CHE パートナーシップ・コール 2006年2月28日
小さなことがらか、それとも大きなリスクか:
ナノ技術と環境公衆健康


ケン・ガイザー博士:持続可能な製造のためのローウェルセンター共同代表
アンドリュー・メイナード:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクター
カレン・フロリーニ:エンバイロンメンタル・ディフェンス上席弁護士
デービッド・リジェスキー:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクター
司会:スーザン W. マーマガス:CHE 健康プログラム ディレクター

情報源:Collaborative on Health and the Environment
Partnership Calls February 28, 2006
Small Matter or Big Risk: Nanotechnology and Environmental Public Health
http://www.healthandenvironment.org/articles/partnership_calls/306

Dr. Ken Geiser, Co-Director, UMass Lowell Center for Sustainable Production
Dr. Andrew Maynard, Chief Science Advisor, Project
on Emerging Nanotechnologies, Woodrow Wilson International Center for Scholars
Karen Florini, Senior Attorney, Environmental Defense, Washington DC
David Rejeski, Director, Foresight and Governance Project
& Project on Emerging Nanotechnologies, Woodrow Wilson Center
Call Moderator: Susan W. Marmagas, MPH, Director of Health Programs, Collaborative
on Health and the Environment

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年5月28日
更新日:2006年6月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano//che/060208_partnership_calls_nano.html

電話会議録
1. 歓迎:スーザン W. マーマガス:CHE 健康プログラム ディレクター
2. 最初のスピーカー:ケン・ガイザー博士:持続可能な製造のためのローウェルセンター共同代表
3. 二番目のスピーカー:アンドリュー・メイナード博士:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクター
4. 三番目のスピーカー:カレン・フロリニ:エンバイロンメンタル・ディフェンス上席弁護士
5. 四番目のスピーカー:デービッド・リジェスキー:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクター
6. 討議と Q & A (2006年6月24日)



1. 歓迎:
  スーザン W. マーマガス:CHE 健康プログラム ディレクター


 私はスーザン ・マーマガスです。CHE 健康プログラム ディレクターです。今日、ナノ技術に関するこの電話会議の司会を務めることは私の喜びです。

 我々は、ナノ技術の問題が新たに出現し、多くの人々の懸念となっていることを知っています。同時にナノ技術の利益もありますが、我々はナノ技術によって及ぼされるリスクに目を向けることを理解し確実にしたいと思います。これらのリスクは労働者、消費者、公衆、そして環境に及ぼすことがあるでしょう。

 今日の電話会議は、まさに、”公衆の健康を守るためにこの新規出現の技術越えていかに先を行くか、そして関連分野の教訓からいかに学ぶか”という疑問を追究しようとしています。それは、今まさに重要な疑問であり、我々はしばしば CHE の内部で話し合っている問題です。今日の電話会議は、ナノ技術の周辺にある多くの問題をカバーするために企画しました。ナノ技術の背景にあるものは何か?;枠組みの設定;ナノ技術の健康への影響;自主的及び法的規制の両方の政策取組;そして、短期的及び長期的な問題を見据えての将来の展望−などの問題です。その向こうにはどのようなナノ技術の影響があるのでしょう?

 今日はこの広範な問題をカバーするために4人の方々を電話会議にお招きしました。我々は、皆さんのプレゼンテーションの後に行う討論を非常に楽しみにしていますが、それはこの電話会議にこの分野の専門家をさらにお招きしているからであり、活発な討議を期待しています。

 4人のスピーカーの方々はに状況に応じた話題を、そしてナノ技術とは何かということについてもてお話いただきます。科学の健康影響についてもカバーされるでしょう。ナノ技術に関して政策と規制について話されるでしょう。そしてウッドロー・ウィルソンセンターでなされた最近の仕事から公衆のナノテクの認識について話されるでしょう。私が申し上げた通り、我々は討議のための時間が十分にあります。Q&Aの時間を確保するためにプレゼンテーションは短く切り上げましょう。これ以上色々申し上げることないので、それでは各スピーカーにお話いただく前にごく簡単な紹介をします。そして全てのスピーカーのお話がすんだ後でQ&Aを行います。

 最初のスピーカーは、ケン・ガイザー博士です。ケニス・ガイザー博士は労働環境学の教授であり、マサチューセッツ・ローウェル大学の持続可能な製造のためのローウェルセンターの共同代表です。ガイザー博士は、マサチューセッツ州有害物質削減法の起草者の一人です。彼は、”有害物質使用削減研究所”が設立された1990年から2003まで代表を務めました。それではガイザー博士、お願いいたします。


2. 最初のスピーカー:
 ケン・ガイザー博士:持続可能な製造のためのローウェルセンター共同代表


 私の今日の役目はナノ技術の概要を話すことです。私はスケールの問題から始めましょう。1ナノメートルは10億分の1メートルのことです。それはDNAのサイズであり、又はいくつかの原子が集まったサイズです。特に目新しいことはありません。生命化学現象の多くはナノスケールで起こります。

 人はナノスケール物質が豊富な環境で進化してきました。天然のナノスケール粒子は燃焼過程又は粉砕過程で容易に生成されます。我々は数世紀の間、顔料やカーボン・ブラックで粒子を作ってきました。

 それでは何が新しいのでしょう。新しさは分子レベルで物質を操作するというごく近年の能力に由来します。1980年代にハロルド・クロトーとリチャード・スモーリーがカーボン60を最初に紹介し、彼らをその格子状の形のためにバックミンスター・フラーレン(訳注:フラーレン出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)と呼びましたが、同時に、我々は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)測定を開発し、目的の機能を持つナノスケール粒子を意図的に生成しています(訳注:原子間力顕微鏡)。

 実際、連邦政府のナノ技術の定義は三つの部分からなります。その定義とは、”物質又は構造は1〜100ナノメートルのサイズであること”。二番目に、”新奇または新しい特性を持つこと”。そして三番目に、”分子スケールで製造できること”です。これは大きな革命です。我々はナノ技術に莫大な投資をしています。大体30ヶ国くらいがナノ技術研究プログラムを持っています。アメリカ連邦政府はナノ技術研究開発に年間10億ドル(約1,100億円)をつぎ込んでいます。

