IPEN 2019年9月
IPEN の見解:SAICM 第3回会期間プロセス会合(IP3)
情報源:IPEN, September 2019
IPEN Views of the SAICM 3rd Intersessional Meeting (IP3)
https://ipen.org/sites/default/files/documents/
ipen_views_ip3_23_sept_2019_en.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年10月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/ipen/Beyond_2020/
Sep_2019_IPEN_Views_of_the_SAICM_3rd_Intersessiona_Meeting_IP3.html


Beyond 2020 プロセスへの追加の IPEN 政策ペーパーは下記で見つけることができる。
https://ipen.org/conferences/oewg3
https://ipen.org/documents/ipen-beyond-2020-perspectives
https://ipen.org/conferences/SAICM-IP3

プロセスの検討
  • IP3 は、 SAICM2.0. に加えて、高級レベル権限付与の枠組みについての討議を含むべきである。
  • 現状の新規政策課題及び懸念ある課題は、前進の勢いを失わないようにするために SAICM2.0 に繰り越されるべきである。
  • 諸国及び利害関係者らが化学物質の安全を進めるための広範な活動と有用な作業領域及び活動を失わないようにするために、SAICM 世界行動計画から時間枠を引いたものが新たな協定に繰り越されるべきである
権限付与の枠組み
  • IP3 は、 IP4 における検討用として、権限付与の枠組みに関する様相性(modalities )をさらに展開するために、一人の先進国の共同議長と一人の発展途上国または移行経済国の共同議長の下に、電子的手法によって作業を行いつつ、会期間プロセスを発動させるべきである。
  • 権限付与の枠組みは、ひとつの高レベルの傘の下に、合意された懸念ある課題を含んで、各協定の法の自立性を尊重しつつ、また将来の法的に拘束力のある協定の可能性を認めつつ、全ての既存(脚注1)及び将来の化学物質関連の多国間協定を含むべきである。
  • 重要な特徴として下記を含むべきである:
    • 目的、実施、及び報告の間の強固な一貫性
    • 高いレベルの政治的当事者意識と可視性;
    • 持続可能な開発目標(SDGs)に対する化学物質安全寄与の完全実施
    • 枠組み内の協定のための資金の付いた拘束力のある国家行動計画への関連付け
    • 開かれた包括的で透明性のある多分野にわたる多くの利害関係者の参加
  • Beyond 2020 プロセスは、ICCM 5 の間、又はそれと背中合わせで、多分野大臣会議を開催することを勧告し、権限付与の枠組みの要素を是認する大臣宣言を作成すべきである。
  • Beyond 2020 プロセスは、国連機関及び多国間環境協定に対して、それぞれの権限範囲内で権限付与の枠組みに参加し、責任を持つことを求める決議のために、その大臣宣言を国連総会に送付するようを勧告すべきである。
SAICM2.0 目標とマイルストーン
  • 個々の指標は、”持続可能な開発のための 2030 アジェンダを支持して、測定可能な目標に関する勧告を開発する”という Beyond 2020 の義務を果たすために、具体的で測定可能なマイルストーン及び関連する持続可能な目標を伴うべきである。
  • 指標とマイルストーンは、 SAICM 新規政策課題及び懸念ある課題からの重要な措置を反映する項目を含むべきである。
  • 目的、目標、及び指標は、枠組みのゴール及び時代を超越した展望と密接に関係しているベきであり、何が達成可能で何が現実的かの恣意的な決定のために野心を欠くべきではない。
SAICM2.0 ガバナンスと制度アレンジ
  • SAICM のガバナンスと制度アレンジは、再編成されるのではなく、機能実績をもった SAICM 要素の上に築かれるべきである。これは、国際会議、事務局、及び手続規則などを含む。
  • 権限付与の枠組みのガバナンスは、このトピックに関する作業部会によって議論される様相(modalities)の一部であるべきである。
SAICM2.0 実施を支援するためのメカニズム
  • 化学物質の適正な管理についての組織間プログラム(IOMC)組織への関与
    • 化学物質安全のアジェンダ 2030 目標への寄与に関する詳細な行動計画を通じた IOMC 組織のかなり強化された関与が必要である。
  • 補助的又は限定的な専門家科学団体
