ES&T 2006年8月2日
カナダ フッ素系防汚/撥油/撥水剤を制限 強化する方向に
4つのフッ素テロマー由来ポリマーを永久に禁止するかも知れない

情報源:Environmental Science & Technology: Policy News - August 2, 2006
Canada moves to strengthen limits on nonstick chemicals
Canada may permanently ban four fluorotelomer polymers.

http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/aug/policy/rr_nonstick.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年8月4日


 エンバイロンメント・カナダ(カナダ環境省(EC))とヘルス・カナダ(カナダ保健省)は、ファースト・フード容器の撥油性やカーペットの防汚性を保つために広く使用されている防汚/撥油/撥水剤を管理、制限、又は禁止することを提案した。

 6月17日に発表された規制案は、カナダの4つのフッ素テロマー由来ポリマーに関する暫定的禁止を恒久的にするものである。専門家らは、この措置は政府がフッ素テロマー由来ポリマーのあるグループの輸入又は製造を禁止する最初のものであると評価している。アメリカ及びEUなど他の政府はカナダの動きを注目している。(訳注1:フッ素テロマーの概略

訳注:カナダ環境省ウェブサイト

4つの新たなフッ素テロマー由来物質について
(Four New Fluorotelomer-based Substances)

 フッ素テロマー由来物質は一般的に、織物、革製品、敷物、絨毯、石材、タイルのための水、油、泥、及びグリースの防止剤(repellents)、紙容器と紙製品のための液体の拡散と浸透を防ぐ表面サイズ剤(sizing agents)、及びコーティングのための表面を均一にする表面調整剤(leveling agents)として用いられる。
 4つのフッ素テロマー由来物質はカナダ環境保護法(CEPA)1999のスケジュール1に追加することが提案されており、それは、人の健康と環境の保護を確実にするために、これらの物質に関する規制を作ることを可能にする。

Vol. 140, No. 24 ? June 17, 2006 / Order Adding Toxic Substances to Schedule 1 to the Canadian Environmental Protection Act, 1999

Toxic Substances List(スケジュール1)

 ”スウェーデンはカナダのこの措置を喝采する”−とスウェーデン化学物質試験所(KemI / the Swedish Chemicals Inspectorate)の所長エセル・フォルスバルグは述べている。”この措置は、EUでこれらの非常に有害でそれらのあるものは最も残留性があると知れられている学物質のリスクを取り扱う我々の仕事を鼓舞するものである。”
 これらの化学物質に関する経済協力開発機構(OECD)のワークショップが11月にストックホルムで開催される。

 禁止の目標である4物質のうち2物質を製造しているデュポン社は、”カナダの措置は入手可能な科学に基づいた正当性がない”−という声明を発表した。しかし、カナダ環境省のリスク評価の部門長、ジョン・アルセニアはこれらの措置は将来の問題を回避するためにとられたと指摘した。

 カナダ環境省はまた、難分解性で北極の動物の体内に蓄積している長鎖過フッ素カルボン酸類(long-chain perfluorinated carboxylic acids)に分解することができるその他どのような新たに開発されるフッ素テロマーポリマーの輸入も禁止することを提案した。

 同時に、カナダ環境省当局は、2005年1月の米EPAとフッ素テロマー化学物質の主要な8製造会社との合意をモデルにして産業側代表と交渉を実施している(訳注2)。8製造会社はフッ素テロマーの工場からの排出と製品からの放散ガスをなくすことに同意した。カナダ環境省の目標は、その潜在的な影響が分る以前からすでに市場に出ている50以上のフッ素テロマー化学物質からの排出を削減することである。

 カナダ環境省は、揮発性フッ素テロマー・アルコールが風に乗って遠隔地に運ばれ、そこで大気反応、微生物反応、又は動物の代謝によりそれらが非揮発性の長鎖パーフルオロカルボン酸類(perfluorocarboxylic acids)に変換されるという最近の調査(訳注3)に基づいてこの決定を行った。この作業の多くはトロント大学の化学者スコット・マブリー、フォード自動車の大気科学者ティム・ウォーリントン、及びカナダ環境省の科学者デレック・ミュールによって指導された実験から得られたものである。古い海洋起源に関係する代替仮説がストック・ホルム大学の化学者イアン・カズンズとデュポン社の化学者らによって提案されているが、現在まで、この仮説を支える研究はない。

 昨年、マブリーとメアリー・ジョイス・ディングラッサン−パンリリオは、4%までのフッ素テロマー・アルコールを放散する広範な消費者及び産業用フッ素テロマー製品を見つけたが、それらのフッ素テロマー・アルコールは製品製造時の残留物であった(訳注4)。

 未解決の重要な疑問はフッ素テロマー由来ポリマーは分解してフッ素テロマー・アルコールを放散することができるかどうかということであった。もしこのようなことが起きるとすると、カーペット、衣類、その他すでに使用中又は廃棄された防汚剤処理製品は環境に対する長期的な汚染源となっていることになる。

 EPAの科学者らはこの問題について調査中である言う。デュポン社はEPAとの和解調停金1,650万ドル(約18億円)のうち3年間で500億ドル(約5億5,000万円)を同社の9種の過フッ素化合物が生物分解するかどうか調査するために充てるであろう。

レベッカ・レナー(REBECCA RENNER


>訳注1
フッ素テロマーの概略/つれづれなる概説
訳注2
EPA プレスリリース 2006年1月25日/9EPA、PFOA の排出削減をメーカーに求める
訳注3
ES&T 2005年12月28月/三次元モデリングがフッ素化合物の汚染経路の理論を裏付ける
訳注4
ES&T 2006年1月25日/製造時の残留化学物質が過フッ素化合物(PFCs)の由来を説明するかもしれない


化学物質問題市民研究会
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