EWG プレスリリース 2006年3月3日
ホワイトハウス 調査結果の発表を遅らせる
有毒ロケット燃料 ほとんどのアメリカ人の体内を汚染

情報源:EWG Press Release, March 3, 2006
White House Delays Release of Study Showing Toxic Rocket Fuel in Most Americans
http://www.ewg.org/issues/perchlorate/20060303/index.php

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年3月10日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ewg/06_03_ewg_Rocket_Fuel.html


 【ワシントン3月3日】 ほとんどのアメリカ人が有毒なロケット燃料化学物質である過塩素酸塩(パークロレイト)に連邦政府の許容値に近いレベルで体内汚染していることを示す調査結果の発表をブッシュ政権が止めていることを発表した報告を受けて、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は、EPAと州機関が公衆を守るための措置を取ることができるよう、この調査結果を速やかに発表するよう要求している。

 独立系のニュースレターである”リスク・ポリシー・レポート”は2月28日に、ホワイトハウスの科学技術政策室が、疾病予防管理センター(CDC)に、全国健康栄養試験調査(NHANES)のヒトの血液サンプル中から過塩素酸塩をテストした調査結果の発表を遅らせるよう圧力をかけていると報道した。CDC は EPA の現在のリスク限界に比較すると公衆のための”安全マージンがない”レベルの過塩素酸塩を検出したと、EPAの消息筋はニュースレターに語った。

 固形ロケット燃料中の爆発性成分である過塩素酸塩(パークロレイト)は少なくとも全米35州で飲料水と土壌を汚染しており、知られている汚染のほとんどは軍の基地及び軍需産業の施設からの汚染である。EWG、テキサス大学及びアリゾナ大学の科学者、カリフォルニアの州担当官及びアメリカ食品医薬品局(FDA)によるテストは、全米でミルク、作物及び多くの他の食物、及び家畜飼料穀物の中に過塩素酸塩を検出した。過塩素酸塩は甲状腺に毒性があり、動物テストではたとえ微量でも胎児と子どもの正常な成長と発達を阻害する。

 昨年のCDC調査において市の飲料水中で見出された過塩素酸塩の濃度は非常に低かったが、テストされた61人のアトランタ住民の全ての尿から過塩素酸塩が見出された。今回の全国健康栄養試験調査(NHANES)の調査は、CDC調査のフォローアップである。昨年、テキサス工科大学の科学者もまた、36人の母親全員の母乳サンプルから過塩素酸塩を検出した。

 CDCのディレクター、ジュリー・ゲルバーディング博士宛ての手紙の中で、EWGの副代表リチャード・ワイルは、アトランタ住民の調査結果は、”食物が過塩素酸塩への主要な曝露源らしいことを示しており、過塩素酸塩曝露は一般国民の間に広範に広がっているようである”−と述べた。

 EPAは過塩素酸塩のための国の飲料水基準を開発する予定はないが、マサチューセッツとカリフォルニアの両州は州の安全基準を設定する方向に動いている。マサチューセッツ州が提案する基準は 1ppb、カリフォルニ州は 6ppbであり、これらはEPAが最近採用したリスク限界24.5ppbをはるかに下回っている。EPAの値は過塩素酸塩による汚染現場の浄化のための指針に用いられているレベルである。EPAがこのリスク限界を発表した時に、EPAは、”関連情報源寄与に関する国の指針”の必要性を認めたが、全国健康栄養試験調査(NHANES)のデータが提供するものが正にこの情報である。

 ”国の安全基準がない時に、飲料水と食物中に広まっているように見える化学物質から公衆を保護することを明確に必要としてるデータを前にして、CDCは手をこまねいて座っているべきではない”−とEWG副代表ワイルは手紙の中で書いた。”全国健康栄養試験調査(NHANES)過塩素酸塩データは速やかに公表されるべきである。”


訳注(参考資料):
環境毒性学化学 Vol.25, No.8 論文アブストラクト/過塩素酸塩はトゲウオに雌雄同体性をもたらす (当研究会訳)
EWG プレスリリース 2006年10月4日/ロケット燃料 過塩素酸塩で 4,400万人の女性が甲状腺欠乏のリスクに脅かされる(当研究会訳)


化学物質問題市民研究会
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