IPEN 2018年11月
水俣条約 COP2
IPEN クイック・ビュー


情報源:IPEN, November 2018
IPEN Quick Views of Minamata Convention COP 2
https://ipen.org/sites/default/files/documents/
IPEN%20Quick%20Views%20for%20Hg%20COP%202_EN.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年11月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/COP2/IPEN/
2018_November_IPEN_Quick_Views_of_Minamata_Convention_COP2.html

下記は、2018年11月の COP2 で提起されるであろう重要な論点に関する IPEN の見解の概要である。

■水銀の供給源及び貿易(第3条)
  • IPEN は、条約(訳注1)の要求に関わりなく、水銀の全ての輸入と輸出を世界的に禁止するための世界的な取組を求めている。著しい水銀貿易を行っていない締約国は、国家経済に影響jを及ぼさせずに、直ちにこの禁止措置をとることができるであろうし、世界的な水銀貿易を禁止するための連合の形成に力を貸すことができるであろう。水銀貿易を行っている締約国はそれらの水銀の大部分は小規模金採掘(ASGM)(訳注2)で使用され、地球汚染物質として放出されることを認めるべきである。彼らはEU及びアメリカの水銀輸出禁止(訳注3)に率先してならうべきである。

  • 水銀化合物の国際貿易は管理が優先されるべきである。元素水銀の供給は減少しているが、辰砂(硫化水銀)採掘と貿易は増加している。第3条 (水銀の供給源及び貿易)13項は、もし条約の目的がそのような水銀化合物の貿易により損なわれるなら、特定の水銀化合物を第3条6項及び8項の貿易制限の対象にするために追加の附属書を確立できる権限を締約国会議(COP)に与えている。現在、重量で95%以上の水銀のみが、これらの貿易制限の対象になっている。締約国会議(COP)は速やかに辰砂(硫化水銀)の貿易をリストし、制限するために新たな付属書を開発すべきである。

■有効性の評価(第22条) meeting doc MC/COP.2/13
  • 締約国が世界中の現在の水銀汚染レベルの基準線を確立するための活動に資金が提供され、人間と魚の水銀生物監視が優先されるべきである。基準線がより早く確立されるほど、条約の行動が世界の水銀レベルを効果的に低減しているかどうかを、より正確に決定することができる。もしそうでなければ、もっと緊急な行動が求められるであろう。

  • 有効性評価に関する専門家グループは、会議間に会合を持ち、 COP 2 のための報告書を作成した。彼らは一般的に受け入れられている手法(まだ合意はされていない)でより広範な監視を勧告した。しかし、いくつかの締約国は、資金は監視に使うより水銀汚染を低減するための活動により多く使われるべきとする見解を持っている。IPEN は両方とも必要であると考えるが、資金は、生物監視のために、特に、データが限定されている発展途上国で利用可能となることを確実にするよう求めている。IPEN はまた、安価で入手でき、条約の有効性評価に寄与するために発展途上国でのデータ収集のために容易に実施できるツールである人間の毛髪による立証されている手法を有している。

■水銀廃棄物(第11条) meeting doc MC/COP.2/6
  • 条約第11条第2項は、締約国が環境的に適切な方法(ESM)で水銀廃棄物を同定し管理することを求めている。次の 3 種類の廃棄物が検討されている:
     i) 貿易から撤退している、没収されている、又は容認される用途がない(例えば食塩水を電気分解して塩素と水酸化ナトリウムを製造する水銀法(陰極に水銀,陽極に不溶性金属極または黒鉛を用いる)からの余剰水銀)ので廃棄物として扱われている水銀、ii) 製品に添加された水銀、及び iii) 水銀で汚染された廃棄物。
     i) 及び ii) の同定は比較的容易であり、閾値の適用の優先度は低く、もし製品が正しくラベル表示されていれば ii) については必要ない。 iii) については閾値を確立すべき緊急の必要性があり、水銀廃棄物が、弱い規制のために処理を免れたり、人の健康と環境に影響を及ぼすことがないよう厳格に取り扱われるべきである。

  • IPEN は、1ppm 以上の濃度で水銀に汚染された廃棄物は”水銀廃棄物”であるとみなされるべきことを提案する。

  • IPEN は、’漏洩可能な閾値’によるどのような水銀廃棄物の定義にも反対する。
  • 水銀廃棄物の焼却と埋め立ては、さらなる放出を防ぐために禁止されるべきである。それらは水銀にとって環境的に適切な処理方法ではない。
■放出(第9条) meeting doc MC/COP.2/4
  • 放出源(新規及び既存)及び放出源の在庫目録準備のための利用可能な最良の技術(BAT)/環境のための最良の慣行(BEP)に関するガイダンスが、第9条第7項 a)及び b)の下に、’事項可能な範囲で速やかに’COP によって求められている。しかしわずか3か国しか放出源に関する情報を事務局に提出していないという状況に基づき、そのようなガイダンスの策定開始を少なくとも COP 3 まで遅らせるために COP 2 のための決議案が提案されていた。

  • IPEN の立場は、在庫目録と BAT / BEP ガイダンスの開発は、早急に開始することができ、これ以上遅らせる必要はないというものである。皮肉なことに、放出に関する在庫目録を開発するためのガイダンスは、多くの締約国が彼らの放出源を文書化し、それらを事務局に送付するために、まさに必要とするものである。現在、BAT / BEP 及び在庫目録に関するガイダンスを開発するために十分な専門知識が利用可能であり、これは COP 2 においてさらに送らせるべきではない。各国提出の問題は、ガイダンス開発プロセスから切り離される必要がある。

