2003年9月
アメリカのEU化学物質政策 (REACH) への干渉
ジョセフ・ディガンギ博士
エンバイロンメンタル・ヘルス・ファンド

情報源:US Intervention in EU Chemical Policy
Joseph DiGangi, PhD
Environmental Health Fund September 2003
Published by Clean Production Action
http://www.cleanproduction.org/library/USIntervention.pdf

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年9月14日

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/usa/03_09_cpa_reach.html

P.2
目 次

1. 謝辞 2
2. 概要 3
3. 背景 4
 3.1 REACHの歴史と概要 4
 3.2 アメリカの化学物質政策とその結果 5
 3.3 REACHに関するアメリカのロビー活動の情況6
4. アメリカのEU化学物質政策への干渉 8
5. 結論 17
補遺1 ”Health Care Without Harm”からブッシュ大統領への書簡19
参照 25


P.2
 1.謝 辞

 情報公開法に基づく資料請求により入手した資料について、クリーン・プロダクション・アクションとグリーンピースに感謝します。資料入手に当り匿名を希望された方々に感謝します。

 原稿のレビューをしていただいた下記の方々に感謝します。
Charlotte Brody, Gary Cohen, Kelly Heekin, Stacy Malkan, Alexandra McPherson, and Jack Weinberg

P.3
 2.概 要

 2001年2月、欧州連合(EU)は、REACH (約注:Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals 化学物質の登録、評価、及び認定) として知られる化学物質規制政策で従来の政策を一新する計画を発表した。この規制は製造者に製品を市場に出す前に健康への影響テストを実施することを求めるものである。この報告書は、ブッシュ政権下のアメリカ政府による REACH 弱体化のための干渉活動について述べる。

 匿名の協力者から及び情報公開法を通じて入手した資料は、環境保護局(EPA)、国務省、商務省、及びアメリカ通商代表部が偏屈な化学産業界権益とともにくり広げた REACH を弱体化するための大がかりで広範囲なキャンペーンの様子を描き出している。資料は2001年4月から2003年4月までのものである。

 アメリカ化学産業界は、彼等の製品が健康と環境へ及ぼす影響についての情報を提供することを要求し、ほとんどの危険な化学物質の使用を制限する方法を提案している REACH に強硬に反対している。
 REACH は、大部分の化学物質について安全性データの要求から除外していた以前の規制システムに目を向けている。このシステムは現在のアメリカのものと似ており、アメリカでは今日使用されている化学物質の95%が、人間の健康と環境に対する潜在的な危険性についての安全性データを持っていない。

 アメリカの化学産業会は REACH がアメリカの化学物質政策改革のモデルとなることを恐れている。REACH を弱体化するために、産業界は上述の4つの政府組織を引き込んだ。

 これらの資料が示すように、アメリカ政府は本質的にアメリカ化学産業界の支店として働いた。

 これらの行為は、政府機関における政府の行動に企業の影響が及んだことについて議会による徹底的な調査に値するし、アメリカの外交方針についての疑念を提起するものでもある。EPA、商務省、国務省、及び通商代表部はこれ以上の REACH に反対する活動をやめるべきであり、政府当局は、欧州連合(EU)がアメリカの干渉なしに REACH のような重要な公衆健康に関する法を実施する権利を有することを確認すべきである。


P.4
 3.背 景

3.1 REACH の歴史と概要

REACH 提案にいたるまでの出来事

 1980年代、欧州連合(EU)における化学物質規制は対象物質を2つのクラスに分類していた。既存の物質と1981年以降に市場に出された新たな物質である。新たな化学物質については安全性に関する情報を提供することの助けとするためにリスク評価が求められたが、既存の化学物質については事実上、除外され毒性データは要求されなかった。既存の化学物質は使用されている化学物質の95%を占めているので、このシステムでは広く使用されている化学物質のほとんどに対し、不適切な安全情報しかない情況になっていた。

 1993年、欧州連合(EU)は既存化学物質規制法(Existing Substances Regulation)を採択した。この法律は毒性テストを実施すべきものとして141種の既存化学物質を定め、その実施責任を政府に求めた。しかし、10年間にテストが実施されたのは50種以下であり、規制された化学物質は5種未満であった[1]。

 この化学物質政策の非効果性の認識が高まり、1998年の環境大臣による欧州連合理事会で議論がなされた。この会議の結果、”将来の化学物質政策に関する白書 2001年 (White Paper on a Future Chemicals Policy in 2001)” に示される新たな法規制を作るためのプロセスが決定した。この政策は REACH という略称で知られるようになり、欧州連合はパブリック・コメントを求めて2003年7月にこれを発表した。

REACH とは何か?

