FoE オーストラリア メディア・リリース 2012年7月25日
大手日焼け止めブランド
ナノを使用していないと誤解させる
規制の失敗を示す


情報源:Friends of the Earth Australia MEDIA RELEASE, July 25, 2012
More major sunscreen brands misled by non-nano claims, showing regulatory failure
http://www.foe.org.au/articles/2012-07-24/
more-major-sunscreen-brands-misled-non-nano-claims-showing-regulatory-failure


掲載日:2012年8月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_120725_sunscreen.html

 地球の友は、オーストラリアの二つの会社、 Antaria Limited 社と Ross Cosmetics 社を、ナノ日焼け止め成分を”非ナノ(non-nano)”及び”ナノ粒子不使用(nanoparticle-free)”として市場に出したことは人を誤解させ欺く行為であるとしてACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)に訴えた。これによりオーストラリア最大の日焼け止めブランドのいくつかが影響を受けたが、それらには、 Cancer Council 社の”Classic”、Invisible Zinc 社の”Junior”と”Body” サンスクリーン、 Coles 社の”Sports”、及びWoolworths 社の”Clear Zinc”などが含まれる。Antaria 社への告訴は、公衆健康協会(Public Health Association)、オーストラリア教育組合(Australian Education Union)、オーストラリア労働組合協議会(Australian Council of Trade Unions)を含む広範な団体により支持されている。 Mukti 社はこの発覚に対応して、影響を受けた製品を市場から回収した。

 地球の友のナノテクノロジー・プロジェクト、グレゴリー・クロセッティ博士は、”消費者は日焼け止め中のテストされていないナノ成分の潜在的健康リスクについて、当然のことながら不安を抱く。このことが、多くの会社が彼等の製品をナノ不使用の日焼け止めとして市場に出している理由である。このスキャンダルは、たとえオーストラリアで最も信用のあるブランド、Cancer Council 社さえも彼等の製品に何が入っているかを知らなかったのだから、消費者の信頼に重大な危機をもたらす”と述べている。

 オーストラリア教育組合(AEU)(ビクトリア州支部)の代表メアリー・ブリュエットは、”日焼け止め中で使用されているナノ成分には健康と安全上の新たな問題があるという証拠と懸念が増大している。これらの懸念に基づき、AEUは学校と職場ではナノ不使用の日焼け止めだけを使用するよう勧めて来た。このようなやり方で会社が彼らの製品中の内容を正しく表示しなかったことには強い不安を感じる”と述べている。

 オーストラリア公衆健康協会の執行役員マイケル・ムーアは、”ナノテクノロジーが著しい健康、安全及び環境ハザードをもたらす可能性があるという証拠が増大している。連邦政府は至急、健康と安全の懸念に対応し、情報に基づく選択を提供するために、規制の枠組みを開発する必要がある”と述べている。

 今年の初めに発表された国立測定研究所(NMI)による調査は、Antaria社及びRoss社により供給される成分を使用しているオーストラリアの日焼け止めがナノ物質を含んでいることを明らかにした。重要なことは、 NMI の独立検査は、会社が使用するバルク粒子とナノ粒子のアグロメレート及びアグリゲート(凝集)(オーストラリア及び国際的な定義でナノ粒子であると)との区別をすることができないレーザー光散乱測定技術よりもはるかに精密であったことである。地球の友による製品情報と特許の詳細な調査は、これらの結果を実証した(注*)。

 ”日焼け止め中のナノ成分に関連する健康リスクについては驚くほどに、ほとんど調査がなされていなかった。しかし、日焼け止め中のナノ成分はがんをもたらす可能性があるという恐れを含んで、科学者や皮膚専門家の間に健康に対する懸念が増大している”とクロセッティ博士は述べている。

 ”皮膚学者と毒性学者は、皮膚が損傷している人々、小さな子ども、日焼け止めを非常によく使用する人々は、ナノ物質への曝露のリスクがより大きいので、ナノ日焼け止めの使用を避けるベきであるという警告を公表している。ナノ成分の使用を避けようとしている人々がこのようなやり方で誤解させられるということは非常に残念なことである”。

 ”Mukti社が影響を受けた製品を市場から回収することで消費者を保護するために正しいことをしたのはすばらしいことである”。

 ”もしこのスキャンダルが日焼け止めの安全性に関してもっと大きな懸念を公衆に引き起こすなら、それは、日焼け止め中のナノ成分の使用を規制することに失敗した連邦政府の責任である。もし政府が会社に対して、ナノ成分のテストとラベル表示を義務付けていれば、このようなことにならなかったであろう”。

”ヨーロッパとニュージランドは日焼け止め中のナノ成分を規制する方向に動いており、オーストラリアも同じようにすべきである”とクロセッティ博士は結論付けている。

メディアの連絡先:
Dr. Gregory Crocetti, FoE Nanotechnology Project media spokesperson: 0403 733 628
Louise Sales, FoE Nanotechnology Project co-ordinator: 0435 589 579

(注*)
 地球の友は、Antaria社のZinClear IM に関して国立測定研究所(NMI)に専門家としての意見を要請したところ、以下をの結論を得た。

 特許US 2010/0310871 A1に記述されている”メソ多孔質酸化亜鉛パウダー”は、国際標準化機構(ISO)技術使用及びオーストラリア政府国家産業化学物質届出評価機構(NICNAS)の文書”産業ナノ物質の届出のための新たな科学的要求に関するガイダンス”によれば、”ナノ物質”であるというのが国立測定研究所(NMI)の意見である。

 Ross Cosmetics社により使用されている酸化亜鉛中性(Zinc Oxide Neutral)製品のための製品ガイドは、それがナノ物質のアグロメレート(凝集)であると記述している。

記者への注釈
  • 国立測定研究所(NMI)の調査は、地球の友の”安全な日焼け止めがガイド”の中で、”ナノ不使用”としてリストされている4つの日焼け止めブランドが実際にはナノ成分を含んでいることを明らかにした。テストされ、ナノ不使用であるとの結果が出た製品は、 Banana Boat 社(Sports)のものだけであった。我々はナノ不使用としてリストされているブランドの多くがナノ成分を含んでいることを現在は知っているが、どれがナノ不使用であるかを決定するためには、金のかかるさらなるテストが必要である。
  • ナノ特定の義務的リスク評価とナノ成分のラベル表示を求めるヨーロッパの日焼け止め規制は2013年7月に発効する(訳注1)。ニュージランドは日焼け止めのナノ成分ラベル表示を2015年から求める(訳注2)。
  • オーストラリア研究所の昨年の調査は、オーストラリア人の92%が日焼け止め製造者は製品中でナノ成分を使用する前に安全テストの実施を求められるべきであると信じており、85%が日焼け止め中のナノ成分は表示されるべきであると考えていることを明らかにした。
  • 地球の友は Ross 社の酸化亜鉛中性成分は国際的な定義のナノ粒子を含んでいないとする同社の主張を拒絶する。その製品はナノ粒子のアグロメレート又は凝集を含んでいる。

訳注:関連情報
訳注1
2009年11月30日欧州議会及び理事会 化粧品に関する規則(EC) No 1223/2009

訳注2
ニュージランドEPA メディアリリース 2012年6月29日 化粧品規制更新:ナノ成分表示要求


化学物質問題市民研究会
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