■汚染された場所(第12条) meeting doc MC/COP.2/7
  • 水銀で汚染された場所に関するガイダンス案は、会議間にある専門家により部分的に開発されたが、更なる作業が必要である。IPEN は、締約国に対してこの活動を加速し、ASGM サイトの問題についてはガイダンス案の中で独立して扱われていなので、ガイダンス内で ASGM サイトの浄化復旧に関する別の部会が開発されることを確実にするよう促す。

  • GEF、特定国際プログラム(SIP)、及びその他の財務手段を通じての汚染場所の調査、管理、及び浄化復旧のための財源は、世界的な水銀汚染場所の拡散に対応するために、維持され拡大されなくてはならない。
■水銀の環境上適正な暫定的保管(第10条) meeting doc MC/COP.2/5
  • 水銀の暫定的保管(訳注4)は、世界貿易における水銀の暫定的商業保管のための環境的に適正な管理(ESM)に目を向けているが、それ自体は水銀貿易を促進するためのものである。

  • ’廃棄’水銀のための恒久的処分(保管)施設が存在しない中で、暫定的施設は、適切な設計を考慮することなく、政府により両方(恒久的及び暫定的)の目的ために使用されることになるかもしれない。

  • COP は、恒久的水銀処分に関する新たなガイダンスの作成要員に対して、暫定的保管は、その分類が’廃棄物なのか非廃棄物なのか’未定のまま、合法又は非合法の市場から撤去された大量の水銀又は辰砂により圧倒されないことを確実にするよう指示すべきである。

  • 閉鎖時には、暫定的保管施設は汚染が疑われる場所を特定するための手順と調和する方法で、評価されるべきである。

  • 施設が水銀汚染されていない場合には、そのような状況を確実に記録しておくために、管轄権下の確認証明書が発行されるべきである。
  • IPEN は暫定的保管に関するガイダンスを採用するために提案された決議案を支持するが、恒久的処分のガイダンスの必要性が早急に検討されるべきである。
■資金 特定の国際的な計画(能力形成と技術移転) meeting doc MC/COP.2/9
  • 現在、128万USドル(約1億4,000万円)(プラス100万スイス・フラン(約1億1,000万円)事務局の物理的所在地の最終決意次第)を保有する SIP は、締約国だけの第一次申請を有している。合計 5つのプロジェクトが、アルゼンチン、アルメニア、ベニン、イラン、及びレソトで承認されている。

  • 二つの決議が COP 2 で検討されている。ひとつは非締約国が基金に申請できるかどうか、できるならどのように申請するのか(現在はこの文言はカッコつき);もうひとつは、どのように SIP スキームのレビューを実施するかを COP が検討することであり、それは次の COP 3 で行われるべきというものである。

  • IPEN は非締約国の基金へのアクセスを支持するが、それは、そのプロジェクトがその国の能力を拡大して、条約を批准し加盟国になることが条件となる。

■ 能力形成、技術援助及び技術移転 (第14条) meeting doc MC/COP.2/10
  • IPEN、日本、アメリカ及びナイジェリアは、この問題に関して寄稿しており、それは meeting doc INF 5 で見ることができる。 IPEN にとって重要な問題は、水銀汚染行為に対する代替を促進する事により、世界の水銀汚染を低減することである。石炭火力発電所の汚染を少なくするために数百万ドル(数億円)を費やすのではなく、それらは再生可能なエネルギーに置き換えられるべきである。洗浄塔(スクラバー)付きの改良型焼却炉を用いて廃棄物を焼却するのではなく、締約国は、ゼロ廃棄物の枠組みの中で、廃棄物発生源分別、リサイクル、たい肥化、嫌気性処理を採用すべきである。各国代表はこの文書資料の編集の検討を問われており、IPEN は会議間にさらに詳しく述べることを計画している。

■野焼き meeting doc MC/COP.2/16
  • 野焼きからの水銀排出の問題は、協議期間中にアフリカやその他の地域により繰り返し提起されていた。IPEN は、モルドバ、ナイジェリア及び国連訓練調査研究所(UNITAR)とともに、この問題の提起に貢献した。IPEN の問題提起は会議文書 meeting doc INF 6 に反映された。この重要な問題は、以前の議論で概説された廃棄物管理技術を通じて最大限に注目されたが、住民らは適切な技術移転と能力形成のおかげで廃棄物の野焼きに頼らないということにはならなかった。電子廃棄物の金属回収の場合には、リサイクル分野を公式化し、環境的に適切な方法(ESM)を使用させるために、もっと多くの努力が払われなければならない。IPEN は引き続き、関連文書を国際的に編集することに貢献するつもりであるが、それらは COP 3 で検討されることになるであろう。
■資金及び資金供与の制度 (Article 13) meeting doc MC/COP.2/14
  • 寄付金に関する制度 5 の 3項(e)資金における資金制度中には、発展途上国、及び特に後発開発途上国又は小島嶼開発途上国、又は後発開発途上国又は小島嶼開発途上国の人々だけ、の特定の必要性及び特別の取り巻く状況を考慮して、いくつかのカッコ付き文言、特に支払いスケジュールが共同で決定されていない又は尊重されていない時に適切な措置に関する決定をどのように管理するかを本質的に取り扱うかについて、残っている。IPENの立場は、本件は資金制度が最終決定することができるよう解決されるべきとするものである。


訳注1:水銀に関する水俣条約
訳注2:小規模金採掘(ASGM)
訳注3:欧州連合と米国の水銀輸出禁止
訳注4:水銀保管


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