ES&T 2006年4月5日
ブッシュ政権 全米子ども調査の予算を切り捨てる

情報源:Environmental Science & Technology: Policy News - April 5, 2006
Bush cuts funds for National Children's Study
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/apr/policy/jp_bush.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年4月8日

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_04/060405_est_kodomo.html

 全米子ども調査は、今日生まれる赤ちゃんが、なぜ、両親よりも健康状態が悪くなっている13世紀以来最初の世代なのかを明らかにするはずであった。
 疾病の環境要因に関する画期的な調査であると歓呼された全米子ども調査(NCS)は、ブッシュ政権が不意に予算を切り捨てた時には、直ぐにでも開始でする準備ができていた。議会が予算の復活を目指して現在、攻防が行われている。

 2月6日に発表されたブッシュ大統領の2007会計年度の予算は、全米子ども調査(NCS)への資金供給を廃止し、この調査の主要な貢献者である国立健康研究所(NIH)に9月からはこの調査のために金を使うことを停止するよう命令を下した。(訳注1

 ”我々は07年度予算に6,900万ドル(約76億円)を要求したが、25年にわたる調査は約27億ドル(約3,000億円)必要であろう”−と全米子ども調査(NCS)諮問委員会議長で小児科医のアラン・フライシュマンは述べている。ほとんどの小児科医は子どもの健康は大統領の優先事項ではないので、このようなことも起こるかもしれないという考えは持っていたが、なぜブッシュがこ調査を切り捨てたのか不明である。国立健康研究所(NIH)の広報官はES&Tの電話による問い合わせに答えなかった。

 議会による2000年の子ども健康法( Children’s Health Act )の制定で、全米子ども調査(NCS)は、PCB類、農薬、難燃剤のような汚染物質がいかに疾病に関連しているかを検証するために、10万人の子どもを生まれる前から21歳になるまでモニターするはずであった。この調査は、すでに全米7か所の”先駆センター”(パイロット・サイト)を設立し、2007年には参加者を募集することになっていた。この調査は1年後には、代表的なアメリカの子どもたち(face of America's children)を反映するために、任意に選択して合計105か所に拡大することになっていた−とフライシュマンは述べている。

 ぜん息、肥満、自閉症、及び糖尿病のような疾病はアメリカの子どもたちの間に広まっており、年間の医療コストは6,420億ドル(約70兆円)に達している−と小児科医でママウント・サイナイ大学医学部の子ども健康環境センター副ディレクター、レオ・トラサンデは述べている。

 国立子ども健康人間発達研究所の見積りによれば、全米子ども調査(NCS)を実施することで得られる医療費の節約は、年間33億〜55億ドル(約3,600億〜6,000億円)である。

 上院は全米子ども調査(NCS)を背後で支援しており、保健社会福祉省のために70億ドル(7,700億円)を提案しているので、その予算の一部をこの調査の資金のために使うことができればよいが−と小児科医でプライマリー子ども医療センターのディレクターであるエド・クラークは述べている。下院の超党派議員連盟はこの調査について強い支持を表明したが、予算復活の法案はまだ起草されていない−と彼は述べた。

 予算の切捨ては、命とともに金の節約にもなる疾病の防止よりも企業の利益擁護に向けたブッシュ政権の著しい偏向を体現するものである−とウェスト・ハーレム環境行動の代表ペギー・シェパードは述べている。”もし、我々がこれらの化学物質のあるものは製造されるべきではないということを発見したなら、化学会社は利益を失うか又は異なる技術又は製造方法に投資するかのどちらかしかない”−と彼女は述べている。

ジャネット・パーレイ(JANET PELLEY)


訳注(参考):
(訳注1):National Children's Studyのウェブサイトの告知
ブッシュ大統領の2007会計年度予算案には全国子ども調査のための予算は含まれていない。2006会計年度のもとに現在進行中の活動計画は会計年度の最終日(訳注:2006年9月30日)をもって終了する。国立環境研究所が2007会計年度にこの調査の全面展開を継続する計画はない。

(訳注):関連記事

子どもセンター:子どもと化学物質について調査/EHP2005年10月号 NIEHS News
子どもの健康と環境:大西洋をはさむ対話/EHP2005年10月号 Editorial


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る