国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)
第3回準備会合 報告書(部分訳) 及び付属書 IV/付属書 V


付属書 IV:妥協案パッケージ、付属書 V:SAICMの範囲に関するアメリカの声明

情報源:Report of the third session of the Preparatory Committee for the Development
of a Strategic Approach to International Chemicals Management


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年12月16日

訳注: 第3回準備会合で合意に達しなかった項目はカッコ([])付きで、又は脚注(原注で)、又はアスタリスク(*)(テーブル中の項目)で、示されている。

序言(1〜4)     訳省略
T. 開会(5〜15)  訳省略
U. 組織(16〜22) 訳省略
付属書 IV:妥協案パッケージ
付属書 V:SAICMの範囲に関するアメリカの声明


V. 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の展開

23. 議長は、検討中の3つの主要な文書、SAICM 第3回準備会合 ハイレベル宣言ドラフト(当研究会訳)(SAICM/PREPCOM.3/2)、SAICM 第3回準備会合 包括的方針戦略ドラフト(当研究会訳)(SAICM/PREPCOM.3/3)、SAICM 第3回準備会合 世界行動計画ドラフト(当研究会エグゼクティブサマリー訳)(SAICM/PREPCOM.3/4)を紹介した。

24. 議長の紹介を受けて、出席者らは、用意されたこれらの文書が会合を進める上で適切であるかどうかに関し一般的意見を表明した。

25. 多くの出席者らは用意された文書は今後の交渉のための出発点として適切であり、国際的な開発目標達成に向けた国際機関やフォーラムの進捗を反映していることを確認した。いくつかの地域グループを代表する出席者らは、今後の作業がさらに必要であると認めたが、彼らの地域協議会合で出された勧告はドラフト文書に公平に反映されていることを確認した。しかし、一人の出席者は、様々な理由で相当な修正が必要であると提案した。何人かの他の出席者は、ドバイにおける化学物質管理に関する国際会議(ICCM)までにSAICMを完成させることが不可能になると主張して、前回の準備会合で導入しなかった論点を提起しないよう促した。他の多くの出席者は、世界行動計画ドラフトは拘束力のあるものではなく、関係者らが必要に応じて使えるようにするためのツール・キットと呼ばれるものなので、詳細に協議する必要はないという見解を展開した。

A. 世界行動計画

26. 各項目を紹介しつつ、議長は世界行動計画は自主的な指針文書として意図されており、その必要性と能力によって関係者や諸国に適用されるべきものであると言及した。準備会合は、したがって、世界行動計画は完全には協議する必要はないということに同意した。議長は出席者らに対し、協調の取れた世界的行動を求める確固とした措置の議論を可能とするために、現在の国際的政策の変更又は追加を意味することがら、及びSAICMの範囲外であることがらを特定するよう出席者らに求めた。彼女はまた、エグゼクティブ・サマリーに関するコメントを出席者らに求めた。

27. 事務局の代表は、文書 SAICM/PREPCOM.3/4に含まれる世界行動計画ドラフトを紹介し、第2回予備会合の結果であるその修正ドラフトは異なる地域協議会によってさらに検討されたということに言及した。行動の時間枠がアフリカ地域協議会で挿入された。世界行動計画に対する修正案と優先度と国家の責任の論点がアジア−太平洋協議会で提議された。確固とした措置に対する序言(introduction)をもっと読み易くするためにエグゼクティブサマリーを含めることがラテンアメリカ−カリブ海協議会で提案された。

28. さらなる討議が必要な領域に関する最初のコメントを受けて、準備会合は、準備会合によって特定されるべき作業領域と活動を検討するためにジャミドゥ・カティマ(タンザニア連邦共和国)氏を議長としてコンタクト・グループを立ち上げた。

29. コンタクト・グループの作業結果と総会での新たな討議を受けて、準備会合はエグゼクティブ・サマリー中の多くの要素に合意することができた。合意に達することのできなかった部分は本文脚注に記された。同様に、具体的措置のテーブル中の多くの要素に合意することができた。合意に達することのできなかった項目はテーブル中にアスタリスクを付けて記された。準備会合は、脚注とアスタリスクのついた論点はドバイにおける化学物質管理に関する国際会議(ICCM)では協議される予定はないということに合意したが、将来、再度取り上げられるべきであるということに合意した。事務局は、エグゼクティブ・サマリーの文章を準備会合で最終的に承認された包括的指針戦略と整合させることについて委任された。

