軍事問題に関する環境健康政策は、エージェント・オレンジ曝露のような戦争の健康影響、地雷や核兵器のような兵器、そして点在する軍事関連有害廃棄物サイトに目を向ける傾向がある。全体として、軍事産業は一般的に手をつけることも対応することもできないものである。それとは対照的に、有害物質に関する環境健康政策は、一時にひとつの有害物質を目標にするやり方から、有害物質の削減、危害のない医療、クリーンな技術、グリーンハウジング、汚染防止、そして予防原則へと移っている。我々は、米国の増大する軍事費、武器貿易、世界への軍事展開に目を向けた政策に比較可能な物差しを必要とする。なぜか? もし、軍事産業複合体(ある人は帝国と呼ぶ)の物差しがあれば、米軍は地球上で最大の単一汚染者であることがわかる。
次のことを考えてみよう。
- 1980年代後半までに公開データが、ペンタゴン(米国防省)は1分間に1トンの有害廃棄物を生成しており、これはアメリカの5大化学会社の有害廃棄物を一緒にしたより多い量であり、アメリカで最大の汚染者であることを明らかにした。2008〜2009年、大統領がん委員会報告書によれば、EPAの約1,300のスーパーファンド・サイト(訳注1)の内、ほとんど900が放棄された軍事基地/施設又は通常兵器及び他の軍事関連製品の製造・テスト及びサービスのためのサイトである。(そして世界中にある1000近くの米軍基地は現在のアメリカの環境保護基準が適用されていないのではないか?)
- 1994年までに、国防省の核兵器と燃料施設のための約5,000近くの汚染サイトが修復のために特定された。現在は閉鎖されているウランをリサイクルし、プルトニウムを抽出していたハンフォード核兵器施設はアメリカで最大の核廃棄物保管サイトであり、世界で最大の環境浄化サイトかも知れない。600エーカー(約240万m2)のサイトにある廃棄物は、5トン近くのプルトニウムと地下タンクにあるプルトニウム汚染廃棄物5,300万ガロン(約20億リットル)を含み、その多くは、地域のサケ、農業灌漑、及び飲料水源であるコロンビア川に隣接する地下水に漏れだしている。
- 2002年から2008年の間に、全国のサイトで約400施設と15,000人が生物兵器化学薬品を取り扱っていたが、多くの場合に地域のコミュニティには知らされていなかった。2002年以来、バイオテロ研究に570億ドル(約4兆6,000億円)以上を費やし、多くのゆゆしい懸念を引きこしたがが、それらには生物兵器競争のリスクを伴う生物防衛研究の軍化がある。2005年3月、バクテリアや菌による疾病を研究している50%以上の科学者からなる70人のトップクラスの微生物学者が、国立健康研究所(NIH)に対して、生物防衛研究に関する同機関の強調は、もっと重要な疾病を引き起こす病原菌の研究を脇にそらしたと主張する書面を書いた。1998年から2005年の間に、生物防衛研究の助成金は15倍に増大した。同時期に、主要な病気と死をもたらす非生物防衛病原菌(耐性結核病原菌及びインフルエンザ)は27%に減少した。
- 著者バリー・サンダーズは、アメリカ軍の”装甲車、飛行機及び豪華な飛行機は、世界のジェット燃料の4分の1を消費し、報告によれば、毎日、200万ガロン近くの燃料である”。彼の計算によれば、我々の軍は、世界の地球温暖化に5%寄与している。研究者マイケル・レンナーは1989年に、軍産複合体は、米軍の2倍のオイル相等エネルギーを消費したと見積もった。このようにして全体の軍帝国は最大の単一気候汚染者であり、地球温暖化への貢献者である。
教育、エネルギー、環境、社会サービス、住宅、雇用創出のための連邦予算額は、一緒にしても防衛費予算より少ない。もし、多くの人が主張するように、21世紀の世界の安全に対する主要な脅威が環境悪化(気候変動、汚染、生息場所の喪失、資源の欠乏による)なら、戦争の準備及び戦争そのものによる環境の重大なダメージと資源の濫用は環境健康政策の最も重要な懸念となるに違いない。今は、戦費をよく自覚することにより剣を鋤に代える政策とすべき時である。
訳注1:スーパーファンド
訳注2:ハンフォード
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