REACH は Registration, Evaluation, and Authorization of Chemicals (化学物質の登録、評価、及び認可) の略称である。
 登録 (Registration) は、企業に対しその製品の毒性及び人間や環境がそれらにどのように暴露するかについての情報を含むデータを用意することを求めるものである。企業の製品に関するこの情報についての責任と発生するコストは企業側に求められる。
 大量に製造される化学物質、あるいは特に有毒な化学物質には評価 (Evaluation) が要求される。評価の結果、使用が禁止される化学物質もありうる。
 最も有毒な化学物質には認可 (Authorization) が要求される。これらの化学物質の中には、発がん性物質、突然変異誘発性物質、生殖毒性物質、及び難分解性で環境中に蓄積する化学物質が含まれる。認可対象の化学物質は、実質上完全に禁止され、より安全な代替物質が求められる。
P.5
 現状のアメリカの規制とは異なり、REACH の根底をなすものは予防原則である。この原則は、化学物質が人間の健康と環境に脅威を及ぼす可能性がある時には、原因と結果についての完全な科学的証明を待つより、予防措置をとることを唱道するものである。これにより新たな情報が得られるまでに発生するかもしれないダメージを防ぐことができる。
 アメリカ政府は予防原則を政策のベースとして認めていない。アメリカ政府のある高官は、「それは架空のものと考えている。多分、一角獣(unicorn)のようなものであろう」と述べている[2]。最近、サンフランシスコ市は新たな市の条例を評価するために予防原則を用いる新たな環境法(environmental code)を採択した[3]。

 欧州連合(EU)は、REACH により発生する直接コストは概略40億ドル(約4,800億円)、あるいは EU 化学産業界の売上0.1%以下であろうと推定している。間接コストは概略150億〜300億ドル(約1兆8,000億〜3兆6,000億円)と推定している。
 簡単には数値化できないが、REACH にる金銭的な利益も推定されている。欧州連合(EU)は、職業上の健康利益だけ考慮しても、約200億〜500億ドル(約2兆4,000億〜6兆円)のコスト削減となると推定している。世界野生生物基金(World Wildlife Fund)は、REACH の健康利益を一般大衆にまで広げることにより、概略1,800億ドル(約21兆6,000億円)の正味健康利益が得られると推定している[4]。著者は、この数値は環境利益を考慮に入れていないのだから、まだ過小評価であると信じている。

 REACHの簡単な紹介については[5]を、詳細については[6, 7, 8]を参照のこと。

3.2 アメリカの化学物質政策とその結果

有害物質規制法

 有害物質規制法 (Toxic Substances Control Act (TSCA)) がアメリカにおける化学物質規制の主要な法律である。TSCA では化学物質を2つのグループ、既存化学物質と新化学物質に分類している。

 これら化学物質のあるものは動物実験で毒性があることが分かっており、人間の体組織中でも検出されるので健康への影響が心配される。例えば、臭化難燃剤(それらのうちのいくつかは最近、カリフォルニア州で禁止された[9])、フタル酸化合物(それらのいくつかは、玩具や化粧品での使用・販売が EU で禁止された)、そしてテフロンやスコッチガードに用いられる過フッ素化合物 ( perfluorochemicals 現在、EPA が調査中) などである。
P.6
 臭化難燃剤の詳細は[10]、フタル酸化合物の詳細は[11]、過フッ素化合物 (perfluorochemicals) の詳細は[12]を参照のこと。

