NOETB 2011年12月28日
EPA カーボンナノチューブ(CNTs)に
重要新規利用規則(SNURs)を提案

リン L. バーガソン

情報源:Nano and Other Emerging Technologies Blog, Decemer 28, 2011
EPA Publishes Proposed SNURs for CNTs
by Lynn L. Bergeson
http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/united-states/federal/
epa-publishes-proposed-snurs-for-cnts/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2012年1月14日


 米・環境保護庁(EPA)は、2011年12月28日に、製造前届出(PMN)の対象となる17化学物質について重要新規利用規則(SNURs)の提案を発表した(訳注2)。特に興味深いことは、製造前届出(PMN)の対象化学物質のうち7種類が、”カーボンナノチューブ”(CNT)又は”CNT”という言葉を含んでいることである。EPA は、カーボンナノチューブ(CNT)のための確立された技術用語がないので、有害物質規正法(TSCA)目録でのCNTの名称は現在、一般的な表記、例えば、”カーボンナノチューブ(CNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、又は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)”を使用している。

 EPAは、個々のCNTのTSCA目録への登録をもっと具体的にするために、PMN提出者によって提供される特定の構造的特性を用いる。EPAによれば、CNTsのための新たな化学物質届出の全ての提出者は、これらの特定の構造的特性を企業機密情報(CBI)であると主張してきた。異なる(distinct)化学物質はPMN 物質としての化学的同定の機密情報を明らかにしなくてもPMN対象であることを確認するために、この提案された規則は PMN 番号とともに一般的化学物質名を含む。コメントの期限は2012年1月27日である。

 機密主張のためにEPAはCNTsの同定についてもっと詳細に記述することができないので、もし、意図するCNTsの製造業者、輸入業者、加工業者がそのCNTsが提案されたSNURsの対象となるかどうか不確かな場合には、これらの業者は、40 C.F.R. § 721.11(特定の化学的同定が機密である時の適用の判断)の善意の手続きに基づき、EPAと相談するか、EPAから書面による決定をを得ることができるとEPAは述べている。

 TSCAの下に新規化学物質として提出される全ての CNTs をこれらの化学物質をTSCA目録で記述する標準的技術用語を開発するのに役立てるために、この特定の構造的特性を用いるとEPAは述べている。EPAは、これらの構造的特性の一般的リストを、『Material Characterization of Carbon Nanotubes for Molecular Identity (MI) Determination & Nomenclature (分子同定(MI)の決定と技術用語のためのカーボンナノチューブの物質特性化)』(訳注1)をまとめている。

訳注3:カーボンナノチューブ規制関連情報


訳注1 Material Characterization of Carbon Nanotubes
for Molecular Identity (MI) Determination & Nomenclature
U.S. Environmental Protection Agency
June 2010
Docket Identification Number
EPA-HQ-OPPT-2009-0686

Material Characterization of Carbon Nanotubes
for Molecular Identity (MI) Determination & Nomenclature

Structural features that may be important
Primary MI features:
  1. Molecular Weight
  2. wall/tube number
    • e.g., single-, double-, multi-walled (average, range)
    • for multi-walled: concentric cylinders ("Russian Doll") or scroll (rolled up "Parchment")
  3. wall/tube ends
    • e.g., open, individually capped, ends connected together in a circular or loop shape
  4. tube length (average, range)
  5. wall/tube width/diameter
    • outer wall/tube and inner cavity (average, range)
  6. ring size/connectivity
    • 6-membered (typically), but also provide % (?) 5 and/or 7 and/or 7+
  7. hexagonal array orientation
    • armchair, zig-zag, chiral (determined by chiral angle/vector measurement)
  8. alignment of long axis
    • e.g., straight, bent, buckled, branched, helical, circular, spaghetti-like
    • cause if other than straight (e.g., stress or structural)
Secondary MI features:
  1. deformities
    • e.g., bumps, gaps
  2. ring hybridization
    • graphene (typically)
    • graphyne (theoretically; e.g., bow-tie, linear, star)
  3. agglomeration, aggregation
Other relevant information:
  1. manufacture
    • method (e.g., CA, CVD, PLV, HiPCO)
    • catalyst (chemical identity, quantity used and incorporated, particle size)
  2. purity
    • impurity type, amount, and source
  3. complexation, surface treatment, encapsulation (entrainment)
    • non-covalent
    • e.g., coated, modified, other
  4. doping
  5. uses
訳注2:
Proposed Significant New Use Rules on Certain Chemical Substances 魚拓

