしていたのではないかと思います。あまりの便の回数に、布おむつから紙おむつに替えたところ、紙おむつの高分子ポリマーに反応したらしく、おむつかぶれになり、布おむつに戻したらすぐに治りました。
 その後アトピー性皮膚炎になり、主治医の渡辺先生に出会いました。IgEが2000もありましたが、除去食がうまくいって肌はよくなりました。アトピーは当時は今ほど知られていなくて、手探りの状態でした。入院すると悪くなるので、農薬、添加物のせいではないかと思っていました。入院中にぜんそくが起きて、大気汚染やペンキなどの化学物質が引き金となることが分かりました。症状が出ない時には元気に当別町の小学校にも通えていて、ストーブの使用初日、サビ止め剤の燃焼臭気でぜんそくが出ましたが、マスクをする程度でおさまっていました。

化学物質で花粉症に
 3年生の時に微熱が出て、花粉のせいではないかということで、札幌の病院に入院し、時間を区切って外出してみるという「負荷検査」をやった時、外出から戻ってから意識がなくなりました。北海道にはスギがなくて、原因物質はタンポポでした。視力低下もあって、精神的な理由も考えられるというので、札幌医大のカウンセリングを受けた時に、クーラーの風に当たって意識がなくなりました。それで、花粉以外のそういうものでも発症してしまうことが分かりました。
 春から秋まで、花粉症予防の眼鏡をつけさせていました。つけ忘れて外に出たとしても、当別町では意識がなくなることはありませんでした。当別町と札幌市とのちがいは、交通量のちがいで、排気ガスの影響と考えられました。北里大学の石川先生、宮田先生の書かれた化学物質過敏症の本を目にし、渡辺先生も、化学物質過敏症までは行っていないけれども、化学物質に反応しているのだろうという意見でした。

中学で化学物質過敏症に
 中学ではアレルギーがひどいということで、先生方に配慮をお願いしました。1年の時は担任が気を使ってくれて元気でした。
 しかし、2年で担任が代わってしまい、10月に机の上の落書きを消すのにシンナーが使われてしまいました。長男は微熱が出て顔色が悪くなり、早退しました。気を失う可能性があるので迎えにいくから、一人では帰さないようにお願いしていたのに、一番ひどい状態の時に一人で帰されたので、驚きました。すぐに学校へ連絡し、シンナーの毒性のことも話して、拭いた雑巾の廃棄と換気をお願いしました。熱は39度まで上がって3日間続きました。
 ところが10日後、またシンナーが使われて、微熱、だるさ、鼻炎に襲われました。担任や養護の先生だけではだめだということで、校長、教頭まで含めた話し合いをしました。シンナーが抜けるまで、塗っていない教室へ移動するか、一人だけちがうクラスへ編入することをお願いしましたが、校長は「だめだ」の一点張りでした。子どもが体調が悪いのを押して出席して、「僕は学校を休みたくない。僕には教育を受ける権利があるはずです。それを奪う権利は誰にもないはずです」と訴えたにもかかわらずです。
 息子は自律神経がやられて、体温調節ができなくなり、低体温の35℃台と高熱の39℃台を行ったり来たりの日が10日間続き、3週間休む事になりました。登校してから、汚染されていない避難部屋を確保してくれましたが、授業日数が足りなくて、その学期の成績は落ちてしまいました。
 それからは学校も、有機溶剤を使わないように配慮してくれました。3年の学校祭では、有機溶剤系のものは使わないと決めていたにもかかわらず、ペイントスプレー缶が使われて、長男は最後の学校祭に参加できませんでした。美術の時間に接着剤を使われて意識がなくなったこともあり、通っている間は気の休まる時はありませんでした。

理解のある高校
 高校入試では、見学してみて、校舎に反応しないか調べた上で志望校を選びました。3月末に登校したら、ペンキ塗装の準備をして いたので、学年主任の先生とお話しました。ペンキやワックスがだめだと言うと、先生も、ワックスがけをしたあとしばらく頭が痛くなるということでした。ペンキをやめて欲しいと言うと、転出予定の教頭先生が、一人のためにそんなこはできないと言いました。北海道の教育委員会がシックスクールに配慮するよう通達を出したばかりなのにです。
 4月になって担任も決まり、話し合いをしました。「黒嶋君が元気に通ってくれることが私たちの一番の願いだ、反応する物質は他の子にとっても悪いものなので、使わない方向で考える」と言ってくれました。大掃除のガラス磨きは、クリーナーではなく、石けん溶液に替えてくれたうえに、経済的だし、汚れもよく落ちると、かえって感謝されました。

