NGOs 7 団体 2016年3月2日
欧州議会予算管理委員会への公開書簡
欧州食品安全機関(EFSA)の利益相反:もうたくさんだ!

情報源:Seven NGOs, Mar 2 March 2016
An Open Letter to the European Parliament's Budget Control Committee
Conflict of Interest at the European Food Safety Authority: Enough is enough!
cc : Members of the Management Board of the European Food Safety Authority (EFSA), Commissionner V. Andriukaitis, DG SANTE, European Commission
http://env-health.org/resources/letters/article/conflict-of-interest-at-the

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年4月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/
160302_Open_Letter_to_EP_BCC_on_Conflict_of_Interest_at_EFSA.html

欧州議会予算管理委員会 御中

拝啓
 2016年1月26日、EFSA は、新たなコミュニケーション・ディレクターとして5月1日からバーバラ・ガラニ女史を起用すると発表しました。ガラニ女史は食品分野で長い経歴を持っています。しかし疑念があります。今日、この人物はまだ、イギリスの食品産業界の団体である食品飲料協会の首席科学者です。ロビーイストとしてガラニ女史はまた、”食品チェーンの代表のために確保されていた議席のひとつである EFSA の理事会のメンバーとなることを申請していました。その後、彼女はこの申請を撤回しました(1)。

 この任命をもって、EFSA は、ひいき目にみても政治的環境を理解していないか、最悪、EFSA が規制している業界からの独立性に無頓着であることを再び示しています。いずれにしてもこの決定は EFSA の信頼を維持するためには大きな失敗です。

 もうたくさんです。私たちは、私たちの狼狽を表明するためにこの書簡を書いています。私たちはこの EU 機関が高潔性を強化し、もっと透明性と独立性を持つよう説得することを試みて長年、 EFSA と協議を重ねてきました。私たちは、忍耐強く、建設的であり、数多くの公的及び私的協議、公開討議及び会議に参加してきました。欧州議会はまた、2011年以来、政治会派を越えて、EFSA がその評判を改善すること、特に2年間の金銭的利益相反に関する冷却期間を課すことを望んでいることを明らかにしました

 議会の要求に対するフォローアップ報告書の中で EFSA は、改善することは約束しましたが、利益相反が起きるのを許す抜け穴をふさぐこと(項目10)は拒否しました。EFSA により規制される会社に金銭的利益をもつ専門家らが、まだ EFSA の科学委員会及び作業グループ内にいるのが見られますが、それは そのグループの特定の話題だけに従ってこれらの人々の利益だけを調べ、これらの利益が事実上 EFSA によって規制されているかどうかを調べていないからです。話題が具体的であればあるほど、抜け穴は大きいのです。このシステムではファーストフード会社から資金が出ている科学者の揚げ物に関する研究がハンバーガーに関する科学的審査に指定される可能性があります。話がそれますが、しかしこんなことで本当に独立性について説得できますか?

 確かに EFSA で少し変化がありました。でもそれはとても小さなことです。EFSA の独立性に関する批判的な一連の裁定の後、欧州オンブズマン(訳注1)は、独立性に関する EFSA の手続きについて彼女が自主的に調査することを示唆しました。メディアは EFSA に利益相反が存在し続けていることを報道しており、EFSA は現在、メディア暴露を非常に恐れているので、メディアの取材をすっかり断っています。EFSA はジャーナリズムが悪いと主張し続け、そのコミュニケーションを改善する必要があると述べています。食品産業からロビーイストを雇うことによってでしょうか?

 EFSA は、議会の要求を実施するために EFSA の委員会に適合する十分に能力ある専門家を見つけることができないことを恐れています。しかしこれには、専門家にその専門性は興味深いものとして検討されるが、委員会の仕事には口を出させないという条件で意見を聞くというような、簡単な解決方法があります。

 EFSA はもう一つ、もっと都合のよい言い訳を持っています。すなわちEFSAはこれらの専門家らに支払いをすることができず、自分たち自身に関する調査を実施する予算もない。無料の支援ということはほとんどなく、国家機関、研究センター、及び大学からの公的支援は切り詰められているという口実です。そのことがロビーイストが入り込む余地を残します。

 実施上の制約に対して独立性を犠牲にしなくてはならないことは、公的リスク評価機関にとって絶望的な状況です。しかしその責任は、本質的には、EU の5億人の市民の食品安全のために少なくとも200人の独立系専門家の予算を EFSA に与えない欧州委員会にあります。 EFSA の予算は削減という事態にさえに直面しています。欧州委員会は過去数年、EFSA における利益相反に関する欧州議会議員の懸念を組織的に退けてきました。

 私たちは欧州議会予算管理委員会に次の二つのことを要請します。

  • EFSAにより規制される商業権益からの真の独立性政策を EFSA が確立しない限り、その予算執行を延期すること。彼らは今年中に独立性政策の改正を計画しているのだから、彼らは現在それを実施する完全な機会を持っている。

  • EFSA が独立系専門家に支払い、組織内研究を開発するための本質的な追加予算を提供することを欧州委員会が確実に約束しない限り、その予算執行を延期すること。
敬具

 Corporate Europe Observatory
 Fondation Sciences Citoyennes
 GMWatch
 Groupe international d' etudes transdisciplinaires (GIET)
 Health & Environment Alliance (HEAL)
 Pesticides Action Network Europe
 Testbiotech

原注
(1) 理事会の二人のメンバーがすでに食品産業から来ている。
(2) See Appendix.

訳注1
欧州オンブズマン/ウィキペディア

訳注:EFSAの産業界よりの立場を示す記事


化学物質問題市民研究会
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