IPEN 2019年3月
OEWG3 に向けた
2020年以降の IPEN の展望

情報源:IPEN, March 2019
IPEN Beyond 2020 Perspectives for OEWG3
https://ipen.org/sites/default/files/documents/
ipen_beyond_2020_perspectives_for_oewg_march_2019.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年4月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/ipen/OEWG_3/
Mar_2019_IPEN_Beyond_2020_Perspectives_for_OEWG3.html


 2020年以降(The Beyond 2020)のプロセスは結果を求められている。すなわち”持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(2030 Agenda for Sustainable Development)(訳注1)に賛成して測定可能な目標に関する勧告を開発”しなくてはならないということである。それに呼応して、 IPEN 運営委員会は、持続可能な開発のために本質的な有害物質のない未来のための行動を説明する 1ページの有害物質のない持続可能な開発目標( SDGs )誓約を2018年に採択した(付属書1 参照)。これは、2030 アジェンダに賛成する測定可能な目標を含んで、 2017年に IPEN とPAN (Pesticide Action Networ) により開発された2020年以降(The Beyond 2020)のトピックスに関する一連の文書(訳注2)を反映している。

 我々の見解では、化学物質の安全に関する新たな世界的合意は、 SAICM のアップグレード(SAICM 2.0)(an upgrade to SAICM (SAICM 2.0))と、特別の権能を与える枠組み(an enabling framework)の両方を含み、また下記の特性を含むべきである。
  • 廃棄物を含むライフサイクル全体を包含する時代を超えた展望と広い領域
  • その要素が 2020年には大臣宣言によって支持され、その結果、国連総会で採択される、全ての化学物質関連の合意を包括する傘の役割を果たす特別の権能を与える枠組み
  • 化学物質と廃棄物問題に対応するために、全ての関連する利害関係者がアクセスできる新しい追加的な、適切な、持続可能で予測可能な資金調達の仕組み
  • 持続可能な目標(SDGs)への測定可能な貢献
  • 多部門アプローチによる全ての利害関係者の自由で包括的で透明性のある参加
 SAICM と特別の権能を与える枠組みの構想は、時代を超越し、優先事項として防止と予防を含み、人間の健康と環境を保護するために役割を果たすべきである。SAICM 2.0 の範囲は、”・・・ライフサイクルを通じて化学物質と全ての廃棄物の環境的に適切な管理”を達成することの重要性を述べている SDG 12.4 で言及されているように、ライフサイクル全体と全ての廃棄物を含むべきである。

 新たな特別の権能を与える枠組みは、ひとつの高いレベルな傘の下に全ての関連する多国間協定を含むべきである。特別の権能を与える協定という言葉は、懸念ある問題に関する将来の法的拘束力のある協定の可能性を念頭に置くべきである。特別の権能を与える枠組みは、いくつかの重要な特性を含み提供する全ての協定の法的自立性を尊重するであろう。
  • 目的、実施、及び報告を通じて強固な一貫性
  • 高いレベルの政治的当事者意識
  • 持続可能な開発目標への化学物質安全の貢献の完全実施
  • 枠組みの中の協定のための資金調達された拘束力のある国家行動計画への関連
  • 自由で包括的で透明性のある多部門及び様々な利害関係者の参加
 SAICM の広い範囲は、現在の化学物質関連条約の枠組みの外にある多くの化学物質暴露をカバーする。化学物質生産及び発展途上世界における現在の急速な拡大があるので、適切な政治的優先と十分なリソースを受ける、効果的で、より強力で、より能力のある SAICM の必要性がますます高まっている。
  • 特定の期限を持ち、持続可能な開発目標への測定可能な貢献を提供する目標のもとに適切な数の野心的な目的
  • 報告についての普遍的で定期的なレビューの方法
  • 世界的レベルで化学物質を製造する産業のコストの内部化を含む、十分で、予測可能で、持続可能な資金調達。化学産業への 0.1 %の課税は、化学物質安全対策の実施のために年間 58億ドル(約6,400億円)を生み出し、リオ原則 16訳注3)と一致する。
  • 全ての IOMC 組織と条約事務局の効果的な関与
  • 機能的な実績があるので、国際会議、手続きの規則、事務局と他の SAICM 要素を改変しない。