 現在、ナノ技術は能動的ディバイスを示唆しています。しかし現在行われている大部分の研究と市場に出ている大部分の製品は、我々が”人工ナノ粒子”と呼んでいるところの受動的な物質です。これは、我々が注目している領域です。これらには、非常に薄いフィルムを作るために用いられる一次元ナノ粒子、金属粒子の非常に小さいロールである二次元ナノチューブ、そして量子ドットとしばしば呼ばれる三次元球が含まれます。これら受動的ナノ物質は、”第一世代ナノ技術”と呼ぶべきかもしれないものから構成されています。これには、ナノ構造の金属、ポリマー、セラミックス、合成物、及び触媒のようなものを含みます。これは現在、産業の大部分に関わっています。

 しかし、現在、研究は第二世代に入っており、そこでは、センサー、モニター、アンプリファイアー、スイッチ、太陽光収集、及びドラッグ・デリバリーのような能動的なナノ物質に注力しています。それらの全ては条件が変わるとそれに反応することができる特性を持っています。

 これは、第三世代を投影していますが、今後は非常に小さなディバイスと小さなマシンからなるナノ構造のシステムに目を向けるでしょう。しかし、これはまだ先のことです。そして第四世代の話があります。いわゆる”分子ナノシステム”と言われるもので、ミカエル・クレイトンやエリック・ドレクスラーらが、”グレイ・グー”という新造語で呼んで、その自己複写性(自己増殖性)のために非常に危惧しているものです(訳注:グレイ・グー/ざつがく・どっと・こむ)。

 これが、我々がよく知っていることがらです。我々が知っていることは多くの重要なことがらのうちのわずかな部分です。我々は、ナノ技術にかかわる会社について国が目録としてまとめたものはありません。約18ヶ月前に、ナノスケール製造に関与している、あるはその準備をしている会社はアメリカには約200〜300社あるという見積りがありました。

 ナノ製品の国の目録はありません(訳注1)。しかし製造会社はナノスケール物質を用いた製品をうるさいほどに宣伝しています。それらの範囲は、日焼け止めの中で用いられる強化安定剤及び放射線を検出するために用いられる成分、化粧品の中で用いられるブライトナー、コンピュータ用プリンターに用いられるインクでの使用、反応プロセスで用いられる触媒、そして水処理プラントで用いられるフィルターなど、広範囲に及びます。

訳注1:2006年3月にウィルソンセンターが英文ウェブ上にあるナノ製品約200種の目録を作成した。
   ウィルソン・センターのナノ技術消費者製品目録(WPの記事を当研究会抄訳して紹介)

 あと数分したら、皆さんはこれらのあるもののリスクについて多くのことを他のスピーカーからお聞きになるでしょう。しかしその前に私は少し潜在的な利益について話をしたいと思います。それは、これらには環境的な利益についての話があるからです。まず最初に話さなくてはならないのは廃棄物浄化に関することです。活性の増加及び表面積の増加という特性のためにナノ粒子は環境中の汚染物質と反応させるために用いることができるということが示されています。例えば、ゼロ価鉄(zero-valent iron)が地下水中で塩素化炭化水素 の移動を抑制するために用いられています。そのほかに、多環炭化水素を抑えるために用いられています(訳注2)。

訳注2:ナノ技術:EPAの展望 ファクトシート(当研究会訳)

 二番目にセンサーがあります。生物学及び国家防衛の分野では生物学的及び化学的な物質を検出するためのセンサーの開発が推進されています。これらの多くは環境汚染物質を非常に低濃度で、リアルタイムで、そして遠隔地で測定するために用いることができるでしょう。

 水処理におけるナノスケールのろ過があります。ゼオライトを使用したシステムは、水循環及び海水淡水化におけるもっと多くの水の再利用を可能にします。現在、これらの分野で、著しい研究が行われています。

 産業及び農業における製造/生産があります。高度に反応性が高いナノ流体と選択的触媒は、エネルギーと物質の充足を増し、溶剤の使用を最小にし、廃棄物の生成を削減することにより、グリーン製造を支援します。農務省は現在、肥料と殺生物剤の高精度ナノ・デリバリー・システムに関する研究に資金を出していますが、これにより、農業生産における窒素、リン、及び農薬の使用を削減することが期待できます。

 最後に、エネルギーがあります。輸送車両を軽量化する強度が強化されしかも軽量の合成物に関する現在の研究は、エネルギー消費の著しい削減をもたらすでしょう。

 軽量化車両、ソリッド・ステートの照明、自己最適化モーター、頑丈で軽量な屋根材(smart roofs)、高伝導度送電線−などへのナノ技術の応用は国の年間エネルギー消費量を15%削減するでしょう。これは、お話している環境への利益の一部であり、ナノ技術がもたらすであろうことについて積極的な展望を我々に与えてくれます。

 それでは、さらに真剣なお話をしていただくために、私の仲間にお渡しします。ありがとうございました。

スーザン・マーマガス:我々の次のスピーカーは、ウッドロー・ウィルソン国際学術センターの新規出現ナノ技術プロジェクトの主席科学顧問であるアンドリュー・メイナード博士です。メイナード博士はかつて国立労働安全衛生研究所に勤務し、職場におけるナノ粒子暴露に関する仕事に従事されました。今日はナノ技術の科学とリスクの健康影響についてお話していただきます。


3. 二番目のスピーカー:
 アンドリュー・メイナード博士:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター新規出現ナノ技術プロジェクト主席科学顧問


 私は、ナノ技術と健康リスクについて5分から7分で話すという途方もない任務を持っています。そこで、私のできることはこの主題の表面に触れるだけであり、皆さんにその概要をお伝えするだけです。そして、多分、後での討議でいくつかの点に触れるでしょう。

 それではこの主題に関する脈絡を示すことから始めましょう。そのためには、ナノ技術とは何かについての基本に戻ることが役立つと思います。ケンが、非常に適切なナノ技術の概観を示しました。ひとつの重要な点は、非常に非常に小さなスケールで対象を操作し、非常に小さいスケールでそれを制御することで、我々は新しいこと、すなわち新しい特性を持った物質を生成すること、又は新しく革新的なことをするために原子の構造的な機能を組み立てることができるのです。この脈絡を理解すれば、そこから明白な疑問が出てくるはずです。すなわち、もし我々が新しいことをする物質や製品を持つなら、それらの物質や製品に関連する新しいリスクもあるのではないか?−という疑問です。これは、ナノ技術と健康リスク、又はナノ技術と環境リスクを取り巻く多くの議論を引き起こしている中心的な疑問です。