    • 見込まれる補助団体が有用であるために、それが化学物質の安全に関連する科学及び公衆衛生の全領域の適切な代表及び考慮を含むことを確実にするために、それは多くの学問領域にわたる団体 (毒性学/生体毒性学を超えて拡大する団体)でなくてはならない。
    • 見込まれる学術補助団体は、残留性有機汚染物質検討委員会(POPs Review Committee)や化学物質検討委員会(Chemical Review Committee)の様な他の化学物質安全科学団体の作業を重複して行うべきではない。
    • 補助団体の正確な職務権限は、全ての SAICM 利害関係者グループが完全に参加し、厳格な利益相反管理方針が実施されることを確実にすることが求められる。
    • 科学の新たな分野と現場でのリスク削減活動のための資金調達の優先度を調査するための資金調達間の適切なバランスを確実にするために、補助団体に関する決定が採用される前にそのような団体の持続可能で適切な資金調達に関する広範な考慮がなされるべきである。
  • 進捗の見積もり
    • 報告の義務的な定期的見直しシステムが実施されるべきである。それは利害関係者からのコメントを含んで、国家行動計画及びその他における活動に関して報告するものである。専門家委員会は報告を検討して勧告を提案し、国は 3年毎に検討対象となる。これらの報告は、資金調達、能力構築、及び協定のその他の重要な要素とともに SAICM2.0 の有効性評価の基礎を形成する。
  • 能力構築
    • 下記を含む具体的なメカニズムが開発されるべきである。
      1. 能力構築と技術協力は評価が必要である。
      2. 開発途上国及び移行経済国による汚染のないクリーンな技術へのアクセスを促進する(脚注2)。
      3. 国語によるものを含んで化学物質と廃棄物に関する無料の情報へのアクセス。
      4. 女性と化学物質の安全に関する政府の能力を構築するための、及び女性と地域社会を含む利害関係者が適切な化学物質及び廃棄物管理に関連する技術的問題の知識及び理解を改善するための、訓練と意識向上。
      5. 人間の健康と環境の保護を増大するために具体的な化学物質安全問題に関する個人的な小集団支援のための国家主導の要求。
       もしパートナーシップが確立されているなら、それらは開かれており透明性があり、下記のパートナーシップ・セクションの要求を満たすべきである。
    • 発展途上国の能力構築の必要性は、国家 SAICM 調整委員会による評価に従う国家主導の要求から生じるべきである。
  • 懸念ある課題
    • 現状の新規政策課題及び懸念ある課題は、化学物質の安全進をめるための前進の勢いを失わないようにするために SAICM2.0 に繰り越されるべきである。
    • 女性と化学物質の安全性は懸念ある課題として確立されるべきである。
    • 懸念ある課題は協調行動を保証し、一般的にはまだ認知されていないか、又は認知されているが十分に対応されてこなかった課題である。
    • 課題は、人間の健康又は環境への相当な潜在的影響;展望に不可欠;その行動が他の行動をどのように補完するか;地域を超えた拡がり;及び分野横断的な広がり;を含む合意された基準に基づき、政府組織により選択され優先付けられるべきである。
    • 進捗は国際会議における規則的報告を通じて、及び限定的な定期的レビューを通じて、追跡されるべきである。
    • どのような懸念ある課題も詳細なレビュー及び厳格な議論なしに保留されるべきではない。
    • いくつかの課題に対する行動は、数ある中でもとりわけ、新たな情報、増大する公衆の懸念、より安全な代替の利用可能性、及び不適切な実施、に依存して加速されるべきである。
    • 懸念ある課題の推進は、異なる組織による検討ために課題を高める可能性を含んで、行動のための勧告をレビューし開発するために、定義された委任事項をもった多数の利害関係者の限定的作業部会の形成を含むかもしれない。
  • 時間をかけて法律文書を更新
    • SAICM2.0 は、新たな情報と課題の出現とともに調整を可能とする更新のためのメカニズムを含むべきである。
資金調達
  • SAICM は資金不足である。GEF-7(地球環境ファシリティ 第7次増資)割り当ては化学物質と廃棄物の焦点領域への資金調達を増額したが、 SAICM への調達は 4年間、1,300万ドルで同じままであり、これは化学物物質と廃棄物の予算の1,4%、 GEF-7 補充(脚注3)の 0.2%である。
  • UNEP は、”化学物質と廃棄物は開発計画の資金投入可能な構成要素であるという公然のシグナルを発し、資金提供者に公式の要求をする”ために、統合アプローチの UNEP 評価(脚注2)中の勧告を実施すべきである。
