EurActiv 2008年6月3日
アメリカの目
REACHスタイルの化学物質法


情報源:EurActiv, 3 Junel 2008
US eyes REACH-style law for chemicals
http://www.euractiv.com/en/environment/us-eyes-reach-style-law-chemicals/article-172968

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年6月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/080603_REACH_US_eyes.html


 産業界からの激しい批判にもかかわらず、アメリカはEUの議論あるREACH化学物質規制と同様な規則を採用する方向に動いているよう見える。この動きは、新たな欧州化学物質庁が数千の新規化学物質の登録要求を処理する能力があるのかという疑念の中で、6月3日にヘルシンキに同庁が開設されるにあたり、明らかになってきた。

 新たな規制REACHが昨年6月に発効したのを受けて、年間1トン以上の化学物質を製造又は輸入している欧州の企業は2008年11月1日までに化学物質の事前登録を完了させなくてはならない。

 その後、企業は1,000トン以上製造又は輸入する物質をは2010年までに、また1-100トンの物質を2018年までに、最終登録し市場に出すことの認可を得なくてはならない。

 REACHは現在、約30,000種の化学物質を対象としており、新たな欧州化学物質庁(ECHA)は、今後15年間で対象化学物質に登録責任のある企業から180,000件以上の登録を受け付けることになると予測されている。

 REACH策定プロセスがまだ初期段階の頃、産業側によってREACHはコストがかかり非常に煩雑であると激しく非難された。特に欧州にとっての主要な貿易パートナーによって潜在的な貿易障壁になるとして批判された。米下院の2004年の報告書は、いかににブッシュ政権がEUに対しその化学物質規制を弱めるために圧力をかけたかを示している(訳注1)。

 しかし、同様な立法への動きが現在、米上院で起きているが、産業側はそのような取り組みに対して激しく反対し続けている。

 アメリカでREACHに最も近い法律は1976年に制定され米環境保護庁(EPA)によって実施されている有害物質規正法(TSCA)である。それは、もし化学物質が有害であるとわかれば、それらを制限するか禁止するように見える。

 TSCAとREACHの主要な違いは、アメリカ版は有害物質のリスクを立証する責任は政府にあり、REACHでは化学物資が安全であることを立証する責任が産業側にあるということである。米上院で欧州のシステムの支持が増加している。

 上院議員、バーバラ・ボクサー(Barbara Boxer)は、REACHに似た新たな化学物質政策を提案する運動を指導しており(訳注2)、彼女はすぐにワシントンで行動を起こすとの憶測もある。しかし最近の上院環境公衆委員会で、どのような新たな化学物質規制にも反対するという証言があった。

 米化学工業協会(SOCMA)からの代表は上院に対し、EUのREACHのような画一的な化学物質規制の新たな法体制を採用することが必要又は賢明なのか慎重に再考することを勧告した。

 この論争は、コスト増大のために投資と革新が低迷するなどREACHがもたらす可能性のある影響を産業側代表が非難したREACH制定プロセスの初期の状態を映し出している。

 強い批判が米化学工業協会(SOCMA)の会員であるファンウッド化学会社の社長ジム・デリシによりなされた。”REACHが人の健康又は環境を改善するかどうかは今後長い間、わからないであろうが、規制当局と産業側が提携する可能性は既に明確である”と彼は述べた。デリシはREACHは、”EUの能力の限界を超えている”と付け加え、”アメリカはこの実証されていない、極めて官僚主義的な化学物質規制へのアプローチには耐えることができない”と述べた。


訳注1:関連記事
アメリカのEU化学物質政策 (REACH) への干渉 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/usa/03_09_cpa_reach.html

EHP 2003年11月号 化学の安全性を求めて手を伸ばす (REACHing)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/usa/03_11_ehp_reach.html

訳注2:バーバラ・ボクサー関連記事
子ども安全化学物質法案はEPAにテスト要求権限を与える−米会計検査院(GAO)の報告書に基づく法案−
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_05/05_07/05_07_18_ens.html



化学物質問題市民研究会
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