ES&T 2006年11月1日
カナダ 化学物質23,000種の評価完了
化学物質管理はより厳格に
EU の REACH とともに国際市場に影響も


情報源:Environmental Science & Technology: Science News - November 1, 2006
Chemicals management may be getting tougher
The effects of Canada's assessment of chemicals and the new European chemicals law are likely to reverberate through the international market.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/nov/policy/jp_cachemicals.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月5日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_11/061101_est_Canada_chemicals.html


 カナダは、化学物質23,000種の評価の結果の発表の準備ができている(訳注02006年12月8日に発表された)。これは世界で初めて現在国内市場に出ている化学物質を体系的に見直したものである。間近に迫ったヨーロッパの新たな化学物質政策の採択とともに、カナダの政策は世界中の店頭の商品の含有成分を変えることになりえると専門家は述べている。

 1986年、カナダの規定は、全ての新たに市場に導入される物質は毒性審査(toxicity screening)を受けることを義務付けた。しかし、その当時、すでにカナダの市場に出ていた23,000種の化学物質はその安全性の証明なしにそのまま市場に出し続けることが許された。

 7年間の調査後の現在、カナダ環境省(Environment Canada)とカナダ保健省(Health Canada)は、23,000種の化学物質の精査を終えた。彼らは、有毒性があり残留性又は生物蓄積性がある、又は人への暴露の可能性が最も大きい4,000種の化学物質を選んだ。これらのうち、400種は残留性、生物蓄積性、及び有毒性(PBT)を有する化学物質であり、早急に措置をとる必要があるものであるとカナダ環境法協会(Canadian Environmental Law Association 訳注:カナダのNPO)の研究者フェ・デ・レオンは述べている。

 このリストは9月に環境大臣及び保健大臣に提出されたが、今年の年末まで公表されないであろうとカナダ保健省リスク影響評価局のディレクター、スティーブ・クラークソンは述べている。政府はこの4,000種の化学物質について、それらが管理される必要があるかどうか決定するために科学的文献及びその他の既存データに基づいて他のもうひとつの審査プロセスにかける。クラークソンは、それらの全てを審査するのに10〜15年かかると予測している。

 ヨーロッパでは5年間にわずか150物質のリスク評価しかできなかったという遅いペースが、EUの新たな化学物質規制 REACH が導入されることのひとつの要因であったと欧州委員会駐米代表団の環境顧問ロブ・ドンカーズは述べている。アメリカやカナダで行われているように、化学物質が”安全ではない”ということを証明する責任を政府が持つのではなくて、REACH は製品が安全であることの証明を産業側に課している。

 今年の年末に採択されることが期待される REACH は会社に対し概略30,000種の高生産量化学物質を登録することを求めている。会社は、PBT 又は発がん性、変異原性、又は生殖毒性(CMR)を持つ物質1,500種以上の化学物質の使用について認可を求めなくてはならないとドンカーズは述べている。”カナダからのこの情報は、ヨーロッパでこれら1,500〜2,000種の懸念化学物質のリストを早急に確立することを可能にするので、非常に重要である”と彼は述べている。

 REACH は、今年の10月に欧州議会の環境委員会が代替品が存在する場合には有害な化学物質をより安全な物質に代替するという称賛に値する新たなルールを承認したので、さらに強化された(訳注1)。

 カナダの4,000種の疑いある化学物質リストの確立は、これらの物質のあるものは長年使用されているとしてすでに産業界が疑念を提起しているとレオンは述べている。たとえ、ある化学物質が懸念あるものとしてリストされる前であっても、それについて情報が求められているという事実は、製造者にカナダにおける販売がトラブルに値しないということを決定させることになると Cantox Health Sciences International(訳注:コンサルタント会社)の化学物質グループ副代表カレン・レビンスは述べている。

 しかし、環境保護者らは、政府がこれらの化学物質の今後の評価のための意欲的な期限を設けない限り、そして PBT 物質の禁止又は除去のための措置をとらない限り、何も変わらないのではないかと心配しているとデ・レオンは述べている。

 カナダとEUによって取られれている措置はアメリカでも採用されるべきであるとカリフォルニア大学バークレー校の環境健康科学者マイク・ウィルソンは述べている。カリフォルニアは包括的な化学物質政策を策定することで米EPAより先行している。カリフォルニア議会に委託された報告書の中で、ウィルソンは有害物質規制法(TSCA)はアメリカの化学物質市場の規制における欠陥の根源であるとしている。

 ウィルソンの批判は、8月2日の上院における TSCA に関する聴聞会でアメリカ政府会計検査院(GAO)の証言で同じことが述べられている。データを入手する責任は化学会社ではなくEPAが負っているので、EPAは化学物質を適切に審査できていないと GAO の天然資源環境部門ディレクター、ジョーン B. ステファンは述べた(訳注2)。

ジャネット・ペレイ(JANET PELLEY)


訳注0
訳注1
訳注2


化学物質問題市民研究会
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