 TSCA でカバーされる化学物質は、例え潜在的危険性が見出されても、それを制限することは難しい。この法律は、ある化学物質が市場で禁止される前に、政府がリスクを立証することを求めている。また政府は公衆の健康を守ることの方が規制により発生する産業側のコストより重要であるということを立証しなくてはならない。このことでしばしば化学産業側との訴訟問題に発展する。その結果、EPA は25年間で TSCA の下で禁止した化学物質は10種類以下である。それらの例は、冷却塔中での6価クロム、鉛ベースの塗料、そして PCBs である。

 TSCA と REACH の概要については[13]、TSCA の詳細については[14, 15]を参照のこと。

環境関連の病気のコスト概算

 アメリカの化学物質規制法を REACH と同様なもに変更した場合の金銭的な利益はまだ算出されていない。しかし、化学物質汚染による子どもの病気のコストは概算されている。マウント・シナイ医学校は、化学物質汚染による子どもたちの鉛中毒、ぜん息、がん、及び発達障害によって生じる年間コストは少なく見積もっても488億〜648億ドル(約5兆8,600億〜7兆7,800億円)であるとしている。これはアメリカの全医療コストの約2.8%にあたる[16]。

体内汚染

 多分、アメリカの化学物質規制の失敗を最も鮮やかに示しているのは、化学産業の製品が人間の体内に存在することを明らかにしている研究結果であろう。2003年1月、アメリカ疾病管理センター(US Centers for Disease Control)は、その多くが実験動物に有毒である116種の産業化学物質が平均的アメリカ人の体内に存在していたことを示す大規模な体内汚染調査研究の結果を発表した[17]。この調査で分かったことのひとつは、子どもたちの体内には大人より高濃度の鉛、喫煙代謝物、フタル酸化合物、及び殺虫剤が存在したということである。
 マウント・シナイ医学校、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ、及びコモンウィールは他の調査を実施し、9人のボランティアの体内から167種の有毒化学物質を検出した[18]。検出された167種の化学物質のうち、76種は人間と動物に発がん性があり、94種は脳と神経系に有毒であり、79種は先天的障害または発達障害を引き起こす物質であった。
 双方の調査概要については[19]を参照のこと。

3.3 REACH に関するアメリカのロビー活動の情況

 2つの重要な出来事が REACH に関するアメリカのロビー活動の情況を示している。

1) 化学産業界の強い要請で、クリントン政権により行われた欧州連合(EU)へのロビー活動
2) 2000年の大統領選挙における化学産業界のジョージ W.ブッシュのための資金調達
P.7
 1998年、クリントン政権の国務省及び商務省は、化学産業界及び玩具産業界の利益のために、欧州連合がビニール製玩具へのフタル酸化合物の使用を制限しようとする計画を狂わせようとロビー活動を行った[20]。この活動に対し、欧州連合代表ヘンリー・ワクスマンとジョージ・ミラーはホワイトハウスに、外国の公衆の健康に関する立法に口出しするのはアメリカ政府の外交方針かと問い正す手紙を出した。彼等の手紙は副大統領アル・ゴアの、国務省及び商務省は EU の立法に対するロビー活動を止めるよう要求する公式な対応を引き出した。「我々は各国の公衆の健康と環境基準のための立法の権利、及び適切な予防措置(precautionary action)をとる権利を認め、これを尊重する」 とゴアは書いた[21]。
 EU は6種類のフタル酸化合物を緊急禁止とし、その後、現在に至るまで6ヶ月毎にこの禁止令は更新されている。

 1999年、化学産業界はテキサス州知事ジョージ W.ブッシュを大統領候補とするために積極的な資金調達活動を展開した。同産業界はテキサス州で大きな影響力を持ち、ブッシュと密接な関係にあり、彼の法規制を押しのけるやり方を認めていた。米国化学工業協会(American Chemistry Council)の会長フレッド・ウェバーはブッシュの資金調達の”先鋒”となり、選挙費用100,000ドル(約1,200万円)以上を調達した。ウェバーはまた、ダウ・ケミカル社の CEO ウィリアム・ストゥラブポウルスと、オクシデンタル・ケミカル社の CEO ロジャー・ハールにブッシュの選挙費用を調達するよう説き伏せた。「この産業界はブッシュを支援すると公言しており、彼のために莫大な選挙費用を調達すると約束している」[22]。フレッド・ウェバーが予想したように、「ブッシュが勝てば、化学産業界は我々のことをいつでも喜んで聞いてくれる指導者に近づくことができる」[23]。
 2000年の共和党全国大会において新たな報告書が、寄贈者とロビー活動家が政治家たちに近づくために、いかに高額な金を使うかを述べている。米国化学工業協会は議会の商務委員会の共和党議員の大部分に近づく道を得た。後に化学産業界は REACH に反対するためにこの人脈を使うこととなった。


