EUの新たな化学物質規制案は貿易を混乱させる
駐EUアメリカ大使が意見表明 英紙は ”世界のギャングがEUのREACHを襲う”と報道 情報源:The United States Mission to the European Union, June 9, 2006 EU's Proposed Chemical Rules Could Disrupt Trade, U.S. Envoy Says http://useu.usmission.gov/Article.asp?ID=8496693F-0E3D-41A8-9653-5B23FC71713A ENDS Europe DAILY 2113, 09/06/06 World gangs up on EU over Reach http://www.endseuropedaily.com/articles/index.cfm?action=issue&no=2113 (訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会) 掲載日:2006年6月18日 2006年6月9日付けのENDS Europe DAILY は”世界のギャング EU のREACH を襲う” という見出しの下に、EU の最大の貿易パートナーのグループが欧州の政治家らに REACH 規制案の内容を後退させるよう働きかけているとして次のように報道している。 ”この REACH への干渉はアメリカが中心になって行っているものであり、今年の秋に予定されている欧州議会の第二読会での審議に向けたものである。ブリュッセルで6月8日(木)米商務省と、日本、韓国、ブラジル、インド、メキシコなど13ヶ国の駐 EU 外交団によって開催された会議の後に、EU に対して、”REACH の範囲の再考”を要求する共同声明を発表した。このように多くの重要な諸国による EU の計画に対する組織化された激しい干渉は前例のないことである。(訳注1) 以下に駐 EU アメリカ代表団(U.S. Mission to the European Union)の発表記事を紹介します。
EUの新たな化学物質規制案は貿易を混乱させる/駐EUアメリカ大使が意見表明
EU's Proposed Chemical Rules Could Disrupt Trade, U.S. Envoy Says By Bridget Hunter Washington File Staff Writer The United States Mission to the European Union, June 9, 2006 EU's Proposed Chemical Rules Could Disrupt Trade, U.S. Envoy Says http://useu.usmission.gov/Article.asp?ID=8496693F-0E3D-41A8-9653-5B23FC71713A 【ワシントン】 欧州連合(EU)が提案している化学物質の規制枠組みについての懸念が6月8日、駐 EU 大使ボイデン・グレイによって表明された。 ブリュッセル、ベルギーで駐EUアメリカ商務省によって開催された会議でグレイは、EU が提案している REACH(化学物質の登録、評価、認可)の実行可能性及び国際貿易に及ぼす潜在的に破壊的な影響について、”深刻な懸念”を表明した。 EU によれば、REACHは、”EU化学物質産業の競争力を維持し、革新的能力を強化しつつ、人の健康と環境の保護を改善すること”を意図している。それはまた化学物質のリスクと有害性に関するコミュニケーションを管理するために、”産業に対しより大きな責任を課す”ことを意図している。さらに、新たな規制システムを執行するために欧州化学品庁を新設する。 アメリカは、EU に対し利害関係団体、特に EU 域外の団体にもっと多くの情報を提供し、不必要な重複と矛盾を排除するという目でこの規制を見直し、提案されている化学物質の認可と登録の範囲を再考するよう要求するにあたり、オーストラリア、ブラジル、チリー、インド、イスラエル、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、シンガポール、南アフリカ、及びタイと行動を共にした。 これらの EU 貿易パートナーは、REACH のいくつかの条項が、”明確な環境的便益がないのに不必要な市場の混乱を招く”という懸念を表明し、経済協力開発機構(OECD)によって発表されているガイドラインに基づくデータ作成を受け入れることを含んで、REACH 要求を既存の国際的規制の取組との調和を考慮するよう促した。 さらに、REACH は、低所得諸国(low-income countries)の発展を阻害し、EU 市場への開発途上国からの輸出を困難にすると6月8日の共同声明の中で EU 貿易パートナー諸国は述べた。(訳注2) グレイは彼の表明の中で、EU は規制プロセスの透明性を増すよう促した。”私は、立法及び規制のプロセスをもっとオープンにすれば、結果はもっとよくなるであろうと信じる”−と彼は述べた。 米大使グレイは特に下記を要求した。
”商業的に販売されている全ての化学物質と物質を監視するリソースを持っている政府はない”と断言しつつ、”化学物質の登録と認可に対する科学的リスク・ベースアプローチが非常に重要である”−とグレイは述べ、そのアプローチを REACH に導入するようEUを督促した。 グレイは、このアプローチの国際的な支持の証拠として、アラブ首長国連邦のドバイで2月6日に達した合意を証拠として引用した。国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の下で、国連の国際化学物質管理会議(ICCM)での交渉担当者らは、安全な化学物質管理のための自主的な世界戦略に合意した。3年間にわたる交渉の結果、この合意は潜在的に有害な化学物質の影響から人々と環境を保護するよう設計された。(訳注3) 同大使はまた、REACH が新たな化学物質と化学製品の開発に与える潜在的な冷却効果についての懸念を表明した。”REACHに適合するために派生するコストが高すぎ、市場が非常に不確かな時には、価値ある製品は開発されないであろう”−と彼は述べた。 欧州委員会は、REACH の最終的採択は2006年末までに行われることが予想されると述べた。このことは REACH は2007年4月に発効することになる。このタイムテーブルの下で、REACH を執行するための新たな機関は2008年8月までに完全に運用が行われていなくてはならない。 グレイの声明とEU貿易パートナ諸国によって発表された共同声明の全文は、駐EUアメリカ代表団(U.S. Mission to the European Union)のウェブサイトで入手可能である。 アメリカの政策に関する詳細はTrade and Economics を参照のこと。 訳注1: アメリカは、2002年3月21日、当時の国務長官コリン・パウエルが、EU加盟国とその他35カ国に駐在するアメリカ大使に対し、反 REACH 行動要請の電文 "Nonpaper“ を発信 し、REACH つぶしの干渉を行った。 ![]() 訳注2: ![]() 訳注3: 2006年2月4日〜6日の国際化学物質管理会議(ICCM)で、アメリカは、経済と貿易、及び国内の法規制に影響を与えないようにするために、SAICMは”自主的”なものであること、「予防的アプローチ」 と 「原則とアプローチ」 の記述方法を変えること、SAICMの範囲を変更することなどを要求し、SAICMを大きく後退させました。日本政府も共同提案国の一員(豪州、カナダ、日本、ニュージランド、韓国、米国)としてアメリカ政府と行動をともにしました。 ![]() 訳注4: WWF International もアメリカらのREACH干渉について声明を発表しています。 ![]() 訳注5: EurActiv 2006年6月9日も下記報道を行っています。 ![]() |