Life & Style 2012年10月4日
新たな研究が発見
ナノ粒子は皮膚を貫通しない

サラ・ベリー、 Life & Style 記者

情報源:Life & Style October 4, 2012
Nanoparticles don't penetrate skin, study finds
Sarah Berry, Life & Style reporter
http://www.smh.com.au/lifestyle/beauty/
nanoparticles-dont-penetrate-skin-study-finds-20121004-270mr.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2012年10月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/121004_Nano_don't_penetrate_skin.html


 新たな研究によれば、化粧品会社が大革新であると主張していたことは全く正しくないことになる。

 超微細の科学、ナノテクノロジーは1980年代後半以来、化粧品の成分として使用されてきた。化粧品ブランドは、この技術は、ビタミンやその他の”活性成分”を肌の奥深く浸透させると主張している。

 最近イギリスのバス大学により発表されたある研究は、これは明らかに事実ではないと述べている。

 研究リーダーのリチャード・ガイ教授は、”今までの研究はナノ粒子が皮膚を浸透するのかどうかについて矛盾する結論を示していた”と述べた。

 ”共焦点顕微鏡(confocal microscopy)を用いることによって、我々は不規則な皮膚の表面上でナノ粒子に何が起きているのかを明確に視覚化し、客観的に評価することができた”。

 ”以前の研究は、ナノ粒子は皮膚を浸透するらしいと示唆しているものもあったが、我々の研究結果は、それらのナノ粒子は実際には皮膚サンプルの深いしわの中に単に溜まっているだけであることを示している。”

 ”皮膚の役目は、潜在的に有害な化学物質の侵入に対する障壁となること、及び体からの水分損失を低減することである。我々の研究は皮膚がきちんと機能していることを示している”。

 ”従って、疑いを持たない消費者は、肌用クリーム中のナノ粒子は肌の奥深くまでしみこむとい思い込むかもしれないが、これは事実ではない”。

 彼はイギリスのDaily Mailに、この研究は日焼け止めで使用されているもののように、潜在的に有害な成分が血流中に吸収されるかもしれないという懸念を軽減するのに役立つと述べた。その粒子は、そのように働くには大きすぎると彼は述べた。

 しかし他の科学者らは納得していない。

 地球の友オーストラリアと共にナノテクノロジー・キャンペーンを行なっているグレゴリー・クロセッティ博士(訳注1)はこの研究を痛烈に批判した。”切り取ったブタの皮膚を用いた短期間の調査に基づいてナノ粒子は人の皮膚を浸透しないと結論付けているその研究は極めて無責任である”と、彼は述べた。”これは皮膚の伸縮のような現実の生きた条件と、浸透強化剤がほとんどの化粧品中で使用されている事実を反映していない短期間のインビトロ(試験管)実験の典型的な事例である。現実的な条件を実際に反映するもっと長期の研究が緊急に必要である”。

 ニューサウスウェスト州(NSW)にあるマッコーリー大学のブライアン・ガルソン教授は同様に批判的である。この地球化学者自身のオーストラリア連邦科学産業研究機関(CSIRO)に関連する2010年からの研究は、日焼け止め中の小量の亜鉛粒子は”現実の環境下で太陽に曝露した皮膚の保護層を通過し、血流と尿中で検出されることがある”ことを発見した(訳注2)。

 この最新の研究について彼は、”彼等は高性能のレーザースキャニング共焦点顕微鏡を使ったかもしれないが、彼等の結果は初期の研究を補強しただけであり、彼等はポリスチレンナノ粒子を使用し、切り取った(すなわち死んだ)ブタの皮膚を使用しているのだから、現実の’生きた’、特に化粧品に対する状況に関連性がない”と述べた。

 オーストラリア国立大学の国立疫学センターのリッツ・ハンナ博士は異なる見解を述べた。”ナノテクノロジーは、何も危険ではなく、ナノテクノロジーによるドラッグ・デリバリーの潜在的な著しい便益がある・・・と主張する人々がいる”と、彼女は述べた。

 例えば、インフルエンザ・ワクチン接種は5分の1の効果があれば十分であるということが分かっていると彼女は述べた。”ナノテクノロジーを利用する日焼け止めの使用で皮膚がんを回避する可能性がそれと同じなら、その可能性はすばらしい”。

 しかし、ハンナ博士は、ガイ教授の発見を懸念し直接的に否定する研究もあると述べた。”それらの人々は、そのような技術の有害性のバランスを評価しようとする。太陽への曝露で皮膚がんになるのは、ナノ粒子によるダメージより有害性が少ないか?”。

 ”我々は太陽への曝露への長期的なダメージを知っているが、ナノ物質の長期的ダメージについては知っていない。リスクの程度を知るのはまだ早すぎる”。

 彼女の感情はアメリカのある人々の考えを反映している。今年の初めにニューヨークタイムズ紙は、”潜在的な健康と環境リスクについて十分にわかっていない”という理由で国立科学アカデミーはナノ物質に関する更なる研究を要求していると報じた。

 これらのリスクは今後20年経っても明らかにならないかもしれないとハンナは述べた。一方、ナノテクノロジーの影響に関して、まだ問題の結論は出ていない(陪審員は法廷の外で協議している)のだから、我々は予防的アプローチをとり、決定について知らされる必要があると彼女は述べた。

 日焼け止めについての矛盾する主張は、今年の夏はどうすればよいのか決めるのを難しくする。地球の友オーストラリアは、日陰を求め、保護衣を着用し、帽子をかぶり、サングラスをかけ、SPF 30+の日焼け止め(訳注3)を使用して、日焼けを防止するよう助言している。


訳注1
訳注2
訳注3
関連情報
  • New study says nanoparticles don’t penetrate the skin, Created by assoceditor on 05/10/2012, SAFENANO
  • New study of nanoparticle skin penetration on October 16, 2012 by Robert Oszakiewski, Nanotechnology Law Report
    The authors note and warn about the limited nature of their research: It should be emphasised that this research has clearly not been able to make a systematic evaluation of nanoparticle disposition on the skin for the entire spectrum of particle properties, including shape and charge. . . .the observations and their analysis cannot explain, with any degree of certainty, why others have reported nanoparticle uptake into living skin layers following their topical application . . . . While speculative alternatives might be proposed, such as accidental contamination on sectioning, or invisible flaws in skin integrity (across which, for example, a very small quantum dot of a few nanometres diameter might be able to travel), complete understanding will only be possible with further, scrupulously controlled experiments coupled with objective data analysis and interpretation.


化学物質問題市民研究会
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