FoE オーストラリア2010年3月
新たに判明した酸化亜鉛の皮膚浸透は
医薬品行政局(TGA)に法的空白を埋めるよう求める


情報源:Friends of the Earth Australia
New nano skin penetration findings demand TGA close legal gaps
http://nano.foe.org.au/new-nano-skin-penetration-findings-demand-tga-close-legal-gaps

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年4月20日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_super-rich_people.html


 シドニーにあるマッコーリー大学の地球化学者ブライアン・ガルソンは、アイソトープで標識を付けたナノ日焼け止めからの亜鉛が健康な成人の皮膚を浸透し、テスト対象者の血液と尿に達することを報告した(訳注1)。この研究は、ナノ日焼け止めは皮膚の古い角質の外側にとどまるというオーストラリア医薬品行政局(TGA)の主張を覆すものである。FoE オーストラリアは、国の日焼け止め規制当局に対し、オーストリアのナノ日焼け止めはテストがなされておらず、表示されておらず、効果的に規制されていないという法的な空白を埋めるようとの要求を繰り返す。

 近年、科学者らは紫外線ブロック用の酸化亜鉛とニ酸化チタンはDNAを損傷し皮膚細胞を傷つけるフリー・ラディカルを生成するということを確認している。またブルースコープ・スチール社の研究者らは塗装済み鉄板屋根材に塗布したナノ日焼け止めは、同材に対する太陽による15年分のダメージをわずか6週間で引き起こすというピアレビューされた研究を発表した。ナノ日焼け止めはヒトの皮膚では屋根材とは異なる挙動をすることは明らかであるが、日焼け止め中に強力な光触媒(訳注2)が存在するということには懸念がある。もし、日焼け止め中のそのようなナノ成分が皮膚に浸透すれば、それらが皮膚に対する太陽ダメージを促進し、おそらく皮膚がんの増加をもたらす可能性があるように見える。

 現在まで、オーストラリア医薬品行政局(TGA)は、ナノ物質が健康な成人の肌を浸透するという証拠はないのだから、会社がナノ成分に関する新たな安全テストをしたり、あるいはそれらにラベル表示をする必要はないと主張してきた。この無責任なアプローチに対する我々の以前の批判を読むためにはここをクリックしていただきたい。

 ガルソン教授の研究は予備的なものであり、更なる研究が必要である。この研究では皮膚浸透がイオンによるものか粒子によるものか、またこの皮膚浸透がどのような健康影響を及ぼすのかわからない。しかしながら、これらの結果は、ナノ日焼け止めからの亜鉛浸透が実際に起こることを示しており、ナノ日焼け止めの規制をしないことを正当化するための医薬品行政局(TGA)の中心的主張とは相反する。

 今は、医薬品行政局(TGA)がオーストラリア人をリスクにさらすことを放置する法的空白を埋め、日焼け止めの中で使用される前に、全てのナノ成分は新たな安全評価と表示の対象となることを確実にすべきときである。

本件に関するメディアの報道:

訳注1
ICONN 2010 / 2010年2月22-26日 海岸でヒトに塗布した日焼け止めからの 酸化亜鉛の皮膚吸収 ブライアン・ガルソン他

訳注2
光触媒:出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
・・・光を照射することにより触媒作用を示す物質の総称である。また、光触媒作用は光化学反応の一種と定義される。・・・代表的な光触媒活性物質として、酸化チタン (TiO2) が知られている。・・・

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