Summary:
EPA is proposing significant new use rules (SNURs) under section 5(a)(2) of the Toxic Substances Control Act (TSCA) for 17 chemical substances which were the subject of premanufacture notices (PMNs). Fifteen of these chemical substances are subject to TSCA section 5(e) consent orders issued by EPA. This action would require persons who intend to manufacture, import, or process any of these 17 chemical substances for an activity that is designated as a significant new use by this proposed rule to notify EPA at least 90 days before commencing that activity. The required notification would provide EPA with the opportunity to evaluate the intended use and, if necessary, to prohibit or limit that activity before it occurs.Show citation box

訳注3:カーボンナノチューブ規制関連情報
  • ナノテク研究プロジェクト 米環境保護庁のカーボン・ナノチューブ規制
    • CNTsは新規化学物質で製造前届出(PMN)が必要
      2008年10月31日、米EPAは連邦官報[3]で次のように注意を喚起しました。
      "CNTsはTSCAインベントリーにリストされているグラファイト又はその他のカーボン同素体から区別されるべき化学物質であると考える。したがって多くの CNTs は、TSCA第5条の下で新規化学物質なので、TSCAインベントリーにリストされていないCNTs の製造者又は輸入者は、TSCA第5条の下に製造前届出(PMN)(又は適用可能な免除)を提出しなくてはならない"。

    • 有害物質規制法(TSCA )豆知識
       米TSCAの中でしばしば引用されるいくつかの用語について少し解説します。
      • TSCA第4条 化学物質および混合物の試験
         試験規則あるいは、PMN またはSNUR に関連した試験データまたはその他の情報により、「化学物質または混合物が人体に対しガン、遺伝子突然変異、または先天性異常などの重大あるいは広範な被害をもたらす著しいリスクを呈するか、将来呈するであろうと結論付ける合理的な根拠があること」を示すものをEPA が入手した場合には、EPA はその情報の入手後180 日以内にリスクを予防または軽減する措置を開始するか、またはそのようなリスクは不合理であるとする所見を発表しなければならない。(TSCAの概要と改正に向けての動向(1)J-Net21 から引用)
      • TSCA第5条(a) 製造前届出(Premanufacture Notice / PMN)  製造・輸入事業者は製造・輸入90日前に製造前届出を提出する。これに基づいてEPAがリスク評価をする。暴露情報に関する要求項目は決められているが、ハザード情報に関しては新たな試験実施は求められておらず、手持ちのデータを出せばよく、決められたデータセットも存在しない。
      • TSCA第5条(a) 重要新規利用規則(Significant New Use Rules / SNURs ) 全事業者に対する規制全事業者に対する規制である。重要な新規用途について化学物質の製造または輸入の90日前にEPAに通知する。EPAが評価し、問題があれば新規の用途等を禁止または制限することができる。
      • TSCA第5条(e)同意命令(Consent Order)  申請者(PMN 提出者)に対する規制である。TSCA 第5条(e) によるEPA規制:EPAと届出者で協議し、追加情報の提出、規制条件の遵守、届出の取下げ等のうちのいずれかを届出者に選択させる。
      • TSCA第8 条(e) 著しいリスクに関する情報の届出の義務  化学物質又は混合物を商業的に製造、加工、又は販売している者で、そのような物質又は混合物が健康又は環境に相当な危害のリスクを引き起こすという危結論を合理的に支持する情報を入手した者は、もしEPA長官が適切にそのような情報を知らされているということを実際に知らないなら、そのような情報をEPA長官に速やかに知らせなくてはならない。
      • 新規化学物質の定義  TSCAインベントリー(目録)に掲載されている既存化学物質の中に"同じ分子的同一性"を持つものがない(すなわち、インベントリーに掲載されていない)場合に、その物質は新規化学物質であると定義される。

  • NLB 2010年9月17日 EPA カーボンナノチューブに最終重要新規利用規則(SNURs) リン L. バーガソン
  • Nanotechnology Law Blog 2010年2月5日 EPA 多層カーボン・ナノチューブに対し別の重要新規利用規則(SNUR)を提案 リン L. バーガソン
  • EPA 2008年1月23日 TSCA ナノスケール物質のインベントリー・ステータス 一般的アプローチ


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