 このような疑問があることは分りました。しかし、それを洗い流すために、我々は科学に戻り、”この疑問に対しもっと深く本当に追究するために何か科学的なベースはあるのか”と問うことが必要です。そのことが私が本当に足を踏み入れたいことがらです。
 私は歴史的な観点から話を始めたいと思います。ケンはすでに、物質のナノメートル・スケール又はナノメートル粒子については新しいことは何もないと指摘しました。私は、これは非常に重要な点を指摘していると思います。これまで周囲に火があれば、我々はナノメートル・サイズの粒子に大気中で暴露してきました。皆さんがそこに座り、私の話を聞いている間でもです。もしあなたがクリーン・ルームに座っているのでなければ、あなたは呼吸するたびに多くのナノサイズの粒子を吸い込んでいます。あなたの皮膚はナノサイズの粒子に暴露しています。

 そこで次のような疑問を発することが重要です。”我々が日常的に暴露している物質よりも大きなリスクをもたらすかもしれない人工のナノ物質のあるものとの違いは何なのか?”

 この歴史的観点に反することがらもあります。すなわち、我々は我々は毎日非常に小さい粒子に日常的に暴露しているわけですが、我々は人々を病気にし、死をさえもたらすたちの悪い粒子に暴露してきたことも知っています。衛生の専門家は100年以上前から、暴露すると非常に重大な病気を引き起こす大気中の粒子があることを正確に理解していました。そこで、我々は人がある種の小さな粒子又は小さな構造に暴露する時には注意する必要があるということを知っているのです。

 人工ナノ物質について話をします。科学に踏み込み、まず疑問を提起しましょう。”我々を真に考えさせるような何かユニークは点がこれらにはあるのでしょうか?” ここで最初に我々が見なくてはならないことは、これらの物質の構造の重要性です。ほとんどの従来の物質はその化学的特性を見ることによって潜在的な健康影響をを理解することができます。しかし、ナノ構造物質が通常と異なる点は、その特性が、構造、すなわち原子がいかにこれらの物質の中で物理的に配置されているかに依存することです。

 そのことは我々が潜在的な健康影響を理解するために我々のパラダイムを変える必要があることを意味しています。我々は化学(chemistry)と質量−空間(mass-space)のパラダイムから脱却し、次のような疑問を発することから始める必要があります。”これらの物質の構造がどのように潜在的に体内におけるそれらの挙動に影響を与えるのか?”

 過去10年から15年の間になされた研究に目をやれば、多くのことが明らかになってきます。これらのうちの三つにいて簡単に見ることにしましょう。最初は粒子のサイズを見ることです。特に、ナノメートル径の粒子です。体内でどのように振舞うか、そして最終的に体内のどこに行き着くのかを決定するために科学が非常に重要であることを知っています。例えば、肺の中にナノサイズの粒子が見つかったら、大きな物質なら取り除ける方法でも、ナノサイズの物質は取り除けるようには見えません。しかしそれらには、肺から血液中を通じて体内の他の臓器に至り、細胞内に入り込むという、大きな粒子の場合には見られないような能力が実際にあるのです。証拠はあるか?−現時点ではげっ歯類だけですが、それらは非常に非常に小さいので、もし鼻の部分に堆積すれば、実際に嗅覚神経を伝わって脳にまで達します。このこともまた大きな粒子では起こりません。

 二番目の見地は、構造を見ること、すなわち粒子の形状です。我々は歴史的に、アスベストのような物質が一旦体内に入り込んだ場合には、その生物学的反応を決定する上で形状が非常に重要であるということを知っています。例えばカーボンナノチューブのように非常に精緻に作られたナノ物質は、それらに対し体がどのように反応するかという点において、その形状が非常に重要な役割を果たします。

 三番目の見地は、形状の一部ですが、これらの粒子の表面の重要性を見ることです。一般的に溶解しないこれらの人工ナノ構造物質がここにあると仮定しましょう。もしそれらが体内に入り込めば、それらは物理的構造を保持するでしょう。それは体内で起こることの大部分はこれらの粒子の表面で起きているのです。もし肺の中のナノ構造物質を見ているなら、何が起きるかを決定するのはこれらの粒子の表面積と表面の化学的特性であり、その粒子の物質ではないという確かで明確な証拠があります。

 それがどのように重要であるかを強調するために、5ミクロン(訳注5,000ナノメートル)の粒子をあなたの肺に入れることを想像してください。ある反応があるでしょう。さて、その反応が粒子の表面に関連するということなら、その5ミクロンの粒子を5ナノメートル径の粒子に分割すれば、同じ質量でもその表面積は1,000倍になります。そこで、もし表面積に関連した反応があるなら、あなたは1,000の係数によって増大した反応を予想するでしょう。このことが我々が扱う物質の構造的特性をを理解することがなぜ重要であるかの理由です。

 これら三つの見地は、まさにリスクの複雑な問題の一面、すなわち危険の可能性を見たことになるのです。これとは異なる他の側面もあります。我々は暴露について少し理解する必要があります。もしリスクについて見ているなら、明らかに暴露はリスクの程度を理解する上で重要です。これは現在、我々がほとんど情報を持っていない領域です。我々が知っていること−我々が知っていることの二つは、まず第一に人工ナノ物質はやはり非常に貴重なものだということです。人々はそれを意図的に作っており、彼らはそれを失うことを望みません。そのことは彼らは暴露が起こることを望まないということを意味します。

 我々が知っている第二のことは、これらの物質の多くはくっつきやすいということです。例えばカーボン・ナノチューブの実験結果えそれを見ることができます。人々がそれらに暴露しようとする形でそれらを放出することは非常に、非常に難しいことです。しかし、これらの二つの見地を他の二つの見地でバランスをとる必要があります。ひとつは非常に低い質量濃度で起こるかもしれない従来の暴露です。特性へのこの構造的依存性のために、我々は明らかに著しい健康への危険性を低い質量濃度で持つかも知れず、又はそれは高い表面積暴露かも知れないのです。

 他の見地は、非意図的な放出について、そしてそれらの人への影響について知っているということです。これらの物質に暴露しないことが完全なシステムかもしれません。しかし、どこかで、ある時点で、だれかが暴露するでしょう。

