Chemsec 2021年5月31日
”環境にやさしく”、”自然な” 食器類は消費者を誤解させる
非プラスチック代替品は懸念ある化学物質だらけ


情報源:Chemsec, May 31, 2021
"Green" and "natural" tableware are misleading consumers:
Non-plastic alternatives loaded with loaded with chemicals of concern
https://chemsec.org/green-and-natural-tableware-are-misleading-consumers-
non-plastic-alternatives-loaded-with-chemicals-of-concern/"


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年6月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210531_Chemsec_
Green_and_natural_tableware_are_misleading_consumers.html



 EUでは使い捨てのプラスチック製食器が間もなく(訳注:本年7月3日から)禁止されるため訳注1)、製造業者と消費者は代替材料に目を向けている。しかし、新しい研究では、人気のある非プラスチックの使い捨て製品に懸念のある化学物質が見つかった。その多くは、”環境に優しく”、”自然で”、”100%生分解性”という根拠のない誤解を招く主張で販売されている。

 7月3日の時点で、使い捨てのプラスチック製品は EUで過去のものとなり、製造業者と消費者は共に、紙、わら、竹などの材料で作られた代替品を必死に探している。しかし、プラスチックとは異なり、これらの種類の材料にはまだ特定の規則がない。つまり、それらの化学的安全性はまだ規制されていない。

 ヨーロッパの NGOs が本年5月に、紙や板紙の食品包装材料中に PFASが存在することを共同で報告した(訳注2)。一方、欧州消費者機構(BEUC)が発行した『安全で持続可能な食品包装に向けて』と題する研究は、使い捨ての非プラスチック製食器に焦点を当てており、4か国の消費者団体、 Altroconsumo(イタリア)、Forbrugerradet TANK(デンマーク)、OCU (スペイン)及び UFC-QueChoisir (フランス)によって実施された。主にバガス(サトウキビの茎の繊維)、紙ストロー、ヤシの葉の食器など(訳注3)の成形天然繊維で作られた使い捨てのプレートとボウルを含む、合計 57 の製品が調査さた。

サンプルの50%以上に有害物質が見つかった

 製品は、懸念される 3種類の物質の存在についてテストされた。「永遠の化学物質」としても知られるフッ素化合物(PFAS)、紙の包装の製造中に出現する可能性のある発がん性化学物質クロロプロパノール、そして植物ベースの材料に存在する可能性のあるがん、先天性欠損症、内分泌かく乱に関連する農薬である。

 テストされた製品の半分以上(53%)には、デンマーク獣医食品局(PFASの場合)、ドイツ連邦リスク評価研究所(クロロプロパノールの場合)、及び欧州委員会(農薬の場合)によって提案された安全レベルを超える懸念のある化学物質が1つ以上含まれていた。加えて 21%には、限界に近い物質が含まれていた。

 この研究はまた、人気のあるプラスチックの代替品が「堆肥化可能」または「生分解性」であると主張して、消費者に誤解を与える可能性があることを発見した。 PFAS 化学物質は非常に持続性があり、何百年も分解しないため、それらを含む製品を「堆肥化可能」にすることはほとんどなく、むしろ堆肥汚染物質になる。

”PFAS化学物質は非常に持続性があり、何百年も分解しないため、それらを含む製品を「堆肥化可能」にすることはほとんどなく、むしろ堆肥汚染物質になる”

 ”「天然」、「生分解性」、「堆肥化可能」などの環境(グリーン)ラベル(訳注4)は、持続性の化学物質を含む使い捨て食器には使用できない。このような偽りの主張は、消費者の間に混乱を引き起こし、他のものより環境に優しいプレート、ストロー、またはボウルを消費者が特定することを困難にする。 EUは、誤解を招くような環境(グリーン)主張を食品包装市場から一掃する必要がある”と、欧州消費者機構(BEUC)の事務局長であるモニーク・ゴエンは調査のプレスリリースで述べている。

化学物質は包装から食品に移動する

 もうひとつの大きな問題は、多くの有害な化学物質が食品包装材料に入れられたままではなく、食品に移動し、消費者の健康を危険にさらすことである。 ChemSecの上級毒物学者であるアンナ・レンクイスト博士は、汚染源のひとつであるプラスチックを別の汚染源である「グリーン」な使い捨て食器に含まれる有害な化学物質に置き換えるということに意見を述べている。

”他の製品よりも「自然」で「有機的」に見えるように作られた製品が、実際には同じくらい悪い、またはもっと悪いのではないかと特に心配している”

 ”これは、残念な代用のさらに別の悲しい例である。使い捨てのプラスチックから離れることは重要であるが、代わりに永久に残留する化学物質に切り替えることは間違いなく間違った道を進んでいる。他の製品よりも「自然」で「有機的」に見えるように作られた製品が、実際には同じくらい悪い、またはもっと悪いのではないかと特に心配している”と彼女は言う。

 ChemSecにより支持トされている欧州消費者機構(BEUC)とそのメンバー組織からEUへのメッセージは明確である:

 ”私たちが公開した結果は、現在の EU食品包装規則は消費者に役に立たないことを証明している。 EUが行動を起こし、消費者と環境の両方を保護する厳格な食品包装規則を策定べき時である”。


訳注1:使い捨てプラスチックのEU市場での販売禁止
  • Single-use plastics (EC/Environment)
    Article 17 Transposition
    1. Member States shall bring into force the laws, regulations and administrative provisions necessary to comply with this Directive by 3 July 2021. They shall immediately inform the Commission thereof.
    • PART A: Single-use plastic products covered by Article 4 on consumption reduction
    • PART B: Single-use plastic products covered by Article 5 on restrictions on placing on the market
訳注2
 チェコの NGO Arnika 、ヨーロッパの NGO の連合体である Health and Environment Alliance(HEAL)及びイギリスの CHEM Trust が、他の 6つの NGOs/NGO 連合体 と協力して実施した下記に紹介されている研究。
訳注3:日本で販売されている植物繊維製食器、紙ストローの例(BEUC の調査とは無関係)
訳注4:環境ラベル


化学物質問題市民研究会
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