ChemSec News 2012年10月31日
欧州議会報告書(ドラフト)
内分泌かく乱物質はSVHCsとして
規制される必要がある


情報源:ChemSec News October 31, 2012
European Parliament report: endocrine disruptors need to be regulated as SVHCs
http://www.chemsec.org/news/news-2012/
1017-european-parliament-report-endocrine-disruptors-need-to-be-regulated-as-svhcs


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年11月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/121031_ChemSec_EP_EDCs_Report_Draft.html


 欧州議会は、内分泌かく乱物質の疑われる影響は非常に深刻であるが、正確な知識がなければREACHの中で非常に高い懸念がある物質(SVHCs)として、それらを規制することが妨げられると加盟国に報告している。

 欧州議会の環境公衆衛生食品安全委員会(ENVI)が発表した内分泌かく乱物質から公衆の健康を保護することに関するドラフト報告書は、何が内分泌かく乱物質と見なされるのかに関する全てのEU諸国に一律に適用されるべき包括的な基準を作成し、’内分泌かく乱物質’を法的に有害なクラスとして指定するよう要求した。

 欧州議会議員の報告者(rapporteur)アサ・ウェストルンドは次のようにコメントした。

■議会のドラフト報告書は、将来の法令についての展望に基づき欧州議会の立場を確立することはもちろん、我々が内分泌かく乱化学物質の問題をどのように扱うべきかについて方法論を明らかにすることを目的としている。私の動機は、今日の日常生活中に存在する潜在的に有害な化学物質から将来の世代を守ることである。私は、政治的行動を起こす時期であることを明確にしたい。たとえ我々が全ての答えを持っていなくても、我々は予防原則に基づき、これらの物質を十分に規制することができることを知っている。

 環境公衆衛生食品安全(ENVI)委員会ドラフト報告書はまた、内分泌かく乱化学物質へのどのような曝露もリスクを伴い、これ以下なら影響が出ないという限界値を設定することは不可能であるということを強調した。

 EUの全ての化学物質規制は内分泌かく乱化学物質のヒト曝露を制限するよう修正されるべきであるとウェストルンドは述べている。特に重要なことは、食品接触材、衣料及び建材に関するより強い法律である。

 アサ・ウェストランドはまた、ある物質が有害であると定義されている他の物質に類似しているなら、その物質が安全であることを証明する責任は、ある物質が有害であることを証明するのは当局であるとする現在の物質毎のアプローチではなく、それらの化学物質の製造者と輸入者にあるべきであると述べている。

 このドラフト報告書は欧州議会の環境公衆衛生食品安全委員会(ENVI)で11月5日に討議される。

リンク:DRAFT REPORT on the protection of public health from endocrine disrupters (2012/2066(INI))
(内分泌かく乱物質から公衆の健康を保護することに関するドラフト報告書)


訳注:ドラフト報告書の主要点の抜粋
 とりあえず、主要な点を抽出したので以下に紹介します。今後機会があれば全体あるいは一部を翻訳して紹介するかもしれません。
  • ヒトのホルモン関連障害や疾病の増大を示す証拠が増大しており、その一部は内分泌かく乱物質(EDCs)への曝露が寄与しているが、その因果関係を完全に証明するには、・影響発現の時間遅れ・特定時期の曝露影響(発達段階やクリティカルウインドウ)・多種化学物質への曝露(複合曝露)・低用量曝露・非単調用量反応・ヒトや動物の内分泌系についての知識不足、などの要因のために、困難がある。
  • EUの関連法令には内分泌かく乱特性の基準がなく、届出のための標準的データ要求がない。
  • EDCs曝露影響を最小にするために、まず予防原則を適用し、次に関連法規に照らして社会経済的評価を実施する。
  • 知識の欠如がヒトと動物の保護のための措置を妨げてはならない。
  • EDCsを有害物質クラスとし、テスト手法と情報要求を含む包括的なEDCs基準を作成することを求める。
  • 内分泌かく乱物質を定義するための基準は”有害影響”と”ホルモン関連作用”に基くこと;包括的な評価を実行するために、これらの基準の両方は同時に比較考慮されるべきこと;有害ではないという科学的な証拠がない限り、明らかにされた影響は有害であるとみなされるべきこと;どのような可能性ある組み合わせ影響も考慮されるべきことを強調すること。
  • OECDテスト手法には性ホルモン、甲状腺、ステロイド発生などはあるが、インスリン、成長ホルモンなどEDCs系のその他のテスト手法はないので、可能性ある低用量曝露と非単調用量反応関係を考慮して開発しなくてはならない。
  • 公衆が内分泌かく乱物質に曝露するのをできるだけ速やかに防ぎ、動物による実験の数を減らすという観点から、もし製造者/輸入者が化学構造に類似性があるのにその化学物質が安全であることを立証できない場合には、政策決定者は同様な化学物質構造を持つ化学物質をひとつのグループとして扱うことができるはずである。
  • 欧州委員会はEDCsのEU戦略を見直すときに、予防原則を強調すべきである。
  • EDCsはREACHの高懸念物質(SVHC)であるとみなし、認可又は制限対象とすべきである。
  • EDCsにはこれ以下の曝露なら安全であるという閾値は存在しない。



化学物質問題市民研究会
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