ドイツ CSN_Blog 紹介
ドイツでは多種化学物質過敏症(MCS)を
精神病とみなすことは
身体障害者に対する差別であると表明

情報源:CSN Blog
Willkommen zur CSN-Christmas-Party 2008
http://www.csn-deutschland.de/blog/2008/12/24/willkommen-zur-csn-christmas-party-2008/
訳:裕美・ルミィヤンツェヴァ(日本語訳PDF版
掲載日:2009年5月5日
更新日:2009年6月3日(文献2(ドイツ語)の日本語訳
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/Germany/mcs_Germany_CSN_Blog.html

 当ウェブサイトで2009年2月8日に、アメリカン・クロニクル 2009年1月21日の記事を「ドイツ 世界で初めて多種化学物質過敏症(MCS)を身体的疾病として認める」として紹介しました(注1)。その記事に関連があると思われる情報を掲載したカナダのブログ2008年12月25日の記事を「ドイツ 多種化学物質過敏症ガイドラインから身体表現性病因を削除」も紹介しました(注2)。
 その後、このカナダのブログ記事が言及した元々のドイツのブログ(ドイツ語)及び関連する二つの資料を日本語訳してくださった方があり、当ウェブサイトに掲載させていただきました。(化学物質問題市民研究会)


ドイツでは多種化学物質過敏症(MCS)を精神病とみなすことは身体障害者に対する差別であると表明

MCS 患者たちは他の病気とは比較できない程の要因に直面している。
MCS 患者たちは以下の如く苦しんでいる:
病気による苦痛
化学物質を最小濃度に抑える為の単調な隔離生活の日々
不十分な医療介護
職業、友達、資産などの喪失・・・・
自由と生活の質に於ける失墜
多方面から切り捨てられるという差別
化学物質過敏症の人たちが最も苦しんでいる要因とは、社会や関係当局からしばしば見放されるという差別です。

MCS は身体的疾病として分類されています。
MCS は、世界保健機関(WHO)国際疾病分類のドイツ版、ICD-10 GM に於いて、身体的疾病として分類登録されています。
MCS は第19章(傷害、中毒、その他の結果)、T66-T78(外因のその他及び詳細不明の作用)、T78.4(アレルギー,詳細不明)に割り当てられています。ドイツでは病院の医師やドキュメンタリストは社会保障コードV に基づく法的拘束力のある分類が義務付けられています(123)。

MCS は身体障害であります。しかし・・・
MCS は、ドイツに於いては2005 年より身体的疾病として認識されています(ナンバー 26.18、登録:筋骨格系の制限)。
障害状態は、要望に応じて個別に是認されます。
障害者は適用される法律の下で差別されてはなりません。また、特別な保護の下に存在しているのです。
化学物質過敏症の人たちは法律により付与されているにも関わらず、事実はその逆で、わずかな援助しか与えられておりません。

彼らは誤報によって(一部はわざと)精神障害者と決めつけていますが、それが身体的疾病であることは国際的な科学的事実から明らかになっています。
その判定基準は、下記で認識できる通り、社会補償法・重度障害者法に於ける医療鑑定業務の手引きとなります。
ドイツでは2004 年に初めてMCS は障害として取り入れられましたが、患者や医師たちの深い遺憾はさながら、多種化学物質過敏症と慢性疲労はガイドライン、ナンバー26.3『神経症、人格障害、精神的外傷』のリストに入れられました。
患者と医師たちがこの格付けを正に差別と感じた2005 年の新しい取り入れへと導きました(4)。それ以来、MCS とCFS はナンバー26.18『姿勢、及び運動器官とリウマチ性疾患』の範ちゅうに入りました。
それ以来、深刻なMCS の場合、50 以上のGdB が認識されるようになりましたが、ガイドラインに於いては未だに差別感が存在します。
MCS は身体的障害に割り当てられています。しかし、AHP2008 年版には以下のように記載されています。
『線維筋痛症やそれに似た身体表現性障害(例:CFS/MCS)はそれぞれのケースに応じて、機能的影響を対比して判定するべきである』。
この『それに似た身体表現性障害』という評価に驚嘆したのは、1998 年に既に医療専門家会議、治療薬評議会、ドイツ労働社会省が以下の声明を発表していたからです。
『決議によると、いわゆるMCS 症候群は環境病である』、自律神経の訴えが強く、食欲不振、苦痛を弱める機能の障害、回復力低下などを伴うもので、基本的に重度障害者法SGB IX による障害として認識されている。
心理的・精神的な原因による病気とMCS は結びつくものではないと指摘されています(5)。

「MCS 患者イニシアチブ」は障害者に対する差別に不満を抱いています。
MCS 患者イニシアチブは、精神疾患であるという差別に対して行動を起こし、MCS 患者は身体表現性障害(Somatisierungsstorung)と示されている現在の一節−この差別的用語から永遠に解放され、変更させるべきだと主張し、ドイツ労働社会省へ書面を送付し働きかけ、ついに目標達成に至りました(<B>6)。

連邦労働社会省からの文書の写し

鑑定ガイドラインに於ける差別は終わりました
連邦省の書面で報告されたように、来る2009 年用社会補償法・重度障害者法に於ける医療鑑定業務の手引きのうち、MCS を身体表現性障害(Somatisierungsstorung)と称する該当節は変更されました。