 現時点で我々が持っている最新の知識で概観するときに、私は多くの”赤い旗(訳注:警戒標識)”と呼ぶものがあると言うことができます。我々は、”姿勢を正して、もう少し注意深くなる必要があリます。これらの人工ナノ物質が人の健康に及ぼす影響についてもう少し用心深く”−と言うのに十分な証拠を持っています。しかし、定量的なリスク評価を実施するのに十分な情報を持っていません。

 実際、我々は現在、不確実な領域にいます。我々は答えを必要とする重要な疑問があることを知っていますが、その答えがどこにあるのか分りません。明らかに、我々がなすことができるのは、もしこの技術が成功しようとしているなら、そして我々は最新の技術を持とうとしているなら、リスクがあるときには不確かな領域から確かな領域に移ることです。そうするために我々がしなくてはならないことは、これらの物質がどのように我々の健康に潜在的な影響を及ぼすかに関する重要な疑問に対しもっともっと多くの研究をすることです。

 私の話はこの辺で終わらせようと思います。しかし、私は最後に一言申し上げます。ケンがはじめにナノ技術及び人工ナノ物質の様々な世代について見事に指摘しましたが、現在、我々が持っているリスクに関する科学的情報の全ては、実際、人工ナノ物質の第一世代、非常に単純なナノ物質に基づくものです。ここでの大きな課題のひとつは第二、第三、第四の世代の物質の潜在的な影響を理解しようと努めることです。これは進化している領域から我々が抜け出すこと−我々の理解する言葉で言えば、これらの物質のあるものと体の装置との相互作用の理解において基本的な跳躍をしなくてはならない領域です。

 私の話はここで終わります。私はひとつ二つの興味ある疑問について提起できたなら幸いです。それではまた後で。ありがとうございました。

スーザン・マーマガス:ありがとうございました。メイナード博士。それでは次のスピーカーに移りましょう。カレン・フロニーニはエンバロンメンタル・ディフェンスの上級弁護士です。彼女には、連邦政府と議会及び法規制についてお話していただきます。彼女の専門領域は、ナノ技術、有害化学物質、そして抗生物質耐性です。彼女はナノ技術に関連する規制及び政策の問題をお話するでしょう。それではカレン。


4. 三番目のスピーカー:
 カレン・フロリーニ:エンバロンメンタル・ディフェンス上級弁護士


 私が主にお話しようと思っていることは、多世代のナノ製品ではなく、既存の比較的最近の人工ナノ物質に関わる法律の領域です。将来の多世代のナノ製品は重要ではないという意味ではありません。しかしそれらの多くは推測の領域にあります。まだ市場に出ていませんし、当分出て来そうにもありません。従って我々の注目するところは、すでに市場にある又はもう直ぐ市場に出てきそうなものについてです。

 私はまた、誰もが過去の間違いを繰り返したくないと思っていること−DDTやスーパファンド(訳注:アメリカの危険廃棄物放置場所で浄化の優先度の高い所)や遺伝子組み換え生物への投資−について注意を喚起したいと思います。それは消費者だけでなく、産業や政府に対してもです。我々は、ナノについての潜在的な懸念を検証するときに、先を見越し、リスクの全ライフサイクルについて考えなくてはなりません。

 どのような法的基盤が現在、あるのでしょうか? ほとんどありません。理論的には適用できるかもしれないものもありますが、現実に適用されているものはありません。適用できるものは非常に非常にわずかです。適用できるいくつかの法的権限があるかも知れませんが、そうするためには適用規則を作成する必要があり、そのためには多くの時間が必要です。現在、この点ではほとんど何も行われていません。実際、私はナノに特化した規制案が開発されているということ一切知りません。

 しかし、労働安全衛生法(OSHA)、食品医薬品化粧品法、有害物質規正法(TSCA)など既存の法のある部分は適用できるかもしれません。今日の話の大部分はそのことです。労働安全衛生法(OSHA)の一般注意義務条項の有害ダスト基準と呼吸保護基準の全ては理論的には現在、適用できます。しかし、もし適用しようとすると、それらの全てには重大な限界があり、それらはQ&Aで知ることができます。

 さらに、疾病予防管理センター(CDC)/国立労働安全衛生研究所(NIOSH)はある種の指針を作成しましたが、完全なものではありません。それは、”安全なナノ技術へのアプローチ:NIOSHとの情報交換”というものです。それがその文書の名前です。それはパブリックコメント用に開かれています。それは合理的で知的な所見を備えています。しかし、そこに述べられていることには明らかに強制力はありません。

 二番目の法について簡単に触れます。食品医薬品化粧品法はFDAが医薬品と医療機器について製造前にレビューすることを求めています。それは他の種の物質と同程度にナノ物質についても適用できます。しかし、FDAは製品のスポンサーによって"請求"があった場合にのみ規制すると述べています。したがって、もし製造者がナノ技術製品の製造や性能に関する請求を認めなければ、FDAはその製品がナノテク製品であることやナノ物質を含んでいるということすら知ることはないでしょう。

 非常に重要な他のことは、化粧品には製造前レビュー要求がないことです。ある化粧品や日焼け止めにはすでにナノ粒子を含んでいるものがあるのですから、これは懸念すべきことです。FDAは、少なくとも日焼け止めに使用されている酸化チタンのナノ粒子のある種の事前評価をするよう求められ、それを実施しましたが、それは、人々が特にそれを要求したからです。それは一般的でも強制力があるものでもありません。FDA 自身が次のように述べています。”FDAはある潜在的にリスクの高い製品、例えば化粧品に対する権限は限定されている。”そのほかの留意すべき重要なことは、FDAは、化粧品に関し、ライフサイクルではなく消費者に対する直接的な健康影響しか見ないかもしれないことです。化粧品の生産段階、又は使用後、化粧品は排水とともに洗い流されるということです。

 私はまた、有害物質規正法(TSCA)についても簡単にお話したいと思います。TSCAは一般的に、農薬及びFDAが食品医薬品化粧品法で規制するものを除き、本質的に全ての化学物質を規制します。”新規化学物質”とみなされる化学物質については、いわゆる”製造前届出”を提出することが求められています。これには二つの問題があります。ひとつは、どのナノ物質が新規であるか全く不明確であることです。すでに市場に出ている又は出ようとしているナノ物質のあるもの、あるいは多くは、すでに世の中にあるものよりもはるかに小さい結晶又は粒子です。例えば、私は今、酸化チタンのナノの話をしました。それはFDA対象品です。しかし、もしそれが日焼け止め以外の用途があれば、それはTSCAの管理下になるでしょう。

