食品安全センター(CFS)
2015年7月27日 プレスリリース
非営利団体が、誤ったナノ農薬承認であるとして
EPA を訴える


情報源:Center for Food Safety (CFS), Press Release, July 27, 2015
Groups Sue EPA over Faulty Approval of Nanotechnology Pesticide
http://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/3995/
groups-sue-epa-over-faulty-approval-of-nanotechnology-pesticide


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年8月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/CFS/150727_
CFS_Sue_EPA_over_Faulty_Approval_of_Nano-Pesticide.html

【2015年7月27日 ワシントン DC】食品安全センター(CFS)と国際技術評価センター(ICTA)は本日、米環境保護庁(EPA)が殺菌用ナノ銀農薬製品”NSPW-L30SS”(旧名”Nanosilva”)の数知れぬ布製品及びプラスチック中での使用を条件付きで承認した決定(訳注1)に異議を唱えて連邦裁判所に訴えた

 ナノテクノロジーは、原子及び分子レベルで自然を分解し再構築する強力な基盤技術である。工業ナノ粒子を含む消費者製品は、ナノ農薬製品を含んで、既に市場に出回っている。

 ”EPA の、このナノテクノロジー農薬製品の承認は無責任であり、法に反するものである”と、食品安全センター(CFS)の上席弁護士であるジョージ・キンブレルは述べた。”残念ながら EPA は、地域社会と環境を保護する義務を全うすることを怠った。この様な新奇のナノ物質は包括的で厳格な分析が必要であるにもかかわらず、EPAは安全データがないことを知りながらこの製品を市場に出すことを許している”。

 第9巡回区合衆国控訴裁判所に持ち込まれた訴訟は、法的に求められる人、野生生物及び環境に及ぼす影響に関する分析なしに、ナノ銀製品を市場に出すことを EPA が許すのを阻止することを求めている。その承認文書の中で EPA は、この農薬登録はこの化学物質に接触する又は吸入する労働者及び消費者への潜在的な有害影響と、この化学物質に暴露する動物への有毒な影響を含んで、労働者、消費者及び環境に暴露をもたらすことがあり得ることを認めている。その様なリスクがあるにもかかわらず EPA は、NSPW-L30SS の製造者であるジョージア州ニューマンにある Nanosilva LLC が、公衆と環境に及ぼす影響を決定するために要求されるデータを生成する間、今後4年間 NSPW-L30SS を市場に出すことを許している。

 ナノ物質は、食品産業を含む消費者製品市場に急速に入り込んでいる。人間の髪の毛の幅の10億分の1であるナノスケールの粒子は、既にサンドウィッチ用バッグ、まな板から塗料や日焼け止めまで広い範囲のアイテムに見出される。ナノ物質を産業に望ましいものとするその同じユニークな特性はまた、ユニークな健康と環境リスクをもたらす。

 ”ナノテクノロジーは我々が今までに見てきたものとは異なり、ユニークなリスクを有する新たな技術である”と、と国際技術評価センター(ICTA)の政策ディレクター、ジャイディー・ハンソンは述べた。”科学者らは、ナノ物質が新たな毒性テスト様式が必要な新たなリスクを生成するということに同意している。EPA の条件付き登録の使用はこの点において最も不適切である”。

 CFS と ICTA は、2008年の EPA に対する訴訟からはじまり(訳注2)、ナノ物質のもっと強い監視を長い間、求めている。ナノ銀製品は、強力な殺菌剤として一般的に使用されており、消費者製品中で圧倒的に多く使用されているナノ物質である。 CFS は、現在市場にある 400 以上のナノ銀製品を特定している。ナノスケール製品には表示要求がないので、登録せずに商品化されているものはもっと多くあるはずである。Nanosilva LLC は、EPA がナノ銀製品として農薬登録を許可した二番目の会社である。

 EPA は CFS の2008年の法的請願に答えなかったので、CFSはEPAに答えさせるよう2014年12月に訴訟を起こした(訳注3)。CFS により起こされたこの訴訟の結果、EPA はその回答の中で新たなナノ物質農薬を規制することに同意した。同じ権限に基づき、2015年4月に EPA は、 Nano Defense Solutions, Inc. の病院と運動施設で使用するナノ銀ベースの二つの製品“BioStorm”と“NanoStrike”の販売を停止させる命令を出した。

 EPA の NSPW-L30SS 承認はまた、十分な法的に求められるデータなしに市場に製品を出すことを許すEPAの条件付き登録への依存を示すもうひとつの事例である。2013年8月、米国会計検査院は、”会社が要求される期限内に追加的なデータを提出したかどうかを含んで、条件付き登録に関連する重要な情報を追跡する信頼性のあるシステムを EPA は持っていない”と結論付ける報告書を発表した(訳注4)。この欠陥は、 NSPW-L30SS のような十分に評価されていない条件付き登録農薬が、長年、EPAの受領書なしに市場に出たままになっており、データ登録のレビューが条件付きのままとなっていることを許している。


訳注1
EPA ニュースリリース 2015年5月19日 EPA ナノ銀農薬製品の登録を発表

訳注2
国際技術評価センター 2008年5月1日 ナノ銀による環境と健康への脅威をEPAが規制しないことに対する請願(エグゼクティブ・サマリー)

訳注3
食品安全センター 2014年12月17日 プレスリリース 非営利団体 ナノテクノロジーによる新規農薬の規制の不履行でEPAを訴える

訳注4


化学物質問題市民研究会
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