30. 事務局の代表は確固とした措置の修正ドラフトを紹介し、今後は作業領域として確固とした措置を引用することが決定されたと説明した。彼は、コンタクト・グループは主体者、目標と時間枠、進捗の指標、及び実施の側面について討議しなかったと言及した。参加者らは主体者リストへの追加があれば10月25日までに提出するよう要請された。さらに、事務局は、テーブルを準備会合で最終的に承認された包括的指針戦略と整合させることについて委任された。事務局の代表は、合意に達しなかった部分はテーブル中にアスタリスクとカッコによって記されたと説明した。準備会合は内容を示すテーブルを事務局が準備し文書の前面に添付すよう要求した。

31. 準備会合は、脚注、カッコ、及びアスタリスクのついた世界行動計画のドラフト文書を本報告書の付属書 III に含めて化学物質管理に関する国際会議(ICCM)への検討用とすることに合意した。

B. 包括的指針戦略

32. 事務局代表は、文書SAICM/PREPCOM.3/3に含まれる包括的指針戦略を紹介した。さらに準備会合は、地域協議会から受領した報告書を含むいくつかのインフォメーション文書(SAICM/PREPCOM.3/INF/23, INF/24, INF/25, INF/26 and INF/27)、その他の提出文書類(SAICM/PREPCOM.3/INF/22)、及び財政に関する考慮、原則とアプローチ、及び実施と進捗の評価に関連する情報(SAICM/PREPCOM.3/INF/2, INF/3, INF/5 and INF/11)を提出した。

33. 議長は、SAICMの範囲は広くあるべきであるという一般的な合意があっということ、及び、準備会合は文書SAICM/PREPCOM.3/3に含まれる範囲に関し採択するという提案がなされていたということを指摘した。アメリカの代表は、国内法の下で規制される化学物質に関し、ある場合にはSAICMを制限するであろう文章の提案を行った。この論点の脈絡において、彼は声明文を読み上げ、この会議の報告書に添付するよう要求した。この声明は本報告書の付属書 V に含まれている。アメリカによって述べられた見解に照らして、SAICAMの範囲は文書SAICM/PREPCOM.3/3に含まれている通り採択し、一人の出席者がその採択に同意しなかったということを示すアスタリスクを付けるということを議長が提案し、準備会合は同意した。アメリカの代表は後に、彼は準備会合が文章を採択した時に反対する十分な時間を与えられなかったと感じ、そのような議事の進行は承服できないとし、合意に至らず(lack of consensus)ということを示す文章を四角いカッコで囲んで示すよう要求した。議長は、アメリカは範囲に関する文章の採択の前に議長の提案に関する懸念を表明しなかったという事実に基づいて、アメリカの反対にもかかわらず、準備会合はこの議事を進めると判定を下した。

34. 準備会合はさらに、包括的指針戦略の序言、必要性の表明、及び目標の節を第2回準備会合とその後提出された文章に基づいて修正した。

35. いくつかの諸国は、包括的指針戦略のリスク削減の節に述べられている優先評価されるべき化学物質のリストにアスベストを特に加えたいと述べた。しかし、いくつかの諸国が反対したので、準備会合は文章に入れることはせず、報告書の中でその事柄を反映することに合意した。

36. 包括的指針戦略を検討する間に、準備会合は相当な議論を生じた文書について作業するための多くのコンタクト・グループと草稿グループを立ち上げた。

37. 財政の考慮に関する包括的指針戦略の節を紹介しつつ、事務局代表は準備会合が第2回準備会合でこの節に関するどのような文章も同意していなかったが、SAICM基金調達の可能性ある方法に関する調査を言及する項に関して同意していということを想起させた。この調査は実施され、2005年6月にスウェーデンで行われた拡大事務局会議において、調査の結果から得られた勧告は第3回準備会合における財政検討のためのスタート・ポイントとして利用されるべきと提案された。これらの勧告は、文書SAICM/PREPCOM.3/3の第 V 章で準備会合に示された。

38. 準備会合はセイド・ムハマド・アリ・モウサビ氏(イラン)とジーンルイス・ウォーレス氏(カナダ)によって率いられるコンタクト・グループを、この節の文章に関するさらなる作業のために立ち上げることを決定した。

39. 原則とアプローチに関する包括的指針戦略の節を導入しつつ、事務局代表は準備会合が第2回準備会合でこの節に関するどのような文章も同意していなかったが、スイス政府に既存の原則とアプローチを明らかにするための限定された調査を要求していたということを想起させた。拡大事務局会議は事務局が修正したこの調査の結果が本準備会合で原則とアプローチに関する検討のためのスタート・ポイントとして包括的指針戦略の中で詳しく述べられるべきと提案され、それらは文書SAICM/PREPCOM.3/3の第 VI 章で準備会合に示された。