ゴキブリ防除剤に反応
 夏休みにワックスがけをするということで、業者からMSDSを取り寄せたら、キシレンが多く含まれているものでした。ワックスといっても実際はウレタン塗装です。今、学校で4種類の自然系のワックスの耐久性を試験して、様子をみてもらっているところです。
 7月末に廊下に何かが散布されました。ゴキブリ防除だったのですが、北海道にはもともとゴキブリはいないのです。使用薬はフェニトロチオンとジクロルボスでした。息子は用心のためにしていたマスクをちょっと外したために、具合が悪くなり、帰宅して7時間も眠り続けました。
 アルカリ性の洗剤で洗い流せるということなので、石けんで洗浄をしてくれる生活クラブ生協のワーカーズにたのみました。息子は、鼻炎、倦怠感、だるさ、視力低下などの症状が出ました。視力はいまだに回復していません。これは道教委が発注した作業で、先生たちも把握していませんでした。ビル管理法によって8000u以上の高校では、そういう作業が行なわれるのです。

子どもの健康と環境を守る会結成
 中学での経験から、担任が代われば一からやり直しになったり、学校だけではやれることに限界がある事が分かったのと、私自身も個人レベルでの限界を感じていました。長男が幼稚園の時にアレルギーの子のお母さんたちと仲良くしていて、その子たちが化学物質過敏症になっていくということで、今年の4月にいっしょに会を作りました。江別市で渡辺先生に講演をしてもらったり、展示や、幼稚園でミニ勉強会を開いたりしています。

長女の体験
 長女は小学生ですが、江別市の教育委員会へ工事内容について申し入れをした後、校内の工事で塗られたペイントで、娘も含めて何人かが、風邪のような症状になりました。シックスクールの症状は、鼻水、頭痛、喉の痛み、咳と、風邪に似ているので、知らないと見過ごしてしまいます。
 メーカーからMSDSを取り寄せ、研究開発室に話を聞くと、ホルムアルデヒドを吸着するペイントだというのですが、成分が揮発する間はそういう症状を起こし得るし、被膜ができるまでは吸着もしないということでした。娘はまだ化学物質過敏症まで行っていませんが、シックスクールを繰り返すことが、過敏症を引き起こすのだと思います。

文部省に要望と症例提出
 この11月に、シックハウス連絡会のシックスクール部会の後藤さん(12月で同会退会)たちといっしょに16団体で文部省に要望と症例を提出しました。症例は全国で130人分、原因物質はワックスが1位、あとは農薬、洗剤、文具・教材、プールの塩素、校舎の工事などです。

 私たちの会の要望

  1. 化学物質過敏症及びアレルギーの児童と教職員の実態調査。医師・患者を入れたチェックリストの作成
  2. 校舎の新築、増改築の際の濃度計測義務づけ
  3. 換気の義務づけ
  4. ワックスがけの必要があるのか、あるとすれば、安全なものを使用すること
  5. 洗剤等の安全確認と、確認できないものを安全なものに替えること
  6. 教科書会社への有害化学物質情報の提供と、有害化学物質を使わない授業の指導
  7. 学校行事でのスプレー等の使用中止
  8. パラジクロロベンゼンの使用禁止
  9. プールでの塩素殺菌の中止
  10. 農薬使用禁止
  11. コンピュータから放出されるリン酸トリフェニルTPPが、子どもに影響しないような配慮を
  12. 環境保健教育の一環として有害化学物質のことを教える
  13. 現場への有害化学物質の情報提供、周知徹底のための研修会等の開催
 文部省の人は、ほとんど学校や教育委員会で対応できることだと答えました。現在2002年3月をめどに学校環境衛生規準の見直し中であること、プールのゴーグル使用禁止という通達はしていないし、芳香剤をトイレで使うよう指導もしていないとのことですが、逆にゴーグルを使用してもよい、パラ剤使用の中止を指導してくれてもいいのではないかと要請しました。実際の濃度を測った上で、害がある、ない、できる、できないを行って下さいとも要望しました。書面での回答を求めているので、それが来たら、各地で学校、教育委員会に働きかけることができます。
 道の教育庁にも、北海道の実情に合った内容に変えて要望を提出しました。ビル管理法での薬剤散布についても要望を出しました。

