ナノ技術:EPAの展望 ファクトシート
EPA 2005年7月21日版

情報源:Nanotechnology: An EPA Perspective Factsheet
Last updated on Thursday, July 21st, 2005
http://es.epa.gov/ncer/nano/factsheet/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年4月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_nanotech_factsheet_2005.html


 ナノ技術はアメリカ政府の最も優先順位の高い研究のひとつである。EPA は、この新規出現分野の調整と方向付けをする政府全体にわたる国家ナノ技術イニシアティブ(NNI)の一部を担っている。ナノ技術には多くの定義があるが、NNI は下記の全てを満たす場合にのみ、それを”ナノ技術”と呼んでいる。Nanotechnology Initiative (NNI)
  1. 長さが約1〜100ナノメートルで、原子、分子、又は高分子レベルでの研究及び技術
  2. その小さい及び/又は中間のサイズのために新しい特性及び機能を持つ構造、装置、及びシステムを創造し使用すること
  3. 原子のスケールで制御又は操作する能力
ナノ技術は環境とどのように関連するか?

 量子力学の法則は、ナノスケールで物質の機械的、光学的、化学的、及び電子的特性に劇的な変化を引き起こす。これらの特性は、改善されたモニタリングのためのセンサーと検出機能、コスト効果がある特定現場の浄化のための処理及び改善技術、廃棄物を生成しないグリーン製造、及び商業的に入手可能なクリーン・エネルギー源の生成のためのグリーン・エネルギー技術を含む、環境保護におけるナノ技術の有用で強化された適用をもたらす。

 人工ナノ物質はまた、その構造、反応性、及び、ユニークなサイズのために、人の健康とその他の生物にリスクを及ぼすかもしれない。したがって、ナノ物質の環境との潜在的な相互作用及び関連するリスクを考慮することも同じように重要である。このことは大気及び土壌中の天然のナノ粒子、人工ナノ粒子のライフサイクル、及び、その移動と運命(行き着く先)の影響を研究することを含む。リスク評価もまた、天然及び人工のナノ物質の人及びその他の生物への暴露経路と生体蓄積の可能性はもちろん、毒性に関する研究も含む。

EPA はナノ技術について何をしているのか?

 EPA は、自身の研究プログラムを通じて、及び、国家科学技術協議会 科学技術政策ホワイト・ハウス・オフィス 政府機関間ナノスケール科学エンジニアリング技術小委員会を通じて、ナノ技術の環境への適用及び影響に関する研究の方向性を企画する指導的な役割を果たしている。

 EPA の研究開発室(ORD)によるナノ技術の取組は下記を含む:

Science to Achieve Results program による研究開発室(ORD)の環境研究全国センター
 EPA は下記を含む環境保護のためのナノ技術の適用に1,100万ドル(約12億円)以上の助成金を32の研究に授与した。
 ・地表水から有害汚染物質を除去するための低コストで、迅速で、簡単な手法の開発
 ・汚染物質測定のためにもっと検出感度がよい新しいセンサー
 ・ナノ物質のグリーン製造
 ・もっと効果的で選択的な触媒
 少なくとも、ひとつのプロジェクトが商業的適用−ゼロ価鉄(zero-valent iron)ナノ粒子を汚染地下水中の塩素有機物を削減するために利用−に向けて急速に動いている。
National Center For Environmental Research

最近選ばれた12の研究プロジェクトは、人工ナノ物質の可能性ある有害影響、すなわち、毒性、運命、移動と変換、暴露と生体蓄積に関する研究に焦点を合わせている。2005年度の新規研究の募集は、人工ナノ物質の健康と環境影響を研究するために、他の二つの連邦政府機関と共同で発表された。

中小企業技術革新制度の取り組み(SBIR)を通じて、EPA は、ナノ物質とクリーン技術の開発と商業化のために、20社以上の中小企業と契約を結んだ。最近、SBIRの一社が、揮発性有機化合物及び、エンジン排気ガス、発電機、及び屋内空気からの3μm以下の粒子をもっと効率よく除去する表面積の大きな活性炭素フィルターを実証した。

訳注(参考):EPA 中小企業技術革新制度の取り組み(NIKKEI-NET)

研究開発室(ORD)の多くの研究プロジェクトは下記を含んで実施中である。
 ・炭化水素の酸化のグリーンな代替としてのナノ構造光触媒
 ・大気汚染と排出を制御するための吸着剤、膜組織、及び触媒としてのナノ物質の利用
 ・人工ナノ物質に関する研究に役立つ超微粒子の影響

研究ワークショップと参加者

 国家ナノ技術イニシアティブ(NNI)によって述べられたた NNI の”グランド・チャレンジ”は、著しい経済的、政治的、及び社会的影響を与える可能性を持つナノ技術の適用に焦点を当てている。EPA の科学者とエンジニアはナノ技術と環境に関する”グランド・チャレンジ”の下に研究方向を決定するためのワークショップを組織した。
 http://es.epa.gov/ncer/publications/nano/nanotechnology4-20-04.pdf
 2003年と2004年に EPA の科学者とエンジニアは、アメリカ化学会(ACC)の年次総会で、大学、政府、及び産業界の仲間らと5日間のシンポジウムを組織した。もうひとつのシンポジウムが2005年に開催される。2003年の会議の論文集は2004年末までに発行される。

 いくつかの連邦政府機関からの研究者らは、2003年に開催されたワークショップにおけるナノ技術適用と環境への影響に関する結果を発表した。論文集は http://es.epa.gov/ncer/publications/nano/index.html で見ることができる。

 二つののEPA STAR 助成金受領者の進捗レビューが研究結果をまとめるために行われた。論文集は http://es.epa.gov/ncer/publications/workshop/nano_proceed.pdf で見ることができる。

 更なるナノ技術研究に関する情報:
 Barbara Karn, karn.barbara@epa.gov, 202-343-9704
 Nora Savage, savage.nora@epa.gov, 202-343-9858



化学物質問題市民研究会
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