2006年1月9日 環境毒性学化学 Vol.25, No.8
過塩素酸塩はトゲウオに雌雄同体性をもたらす
(アブストラクト紹介)

リチャード・バーンハード1、フランク・ボンヒペル1、ウイリアム・グレスコ2
1.アラスカ大学生物化学部 2.オレゴン大学生態学進化生物学センター

情報源:Environmental Toxicology and Chemistry: Vol.25, No.8
Perchlorate Induces Hermaphroditism in Threespine Sticklebacks
http://www.uaa.alaska.edu/enri/people/upload/Bernhardt-et-al-2006.pdf
Richard R. Bernhardt1, Frank A. von Hippel1, and William A. Cresko2
1. Department of Biological Sciences, University of Alaska Anchorage, 3211 Providence Drive, Anchorage, Alaska 99508-4614, USA
2. Center for Ecology and Evolutionary Biology, University of Oregon, Eugene, Oregon 97403, USA

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年8月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/etc/06_01_09_etc_perchlorate.html


 最近、過塩素酸塩(パークロレイト)に関する懸念が多くの状況で起きている。過塩素酸塩は多くの軍需、産業、及家庭で使用されており、牛乳、飲料水、灌漑用水、及び農産物中に見いだされている。過塩素酸塩は低レベルでも有害であり、米環境保護庁(EPA)は許容暴露レベルを確立しようとしているが、現在、アメリカでは規制されていない。
 今回の研究では、魚種トゲウオ(hreespine stickleback / Gasterosteus aculeatus)のモデルを用いて脊椎動物への潜在的な生殖影響を調査した。トゲウオは、処理をしない水、及び過塩素酸ナトリウムで処理した水の中で性的に成熟した雌雄の両性生殖により得られた。
 過塩素酸塩は婚姻色の発現、求愛行為、及び正常な性的発達を阻害することが見いだされた。発生学的テストにより、あるメスは精子と卵子の両方を生成する程度に雄性化することが分り、組織学的分析によりこれらの個体は、卵母細胞及び精子形成細胞になる細胞の両方を含む間性性腺(卵精巣)を持っていた。
 試験管受精によりこれらの卵子と精子は自己受精及び他家受精が可能であった。しかし、発生学上の雌から得られた精子を用いた他家受精によるものは胞胚段階又は器官形成初期の段階のどちらかで死んだ。
 発生学上の雄から得られた精子と処理された発生学上の全ての雌から得られた卵子の受精では生存可能な幼魚になった。
 我々が知る限り、今回の研究は過塩素酸塩が雄性ホルモン様作用を引き起こし、非雌雄同性脊椎動物における機能的雌雄同性を引き起こすことができることの初の証拠を提供した。

キーワード:過塩素酸塩(Perchlorate)、雌雄同性(Hermaphroditism)、トゲウオ(Threespine stickleback)、トゲウオ科イトヨ類(Gasterosteus aculeatus)、内分泌かく乱作用(Endocrine disruption)


訳注:過塩素酸塩(パークロレイト)

EWG プレスリリース 2006年3月3月/ホワイトハウス 調査結果の発表を遅らせる:有毒ロケット燃料 ほとんどのアメリカ人の体内を汚染(当研究会訳)
 主に固形ロケット燃料中の爆発性成分として使用される過塩素酸塩は少なくとも全米35州で飲料水と土壌を汚染しており、知られている汚染のほとんどは軍の基地及び軍需産業の施設からの汚染である。EWG、テキサス大学及びアリゾナ大学の科学者、カリフォルニアの州担当官及びアメリカ食品医薬品局(FDA)によるテストは、全米でミルク、作物及び多くの他の食物、及び家畜飼料穀物の中に過塩素酸塩を検出した。過塩素酸塩は甲状腺に毒性があり、動物テストではたとえ微量でも胎児と子どもの正常な成長と発達を阻害する。



化学物質問題市民研究会
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