 EPAは、すでに市場に出ているナノサイズの結晶が”新規”物質であるかどうかについての指針をいまだに出していません。さらに、もう少し厄介なことに、ある人々は同じ化学成分を持つものは”新規”ではないと主張しています。私は個人的にはこれはばかげた議論だと思います。それはダイアモンドと黒鉛が同じものだと言うようなものです。明らかに同じではありません。

 その他の製造前届出(PMNs)の限界は、毒性データを含んでいなくてはならないという要求がないことです。もし、製造者が毒性データがあることを知ったなら、それを公開しなくてはなりません。しかし、それは実際には、犬の遠吠えです。”この物質の毒性について何かあるなら探しなさい。”

 さらに、TSCAの下では、EPAは使用と暴露に関連するある種の情報の開示、及び既存の毒性研究の開示を求める規制を出す権限を持っています。しかし、再び、これらはすでに市場にある製品か又は新規の製品です。しかし、EPA諮問委員会は、EPAがその種の情報をもたらすであろう自主的なプログラムやcompanion-regulatoryを始めることを勧告しています。しかし、このプログラムはまだ、立ち上がっておらず、どうなるのか全くはっきりしません。

 TACAについて私が申し上げる最後のことは、実際にリスクを扱うということに関しては、非常に弱いということです。かつてTSCAの下でリスクを管理するために市場に一旦出された化学物質に対し、実際に発行された規制は半ダース以下であるという事実が示す通り、何かしようとするEPAの能力は限られているのです。他の条項のいくつかによりもっと広範な使用がありました。しかし、すでに市場に出た後の物質のリスクに目を向ける主要な条項は非常に弱い条項です。

 当面、規制による管理は期待できません。自主的なアプローチに関しては現在進められているいくつかの活動があります。先ほど申し上げたとおり、EPAの報告に関する取組が諮問委員会によって勧告されました。また、ナノテク委員会を持つASTMのような国際的基準策定機関が自主ベースの管理基準及び実施基準を検討中です。その進捗はまだ非常に初期の段階で直ぐに結論が出てくるようには見えません。そしてそれらが出てきてもどのような内容なのか非常に不透明です。エンバイロンメンタル・ディフェンスは主要化学会社であるデュポンとともに、我々と彼らが共同してナノ技術の安全な管理を提供する枠組みを開発することができるかどうか検討しています。しかし、それも非常に初期の段階です。それも、いつ?、本当に?どのような?ものになるのか分りません。

 アンドリューが言ったように、明らかに必要なことのひとつは、ナノ技術の健康と安全と環境に及ぼす影響は何なのか関するもっと多くの研究と、もっと多くの連邦政府の資金です。国家ナノ技術イニシアティブの年間10億ドル(約1,100億円)の予算のわずか4%しか環境健康と安全への影響の研究に回っていません。14の団体が最近、米国上院歳出委員会に手紙を送り、予算を大幅に増やすよう要求しました。その手紙は追加の署名がまだできるようになっており、CHE resources page for toda' s call に手紙のコピーがあります。

スーザン・マーマガス:本日の最後のスピーカーはデーブ・リジェスキーです。デービッド・リジェスキーはウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクターであり、環境品質に関するホワイトハウス協議会の元EPA代表であり、元ホワイトハウス科学技術室スタッフです。デーブ・リジェスキーは行政学及び環境計画の学士です。彼はナノ技術に関する公衆の認識についてお話をしてくださいます。


5. 四番目のスピーカー: 2006年6月18日追加
 デービッド・リジェスキー:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター ディレクター

 我々が公衆の最新のことについて話をするのはいつも興味深いことです。しかし、私はこれは将来のナノ技術に関する実に大きなワイルドカード(訳注:ジョーカーのような万能カード)のひとつであると考えています。私は我々が6月(訳注:2005年)に行ったいくつかの研究を概観し要約してみようと思います。この調査は全国の12グループで行われました。これらは経験問題グループと呼ばれているグループです。我々は約180人をサンプルとして調査しました。これらのグループの人々は、人口統計学上は2000年の国勢調査を正確に反映しています。

 これらのグループの人々は、フォーカス・グループ(訳注:政治問題などに対する一般の反応を予測するために司会者のもとに集団で討議してもらう小人数からなるグループ)とは異なり、ナノテクについての情報を事前に与えられていました。彼らはナノが何なのか、現在及び将来の応用はどのようなものなのかについて告げられました。また、規制と将来の展望の観点から政府や様々な機関の責任はどうなっているのかに関する多くの背景説明資料が彼らに与えられました。

 全体的な結果のいくつかをお話します。まず第一に、80〜90%の人々は今までにナノ技術について聞いたことがないと考えることができます。そこで彼らはどこで知識を得ようとしているのか? 誰から、どのようなメッセージで? このことは長期的な公衆の容認にとっておそらく非常に重要なことです。

 すでにこれらのグループの人々には、ある程度の情報を提供したので、彼らは次のように言っています。彼らの多くは大きな便益を期待している。彼らの多くは長期的にはその便益はナノ技術のリスクを越えるかあるいは同等となると信じている。彼らが最も興味を引かれる領域は医療分野への適用であり、ついで消費者製品への適用である。それからエネルギー生成、環境保護、食品、そして栄養の各分野への適用である。

 これらの人々の全ては、そしてその後イギリス及びヨーロッパで調査された人々の多くは、公衆の関与が事実上ほとんどない、あるいは全くないままに、これらの製品が市場に存在し、実質的には納税者の金で数十億ドル(数千億円)の出費が行われていることについて懸念を持っていました。そこで、我々が調査した真の公衆であるこれらの人々は、意志決定に何らかの形で関与したいと望んでいました。

 我々は、彼らがナノ技術に関し何を懸念しているのかについて詳しく聞き、そらからは多くのことがらが提起されました。彼らは実際に大きな未知のことがらが存在することに懸念していました。これらは、ナノ技術者や毒物学者を含んで、誰も予測することのできなかった結果でした。彼らは規制システムの効果について懸念していました。彼らはまた、短期的な及び長期的なヒトの健康リスクについて懸念していました。