付属書1:有害化学物質のない未来は持続可能な開発にとって本質的である


 公益市民社会組織として我々は、持続可能な開発の固有な一部として、有害化学物質のない未来のための世界的キャンペーンに参加する。我々の展望は、化学物質と廃棄物はもはや危害の源ではなく、全ての人々が安全で健康な環境への権利を持ち、周囲の環境と将来の世代への有害な脅威がない世界である。我々は:
  1. 予防原則を適用し、予防的措置の適用に優先的考慮を与える。(リオ原則 15
  2. 意思決定に女性の平等な参加を前進させ、細分化された性別データを入手するよう働き、有害な化学物質及び廃棄物から女性を保護する政策を促進する。(SDG 5
  3. 子どもたちを有害物質と汚染から保護するための公衆健康、環境、及び労働法の設計、実施、及び強化の間、子どもたちの最良の利益を提唱する。(SDG 3児童の権利に関する条約
  4. 化学的農薬、特に高い危険のある農薬の製造と使用を廃絶するために働き、持続可能な農業を支持するためにアグロエコロジーを推進し実施するための国家計画を開発する。((SDG 2
  5. 製品中及びプロセス中の汚染と化学物質を明らかにし、化学物質と廃棄物の排出、及び製品中の存在につじての完全開示についての情報への権利を支持し、実施する。(SDG 12リオ原則 10
  6. 地域社会の意味のある参加を含んで、汚染場素の十可能な浄化を特定し、特性化し、提唱し、世代間の公平を確実にし、生態学的修復を推進する。(SDG 15
  7. 大気、土地、水、食物、製品、及び人々の監視を含んで有害化学物質と廃棄物についての公衆の意識向上を図り、より安全なプロセスと非化学的代替を含んで代替物質の開発と実施、及び汚染を最小にし防止するために法律の強化を促進する。(SDG 6, SDG 12, SDG 16
  8. 水銀、残留性有機汚染物質、内分泌かく乱化学物質、及びプラスチックを含む海洋汚染を低減し、なくすために働く。(SDG 12, SDG 14
  9. 廃棄物監査を実施し、リサイクルとゼロ廃棄物を推進し、有害化学物質のリサイクルにより新たな製品を作るのではない、ゆりかごからゆりかごまで「Cradle-to-Cradle」政策(訳注:プロダクトにとっての墓場が廃棄物処理場だとすると、役割を終えたものを墓場に運ぶことなく、再び製造現場(ゆりかご)に戻していくことを可能にするの)を推し進める。(SDG 11)
  10. 意味のある知る権利を提供し、防止と予防を優先し、最も脆弱な人々を保護する暴露限界を確立し、職場と地域社会に同等な保護を提供する労働安全衛生政策を提唱し強化する。(SDG 8, SDG 9
  11. プラスチック容器と製品の使い捨て使用、及び塗料、ワニス、ラッカー、染料、エネメル、うわぐすり、下塗り、及びコーティング中の鉛の使用を禁止するために政府とともに働く。(SDG 3, SDG 12, SDG 14
  12. 国家、地域、及び世界レベルで化学物質と廃棄物に関する政策と協定の意思決定、及び実施に積極的に参加する。(( SDG 16リオ原則 10
  13. 民間分野がビジネスと人権に関する国連フレームワークを遵守し;廃棄物及びリサイクル基盤を含んで化学製品の全てのコストを内部化する責任を負い;拡大生産者責任を採用し;ナノ物質を含んで化学物質に関する包括的な有害性情報を提供し;製造における有害な化学物質と廃棄物の排出ゼロを達成し;毒性のない、堅固で再使用可能な製品を作るためのグリーン・ケミストリーを実施する。SDG 8, 9, 12, 17, リオ原則 16)


訳注1
訳注2
訳注3



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る