国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)
第3回準備会合 世界行動計画 ドラフト/エグゼクティブ・サマリー


情報源:SAICM/PREPCOM.3/4, 21 July 2005
Strategic Approach to International Chemicals Management (SAICM)
Draft global plan of action


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年11月28日

事務局による覚書

1. 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の第2回準備会合で、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)は3つの要素、ハイレベル宣言包括的方針戦略、及び世界行動計画、により構成されるということが合意された。世界行動計画については、総会に提出された及び総会で提案されたコメントに基づき、連絡グループが具体的な措置のマトリクスを作成した。その措置は包括的方針戦略で確立された目的のカテゴリー、すなわち、リスク削減;知識と情報;ガバナンス;キャパシティ・ビルディング;不法な国際的取引−に分類された。

2. 委員会は、第2回会合の終了後に、事務局が議長と協議の上、重複や冗長を除き、具体的な措置として包括的方針戦略の中の目的からの要素を導入するために、連絡グループが作成した具体的措置のテーブルをさらに修正することについて合意した。そのように修正された本文は、第2回準備会合の報告書の付属書(SAICM/PREPCOM.2/4, annex V)にコメント用として示され、、また会合間協議の期間に地域グループによって、配布された。これらの協議における及び受領したコメントに基づき、事務局は再び議長と協議の上、第3回準備会合でのに委員会の検討用として修正した。

3. 事務局は、ここに謹んで、いくつかの地域グループにより要求されたエグゼクティブ・サマリーと、事務局が議長と協議して一部修正した具体的措置のテーブルからなる世界行動計画ドラフトを、第3回準備会合における検討用に本覚書の付属書(Annex)に示して配布する。
付属書(Annex)
世界行動計画ドラフト/エグゼクティブ・サマリー


1. 現在の文書は、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)のハイレベル宣言と包括的方針戦略に述べられている公約を満たすために関係者によって取られるべき”具体的な措置”を含む世界行動計画を述べるものである。
 ハイレベル宣言は、持続可能な開発に関する世界首脳会議において、化学物質の製造と使用による人の健康と環境への著しい有害影響を2020年までに最小にするためにヨハネスブルグ実施計画で述べられた公約を再確認するものである。
 適用可能性に従い個々のケース毎に関係者によって様々な具体的措置が実施されることになっている。

2. このエグゼクティブ・サマリーは、政策策定者にこの文書の構造の概要を示し、戦略的アプローチに影響を与えるために必要な行動の範囲の正しい認識を与えることを目指している。
 世界行動計画の中で、具体的な措置と関連する活動、指名される主体者、目標とタイムフレーム、及び進捗の指標は、SAICMの包括的方針戦略中に含まれ目的の5つのカテゴリー、すなわち、リスク削減、知識と情報、ガバナンス、キャパシティ・ビルディングと技術援助、及び不法な国際的取引、に従ってひとつのテーブルにグループ分けされている。
 エグゼクティブ・サマリーの目的として、2つ以上のカテゴリーに出てくる横断的措置を表現するために、”一般的な実施の改善”という追加の小見出しが設けられた。

3. 目的の様々なカテゴリーは対応する具体的な措置とともに密接に相互関連性がある。不適切な化学物質管理から人の健康と環境を守るために、非常に多くのリスク削減措置が必要となる。
 非常に多くのこれらリスク削減措置は、化学物質、化学物質に関与する全ての分野の統治計画(制度的な調整、規制の枠組み、及び公共政策を含む)、及びライフ・サイクルを通じての適切な化学物質管理に関連する一般的実施に関する我々の知識と情報の広範な進歩によって支えられなくてはならない。
 さらに、発展途上国及び経済移行国の活動の支援における意味があり時宜を得たキャパシティ・ビルディングと技術援助は、不適切な化学物質管理によって引き起こされる人の健康と環境へのリスクを削減する本質的な改善にとって極めて重要である。

4. 世界行動計画は、適切な化学物質管理の支援の現状を評価し、国家の状況と矛盾することなくそのような管理におけるギャップに対応するために優先度を特定することを含んで、必要性を満たし、SAICMの目的を遂行するために諸国が採用する具体的な措置に関する指針として役に立つ。
 しかし、優先度とタイムフレームは、例えば、ある国である措置を実行するための現状の化学物質管理の状況とキャパシティを反映して、国によって異なるかも知れないということが強調される。戦略的アプローチの目的と整合する適切な化学物質管理のための適切で包括的な能力を築き維持するために柔軟性のあるプログラムを採用するであろうことが期待される。

