Deutsche Welle (DW) 2021年7月3日
EU の使い捨てプラスチック禁止について 知っておくべき5つのことがら スチュアート・ブラウン EU が使い捨てのプラスチック製品のための回収箱を提供しているので、 封鎖中に持ち帰えったプラスチック製の食品容器、コーヒーカップ、 カトラリーは全て今、テーブルから片づけられる。 情報源:Deutsche Welle (DW), July 3, 2021 5 things to know about the EU single-use plastics ban By Stuart Braun https://www.dw.com/en/5-things-to-know-about-the-eu-single-use-plastics-ban/a-58109909 The plastic food containers, coffee cups and cutlery that came with all that take-away during lockdown are now off the table as the EU gives single-use plastics the bin. 訳:安間 武/化学物質問題市民研究会 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2021年7月7日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/news/ 210703_DW_5_things_to_know_about_the_EU_single-use_plastics_ban.html 容器包装の大規模な追放が始まっている。 2019年のEUの使い捨てプラスチック指令(Single-Use Plastics Directive of 2019)が発効し、ヨーロッパの海岸を長年荒廃させてきた 10種の使い捨てプラスチック(SUP)製品が7月3日から大幅に禁止される。 プラスチック製の綿棒、カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど))、皿、ストロー、スターラー、バルーンスティック、ポリスチレン製の飲料と食品の容器は、2021年7月3日(土曜日)から販売できなくなる。また、生分解性として販売されているが、EUによれば、環境に長く残留しマイクロプラスチックに分解されるオキソ分解性ビニール袋[訳注1]も禁止される。 これらの使い捨てプラスチックは、ヨーロッパの海洋ごみの約 70%を占めている。カフェやレストランでは、竹、セルロース、その他の生分解性材料で作られたカップやストローを確保することを余儀なくされる。 しかし、プラスチック改革の一環としてすべてが非合法化されたわけではない。 すぐに利用できる使い捨てプラスチック(SUP)バッグ、ボトル、飲料及び食品容器、包みや包装材、タバコフィルター、衛生用品、ウェットティッシュは引き続き制限されるが、生産者はクリーンアップの費用を支払い、環境への影響についての意識向上キャンペーンを開始する必要がある 。 最終目標は、残りの使い捨てプラスチックが 2030年までに再利用またはリサイクル可能になる EU 循環型経済モデルである[訳注2]。 プラスチックのない未来のための EUの計画について知っておくべき 5つの事柄がここにある。 1. 新しいプラスチック体制はどのように実施されるか EU 加盟国は、使い捨てプラスチック指令(SUPD)を実施するための独自の法律を制定した。禁止されている使い捨てプラスチック製品(SUP)のリストに追加することを決定した国もある。 2020年2月に採択されたフランスの”循環型経済及び廃棄物との闘いに関する法律(law on the circular economy and the fight against waste”の一環として、ほとんどの果物と野菜の包装も禁止され、プラスチック製のティーバッグ[訳注3]、紙吹雪、プラスチック製のおもちゃがキッズメニューの一部として提供される。 ドイツでは、11月に承認された措置により、指令に含まれる使い捨てプラスチック製品(SUP)に発泡ポリスチレン食品容器が追加された。 ルクセンブルクでは、使い捨てプラスチック製品(SUP)は 7月3日からお祭り( at festivals)での販売が禁止されている。一方、ギリシャでは、この種の最初の禁止である 2月から政府機関での使用が禁止されている。 イタリアやベルギーのような他の国々も、プラスチックの使用をやめさせるためにプラスチック税または課税を導入している。 それはすべて無計画に見えるかもしれないが、欧州グリーンディール[訳注4]に沿って、全ての EU加盟国は、最終的には、使い捨てプラスチック製品(SUP)がこの10年代の末(2029年末)までに持続可能な方法で再利用されることになっている廃棄物と汚染のない循環型経済モデルに沿わなければならない。 2. プラスチック製の飲料ボトルは引き続き許可される プラスチック指令は、ヨーロッパの海岸にたどり着く多くの使い捨てプラスチック製品を対象としているが、世界中で毎日販売されている 13億本のプラスチック飲料ボトルの一部を禁止していない。 しかし、PET(ポリエチレンテレフタレート)で作られたこれらの化石ベースのプラスチック容器は、リサイクルして新しいボトル、包装材、または繊維を作るために使用できる数少ないものの1つである訳注5]。ヨーロッパではペットボトルの 65%しかリサイクル用に回収されておらず、残りは分解するのに数百年かかるという問題が残っている。 