 私はそれらはレベルの低い懸念(they were lower-level concerns)であると言うことができますが、しかしそれらは彼らが懸念したしたバイオテクのように興味あることがらです。”我々は、このような小さなサイズで物質を実際に操作する能力を手に入れて神をもてあそんでいるのか? 彼らは軍事使用と濫用の可能性について懸念しています。そして彼らはこれが食物連鎖中に入り込んだ時にはどのようになるのか懸念しています。彼らの認識の多くは彼らの今までの経験から引き出されています。そこには、原子力技術から多くのバイオ技術にいたるまで、過去の技術からの多くの類推があります。

 我々が見つけた興味あることは、それらの懸念にも関わらず、ナノ技術研究又は製品に関する禁止については実質的に支持がなかったということです。彼らの約3/4が禁止は過剰反応であると信じています。しかし、効果的な規制に対する、非常に高い要求があります。我々は、カレンが述べたとおり、いかに人々が自主的規制について感じたかについて実際にこの考えをテストしました。

 約55%が自主的基準を越えた政府の管理が必要であると実際信じていました。約1/3はよくわからないとし、わずか10%だけが自主的基準の考えをを支持し、又はそれらが適切であるとしました。そのことは政府に対する一般的な信頼が低いということです。この調査及び約一年前に実施した調査では、ナノ技術についてのリスク管理に関する政府への信頼は、調査対象の人々の90〜95%にとって低いか事実上ないに等し状態でした。産業界への不信はそれをわずかに上回っていました。

 産業は適切な安全テストを行わずに製品を市場に出している、すなわち、人の健康に影響を与える多くの誤りを犯しており、また、一般的に消費者の安全に対する懸念よりも自分たち自身の意図を優先させているという広い認識を彼らの多くは持っていました。信頼のレベルを改善するためにどうしたらよいかを彼らに訊ねましたが、これはおそらく最も興味ある結果ではないかと思われますが、彼らが望んだことはほとんど二つのことがらに集中しました。

 第一のことがらは、彼らは製品が市場に出される前にもっと多くのテストを行うことを望みました。そして彼らはアメリカにおける情報を欲していました。それは一般的情報でよいのです。”政府と産業はナノテクについて何をしているのか知らせてほしい。”イギリスでも同様な調査が行われており、彼らの多くは表示(labeling)についても懸念を持っていました。私が興味あることと思うもうひとつのことは、我々が彼らにナノ技術についてどこから情報を得るかを訊ねたことです。約20〜25%の人々は、それは公共のテレビかラジオであると答えました。他の20%は他の人々からの口伝えであることを示しました。

 我々はまた、ナノテクがメディアでどのように報道されているかを見る作業を引き続いて行いました。そのことに1〜2分、触れたいと思います。基本的に、それは大きなニュースです。すなわちメディアでは何も報道されていないということです。実際、メディア報道はほとんどないのです。我々はアメリカとイギリスの調査、及びアメリカとカナダの調査を見ました。そしてそこで分ったことは、ニュースがどの様に企画されるかという点において、実際多くの報道はないのです。確かにカナダとアメリカではこの技術がどのようなものであるかを報じる傾向が出てきました。しかしそれは市場ニュースとしてのビジネスの話です。

 おそらく出てくる話の20〜30%は、ある種のリスク−便益の議論を含んでいます。一般的にナノテクの周辺で環境健康安全問題が報道される時には比較的公平に報道されるということが示されています。非常にしばしば、見出しはセンセーショナルですが報道記自体は我々が知っていること知らないことについて、そしてリスクと便益はどのようなものであるかについて、バランスが取れた見解となっています。

 私は、話をこの辺で止めようと思います。私は、公衆が関与するようになれば、明らかに多くの機会があり、そしておそらく大きな課題が出てくると思いますが、政府と産業界はまだこの関与のプロセスに着手すらしていません。


訳注(参考)
ウィルソン・センター ニュース 2006年5月4日/デービッド・リジェスキー 上院ナノテク商業化委員会で証言−商業化の成功は適切な予見、リスク研究戦略、及び公衆の参加にかかる(当研究会)


6. 討議と Q & A
Q. アディティ・バイディア (シリコンバレー有害物質連合(SVTC)):
 私は最初にスピーカーの全ての方々に感謝の意を表したい。私はナノ技術の潜在的な影響の異なる見地の概観を得たことはすばらしいことであったと思う。

 私がコメントしたいと思うことは、シリコンバレー有害物質連合(SVTC)では、我々は様々な道筋にあるナノ技術を見ているということであり、ナノ技術を単一の目盛りを持った技術とは考えておらず、それは産業革命とよく似たまさにプラットフォームであると考えているということである。ナノテクは、市場内の様々な産業及び異なる分野に影響を与えるので、新たな産業革命であると考えることができる。

 共同体への影響という点では、皆さんのコメントをいただきたい二つの事例がある。第一は、ナノ物質を農業ビジネスで使用することによる農業労働者への影響である。このことについて我々はまだ実際には農民と話し合っておらず、私は誰かすでにその影響、既知の影響又は影響の展望に関して農業労働者又は農民と話し合った人がいるのだろうかと思う・・・[聞き取れず]。

 第二は、国防省は実際、ナノ研究の最大の資金提供者のひとつであるということである。彼らがナノ技術の使用によって推進しようと思っていることのひとつは環境の矯正である。そこで、我々が最初に着手したことのひとつは軍の有害基地の周囲で組織され、環境の矯正に対する代替の解決を考えているが、ナノテクについてはほとんど知らない住民たちと話をすることであった。我々実施していることは彼らを教育することである。しかし、もし広範な科学的情報があるなら、我々は有望な科学である輪の中に彼らを繋ぎとめておくことができることを望む。

 もし明確な科学がないなら、地元の人々は最も影響を受ける共同体と労働者にどのようにして手を差し伸べ教育に着手することができるのか不思議に思う。

A. アンドリュー・メイナード:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター
 私は、手を差し伸べること及び教育について、非常に簡単に申し上げることができる。私はこれは現在、我々が直面している大きな課題のひとつ−異なる共同体で人々に適切な質問をさせることであると考える。私は、もし適切な人々が問うべき質問を知れば、我々は大きな進歩を遂げることができると考える。
 それに関して言えば、私は労働安全衛生分野について見てみたいと思う。現時点では、人工ナノ物質について疑いを持つ、あるいは特定の質問を提起する必要があると知っている人は、ほんの少ししかいない。少なくとも、まず質問を発することが第一歩である。”もしここに人工ナノ粒子があれば、その違いは何か?それはリスクをどのように変えるのか?” 我々は人々の健康を守るために非常に大きな前進を得るであろう。これに関し、私は、人々が実際にこれらの問題を日々処理している場に、非常に非常に基本的な支援と教育のための大きな必要性があると思う。