5. 一般的に、下記活動が優先されるべきである。

(a) 適切な化学物質管理のキャパシティの先進国と発展途上国及び経済移行国との間のギャップを狭めることに注力すること

(b) 既存の協定と作業領域の実施を支援すること

(c) 既存の協定と作業領域の中で現在、対応が取られていない問題を目標とすること

(d) 発がん性・変異原性・生殖毒性((CMRs)及び残留性・生体蓄積性・有毒性(PBTs)物質、内分泌かく乱物質、及び水銀、カドミウム、鉛のような重金属など、特に有害な物質への曝露の最小化又は削減を目標とすること

6. 具体的な措置を下記に概説する。それぞれの措置はサマリーではひとつの主なカテゴリーにリストされているが、詳細テーブルではいくつかのカテゴリーに現われるかもしれない。

リスク削減を支援する措置

7. リスク削減カテゴリーにおいて、人の健康と環境を守ることを目的とする具体的な措置は、特定の脆弱性を持つグループに関連する優先度の高い懸念に対応する行動計画の開発を含む。
 女性と子どもの健康を守るための措置の例として、妊娠前、妊娠中、幼児期、小児期、及び青年期における化学物質曝露の最小化がある。
 労働者の職業安全衛生は、化学物質の職場での危険性を最小化するために国家の検査システム及び雇用者と従業員との意見交換手順の確立などの措置を通じて促進される。
 PBTs、CMRs、内分泌かく乱物質、重金属、及び高い有毒性を持つ農薬などを含んで特別の懸念ある化学物質に対応する措置には、これらの物質のリスク管理優先度を特定するための取り組み、及び代替の開発と使用が含まれる。
 有害な廃棄物の最小化は、汚染現場の特定と浄化復旧が必要である一方、国家の計画と政策、処理業者の意識向上と防護によって強化される。
 汚染防止措置には自動車用燃料中の鉛の廃絶を含む。中毒やその他の化学物質事故へ対応するためのキャパシティが強化される。

知識と情報の強化

8. 知識と情報を強化するための措置には、教育の改善、化学物質のライフサイクルのどの段階においても有毒物質に曝露するかもしれない人々に向けた訓練と意識向上活動、及び、合法的な商業的機密の必要性を考慮しつつ、商業用の全ての化学物質の有害性に関するデータの生成と流布が含まれる。
 この領域におけるその他の措置としては、健康と環境に及ぼす化学物質の影響の監視、調和の取れたリスク評価、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)を実施する取り組み、及び国の汚染物質排出移動登録(PRTRs)の展開と公表などがある。

ガバナンス:制度、法律、及び政策の強化

9. 戦略的アプローチのガバナンス目標の中心は、化学物質と有害廃棄物を取り扱う既存の国際条約を批准し実施するために国内法を検証する措置と国家及び国際レベルで化学物質の安全政策と活動に関する調整と共用作用を改善する措置である。
 そのような国際条約には、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、労働者保護に関するILO条約などがある。
 その他の中核的領域は、特に女性を含んで、全ての関係者の化学物質のライフサイクルの管理への参加を確実にする措置である。
 開発援助、持続可能な開発、及び貧困削減のための戦略に化学物質管理を統合する措置は、化学物質安全活動のための資源のより効果的な方向性を補強するために重要である。
 ガバナンスのカテゴリーに入るその他の措置として、緊急事態発生の備えと化学事故への対応のためのシステムの開発、保護地域内での化学物質使用に関する法の制定、化学物質の製造と使用によって引き起こされる人の健康と環境へのダメージに関連する法的責任と補償の開発、及び化学物質と有害廃棄物の不法な取引の防止と摘発などが含まれる。

キャパシティ・ビルディングの強化

10. キャパシティ・ビルディングの措置には、整合のとれた方法で、また、戦略的計画、リスク評価と管理、テストと研究、及び不法取引の管理を含んで化学的安全に必要な全ての範囲にわたって、SAICMの体系的な実施を支援する必要な技能を供給するための要員の訓練が含まれる。
 整合性を確保するためにキャパシティ・ビルディングに関する情報交換メカニズムが使用されるであろう。

不法な国際的取引への対応

11. 化学物質と有害廃棄物の違法な取引を防止し摘発するために、化学物質と有害廃棄物の国境を越える移動に関する国際的協定のより効果的な適用の方向への取り組みを含んだ国家、地域、及び世界レベルでの活動が必要である。

一般的な実施の改善

12. 具体的な措置のリストは、一般的な化学物質管理の実施を改善する多くの活動を含み、それらは入手できる最良の技術と最良の環境的実践に従ったよりクリーンな製造方法の開発と実施のような措置を必然的に伴う。
 同様に、非化学的代替物の使用を含むより良い農業も促進される。
 製品の安全な製造と使用のための改善された企業の社会的及び環境的責任に関連する措置には、産業のレスポンシブルケア・プログラムや国連食糧農業機関(FAO)の農薬の流通及び使用の管理に関する国際コードのような、自主的な取り組みのさらなる開発と実施などが含まれる。


化学物質問題市民研究会
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