NUIG 2020年6月30日
ヨーロッパからのリサイクル用プラスチックは アジアの水域に投棄されていることを研究が明らかにする 情報源:NUI Galway, June 30, 2020 Study finds that Plastic Recycling from Europe being dumped in Asian Waters https://www.nuigalway.ie/about-us/news-and-events/news-archive/2020/june/ study-finds-that-plastic-recycling-from-europe-being-dumped-in-asian-waters-1.html 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2020年8月15日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/200630_NUIG_ Study_finds_that_Plastic_Recycling_from_Europe_being_dumped_in_Asian_Waters.html リサイクルのために輸出されたプラスチックの最大31%が、まったくリサイクルされていない。英国、スロベニア、イタリアからのプラスチックによる海洋汚染の割合が最も高い アイルランド国立大学ゴールウェイ校(NUI Galway)とリムリック大学の新しい研究が、海洋汚染に寄与するヨーロッパ諸国(EU、英国、スイス、ノルウェー)からリサイクル用に輸出されたプラスチックの量が初めて定量化された。 ヨーロッパの国々は世界をリードする廃棄物管理の社会基盤を開発しているが、ヨーロッパの分別されたプラスチック廃棄物の 46%は原産国の外に輸出されている(訳注1)。このプラスチックの大部分は、主に数千キロメートルも離れた東南アジアに位置する、廃棄物管理が不十分な国に輸出されている。 これらの国に入ると、これらの廃棄物の量は現地の廃棄物管理システムの能力を超えており、その多くは処理できず、海洋汚染に大きく寄与していることが判明している。 科学ジャーナル Environment International に発表されたこの新しい研究は、2017年にリサイクル用に輸出されたプラスチックの海洋汚染経路の最良、平均、及び最悪のシナリオを見積もった。結果は、32,115〜180,558トン、または輸出されたヨーロッパのポリエチレン全体の1〜7%が最終的に海洋に流れ込んだと推定された。 ポリエチレンはヨーロッパで最も一般的なプラスチックのひとつであり、その研究結果はイギリス、スロベニア、イタリアなどの国々は、ヨーロッパ域外へのプラスチック輸出の比率が高く、リサイクル可能なプラスチック廃棄物の海洋汚染の比率が高いことを示した。 研究の主著者であるジョージ・ビショップは本日、次のように述べた。”研究の結果は、海洋に入り込むプラスチックごみが、海洋生態系や沿岸地域社会に多大な環境的及び社会的影響を与えるであろう重要なこれまで文書化されていなかった経路を示している”。 調査では、詳細な国際貿易データと仕向国の廃棄物管理に関するデータを使用して、ヨーロッパからリサイクルのために輸出されたすべてのポリエチレンの運命をモデル化し、リサイクル樹脂への変換の成功から最終的には埋め立て、焼却、または海洋汚染までのさまざまな運命を明らかにした 。 リムリック大学の講師であり、共著者でもあるデビッド・スタイルズ博士は、次のように説明している。”このような大量の廃棄物がリサイクル用に輸出されており、下流の追跡確認が不十分なため、この研究では、「真の」リサイクル率は、廃棄物が発生した国や自治体によって報告されているリサイクル率とは大幅に異なる可能性があることを示唆している。 実際、私たちの調査は、輸出されたプラスチックの最大 31%が実際には全くリサイクルされていないことを見つけた”。 この研究は、アイルランド科学基金が資金を提供した「バイオエネルギー、バイオ燃料、持続可能なアイルランドの生物経済のための革新的なエネルギー技術:IETSBIO3」の一部であり、アイルランドのゴールウェイにあるアイルランド国立大学新エネルギー技術の教授ピエト・レンズにより率いられたものである。 レンズ教授はさらに次のように付け加えた。”循環型経済への移行を成功させるには、ヨーロッパの自治体及び廃棄物管理会社は「リサイクル」廃棄物の最終的な運命について責任を負う必要がある。 我々の研究は、プラスチック廃棄物に関する利用可能なデータの欠如と、プラスチック廃棄物の取引に関する新たな規制の一部として「拡張監査証跡(extended audit trails)」又はリサイクル活動の「自国内処理(on-shoring)」を考慮する必要性を強調している”。 著者らは、現状のリサイクル方式は環境面で最高の廃棄物管理システムなので、これらの調査結果が人々にリサイクルを思いとどまらせるべきではないと注意を喚起している。しかし、これらのシステムの「漏れ」を減らすために、これらのプラスチック・リサイクル・チェーンの側面を改善するために行うべき多くの作業がある。 研究の全文は https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412020318481#s0125 で入手可能である。 訳注1:バーゼル条約におけるプラスチック廃棄物
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