FoE オーストラリア 2010年2月
新たなナノ立法へのコメント提出要請
ナノ物質の規制に対する新たなアプローチを導入するための
改革に関するNICNASへのコメント

情報源:Friends of the Earth Australia, February, 2010
Please make a submission on new nano laws
http://www.foe.org.au/nano-tech/media/news-items/front-page-news-feed-1/
please-make-a-submission-on-new-nano-laws/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年2月11日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_comment_for_new_nano_law.html


 ナノ粒子リスクについての予防的管理を支持するために、どうぞオーストラリアの国家工業化学物質届出評価機構(NICNAS / National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme)にコメントを提出してください。期限は今週の金曜日2月12日です。

 これは、潜在的にリスクのあるナノ物質ついての適切な規制を得る重要な機会です。私達はコメントを提出するようあなたに強く要請します。時間は短いけれども下記の情報を利用することが出来ます。

 またFoE オーストラリアが提出したコメントを読むことが出来ます。
(訳注):このコメントは27頁と大部であるが、ナノ立法を検討する上で、非常に有益である。

 私達は、あなたがコメントを提出する際、参考となるよう、要点を下記に示します。
提出は2009年2月12日午後5時までに Nicola.Hall@health.gov.au に提出する必要があります。
規制当局 NICNAS からの関連文書はここにあります。
 ご協力ありがとうございます。
Georgia Miller
Friends of the Earth
http://nano.foe.org.au

ナノ物質の規制に関する NICNAS への提出の際に検討すべき要点
  • NICNAS は規制のギャップを埋めるために、既存化学物質のナノ形状のもの及び新規化学物質のナノ形状のものの両方を製品中で使用される前に義務的な安全テストを確実に受けさせるようにしなくてはならない。

  • 安全科学が追いつきリスク評価手順が有効になるまで、ナノ物質の商業的利用に関するモラトリアムを求める強い状況がある。欧州食品安全機関(EFSA)を含む主導的な国際的規制当局は、私達が信頼性あるリスク評価を設計するためにはナノ物質の挙動についてまだ十分に分かっていないということを警告している。

  • NICNAS はナノ物質の取り扱いにおいて予防原則の適用を約束すべきである。2008年ダカールにおける第6回政府間化学物質安全性フォーラムで、71 政府、12 国際機関、及 び39 NGOs が、”ナノテククノロジーリスク管理の一般原則のひとつとして予防原則を適用すること”を勧告した(訳注1)。

  • NICNAS は、”地域社会の”知る権利を含んで公衆の利益になるナノ物質管理を優先することを約束すべきである。使用されているナノ物質のタイプと量、及び、特定の製品及び工業化学物質中でのそれらの使用に関する情報は、製品ラベルでの表示を含んで、自由に入手できるようにすべきである。

  • ナノ物質は、”ひとつ叉はそれ以上の外部次元の大きさが約0.3ナノメートル(nm)から300nmである粒子、叉はこのようなスケールの内部構造を持つ粒子”として定義されるべきである。この定義は、300nmまでの多くの粒子が新たなナノ特有の健康と環境リスクを示すので、必要である。

  • NICNASによって提案される100nm以下とする定義は、範囲が狭すぎ、新たなハザードを及ぼす多くのナノ粒子を取り残すことになる。ナノ毒性学者ケン・ドナルドソン教授は英上院におけるナノテクノロジーと食品に関する審査において、ナノ粒子の定義をを100nm以下に限定する”毒性学的根拠はどこにもない”と証言した。

  • ナノ粒子は不溶解性のものであるとして定義されべきではない(訳注2)。不溶解性というのは複雑でありほどんど分かっていない。さらに、部分的にまた完全に水溶性のナノ粒子が有毒であり得ることを示す多くの証拠がある。

  • ナノ粒子は生物残留性のものであるとして定義されるべきではない(訳注2)。生物残留性はほとんと研究されておらずほとんど分かっていない。重要なことは、顕著な生物蓄積性を示さない粒子であっても短期間で有毒かも知れないということである。

  • 一次粒子がナノスケールであるアグリゲート(aggregate)及びアグロメレート(agglomerate)(ナノ粒子の塊)もまた、ナノ粒子として認められ評価されるべきである。

  • ナノテクノロジー(のデータ収集)に関する自主的取組は、オーストラリア、アメリカ、及びイギリスで失敗した。 NICNAS は、ナノ物質の義務的規制を追求すべきである。

  • ナノ物質規制の透明性は本質的にj通用である。リスク評価レポートは完全に公開されるべきである。
  • NICNAS 規制の枠組みの公式な見直しは制定2年後に行われるべきである。
討議用資料

訳注:公開討議資料は、討議用資料はAttachment 3の報告書(モナシュ・レポート)が指摘する6つのトリガー領域に目を向けていると解説しています。
  1. ”新規”叉は”既存”の物質叉は製品
     このことは、ナノ形状の化学物質は、”新規化学物質”(したがって通常の形状の化学物質とは異なる)とみなされるのか、叉は”既存化学物質”(したがって通常の形状の化学物質と同じ)とみなされるのかに関して、不確実性が存在することを認める。モナシュ・レポートは、この問題はそれぞれの規制の枠組みの中で明確にされることを勧告している。

  2. 重量叉は容量
     モナシュ・レポートは、個別の規制の枠組みの中で、ある規制要求は重量叉は容量の閾値に基づくことを認めた。同レポートはそのような閾値は、科学的知識はこれらの閾値がナノ物質にとって適切であるかどうか分かっていないかも知れず、また低生産量のためにこれらの閾値まで届かず、したがって規制要求が発生しないかも知れないので、ナノ物質という脈絡で検証されることを勧告した。

  3. ナノ物質の知識の存在叉は影響の存在を求める
     ナノ物質の存在及び/叉はナノ物質によって引き起こされるリスクを知っていることにより生じる規制は、現在、ヒト健康及び環境に及ぼすナノ物質の影響を囲む不確実性のために、効果的ではないかもしれない。

  4. リスク評価手順叉は従来の技術への依存
     ナノ物質は独自の物理的及び科学的特性を持ち得るので、従来の化学物質のために設計されたリスク評価手順及び/叉は分析技術はナノ物質の正確なリスク評価のためには適切ではないかもしれない。

  5. 研究開発における免除
     モナシュ・レポートは、いくつかの規制の枠組みは研究開発段階における従来の化学物質の評価の免除を含んでいることを認めている。同レポートはまた、重量閾値はこれらの免除に適用されるかもしれず、ナノ物質におけるこれらの閾値を見直す必要性に光をあてている(上記トリガー2参照)。

  6. 国際的な文書への依存
     このトリガーは、申請者が国際的文書叉は規制当局以外の組織により作成された文書に依存することを許す枠組みに関連する。同報告書は、もしこれらの文書がナノ物質によって引き起こされる健康と環境に対応していないなら、これは潜在的なギャップとなり得ることを認めている。

訳注1
第6回政府間化学物質安全性フォーラム IFCS/FORUM-VI報告書エグゼクティブサマリー 2008年9月24日 工業ナノ物質に関するダカール声明

訳注2:EU化粧品に関する規則(EC)でも不溶解性と生物蓄積性をナノ粒子の要件としている。
2009年11月30日欧州議会及び理事会 化粧品に関する規則(EC) No 1223/2009

訳注:関連記事
SafeNano 08/02/2010
http://www.safenano.org/SingleNews.aspx?NewsId=964



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