P.8
4.アメリカの EU 化学物質政策への干渉

 (訳注:以下については項目のみ列挙し、内容の訳は省略)

 政府チームの召集2001年2月8
 EPA、自主的規制を主張8
 産業界との調整2001年6月14日8
 産業界の不満、政府の対応2001年9月9
 アメリカ政府の無記名文書 (REACH批判)10
 国務長官パウウェル、行動を起す2002年3月21日11
 国務省、EPA と産業界とともにドイツへ働きかけ2002年3月22日11
 商務委員会の非公開会議2002年4月9日12
 アメリカ大使の発言 (産業界のREACHへのロビー活動を支援))2002年5月21日12
 商務長官ドナルド・エバンス、デュポン社へ手紙を書く2002年5月28日13
 アメリカ大使の警告 (REACH への懸念)2002年7月25日13
 イギリス化学産業界 イギリス政府の政策策定に協力2002年8月13
 商務副長官サム・ボッドマンの発言 (REACH批判)2002年8月14
 国務省、EPA とともにロビー活動のためにフルッセルへ2002年9月14
 産業界の謝意2002年10月14
 アメリカ−EU 非公開高官会議 2002年12月16日14
 商務省グラント・アルドナスの発言2002年12月17日15
 アメリカ大使シュネーブル、アメリカ関係者の参画をEUに要求2003年3月15
 他の国が REACH をまねるのではないかという懸念2003年4月2日16
 国務長官パウエル、REACH 発表前にロビー活動2003年4月29日16
 MGO (遺伝子組換え生物) 論争より大きい2003年5月16
 国務省、産業貿易グループを支援2003年5月6日17
 アメリカ大使シュネーブル、アメリカの攻撃を否定、産業界参加を督励2003年5月12日17


P.17
5.結 論

 アメリカ政府は REACH について化学産業界の立場を支持し、EU の立法の過程で積極的に干渉した。政府はその政策の策定にあたり、市民、公衆の利益擁護者、環境団体、公衆健康専門家たちは REACH の環境と公衆健康の重要さに大いに関係がある”関係者”であるにも関わらず、彼等を締め出して、産業界とのみ非公開で進めた。政府は REACH のビジネス上の利益についてすら分析しておらず、明らかに、利権を有する産業界の強い要請に応じて主権国家の公衆の健康のための法を弱体化することに、正当性があると感じていた。

 皮肉な見方をすれば、アメリカ化学産業界は、公衆が化学産業界は軟弱であると確信した正にその時に、REACH に反対している。EU は REACH を必ず実施するために立法措置を進めているので、アメリカ産業界は古臭くなったアメリカの制度を一新する第1段階として、EU の立法を支援することで、公衆の自信を回復する機会を与えられている。さもなければ、産業界は過去のしがらみの泥沼から抜けきれず、数億ドル(数百億円)の金を費やしてイメージ回復のためのキャンペーン計画を打ち上げる羽目となる。

 政府内部文書が暴露したところでは、最近の政府機関の行動と任務の間に矛盾があることを示している。
P.18
 例えば、EPA の人間の健康を守り環境を保護するべき任務は、EPA がアメリカ化学産業界の重役達と REACH に反対してドイツ政府にロビー活動をするということと、矛盾する。商務省は、他の産業に対し てREACH がもたらす利点を考慮せずに化学産業界の主張を採用した。例えば、REACH は、化学産業界の製品を使用している化粧品、玩具、繊維、建材、そして電子などの産業が現在抱えている製品の信頼性への懸念を減少することができる。

