HEAL プレスリリース 2017年6月16日
EU はついにビスフェノールAを
人間の内分泌かく乱物質として認め、SVHC に加える


情報源:Health and Environment Alliance (HEAL), 16 June 2017
EU finally recognises Bisphenol A as an endocrine disruptor for human health
http://www.env-health.org/resources/press-releases/article/
eu-finally-recognises-bisphenol-a


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年6月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/
170616_HEAL_EU_recognises_BPA_as_an_EDC_for_human_health.html


【ヘルシンキ/ブリュッセル 2017年6月16日】 欧州化学物質庁(ECHA)は本日、ビスフェノールA(BPA)を人間への内分泌かく乱特性のために、非常に高い懸念のある物質(SVHC)として認めた[原注1]。これはヨーロッパの人々の健康を保護するための大きな前進であり、EU レベルでの内分泌かく乱物質(EDCs)の特定と規制のペースを速める必要性を示すものである。

 この決定は、今週ヘルシンキで会合が持たれた ECHA 加盟国委員会で満場一致でなされた[原注2]。フランスは、すでに生殖毒性として分類されている BPA [原注3]を、他の有害健康影響(乳腺発達、認知機能、及び代謝)についても内分泌かく乱物質として、非常に高い懸念のある物質(SVHC)の ECHA リストに加えることを提案していた。

 健康環境連合(Health and Environment Alliance)の健康・化学物質担当のナターシャ・シンコッティは次の様に述べた。”ビスフェノールA(BPA)のようにどこにでもある内分泌かく乱化学物質は、我々の時代の決定的な人の健康問題のひとつである。 BPA を人間への内分泌かく乱特性があるという理由で、非常に高い懸念のある物質として認めることは、この物質への人々の暴露を低減する措置を将来導入することができるようにするために、遅すぎたが非常に重要なことである”。

 フランスによって準備された非常によくできた提案文書一式は、加盟国委員会における集中的議論のベースであった[原注4]。このことは、現在、農薬法の脈絡の中で同時並行して行われている EDCs 特定基準の議論にきちんと決着をつけることがなぜ重要なのかを描き出している[原注5]” 。

”すでに BPA の有害影響は広範囲に報告されているが、それを内分泌かく乱物質として認めさせる困難さは、今後数週間で EU 農薬委員会において提案されている EDC 基準に決着をつけることの重要性を示唆するもうひとつの合図である”とナターシャ・シンコッティは付け加えた。

 ”我々は、フランスが強い基準を支持し、農薬法の脈絡の中で議論されている現在の提案を拒否する姿勢を保ち、その他の諸国もそれに続くよう要請する”。

背景:

 BPA は、ポリカーボネートプラスチックの製造及び飲料・食品用アルミ缶の内面ライニングに用いられる化学物質である。それは内分泌かく乱作用を持つとひろく考えられており、 BPA が代謝系及び心血管系はもちろん、生殖系、神経系、免疫系、及びがんリスク(例えば乳がん)への有害影響をもたらすかもしれないという多くの証拠が集まっている[原注6]。今までは、BPA は生殖への影響という理由でのみ、非常に高い懸念のある物質として EU から認められていた。


編集者への注

[1] 欧州化学物質庁 - ECHA:https://echa.europa.eu/-/msc-unanimously-agrees-that-bisphenol-a-is-an-endocrine-disruptor
フランス食品 環境 労働衛生 安全庁 - Anses:https://www.anses.fr/en/content/bisphenol-recognised-echa-its-endocrine-disrupting-properties-based-proposal-france

[2] HEAL は ECHA 加盟国委員会の中で認定された利害関係者である。参照: https://echa.europa.eu/documents/10162/13578/list_aso_msc_observers_en.pdf/422422d2-5548-46ab-86eb-f9e698c1207b

[3] http://www.env-health.org/news/latest-news/article/bpa-classified-as-toxic

[4] これは、4つのフタル酸エステル類 DEHP, DIBP, DBP and BBP が人間の内分泌かく乱物質として認められたことに続くものである。 http://www.env-health.org/resources/press-releases/article/europe-finally-recognises-four

[5] HEALが事務局として活動している EDC自由連合(EDC Free coalition)は、様々な法令を横断して適用することができる水平基準(horizontal criteria)を要求してきた。 NGOs は、内分泌かく乱物質であると特定するための立証責任の要求が高すぎるので、提案されている基準は非科学的であり、ひ効率的であり、機能せず、またそれらは多くの EDCs を規制の網を潜り抜けさせるとして、その基準案を批判している。

http://www.edc-free-europe.org/further-delay-on-flawed-edc-criteria-maintains-unnecessary-risks-on-human-health-and-the-environment/

[6] BPA の有害性の証拠は広く報告されている。最近の例としては、3歳以下の子どもと妊婦/まだ生まれていない子どもに及ぼす内分泌かく乱物質の影響を報告したデンマーク環境保護庁による報告書がある。
http://www2.mst.dk/Udgiv/publications/2017/04/978-87-93529-84-7.pdf
Originally posted on 16 June 2017


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