現場の学校にどう働きかけるか
 江別市の教育委員会は、安全なワックス、洗剤のリストをくれるように言って来ました(注)。北海道ではテレビや新聞が熱心に報道してくれるので、委員会の方も分かってきて、校長会、教頭会にもかけてくれ、学校での理解が広まっています。
 安全な代替品を調べています。版画にダイズのインクを使いたいと思いましたが、印刷機の中に組み込んで大量に使う形でしか使えないということでした。EM菌を使って有害物質をおさえる実験も、学校のスペースを借りてやることになっています。
 相手のあることですから、攻撃的に言ってもこじれてしまいます。代替品を持参し、お願いして使ってもらうぐらいの姿勢でやるのが有効でしょう。それぞれの土地のお母さんが頑張って、動けるところから動く、変えられるところから変えていきましょう。
 文部省を変えるのは大変なことですが、下からも上からも働きかけ続けることです。文部省の伝達講習では、現場まで伝わるのに時間がかかるので、身近なところから声を上げていきましょう。
 未来を担う子どもたちに暗い未来だけは残したくないので、学校だけでも安全な場所に変わってほしいと思います。
(注):黒嶋さん達が作成した自然系ワックス、石鹸製品一覧があります。ご希望の方は、100円切手5枚同封の上、当研究会まで、お申し込み下さい。



 
 
網代太郎さん

(1月18日一部字句修正)
網代太郎さん

 化学物質過敏症ネットワーク、略称CSネットという、患者、家族、一般市民による団体をやっています。私の母が化学物質過敏症になったことがきっかけです。化学物質過敏症は、行政や医学会の主流からは認知されていない病気なので、患者や関係者同士で情報交換をしながら自衛をしていくしかありません。

 症例を集めて世の中に訴えることをやっています。高齢の女性に多い病気なのですが、子どもがなるケースが意外に目立ってきました。学校の化学物質は、過敏症の子どもだけではなく、他の子どもにとっても重大な問題だということが分かってきました。シックスクールは、目に見える部分では、健康上の問題が見られなかった子どもに健康影響が出る、アレルギーの子が症状を悪化させる、化学物質過敏症の子がさまざまな症状を誘発される、ということがあります。それ以上に問題なのが、健康影響を受けていてもそれに気がつかないというケースだと思います。

 疲れてやる気がないとか、認知、記憶能力が低下、落ち着きがなくなるなどの精神症状が出たとき、過敏症の子だと分かっているから認識できるけれども、普通は問題児扱いされて、親の躾がなってないという話にされてしまいます。

 理解ある学校では農薬散布をやめたり、女性の先生がノーメークにしたり、他の子や親に理解を求めたりという例もあります。しかし理解のない学校がどうしても多く、神経質すぎる、我慢しなさいという反応しか帰ってこないのが実情です。

 文部省や自治体もいくつかの方策をとってきていて、現場がそれを知らないという側面もあります。文部省による学校プールの腰洗い槽の設置義務取り止め、東京都によるパラ剤使用自粛指導、ホルムアルデヒドの校内自主規準設定などがあります。文部省は「学校環境衛生の規準」を決めていて、現在改訂作業中です。教室内の空気の規準もいろいろ設定されていて、換気回数もちゃんと決められています。これは学校に換気扇設置の要求をする根拠に使えます。

 この基準には、細菌等から守る規準は決められていても、化学物質から守るという発想はありません。ただ、プールの腰洗い槽については、過敏な子どもはシャワーで代替させるようにとちゃんと書いてあります。でも、現場がこれを知りません。「害虫」防除にしても、児童生徒に害のない方法でと但し書きがあります。

 文部省は全国50校で室内空気の調査を実施しています。これは内部の資料として使うだけで公表しないと言っていますが、このあたりは、まだ文部省は遅れているなという気がします。シックスクールの問題について、文部省はようやく関心が出てきたという段階だと思います。有害物質を使わない校舎の新築の例としては、三鷹市の私立明星小中学校の例があります。

化学物質問題市民研究会
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