  • SAICM クリアリングハウスのメカニズムは、適切な化学物質管理のための開発援助を公開で追跡し、それぞれの国際会議の間に報告すべきである。
  • 民間分野の資金調達は統合アプローチの中ではほとんど実施されていない。 UNEP 評価(脚注2)は、”産業の新たな資金提供と現物支給を引き起こすための統合アプローチの使用は強い証拠ではない”と言及している。
  • 世界的レベルでの化学物質製造産業のコストの内部化を含む適切で予測可能で持続可能な資金調達メカニズムが確立されるべきである。世界的化学産業の販売額の 0.1 %の徴収は、化学物質安全措置とリオ原則 16 の実施のために年間 57億ドルを生みだす。
  • UNEP は、”コストの内部化と持続可能な消費及び製造の動機のための、特にグリーン化学への投資のための、市場ベースの手段(marketbased instruments)に関する調査を委託するために”、評価(脚注2)勧告を実施すべきである。
  • UNEP 評価(脚注2)は、”市民社会は資金調達の申請をすることができたはずの QSP(Quick Start Programme)の閉鎖に遅れをとった”と言及している。
  • 評価(脚注2)に沿って、 UNEP は”市民社会の資金調達に対応する解決を提案”すべきである。
  • SAICM 実施のための具体的な資金は、 GEF 分類より少額の助成金を供給する SAICM QSP プログラムからの教訓に基づいて確立され、また公益団体、労働組合、及び健康分野の団体のための資金を含むべきである。
  • ・ IOMC(The Inter-Organization Programme for the Sound Management of Chemicals)組織及び MEA 事務局は、ジェンダー細分類データを含んで、適切な化学物質管理に関する全てのプロジェクト及び活動のためのジェンダー・ガイドラインを開発すべきである。
パートナシップ
  • パートナーシップは、資金メカニズムの運用又は化学産業内へのコストの内部化の必要性のための代用ではない。
  • パートナーシップは:明確な権能、目標、及び標的を持つ;期限を定める;国際的に合意された目標の達成に努める;国内法、開発計画、及び戦略と首尾一貫する;国際法を尊重し、合意された原則と価値に即する;透明で説明責任がある;付加価値を提供する;政府によって作られる代わりの約束ではなく補足とする;確実な資金基礎の調達を持つ;異なるパートナーのために概要が示された明確な役割を持ったマルチステークホルダーにより決定される。
  • 公的に利用可能なパートナーシップの登録は資金提供者及び資金提供のレベル;協定の文言;定期的な更新及びレビューを明らかにすべきである。
  • パートナーシップは、国連事務総長の原則と調和すべきである:”ビジネス分野との協力は透明出なくてはならない。主要な協力的措置の特性と範囲に関する情報は関連する国連のエンティティ(entity)内で一般大衆に入手可能であるべきである”(脚注4)。
  • パートナーシップは、国連グローバル・コンパクト原則及びビジネスと人権に関する国連指導原則(UN Global Compact Principles and the UN Guiding Principles on Business and Human Rights)を含んで国連ガイドライン及び原則(UN Guidelines and Principles)を順守するビジネスとだけ運営するべきである。これらは、”ビジネスは環境的課題に対して予防的アプローチを支持すべきである”、及び”ビジネスは、結社の自由及び団体交渉権の有効な認知を支持すべきである”、というような関連する化学物質の安全原則を含む。

脚注1
 権限付与の枠組みの中の関連協定は次のものを含むが、これ等に限らない。バーゼル、ロッテルダム、ストックホルム、及び水俣条約;SAICM;FAO 行動規範;関連する ILO 条約;及び国際的健康規則。

脚注2
 禁止された、陳腐となった、科学的又は公衆の懸念を引き起こす、又は拒絶される技巧と技術は発展途上国及び移行経済国に移転されるべきではない。

脚注3
http://www.saicm.org/Portals/12/documents/meetings/IP3/INF/
SAICM_IP3_INF5_EvaluationIntegratedApproachFinancing.pdf


脚注4
https://www.unglobalcompact.org/docs/issues_doc/un_business_partnerships/
guidelines_principle_based_approach_between_un_business_sector.pdf



訳注:Beyond 2020 関連情報


化学物質問題市民研究会
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