SUP指令は、2029年までにペットボトルの90%リサイクルの回収目標を設定している(2025年までに77%の暫定目標)。これらのボトルには、2025年までに未使用のプラスチックとは対照的に、少なくとも 25%がリサイクルされている必要がある。 また、ペットボトルを販売する製造業者も、指令に含まれる「拡大生産者責任」の義務の一環として、より厳格な説明責任を負っている。 「汚染者負担」の原則に基づいて、生産者は廃棄物管理のクリーンアップのコストを負担するだけでなく、製品の環境への影響と最も持続可能な処分方法についての公衆の意識を高めなくてはならない。 3. プラスチックの代替品 化学的に修飾されていない天然高分子は、指令から免除される。変性天然ポリマー、化石または合成原料から生成されたプラスチックは、事実上禁止されている。 ここでの勝者は、化学的に修飾されたとは見なされない一連の新しい持続可能な材料である。これらには、ビスコース(訳注:レーヨンを製造する技法のひとつの中間生成物/ウィキイペディア)、リヨセル(訳注:再生セルロース繊維の一つ/ウィキイペディア)、セルロースフィルム(訳注:ビスコースを原料とする透明な膜状の物質/ウィキペディア)の作成に使用される再生セルロースが含まれる。 地球上で最も豊富な生体高分子である再生セルロース(訳注:セルロースまたはその誘導体を溶解して溶液として,それを再沈殿してつくるセルロースで,繊維状に紡糸されると再生繊維となる/ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)は、油やグリースをほとんど透過しない、強力で透明な完全に生分解性のフィルムまたはシートを作成するために使用される。油性プラスチックが登場する前から古くから使われていた食品包装材料であるセルロースが復活した。 一方、生分解性の綿棒は通常、堆肥化可能な竹で作られる。つまり、通常の有機性廃棄物に廃棄することができる。使い捨てプラスチックのカトラリーは、完全に堆肥化可能な100%生分解性の竹に置き換えられる可能性が高く、安価で成長が早い。 とはいえ、SUP 指令を実施する際、フランスやベルギーなどの国では、包装材の消費を促進するグリーンウォッシング(訳注:環境配慮をしているように装いごまかすこと/ウィキペディア))の一形態である可能性があるため、製品に「生分解性」のラベルを付けることを禁止している。 4. たばこの吸い殻もリストにある EU 使い捨てプラスチック指令の第8条は、たばこ生産者がプラスチックフィルターを含むたばこの吸い殻の浄化のための費用を全額払わなければならないと規定している。 プラスチックフィルターは環境中で非常にゆっくりと分解するポリマーである酢酸セルロースで作られており、年間約 4.5兆個の吸い殻が廃棄されており、地球上で最も散らかっているゴミとなっている。 しかし、EU の使い捨てプラスチック(SUP)指令は、完全な禁止ではなく、公衆の意識を高めるために、生産者にフィルター部と箱に表示を付けることを強いている。 活動家らは、プラスチック製のフルターを単純に非合法化することを望んでいる。しかしこれは、使い捨てプラスチック製品(SUP)の禁止リストが更新される2027年まで起こらない。 2020年9月、反プラスチック運動家らはオランダ中の街路から 142,000本のたばこの吸い殻を集めた。 ”コミュニケーションキャンペーンでは問題を解決しない”と、クリーンアップを共同組織した By the Ocean we Unite のカール・ビアレンフェンガー述べた。 ”製品自体を変更する必要がある。たばこフィルターは、より多くのたばこを販売するためのマーケティングツールとしてのみ機能する。プラスチック製のたばこフィルターを完全に取り除きたいと考えている”。 しかし、これまでのところ、プラスチック・フィルターを禁止する計画はない。 Green Butts 社がソーシャルメディアで EU 委員会に水分散性フィルターを売り込み、持続可能な天然繊維で作られているこの製品は数日で生分解すると主張しており、この持続可能なフィルターは暫定的な解決策になる可能性がある。 5. コロナ禍対応プラスチックはまだ含まれていない 使い捨てプラスチック製品(SUP)の禁止は、コロナ禍の際に非常に普及したマスクや手袋など、医療関連のプラスチックは除外する。欧州環境機関(EEA)によると、これらのコロナ対応製品用の長持ちする使い捨てプラスチックから作られた多くの種類のプラスチック製品は陸と海洋の両方の環境で廃棄物となり、生態系に有害な影響を与える可能性がある。 ”EUへのフェイスマスクの輸入は、コロナ禍前の通常のビジネスと比較して 2倍以上増加した”と、欧州環境機関(EEA)は述べている。その間 EUの生産も増加しており、そのような倍増が生じた。 コロナ禍の最初の 6か月間にプラスチックベースのフェイスマスク約 17万トンが EUに導入されており、代替品を探す必要性が高まっている。 しかし、これまでのところ、コロナ禍対応プラスチックは、新しい使い捨てプラスチック製品(SUP)規則の対象となっていない。”特に、使い捨てプラスチックに関する指令は、使い捨て手袋、ガウン、マスクなど、医療分野で使用される使い捨てプラスチック製品には適用されない”と、ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパ(Zero WasteEurope)のジャウティン・マイヨは声明で述べている。 訳注:関連情報
訳注1:オキソ分解性ビニール袋
訳注2:EU 環境型経済
訳注3:プラスチック製のティーバッグ
訳注4:欧州グリーンディール
訳注5:PET ボトル
|