Telegraph.co.uks 2009年7月17日
航空機乗務員の病気
有害機内空気の問題を明るみにする


情報源 Telegraph.co.uk - 17 Jul 2009
Illness among cabin crew heightens toxic air fears
By Charles Starmer-Smith
http://www.telegraph.co.uk/travel/travelnews/5849374/
Illness-among-cabin-crew-heightens-toxic-air-fears.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年7月23日


 パイロットと乗務員に関する調査で、彼らが航空会社で働き始めて以来、驚くほど高いレベルで病気になっていることがわかった。

 イギリスの航空会社乗務員789人の調査の結果、7人に1人は前年度に病気のため1ヶ月以上職場を離れなくてはならなかった。23人に1人はがんであると診断されたが、調査対象者の平均年齢は約40歳であった。がん研究所(Cancer Research)によれば、イギリス人の34人に1人がいつかはがんになるが、40歳以下では200人に1人と数値は下がる。

 調査対象者のうち20人に1人は慢性疲労症候群(CFS)(訳注1)であると診断されている。患者支援団体 SupportME (訳注2)イギリスのCFSの発症率は通常1,000人に1人である。さらに調査対象者の20%はうつ病と診断されたが、精神健康基金(Mental Health Foundation)によれば、イギリスの平均は8〜12%である。

 Telegraph Travelが手にしたこの報告書はまた、流産、甲状腺異常、高血圧、コレストロール、急性肺炎、気管支炎、過敏性腸症候群の発症が高いことを示している。問題を提起している人々は、病気が多い理由はエンジンからの有害な煙霧(ヒューム)が機内の空気を汚染するからであると主張し、このことは、頻繁に飛行機を利用する乗客の安全と健康にかかわることである述べている。

 科学者らは、現代的な航空機で採用されている”ブリード・エアー”システムの結果として機内に入るからであると主張している。空気はエンジンの圧縮部から引き出され冷やされる。そして機内の気圧を保持するために機内に導入されるが、そこで微生物やウイルスを除去するよう設計されたフィルターからの空気と混合する。

 これらの”循環エアー”フィルターはエンジンからの煙霧や蒸気を除去しないので、もしエンジン・オイルや油圧オイルが漏れれば、有害化学物質が供給空気を汚染することになる。

 英国航空 (British Airways)スチュワード・スチュワードレス協会とともに、この調査を実施した 元搭乗員であるスー・デールは、この結果は当局の徹底的な調査の必要があることを示していると述べた。

 今年の初めに、匿名の調査者らがいくつかの飛行機で高いレベルの危険な有害物質を検出したと主張した。よく知られた航空会社の機内から秘密裏に採取した綿棒による31サンプルのうち28サンプルは、 耐摩耗剤としてジェット・オイル中含まれる有機リンであるリン酸トリクレジル(TCP)(訳注3)を高いレベルで含んでいることを見つけたが、この化学物質は眠気、呼吸器系障害、神経系障害をもたらすことが知れれている。

 ロンドン大学の臨床神経心理学者マッケンジー・ロス博士は汚染された機内空気は年間20万人の乗客に影響を与えているかも知れないと述べている。先の2月に実施されたTelegraph Travelの調査は汚染空気の事故が数百回、英国航空のパイロットにより報告されていることを明らかにした。

 汚染空気への暴露と長期の健康障害とを関連付ける様々な報告書は、補償を求める乗客と乗務員の数の増大という結果をもたらしている。今月、元アメリカン航空乗務員テリー・ウイリアムズ(41)は、有害煙霧によって引き起こされたと彼女が主張する病気についてボーイング社を訴えた。

 民間航空局(CAA)の広報官は、調査は継続しているが機内空気と健康障害との関連を示す証拠は存在しないと述べた。英国航空の広報官は、この件に関してCAAと運輸省を含む当局との連携を継続すると述べた。

 来年登場するボーイング 787 ドリームライナー(訳注4)は、1950年代中期以来初めて、機内供給空気をエンジンからの循環空気ではなく別の供給源からの空気を用いる旅客用ジェット機である。従来このようなことは高価になると見られていた。

乗務員の証言
 下記の乗務員は匿名を条件に彼らが乗務を開始して以来、直面した健康問題を明らかにした。

ケース1(36歳)
 病気:高血圧、高コレストロール、貧血、急性肺炎/気管支炎、喘息、不妊症、慢性疲労、不眠症、うつ病、多種化学物質障害(multiple chemical disorder)、湿疹/疥癬、過敏性腸症候群(IBS)/クローン病

 ”私の健康は最後の5年間、非常に悪くなったので、私は仕事のスケジュールの半分しかこなすことができなかった。私の医師は私の病気は機内の煙霧と有害化学物質への暴露のせいであると述べた。私は8ヶ月間休業したが、会社は休業補償手当てを拒否した。私は家を失おうとしている”。

ケース2(50歳)
 病気:高血圧、高コレストロール、貧血、急性肺炎/気管支炎、喘息、線維筋痛症、慢性疲労、甲状腺障害、多種化学物質障害(multiple chemical disorder)、乳がん、骨粗鬆症、慢性 副鼻腔炎、頻脈、末梢神経疾患、閉塞性肺疾患

 ”私は汚染空気について知るまで不思議であった健康障害に12年間悩まされている。私の主治医は私の健康問題の全ては飛行によって引き起こされたと信じており、私の診断書に”エアロトクシック症候群”と書いた。私は1年以上疾病休業しており、会社は3回、私との契約を終了すると脅した”。

ケース3(32歳)
 病気:急性肺炎/気管支炎、変形関節症

 ”私は飛行の後で非常に疲労する。私は副鼻洞障害と風邪とインフルエンザにかかっており、これは飛行に関連していると確信している。私は、例えば記憶、暗算、時には話そうとする言葉を失うなど単純な精神的プロセスに問題があることを感じる。飛行を業務とする前は、私は自分自身を知的で表現が明瞭であると考えていた”。


訳注:関連情報 訳注1
訳注2
  • SupportME 英国のM.E./CFS 患者支援組織
    Myalgic Encephalomyelitis(筋痛性脳脊髄炎)/Chronic Fatigue Syndrome 慢性疲労症候群
訳注3
訳注4


化学物質問題市民研究会
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