 化学産業界の強い要請でアメリカ政府は、EU の公衆の健康を強化するための努力を弱めるために干渉を行った。このことは政府機関における政府の行動に企業の影響が及んだことについて議会による徹底的な調査に値するし、アメリカの外交方針についての疑念を提起するものでもある。
 EPA、商務省、国務省、そして通商代表部(USTR)は、これ以上 REACH に反対するロビー活動をやめるべきであり、ブッシュ政権は REACH のような重要な公衆の健康に関する法をアメリカの干渉なしに実施する EU の権利を公に確認すべきである。


P.19
補遺1
ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハームからブッシュ大統領への書簡

Health Care Without Harm

2003年9月9日
大統領ジョージW.ブッシュ
The White House
1600 Pennsylvania Avenue NW
Washington, DC 20500
親愛なる大統領、

 我々は、環境健康専門家、医師、看護婦(士)、子どもの健康擁護者、環境団体、及び地域共同体を代表して、REACH (Registration, Evaluation, and Authorization of Chemicals) とも呼称される欧州連合の化学物質政策改革案を脅かそうとするアメリカ政府の行為に対し深い懸念の意を表明するためにこの書簡を差し上げる。我々は、あなたが、あなたの政権内の主要な高官たちに連邦政府の金を使ってこの重要な法案をつぶそうとする試みを止めさせ、公衆の健康に利益となる化学物質政策の進歩的な改革案を支援する方策を探させるよう要求する。

 アメリカ政権は、国務省、商務省、アメリカ通商代表部、及びアメリカ環境保護局(EPA)を通じて、欧州の改革案に反対して積極的にロビー活動を行っている。我々は、特にアメリカ政府の立場がアメリカの化学製造業界の偏狭な利益のみをを密接に反映し、危険な化学物質からアメリカとヨーロッパの公衆を守る政策を確実にしようと活動している公衆健康と環境の擁護者だけでなく、環境によりよい、より安全な化学物質から利益を得る他の産業を除外していることに問題があることがわかった。

 最近のアメリカ、カナダ、及びヨーロッパの科学的証拠は、テストも規制もされていない化学物質が人の体の組織や母乳に蓄積していることを示している。また毒物学的発見により、ある化学物質は非常に低用量の暴露でも、先天的障害、生殖障害、及び神経系障害を含む非常に深い繊細な影響を生じることがわかった。我々は特に一般大衆の中で測定されている広範囲な化学物質について懸念を持っている。ある物質については水銀のように、その毒性は疑いの余地がない。また、他の物質については、適切な毒性テスト・データが簡単に入手できない。これらの物質に公衆が暴露し続けているので、人間の健康と環境を守るために、広範な安全性テストが明らかに必要である。

 REACH の下で提案されている化学物質管理システムは、アメリカ及びヨーロッパの現在のシステムの多くの欠陥に目を向けている。ご存知のように、アメリカの手ぬるい化学物質規制は、今日、市場に出回っている化学物質の95%は健康と環境に対する潜在的な影響に関する基本的なテスト・データがないという情況を生み出した。

 REACH は、まず最初に、年間 1トン以上製造される叉は使用される既存及び新たな化学物質の健康に関するデータを要求し、これらにより空白の情報を埋めることから始める。REACH は、難分解性で環境中に蓄積する化学物質に加えて、発がん性、突然変異誘発性、及び生殖毒性を有する本質的に有害な化学物資を制限し、ある場合にはその使用を禁止する。ある特定の化学物質が市場で使用されても安全であることの証明を製造者に求めることは常識であり、化学物質管理として当然なされていなければならなかったことである。

 アメリカ政府と化学産業界は、REACH で提案される化学物質のテストにかかるコストは産業界にとって重荷になると主張している。しかし、最新のヨーロッパ理事会の推定によれば REACH 改革の全コストは40億ユーロ(約5,000億円)叉は欧州連合の化学物質の年間総売上のわずか0.1%であるとしている。これは環境保護のための投資としては非常にささやか金額であり、特に、医療、汚染管理、及び化学物質による汚染浄化に数十億ドルを費やすことと比較すればなおさらである。