A. デービッド・リジェスキー:ウッドロー・ウィルソン国際学術センター
 農場労働者についての最初の質問あるいは指摘は興味ある事柄であると私は思う。それは広い問題を提起していると思う。いつ特定の共同体が影響を受けるのか、そしてどのように−ということについてある程度知ろうと試みること。私はこれらのことが非常に変化していると思う。

 我々は3月の末に多くのナノテク・ベースの研究成果と農業と食品に関する目録を発表する。人々が見ることができることの一つは、これらの製品も1年から5年もたてば陳腐化するということである。これはまた、誰が影響を受けるかということも知らせてくれる。

 訳注:ウィルソン・センターのナノ技術消費者製品目録(当研究会紹介)

 そこで我々は、特定の分野で、食品容器包装から農薬デリバリーまで、何が明白であるかを特に注目しつつ分析を行った。また共同体に対しする影響をどのようなものかを知ることもできる。それが収穫後かどうかで食品容器包装業者は影響を受ける。収穫前ならそれなりの影響を受ける。

 このことに対処するためのひとつの方法は、少しばかり上流側に目をやり、研究者らが何をしているのかを見て、体系的にそれを分析することである。しかし、農業分野や食品加工分野の場合には、私はこのデータベースは、誰が影響を受けるのか、そして、そのタイムフレームについてある考えを人々に与えるであろうと考える。

Q. ジェニファー・サス博士:国家資源防衛協議会(NRDC)
 スピーカーの皆さん、どうもありがとう。すばらしいプレゼンテーションでした。ひとつ質問がある。誰が実施されるべきテスト方法などについて規定するのが最もよいと思うか? 私は、これは”資金がどこから出るか”ということの一部であろうと想像する。それは政府か? それとも一部政府、一部産業か?

 テスト実施のために政府が規定すべきであると考えるなら、それは米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)か? 国家毒性計画(NTP)か? あるいはどこか独立機関か? どのようなイメージを持っているのか?

A. アンドリュー・メイナード:
 考えるべきこととして複数のレベルがあると思う。長期的な必要性とともに、短期的必要性も考慮しなくてはならない。特定の製品に関する理解とともに、一般的レベルの理解も展開する必要がある。これらのそれぞれのために非常に異なるグループと資金調達メカニズムが存在すると思う。
 もし、もっと当面の情報の必要性について言えば、例えば、”現在開発されている物質、現在市場に出ている製品に関連するリスクは何か?” 私は、特定の物質の毒性、特定の物質への暴露、そしてこれらの暴露を監視し管理することについて、答えなければならない非常に、非常に特定なある疑問がある。

 それらはそのように特定な疑問なので、私はまず最初に、このように非常に非常に特定の研究に答えることに慣れている政府の研究機関に目が向けられるべきであると考える。直ぐに米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)や米環境保護庁(EPA)のような機関が思い浮かぶが、彼らは適度に環境についての専門性を持っているだけでなく、応用研究を一緒にやる異なる分野の人材を抱えている。彼らはまた、幅広い脈絡の中で産業側と付き合うことにも慣れている。

 私はまた、政府は、人々がこれらの物質と製品が安全であると確認するために用いる一般レベルの情報を提供するのに非常によい立場にあると言うことができる。また産業側には非常に非常に特定な情報を開発する責任があることは明らかである。最近、議論された区分のひとつは、政府は非常に広範な情報を開発し、その後で産業が製品に特定される情報、それはそれらの製品と物質がが安全であることを確実にする−を開発するということである。

ケン・ガイザー:持続可能な製造のためのローウェルセンター
 ある一般情報を得る事は重要なことがらである。我々はその情報を直ぐに必要としており、そのために政府機関に資金が調達されるべきである。それから産業は製品に特化したことがらに目を向ける。私はアンドリューがうまく表現したと思う。

Q. アンディー・エドガー:
 私はミネソタ州セント・ポールに住んでいる。私はクリーン・ウォーター・アクションで活動している。私は、ナノ技術のようなものを作り出すためにどのくらい多くの水が使われているのか、あるいはナノ技術の創造において汚染があるのかということについて認識しているのか、彼らは調査したり関心を持っているのかについて疑問を持っている。

A. カレン・フロリーニ:
 アンドリュー。私はエンバイロンメンタル・ディフェンスのカレン・フロリーニです。私はそれは非常に重要なことだと思う。我々は、多分、”ナノ技術s(複数)”という言葉を使うべきである。それは様々なナノの用途があり、非常に様々な変化があるからである。その理由のために、あなたが提起した疑問に対し、ひとつの断面の答えを出すことはおそらく難しい。ウィルソンセンターが実施した”ナノ技術のグリーン化”に関する興味あるセッションがあった。一週間前? デーブ?

デービッド・リジェスキー:
 2週間前です。

カレン・フロリーニ:
 2週間前。私にとって、そこから得た最も力強いメッセージのひとつは、いかに様々なことがあるか、そして、それがいかに多大に特定の製品に依存しているかということである。言い換えれば、それはひとつの産業であり、何を見ているのか明確にわかる半導体のようなものではないということである。それは地図のようなものであり、潜在的にそれ以上のものである。

 私に懸念を感じさせるあるナノ製造がある。例えば、現在ナノチューブを製造しているやり方である。それは非常にエネルギーを消費するプロセスであり、特にそれがクリーンなプロセスというわけではない。しかし、私が申したとおり、我々が”ナノ技術”と言う時に我々が意味することは、非常に多くのバリエーションがあるということである。

アンドリュー・メイナード:
 私は、興味あると思うことのひとつは、ナノ技術の夢のひとつはアイテムごとに物を築き上げることが可能であることである。したがって、原則として、材料の無駄がない。廃棄物が出ない。もしその夢が現実のものとなれば、使用されるエネルギーの量と生成する汚染の量の両方を真に減らすプロセスとなるであろう。

 しかし、我々は気をつける必要がある。というのはこれらの産業の多くは、非常に複雑な問題を抱えている。”ナノ技術は汚染が少なく廃棄物を少なくする”と単純化した見解を述べるのは非常に簡単であるが、現実には、ある場合にはそうではないことを我々は見つけるかもしれない。

Q. ジャック・レイス博士:コンステラ・ヘルス・サービス
 私は、ノースカロライナの疫学者である。私の質問したいことは、もし暴露を測定しようとしているなら、環境中の、あるいは体内のこれらの微粒子をどのように測定するのかということである。それは測定することができるのか? それはどのように?

