Hereon, 2021年8月9日 プレスリリース
マイクロプラスチック: 金属を運ぶトロイの木馬 Hereon の研究がマイクロプラスチックは 環境中の金属を運ぶトロイの木馬として働くことを示す 情報源:Hereon, August 9, 2021, Press Release Microplastics: A Trojan Horse for Metals Hereon study shows that microplastics can serve as a transport vehicle for metals in the environment https://www.hereon.de/innovation_transfer/ communication_media/news/102644/index.php.en 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2021年8月月30日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/ 210809_Hereon_Microplastics_A_Trojan_Horse_for_Metals.html マイクロプラスチックが環境から有機汚染物質を蓄積し、それらを運ぶことができるという事実は、以前から知られていた(訳注1)。ただし、新しいのは、金属もこの方法で運ぶことができることである。さらに、粒子が小さいほど、プラスチックへの金属の蓄積が大きくなる。これは、[ドイツ最大の科学組織であるヘルムホルツ協会のメンバーである] Hereonの科学者らによって新しい研究で実証された。結果は現在、Journal of Hazardous Materials Letters に掲載されている。 世界中の科学者らは、プラスチック粒子の驚くべき生態学的な遍在性と長寿命をすでに実証している。粒子のサイズは 1マイクロメートルから 0.5センチメートルの間である。それらは、より大きなプラスチック片が海で分解したり、又は川や陸上廃水から海にたどり着いたときに部分的に発生する。マイクロプラスチックは非常に高濃度で毒性がある。加えてそれらは他の汚染物質を蓄積、搬送、放出することもできる。この文脈での有機汚染物質に関するデータはすでに公開されているが(訳注1)、水に浮かぶマイクロプラスチック粒子と溶存金属との相互作用についてはほとんど知られていない。これが、ヘルムホルツ協会 Hereon の沿岸環境化学研究所の科学者らが実験室でこれらの相互作用を体系的に研究した理由である。 筆頭著者のラース・ヒルデブラント博士を含むチームは、サイズが 63〜250マイクロメートルのポリエチレンおよびポリエチレン・テレフタレート粒子上に 55種類の金属および半金属(訳注2)が蓄積することを研究した。 ”プラスチックによって汚染された水に関しては、私たちが研究した 2種類のプラスチックが重要な役割を果たしてる”と環境化学者のヒルデブラント博士は言う。 ”これは、幅広い用途とそれに伴う大量生産によるものである。たとえば、ほとんどの買い物袋はポリエチレン(リサイクルコード 4、LDPE)でできており、プラスチック製の飲料ボトルはほとんど例外なくポリエチレンテレフタレート(リサイクルコード1、PET)でできている”(訳注3)。 粒子が小さいほど蓄積性が強い ”この研究では、粒子が小さくなると蓄積が強くなり、濃縮の程度に関してさまざまな元素(金属と半金属)の間に有意差があることを確認した”と共著者でヘレオンの無機環境化学部門長ダニエル・プレフロック博士は述べている。クロム、鉄、スズ、希土類などの一部の金属、より正確にはそれらのイオンは、ほぼ完全にマイクロプラスチックに付着していた。カドミウム、亜鉛、銅などの他のものは、テスト期間全体にわたってプラスチック上にほとんど蓄積を示さなかった。さらに、ポリエチレン粒子は、ポリエチレン・テレフタレート粒子よりも有意に大きな蓄積を示した。 金属はほぼ完全に再放出される テストの第2段階で Hereon の科学者らは、金属または半金属を充填した粒子が、消化管で優勢なものなどの化学的条件下で、それぞれの金属含有量をほぼ完全に放出したことを示すことができた。 ”実験室での私たちのテスト設定は、実際には単純化されており、モデル生物は使用されていない。それにもかかわらず、結果は、マイクロプラスチック粒子が体に吸収されると、それらは金属について一種のトロイの木馬として機能し、それらの金属が生物にさらに多く導入される可能性があるという重要な証拠を提供している”とラース・ヒルデブラント博士はの最初の結論を引用しつつ述べている。 環境で頻繁に見られる他のプラスチックがどのように振る舞うか、粒子の経年とその風化状態が蓄積と放出のプロセスにどのような影響を与えるかを調べるために、さらなる研究が現在、行われている。 原著:L. Hildebrandt, F.L. Nack, T. Zimmermann, D. Profrock, Microplastics as a Trojan horse for trace metals, Journal of Hazardous Materials Letters, 2021, 100035, ISSN 2666-9110 https://doi.org/10.1016/j.hazl.2021.100035 訳注1:トロイの木馬 海洋プラスチックのトロイの木馬
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