 アメリカ政府と化学産業界の RREACH に対する反対は、また、お粗末な環境汚染管理に起因する人間の被害と病気の計り知れないコストを無視するものである。金銭的なコストだけでも驚くべきものがある。アメリカでは、マウント・シナイ医学校の科学者たちが、環境汚染に起因する子どもたちの鉛中毒、ぜん息、がん、及び神経行動障害にかかる年間コストは549億ドル(約6兆5,900億円)と算出している。EU では、環境長官マルゴット・ウォールストロームが、REACH は、がんに関して年間2,200から4,300症例削減するとともに、医療費に関しては今後30年間で200億〜600億ドル(約2兆4,000億〜7兆2,000億円)が節約できると算出している。

 我々は、アメリカ政府がアメリカの消費者及びビジネス界に潜在的な利益をもたらすことを認め、EU の化学物質政策改革を妨害することを止めるよう強く求める。我々は現政権が、アメリカ環境保護局、アメリカ通商代表部、商務省、及び国務省を通じて、NGO やビジネス界を含むアメリカ国民に将来を見据えた化学物質政策に関するパブリックコメントを求め、21世紀の新たな経済的現実を用意することを要求する。

 本件についての問い合わせ
Charlotte Brody, R.N., Executive Director
Health Care Without Harm
1755 S Street NW Suite 6B
Washington DC 20009
202-234-0091

あなたの対応ををお待ちしています。

敬具

(以下署名 数10人、及びCCのあて先20強については訳省略)