アンドリュー・メイナード:
 私がお答えしょう。答えは、”イエス。それらはある程度までは測定できる”である。我々は非常に多くの技術を持っており、それらは非常に非常に小さな物質を測定することができる。空気中と水中ではそれほど難しくない。土壌中の物質は少し複雑になる。

 例えば、二三の例を挙げると、電子顕微鏡とatomic-fossil顕微鏡は非常に非常に小さな粒子を測定することができる非常によい手段である。また表面積のような物質の構造要素を測定する技術もある。

 大きな問題は、これらの技術のほとんどはラボでの使用に限定されることである。金がかからずに屋外に持ち出して使用できる技術は非常に少なく、放出した粒子の暴露を監視する技術すら非常に少ない。したがって、この領域は確かに、この技術をもっと単純化しもっと適用しやすく強力なものにするために、もっと研究が必要である。

ジャック・レイス:
 体内の測定はどうか?

アンドリュー・メイナード:
 体内の測定は少し複雑になる。しかし、化学的ベースで非常に非常に小さな物質を実際に検出することができる技術はある。しかし、もし体内の特定の場所で個々のナノ粒子やナノ粒子の束をナノ粒子の状態で検出することを望むなら、それはまだ誰も解決できていない課題である。

カレン・フロリーニ:
 アンドリュー。私はある研究がなされていると思った。彼らは無線標識のついたナノチューブでうまくやった。それで追跡調査はできないのか?

アンドリュー・メイナード:
 彼らはそれをやった。それはマウスでの実験である。彼らはナノチューブの排泄を見た。確かにこれらの物質のトレサー(標識)を見つけることができるが、しかしトレーサーを見つけることは実際に難しい科学であり、それができるのは限られたラボだけである。

カレン・フロリーニ:
 また、私が理解しているところでは、懸念が少しある。我々はそのような小さなスケールで活性な物質について話をしているが、トレーサーを調べる時にはその特質が変わってしまっているかもしれないということである。

アンドリュー・メイナード:
 トレーサーを否定することができない非常に確実な方法がある。ひとつの原子を取り出し、そこに放射性原子を置く方法である。しかし他にも、粒子の表面にトレーサーをつけるやり方もあり、そこではそれらの粒子の特性を変えてもよい。したがって、まだまだ非常に未完成な科学であり、人々は現在の失敗から新しいことを学んでいる。

ジャック・レイス:
 それではヒトの体内汚染の研究に役立たない。

アンドリュー・メイナード:
 その通りである。もしある物質に暴露した生の集団を特に疫学的に見ているなら、これらのトレーサーはそのようには使えない。現時点では明快な解決はない。人々が話していることのひとつは適切なバイオマーカーを開発することである。しかし現時点では、それは入手可能かもしれない又は使えるかもしれないという憶測に過ぎない。

Q. テリー・コリンズ博士:カーネギーメロン大学/グリーン・オキシデーション・ケミストリー研究所
 私は、特にアンドリューお聞きしたいが、その他のパネリストでも構わない。有害物質がナノ粒子に随伴されないようにするためにどのよう努力が払われているのか? 私は、硫化カドミウム、カドミウム・ソレノイド、硫化鉛に関する文献をたくさん見ている・・・[聞き取れず]。もしこれらの物質をナノ粒子を作るために、特に分配技術で使用しているなら、問題を起こさずにいることは非常に難しい。

A. アンドリュー・メイナード:
 それは実際非常に興味ある質問である。私は、これらの物質のあるものがいかに危険であるかということについて知っているということを忘れてナノ粒子側に取り込まれてしまう危険に時には陥る。私はあなたが提起した脈絡において答えようと思う。カドミウムのような使用することができない物質を適用しようとしていることは明らかであるが、ヒトや環境へ暴露させるつもりはない。そこで、私が言うところの比較的安全な適用を行うことができる。しかし、そのように使用するのは不適切であるような他の事例もある。

 また、私はこのように付け加えたい。可能な限り環境中で人々に幾分かは接触するナノ技術をいかに作ることができるかについて非常に多くの焦点があてられていた。たとえこれらのもっと危険な物質のいくつかを用いても、それらを幾分でも緩和すること、又はこれらの物質の機能は保持する代替を見つけること。

ケン・ガイザー:
 私が知っている大学で進められているラボでの物質の経験から、私も付け加えたい。私は過去6ヶ月間だけでもいわゆる”グリーン”ナノ技術の対話のやり方をたくさん見てきた。ウッドロー・ウィルソン・センターもそのひとつであるが、他にも約4か所、このテーマを取り上げているところがある。それはそのような疑問を提起するこの主題と相互作用する種類の”グリーン・ケミストリー”に導く。この件についてはテリーに任せようと思う。それはすばらしい使命である。

スーザン・マーマガス:
 この辺で、私は4人の発表者にすばらしいプレゼンテーションを、そして討議と Q & A でのすばらしい回答を感謝したいと思う。みなさんどうもありがとう。これは、コラボラティブ・コミュニティの中で明らかに広範な関心がある領域であり、我々は今後もナノ技術と健康な職業に関してもっと多くの会議を持ちたいと思う。もう一度全ての発表者と今日この会議に参加していただいた全ての人々に感謝申し上げる。

エレニ・ソト:
 私からも全てのスピーカーとコメントと質問に感謝します。二つのことを簡単にお伝えします。我々はオーディオMP3ファイルとこの電話会議の議事録を来週またはその次の週にウェブにアップする予定です。また、次のパートナーシップ・コールは3月22日午前9時太平洋時間、正午東部時間に開始します。我々は、内分泌かく乱物質−現状と環境健康の影響について我々が知ったこと−について討議する予定です。そして我々は発表者として『奪われし未来』の著者らをお招きする予定です。それではまた来月、お話しするのを楽しみにしています。さようなら。

[終わり]



化学物質問題市民研究会
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