ecomento.com 2015年1月1日
ニューヨーク州 フラッキングを禁止
情報源:ecomento.com, January 1, 2015
New York bans fracking
http://ecomento.com/2015/01/01/new-york-bans-fracking/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年1月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_15/150101_New_York_bans_fracking.html

 ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、二週間前の記者会見でニューヨークは、フラッキングを禁止する最初の州(訳注1:バーモント州が2012年に象徴的な禁止をしている)となるであろうと発表した。フラッキングとは石油や天然ガスを閉じ込めているシェール(頁岩(けつがん))に様々な液体(訳注2)を高圧で注入し粉砕して石油や天然ガスを採掘するプロセスである。クオモ知事はその禁止の理由として環境及び健康の懸念を挙げた(訳注3)。カナダのオンタリオ州及びケベック州もまた、市民の健康への懸念を大きな理由としてフラッキングを禁止している。

 フラッキングは2008年ごろに全米に広がった。それは、最近の石油価格の暴落以前の1バーレル120ドルにまで達した高騰に対処するために開発された。フラッキングは在来の採掘法よりはるかに高価であり、したがって石油価格が高い時にのみ経済的に意味をなす。

 この技術は非常に多くの石油とガスを生産したので、アメリカは初めてエネルギー自給国となった。実際にアメリカは主要なエネルギー輸入国から、かなりの、特に液化天然ガス(LNG)の輸出国となった。

 その豊富な量は、アメリカ及び世界の気候変動の問題に広範な影響を及ぼす。ある専門家らは、この低価格な天然ガスの利用が可能なので、石炭火力発電設備から新たなガス火力発電プラントへの転換を早めるであろうと考えており、これは環境にとって良いニュースであろう。

 他の人々は、太陽光、風力、地熱、潮力のような再生可能なエネルギーの開発が遅れることを懸念しており、これは環境にとって悪いニュースである。

 しかし、本当の議論は、再生可能エネルギーへの転換が行われ前に、化石燃料の最後の一滴が地殻から絞り出されてしまうまで待つことができるかどうかということである。フラッキングによる天然ガスが安いという事実だけが、その使用が環境的に賢いかどうかを決定する時の考慮ではない。

 経済的に同等ではないコストというものがある。科学者らはフラッキングにより放出される大量のメタンがどのように気候変動に影響を与えるかについて考え始めている。ある専門家らは、メタンは二酸化炭素より10倍、環境に有害であると言っている(訳注4:2001年 IPCCの報告によれば23倍)。我々はそのことについてどのように金銭的価値を位置づけるのか?

 ニューヨーク州がフラッキングを禁止するということは、地球の気候変動を抑制するための戦いにおける小さな勝利であるが、今後しなければならないもっと厳しい仕事が残っている。

訳注1
米バーモント州でフラッキング禁止法成立へ(2012年5月8日 ロイター時事)
(同州はフラッキング採掘ができていないため、実際的な意味はなく、象徴的な法律となる。)

訳注2
フラッキング(fracking)Q&A ( An Expanding Universe)

Newsweek August 13, 2014 There’s Still a Lot We Don’t Know About Fracking Chemicals
(フラッキング化学物質についてわからないことがまだ数多くある)

訳注3
The Alarming Research Behind New York's Fracking Ban
ニューヨーク州保健局による184ページの報告書は下記ののような懸念を挙げている。
▼呼吸器系健康問題 ▼飲料水の問題 ▼地震活動の引き金 ▼気候変動 ▼土壌汚染 ▼騒音と臭気 ▼周辺住民の健康問題の苦情

米国内分泌学会 プレスリリース 2013年12月16日 フラッキング用化学物質 ホルモン機能をかく乱する

訳注4
地球に温暖化をもたらすメタン(Jabion, 2007年10月1日)



化学物質問題市民研究会
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