P.25
参 照
1 http://www.chemsec.org
2 Lowenberg S. Precaution Is for Europeans. New York Times, May 17, 2003
3 Rosen R. Better Safe Than Sorry. San Francisco Chronicle, June 19, 2003
4 http://www.wwf.org.uk/news/n_0000000934.asp
5 http://www.worldwildlife.org/toxics/whatsnew/reach_qa.htm
6 http://www.chemicalspolicy.org
7 http://www.chemsec.org
8 http://europe.eu.int/comm/enterprise/chemicals/chempol/whitepaper/reach.htm
 http://www.europa.eu.int/comm/environment/chemicals
9 Cone M. Researchers Link Flame Retardants to Hazards;
Studies indicate the widely used chemicals affect sexual as well as brain development.
Los Angeles Times, August 25, 2003
10 http://www.cleanproduction.org
11 http://www.noharm.org
12 http://www.ewg.org
13 http://www.cleanproduction.org/AAbase/default.htm
14 http://www.chemicalspolicy.org
15 http://www.epa.gov/compliance/civil/programs/tsca/index.html
16 Landrigan PJ, Schechter CB, Lipton JM, Fahs MC, Schwartz J.
Environmental pollutants and disease in American children: estimates of morbidity, mortality,
and costs for lead poisoning, asthma, cancer, and developmental disabilities.
Environ Health Perspect. 2002 Jul;110(7):721-728
17 Centers for Disease Control, Second national report on human exposure to environmental chemicals,
Department of Health and Human Services, January 2003
18 http://www.ewg.org/reports/bodyburden/
19 Malkan S. Pollution of the People. Multinational Monitor, May 8, 2003
20 Gerstenzang J. U.S. Lobbies EU on Toy Restrictions; Trade:
Efforts to ban controversial chemicals used in many items spur outcry from makers.
Studies suggest they may cause medical problems. Los Angeles Times, May 28, 1998
21 Toloken S. Al Gore praises efforts to limit phthalates. Plastics News, January 18, 1998
22 Glasser SB, Mintz J. Bush's Capital Plan To Woo Big Business;
First, He Wins Over Trade Group Chiefs, Washington Post, August 1, 1999
23 Fairley P. Executives Ante Up for Access to Bush, Chemical Week, August 4, 1999
24 Kettle M. Republican convention: 'If all goes well, you're looking at the next president of the US'.
Guardian UK, August 3, 2000
25 Copperthite, K. Department of Commerce, Don Wright issueppreuchem.wpd, June 14, 2001
26 Wright, D. White Paper Briefer drafted by C Auer, US EPA;
Don Wright white paper briefer 05 01.doc, May 2001 State Department officials included Russ LaMotte,
Ned Nyman, and Patricia Norman.
27 Copperthite, K. Department of Commerce, Don Wright issueppreuchem.wpd, June 14, 2001
28 Email from Fred McEldowney, American Chemistry Council to Stuart Keitz, Department of Commerce
and copied to various American Chemistry Council people and Kim Copperthite,
Department of Commerce sends Chemical Background Paper Copperthite, K.
Chemical Industry Participants Background Paper for the Stockholm CEO Conference
FM090701.doc, September 7, 2001
29 Trans-Atlantic Business Dialogue Tetra-Partite Chemicals Working Group Meeting;
EU and US Industry Representatives and Government Authorities American Chemistry Council Headquarters,
Arlington, Virginia, January 17-18, 2002
P.26
30 Wright D. Department of Commerce, Chemicals White Paper, January 2002
31 Wright D. Department of Commerce, Chemicals White Paper, January 2002
32 Wright D. Department of Commerce, Background paper and talking points for Conlin, January 2002
33 Belton KB, Moore M, Myers E, Swift K. Impact of the proposed EU chemicals policy on US exports.
American Chemistry Council, January 4, 2002
34 United States Nonpaper on EU Chemicals Policy; undated; no agency authorship given
35 Yoder JP. US Government Responds to the EU Chemicals Policy.
Chemistry Business, American Chemistry Council, June 2002
http://www.accnewsmedia.com/docs/200/169.pdf
36 Powell C., State Dept cable to EU Member States about the EU chemicals policy. March 21, 2002
37 Amb. Rockwell Schnabel: "The U.S.-EU Relationship: U.S. Priorities During the Danish Presidency,
" May 21, 2002
http://www.useu.be/About%20the%20Embassy/Ambassador/Speeches%20Schnabel/
May2102SchnabelSpeechCopenhagenRegulatory.html
38 Franz N. Chemicals Lose Trade Fight to Green Groups; Commerce. Chemical Week, August 15, 2001
39 Amb. Rockwell Schnabel: Developments in the European Union:
Taking the Measure of Our Global Partner, July 2002
http://www.useu.be/About%20the%20Embassy/Ambassador/Speeches%20Schnabel/
July2502SchnabelSpeechUS.html
40 Email from Liz Surkovic, CIA, UK, to Charlie Auer, EPA; August 29, 2002
41 Deputy Secretary of Commerce Sam Bodman remarks to the American Chemical Society, August 19, 2002
http://www.commerce.gov/opa/speeches/Bodman/2002_Aug_19_ACS.htm
42 Email from Todd Wilson, State Department, to Susan Hazen, Charlie Auer, EPA and other EPA
and State Dept personnel about a lobbying trip to Brussels. September 27, 2002.
43 Memo from Henry Levine, Deputy Assistant Secretary of Commerce for Europe,
to US Department of Commerce about meeting with the American Chemistry Council, October 25, 2002
44 Event brief for meeting between Department of Commerce and European Commissioner for Enterprise
and Information, Erkki Liikanen, December 16, 2002
45 Schnabel R. Transatlantic formula invaluable in push to meet Lisbon objectives.
European Voice March 20-26
46 State Dept addresses the Synthetic Organic Chemical Manufacturers Association's Global Chemical
Regulations Conference, Baltimore, MD Chemical Regulations Conference held March 31 - April 2, 2003
http://www.socma.com/Conferences/gcrc/2003/feature7.htm
47 Powell C. State Department Cable to EU Member States, EU Candidate States, April 29, 2003
48 Becker E, Lee, J. Europe Plan on Chemicals Seen as Threat to U.S. Exports. New York Times, May 8, 2003
49 Singer P. EU moves ahead with chemicals policy as US tries to slow process. Inside US Trade, April 26, 2003
50 Becker E, Lee J. Europe Plan on Chemicals Seen as Threat to U.S. Exports. New York Times, May 8, 2003
51 Schnabel R. An EU plan for regulation . International Herald Tribune, May 14, 2003 52
http://www.useu.be/About%20the%20Embassy/Ambassador/Speeches%20Schnabel/
May1203SchnabelItalySpeech.html

(訳: 安間 武 /化学物質問題市民研究会)



化学物質問題市民研究会
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