グリーンピース・インターナショナル 2016年5月1日 プレスリリース
漏えい TTIP 文書が、 気候、環境、消費者の安全への 大きなリスクを明らかに 情報源:Greenpeacet Internationa, Press release - 1 May, 2016 Leaked TTIP documents confirm major risks for climate, environment and consumer safety http://www.greenpeace.org/international/en/press/releases/2016/ Leaked-TTIP-documents-confirm-major-risks-for-climate-environment-and-consumer-safety/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2016年5月5日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_16/160501_Greenpeace_Leaked_TTIP_documents.html 【アムステルダム 2016年5月1日】 グリーンピース・オランダは、欧州(EU)とアメリカ(US)の環境と10億人近くの市民の生命への大きな影響を及ぼすことに脅威をもたらしている条約に関し、もっと必要とされる透明性を提供し、情報に基づく議論を喚起するために、月曜日(1日)午前11時(CET)に、漏えいした TTIP 交渉文書一式を発表した。これは公衆が欧・米の交渉の立ち位置を比較することができる初めての機会である。 ”これらの交渉に光を当てるべき時である。苦労して手に入れた環境関連の進展が密室で取引されてる。これらの文書は、 TTIP についての市民社会の懸念はやはり正しかったことを明らかにしている。我々は交渉を止めさせ、議論を始めるべきである”と、グリーンピース・オランダのキャンペーン担当ファイザ・クラーセンは述べた。”何が勝手に提案されているのかを市民と選ばれた代表者が理解する機会を得られるよう、条約文書の完全な最新版がすぐに発表されるべきである”。 環境と消費者保護の観点から、4つの局面に深刻な懸念がある。 ■長年にわたる環境保護が低下するように見える 我々が見たどの章も一般的例外規定を参照していない。世界貿易機関(WTO)の関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の中で大事にされてきた 70年近くの歴史を持つこの規則は、”人間、動物、及び植物の生命または健康を守るために”、又は”枯渇しうる天然資源の維持”のために、国家が貿易を規制することを可能としている [1]。この条項の脱落は、欧・米両サイドが人間、動物、そして植物の生命と健康より利益を優先させるという制度を作り出そうとしていることを暗示している。 ■気候保護は TTIP の下では難しくなる パリ協定(COP21)は、世界中の数十億人に影響を及ぼす気候危機を回避するためには気温上昇を1.5度C以下に保たなくてはならないことを明らかにしている。貿易は気候行動から除外されるべきではない。しかし、入手した文書の中には気候保護を示すことがらは何も見つけることができない。さらに悪いことには、緩和措置の範囲は、”規制協力”又は”工業製品の市場参入”に関する条項によって制限されている[2]。ひとつの例として、これらの提案はタールサンドからのオイルの様に CO2 排出量が多い燃料の輸入規制を除外するであろう。 ■予防原則の終焉 EU条約で大事にされている予防原則[3]は、”規制協力”に関する章でも、入手した12の章のどの中にも記述されていない。一方、アメリカは有害な物質を回避することより、それらを管理することを目指し、様々な章に紛れ込んでいる”リスクベース”のアプローチを要求している。このアプローチは、規制当局が例えばホルモンかく乱化学物質のような議論ある物質に関して予防措置をとる能力を損なう。 ■企業買収に道を開く この提案は環境及び消費者保護を脅かす一方で、大企業は望むものを得ることができる。意思決定に参画する機会は、意思決定プロセスの最も早い時期に関与することができるよう企業に与えられる。 市民社会組織は交渉への関与はほとんどできないのに、産業側は重要な決定に意見を述べる特権を与えられていることを新聞等が示している多くの例がある[4]。漏えいした文書は、EU は高度の産業側の影響について明らかにしていなかったことを示している。EU の最近の公的報告書 [5]は、産業側の影響についてわずかに述べているだけであるのに、漏えい文書は、産業側との更なる協議の必要性について繰り返し述べており、どの様に産業側の情報が収集されたかを明示的に述べている。 オーラーセン(グリーンピース・オランダ):”あなたが環境問題、動物福祉、労働者の権利、又はインターネットの個人情報に関心があろうとなかろうと、これらの漏えいした文書に何が書いてあるかについてきっと関心があるであろう。それらは、世界中の市民社会と数百万の人々が声を上げた強い反対を強調している。TTIP は人々から大企業への民主的な力の巨大な変換である。我々は選出された代表者とその他の関係団体がこれらの文書を読み、議論に参加することを求める”。 漏えいした文書は、248ページからなり、複雑な法律用語で構成されている(統合された13章+注釈−戦術的な TTIP 交渉の現状−2016年3月 Tactical State of Play of TTIP Negotiations - March 2016))(訳注1)。グリーンピース・オランダは本件について、著名なドイツの調査ネットワーク NDR, WDR 及び Suddeutscher Zeitung とともに活動を行っている。現在まで、選出された代表者は、密室で、監視の下に、専門家と協議することもできずにそのような文書を閲覧することだけが許されているが、内容について他のだれとも議論することは禁じられている。 これらの文書を発表することにより、グリーンピースは数百万の懸念する市民に彼らの政府の活動を監視し、これらについて彼らの選出された代表者と議論する機会を与えようとしている。 注釈 [1] WTO 協定の大部分は、1986-94年の貿易協定に関するウルグアイ・ラウンドの結果である。GATT 1994 を含んであるものは以前に存在したものの改訂版であった。 [2] 内国民待遇と商品の市場参入に関する章の第10条(輸入・輸出制限)及び第12条(輸入・輸出認可)中には、気候を保護するための必要な貿易関連措置は、GATT 第 XX 条の下に貿易制限として許されるであろうということを示すものは何もない。 [3] 予防原則は、欧州連合(EU)の機能に関する条約の第191条に詳述されている。それは、リスクがある場合には、予防的意思決定を通じて環境保護のより高いレベルを確実にすることを目指す。 http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=URISERV%3Al32042 [4]例えば、”アメリカは関心を示したが製品のあるものについて、産業側と協議する必要があるということを指摘した”−’戦術的現状’章、1.1節、農業 [5] 環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)第12回交渉 http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2016/march/tradoc_154391.pdf 連絡先
訳注1: グリーンピース TTIP Leaks サイト (訳注:項目番号は便宜的に当会がつけたものであり、グリーンピース発表の文書にはない)
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