化学物質過敏症にとっての意義
如何なる法律上の標準的品質も手引きに及ばないが、それらは状況を評価する医療専門家たちにとっての拘束力なきガイドラインとしてのみ識別されているのではない。
連邦憲法裁判所より確認された連邦社会裁判所の連続的裁判例によると、手引きに於いてはむしろ専門家に予想された助言に関わりがあり、現在の優勢な医療教義、いわゆる正統医療に於ける知識・認識状態を述べています。
明白な、バランスの取れた、また、自己完結型評価構造として、手引きが行政と法廷に施していることとは一般平等原則の尊重の下で該当するMdE 度、若しくは引き続く損害後遺症のGdS や参加障害のGdB を決定することです(7)。

化学物質過敏症にとっての結論
身体障害としてMCS が統合されたことにより、手引きに於ける新しい定式化とICD-10 に於ける身体障害としてのMCS の識別がなされ、要望に応じ彼らの病気を身体障害として認識してもらう為の全てを化学物質過敏症は遂に握ることとなりました。
上記で実施された事実から明確であるように、ドイツに於いてMCS の分類は身体障害であり、精神病ではないという法的拘束力を広く有しております。

著者:Silvia K. Muller、CSN(化学物質過敏症ネットワーク)2008 年12 月24 日

文献
1. DIMDI Schreiben an CSN, MCS ICD-10, 04.09.2008
1) 2008 年9 月24 日、ドイツ医学文書情報研究所によるCSN(化学物質過敏症ネットワーク)宛ての文書、MCS ICD-10 について

2. DIMDI Schreiben, 04.09.2008 (pdf 版) (09/06/03)
2) 2008 年9 月4 日 ドイツ医学文書情報研究所の文書 (pdf 版) (09/06/03)

3. Bundesministerium fur Gesundheit, Anwendung der ICD-10 in der vertragsarztlichen Versorgung nach § 295 des Funften Buches Sozialgesetzbuch, 18.12.1995
3) 1995 年12 月18 日、連邦保健省、社会保障コードV セクション295 に基づく契約医療の供給に於けるICD-10 の効用

4. BMGS Berlin, MCS Ziffer 26.18, Anhaltspunkte fur die arztliche Gutachtertatigkeit, Anhaltspunkte 2005
4) 2005 年、BMGS(連邦保健・社会保障省)ベルリン、MCS ナンバー 26.18、医療鑑定業務の手引き

5. Arztlicher Sachverstandigen Rat, Sektion Versorgungsmedizin, Bundesministerium fur Arbeit, TOP 1.9, Nov. 1998.
5) 1998 年11 月9 日、医療専門家会議、治療薬評議会、ドイツ労働社会省、TOP 1

6. Dr. Christa Rieck, Bundesministerium fur Arbeit und Soziales, Schreiben. Feststellung nach dem Schwerbehindertenrecht“ vom 21.11.2008
6)2008 年11月21日、ドイツ労働社会省、Dr. Christa Rieck による文書『重度障害者法の判定』

7. Anhaltspunkte 2008, Rechtsnatur der Anhaltspunkte, Schillings/Wendler 08/2008
7) 2008 年8 月、Schillings/Wendler、Anhaltspunkte(手引書)2008、Anhaltspunkte(手引書)の法的性質

裕美・ルミィヤンツェヴァ 訳


2008 年11月21日ドイツ労働社会省
重度障害者法の判定

2008 年9 月29 日付けの貴会文書
http://www.csn-deutschland.de/BMAS-Anhaltspunkte.pdf
訳:裕美・ルミィヤンツェヴァ (日本語訳PDF版

親愛なるマダム

議会の国務長官、Thonnes氏が手紙で発表したように、2008年9月29日付けの貴会文書への返事をするに至りました。彼が治療薬の専門家諮問委員に会った後のことです。
専門家は以下の文章を推薦しております。
『線維筋痛症やそれに似た身体表現性障害(例:CFS/MCS)に於いてはそれぞれのケースに応じて、機能的効果を対比して判定するべきである』を『線維筋痛、慢性疲労症候群(CFS)、MCSやそれに似た症候群に於いてはそれぞれのケースに応じて、機能的結果を類比して判定するべきである』に置き換えるように。

敬具
代理署名
Dr. Christa Rieck
ドイツ労働社会省


MCS病は職業性疾患同様補償されるべき
日付け:2008年5月19日
http://sozialgericht-karlsruhe.de/servlet/PB/menu/1220814/index.html
訳:裕美・ルミィヤンツェヴァ (日本語訳PDF版
概要:
社会裁判所カールスルーエ支部は2008年5月19日の裁判判決(S 1 U 236/08)から、MCS病を職業性疾患同様とみなし、補償されるべきであるとの判決を下しました。
職業性疾患に於ける健康障害の判定と補償は、職業性疾患規制に基づくいわゆる疾患一覧に於いて、条例提供者によってそのように指定され、被保険者が法定傷害保険が認めた職種に於いて苦しんだ結果に基づく病気のみが支払い可能となります。
MCS病に関して、これらは利用不可能なのです。 MCS病の補償は他の職業性疾患同様、医療科学の現状から除外されていました。何故なら、MCS病の新知識及び、この病が職業から発生した特定の物質による影響の結果かどうかという点で疑問があり、ドイツ労働社会省やドイツの法定傷害保険が入手した裁判所事例の情報が組み込まれていないからです。
一般的に認められている臨床上の定義もなければ、病因と病態生理学上の思考の一致も示されておりません。
今現在では、MCS病を引き起こす特定の影響に於ける一般的な意見の一致は見られていません。


化学物質問題市民研究会注記
注1:
アメリカン・クロニクル 2009年1月21日 ドイツ 世界で初めて多種化学物質過敏症(MCS)を 身体的疾病として認める

注2:
カナリア・レポート/スージー・コリンズ 2008年12月25日 ドイツ 多種化学物質過敏症ガイドラインから身体表現性病因を削除



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