40. 準備会合は、この節の文章に関するさらなる作業のためにドナルド・ハンナー氏(ニュージランド)に率いられるコンタクト・グループを立ち上げることを決定した。

41. 実施と進捗管理に関する包括的指針戦略ドラフトの節を紹介しつつ、議長は準備会合が第2回準備会合でこの節に関するどのような文章も同意していなかったことを想起させた。しかし、それは会合間地域協議会で討議された。事務局の代表は、事務局が文書SAICM/PREPCOM.3/INF/5に示される個々に提出されたものとともに地域協議会での議論を文書SAICM/PREPCOM.3/3 第 VII 章のドラフト文章中に準備したということに言及した。

42. 準備会合はクリス・バンデン・ビルッケ氏(ベルギー)に率いられるコンタクト・グループを本節の文章に関するさらなる作業を行うために立ち上げることを決定した。

43. コンタクト・グループの作業及び総会での審議を受けて、準備会合は包括指針戦略の中の多くの要素に関し合意に達したが、ドラフトの多くの節のある点に関し、それらの多くは”財政考慮”と”原則とアプローチ”、について合意に達することができなかった。一人の出席者は、この会合の報告書は、SAICMの実施のための資金調達に関連して、”追加”という言葉が財政検討を扱う包括的指針戦略の節の頭に含まれるべきという見解に言及すべきと要求した。したがって、準備会合は化学物質管理に関する国際会議(ICCM)の検討用に提出されるドラフトは、これらは合意に達しなかったということを示すカッコ([])に入れて本報告書の付属書 II に含めるということに同意した。

44. 実施と進捗管理を扱う包括指針戦略の節に関し、準備会合は化学物質管理に関する国際会議(ICCM)は将来、SAICMの定期的な検証を実施する機関として指定されるべきとすることに同意した。準備会合はまた、国際会議にIFCSの過去の寄与と将来の役割を認める決議を採択することを考慮するよう求めることに同意した。一人の出席者により、下記の決議案文が記録用にとして提案された。

決議文案(訳省略)

C. ハイレベル宣言

45. 議長は、文書SAICM/PREPCOM.3/2に含まれるハイレベル宣言ドラフトを紹介した。彼女は第2回準備会合でハイレベル宣言ドラフトに潜在的論点及び地域協議会でのその後のコメントを含めることに合意が達していると言及した。ハイレベル宣言は、地域協議会、その他の提出、及び拡大事務局会議からのコメントに照らして、彼女自身によって起草された。

46. 総会での議論を受けて、議長は本会合で得られたコメントを反映しつつ、彼女が準備したハイレベル宣言ドラフトの修正版を紹介した。彼女は、宣言ドラフトは本会合では最終決定しないが化学物質管理に関する国際会議(ICCM)に検討用及び採択用に提出されると指摘した。議長によって準備されたドラフトに対して多くのコメントがなされた議論を受けて、彼女は本会合の報告書の目的のためにこれらのコメントに照らしてドラフトを修正することを引き受けた。議長によって提出され、さらに本会合の間になされたコメントに照らして彼女によって修正されたドラフトは本報告書への annex I に含まれている。

D. 提案された妥協案

47. 若干の出席者が準備会合では合意に達しなかった幾つかの論点に関する可能性ある妥協案”パッケージ”を提示した。パッケージによってカバーされる論点には、SAICMの範囲、化学物質管理に関する国際会議(ICCM)の開催頻度、SAICOMの脈絡における予防の適用、”自主的”としてのSAICMの記述、及び”留保条項”の使用等を含んでいた。他の出席者は、妥協案は適切に検討するには提出が遅すぎたということを示唆して、また交渉中に協議されなかったと言ってパッケージに反対した。これらの反対を考慮して、準備会合はそのパッケージを採用しなかったが、本準備会合の報告書への付属書で内容を述べるべきとすることに合意した。したがってそれは本報告書のannex IV に記述されている。

W. その他のことがら

(48〜51) 訳省略

V. 報告書の採択

(52) 訳省略

VI. 閉会


付属書 IV
妥協案パッケージ

 第3回準備会合の最後の数時間で幾つかの諸国が妥協案として下記項目を含むパッケージを提案した。
  • 包括的指針戦略と世界行動計画に”自主的”という言葉を含めること
  • 範囲に関する文章を修正し脚注に”戦略的アプローチは国内の食品又は医薬品当局により規制されている製品の範囲まではカバーしない”という内容を含めること
  • 環境と開発に関するリオ宣言第15原則に記述されている予防的アプローチを参照している項は、現在リスク削減目標中にカッコ付で記述している文に置き換えること 訳注:
    第3回準備会合ドラフトの記述
    (e) 予防的措置の適用を優先的に検討すること。 第3回準備会で合意に達しなかったカッコ付記述
    (e) [懸念に対する合理的な根拠がある時には、化学物質の環境または健康影響に関し、たとえ完全な科学的確実性が欠如していても、予防的措置を適用すること] [深刻な(serious)又は不可逆的なダメージの恐れがある場合には、環境と開発に関するリオ宣言第15原則に記述されている予防的アプローチを適切に適用すること]
  • 原則とアプローチの節の現在の文章は、代わりの文章で置き換えること
  • 化学物質管理に関する国際会議(ICCM)は2009年、2012年、2015年、及び2020年に設定するが、もし国際会議が望むならこのスケジュールは変更することができる。

付属書 V
SAICMの範囲
アメリカ合衆国連邦政府の代表による声明
(脚注18)

 先週までの間に、我々は包括的方針声明及び世界行動計画の中の広い範囲に関する実り豊かな討議を行った。アメリカは全ての代表団が気持ちよく感じ、支援できる文章を展開するために誠意をもって他の代表団に参加した。
 交渉者らが第3回予備会合において非常に速い時間でこれら二つのの文書を討議したということを考慮すると、非常に短い時間で多くの優れた作業を達成した。

 アメリカがこのプロセスを通じて提起した重要な論点は、5月に事務局に提出した我々のコメント及び6月のEU-JUSCANZ会合(訳注:当研究会訳)におけるコメントを含んで、範囲の問題であり、我々全てが同意した節は重大でSAICMの要素を定義する要素である。

 我々は幾つかの代表団から包括的指針戦略の文章のこの部分は既にナイロビでの第2回準備会合で議論されたと聞いている。

 これは事実であるが、第2回予備会合報告書は、この第3回準備会合で範囲の内容をさらに討議することが準備委員会の意図であるということを明確に示している。

 そして、私はこの会議報告書を引用する:

準備委員会は、SAICM関する作業をさらに展開する目的で暫定的にこの声明採択し、地域SAICM会議で検討した後に第3回準備会合で再び取り上げることに同意した。

 したがって、この引用に整合した行動として、アメリカはここウイーンで再び取り上げる必要のある重大な関心事であるとしてSAICM事務局に5月にコメントを出した。
 我々が求めることはSAICMの焦点は実際には農業用と産業用化学物質であるということを認める範囲の用語を明確にすることである。

 我々が要求する修正は:

 第一に、第3項の語句 ”少なくとも下記をカバーし、しかしそれに限定しない広い範囲を持つ”を削除する。

 削除の後、前置き文が次のように始まる。

戦略的アプローチは:a)環境、経済、社会、などを含む。

 第二に、この前置き文は短い語句をもって終わる。
人の健康と環境を守るために

したがって全体の修正した前置き文は

戦略的アプローチは、人の健康と環境を守るために、持続可能な開発を促進し化学物質の全てのライフサイクルをカバーする見解を持って、製品中のものを含んで、下記を包含する。
 (a) 化学物質の安全に関する環境、経済、社会、健康及び労働の側面
 (b) 農業と産業用化学物質

 次に、我々は第3項に第二の文を加える。

SAICMは、国がそのような製品を国内の化学物質管理機関やプログラムを通じてそのような製品を規制する場合は、医薬品や食品添加物のような製品をカバーすることを意図しない。

 この最新の編集は各国にある省庁が規制する化学物質の範囲をどのように分類するかを自身で決定することを可能にする効果がある。

 ひとつの例としてアメリカの場合には、医薬品と食品添加物は既に公衆の健康と環境を守るためにオープンで透明性があり、そして科学ベースのプロセスをもってアメリカ食品医薬品局によって規制されている。

 この種の製品は、我々の場合には、SAICMによってカバーされる必要はなく、国内の機関が必要な監視を行う。

 再度、私が読み上げた上記の提案は、諸国は多くの異なる国内規制の枠組み又は制度を持っていることを認めることを明確にすることである。

 この提案した文言は全ての諸国に、その国内の規制の枠組みに関わらず、自身の規制の枠組みに矛盾せずにSAICMの目的を追求することを可能にする。

 我々の最終の提案変更は項目4に説明的一文を加えるであろう。この変更の目的は、”他の国際的”又は”国内プロセス”を通じて他のアレンジメント及びフォーラムどの重複を避けるという考えを明確にすることである。

 この変更により、次のような文となる。

戦略的アプローチは今日までに展開された法律文書とプロセスを考慮に入れるべきであり、また、他の国際的取組み又は化学物質の軍事的使用の取り扱いのような国際的プロセスと重複することなく新たな取り組みを扱えるよう十分に柔軟性を持つべきである。

ありがとうございます
脚注18
このアメリカの声明文章は受領したままのものであり、編集はされていない。



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