バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN) プレスリリース 2006年3月7日
3Rイニシアティブ会合の矛盾 市民・メディアに閉ざされた扉

情報源:Basel Action Network (BAN)
Basel Action Network Secretariat
c/o Earth Economics, 122 S. Jackson, Suite 320
Seattle, WA 98104, USA
掲載日:2006年3月7日


 昨年4月に開かれたG8の循環型社会構築のための行動計画、「3Rイニシアティブ」の第一回会合のフォローアップとして、高級事務レベル会合が3月6日から3日間、東京にて開かれている。20カ国以上の代表および関係国際機関が、3Rの取組 ―廃棄物の発生抑制(リデュースReduce)、再使用(リユースReuse)、再生利用(リサイクルRecycle)―を地球規模でどのように具体化していくかについて議論する。

 3Rイニシアティブでは、その政策や行動計画を実施していく上で、非政府機関も含めたすべての利害関係者の連携が重要であるとしている。しかし、実際には、政策決定過程や会合での議論の場からNGOや市民、メディアの参加は排除され、議論の中身は全面的な公開がされていない。有害廃棄物の越境移動によって及ぼされる健康被害と環境汚染の問題に取り組み、地球レベルでの「環境正義」を追求するNGOの国際ネットワークであるバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、3Rイニシアティブが有害廃棄物貿易に対する障壁の低減を目的に掲げている点と共に、政策決定過程の透明性と民主主義性が欠如する点に抗議する。

 第一回3Rイニシアティブ閣僚会合の議長総括の中にも、以下のようなくだりがある。『参加者は、中央政府、地方政府、民間部門、学識者、非政府機関(NGO)、地域社会などの利害関係者が、各々の基本的な役割を踏まえた上でパートナーシップを構築することが、3Rと廃棄物の適正処理を推進する上で最も重要であることにつき合意した』。このようにNGO・市民の参加の重要性が明確に認識されているにもかかわらず、今回の高級事務レベル会合の全日程の半分に当たる分科会への参加の権利がNGO・市民団体に全く与えられていない。また、BANが2005年6月に製作した、E-waste(電気電子機器廃棄物)のアフリカへの輸出と不法投棄の現状をとらえた映画の放映が拒否された。廃電子機器のリユースの問題を取り扱った映画の内容と会合の議題とは非常に関連しているにも関わらずである。

 「3Rイニシアティブには表と裏の顔がある。『市民の参加歓迎』というサインを入り口に掲げながら、実際にはその入り口を閉めている。」と、BANの4Rsプログラム担当、高宮由佳は述べ、「私たちは、3Rイニシアティブのこの二面性が、日本やアメリカのような先進国が嫌うバーゼル条約の廃棄物貿易に対する規制を緩和するという3Rイニシアティブの隠された目的の実現を意図しているのではないかと懸念する。」と続けた。

 BANは前回の閣僚会合にて、3Rイニシアティブが廃棄物や中古品に対する貿易障壁の低減を目指していることに対して懸念があると発言した。3Rイニシアティブの主な提唱者が、バーゼル条約改正条項の有害廃棄物の先進国から途上国への輸出全面禁止案に強く反対しているアメリカと日本であることからも、上述の「障壁」とは明らかに、バーゼル条約のことを指しているからである。バーゼル条約は貧しい国の環境と人間の健康を守るために、国連の下で作られた重要な国際条約であり、歴史的に、発展途上国の強い支持によってその正当性を維持し続けている。

 昨日は会合の第1日目であったが、その討議の場でも、各国代表や国際機関が3Rイニシアティブの政策決定過程が不透明でありすべての利害関係者が平等に参加する機会が与えられていないことに批判の声が上がった。「3Rイニシアティブは発展途上国も含めたすべての国の代表の参加を奨励し、意思決定過程の透明性と参加の公平性を改善する方法を探るべきである」アラブ連盟の代表ファトゥマ・サラ・エル・マッラー氏は強く主張した。

 「NGOや市民団体は、廃棄物の被害を最も受けやすい、社会の主流からはじかれた少数派の人々の声を代弁すると同時に、廃棄物問題に長年取り組んで培った有益な専門的知識を持ち、廃棄物問題解決の最前線に立っている。3Rイニシアティブが真に正当な政策として発展する望みがあるのであれば、今すぐに市民社会にオープンになり、貧しい国々が裕福な国々のゴミ捨て場と化すことを許さない努力をしてゆく『責任(Responsibility)』を果たすと公約するべきである」と高宮氏は語っている。

 さらに詳しいBANの3Rイニシアティブ評論(英語)はこちらをご覧下さい:
Ban Briefing Paper: 3R Initiative: A Mask for Toxic Trade?
http://www.ban.org/Library/briefingp9.pdf

4Rs ? The Key to a Sustainable and Just Waste Policy, BAN and GAIA
http://www.env.go.jp/earth/3R/en/info/06_02.pdf

お問い合わせは:
高宮由佳,  会場にて または yuka@ban.org
Jim Puckett, Coordinator BAN, Seattle, +1 (206) 652.5555,  jpuckett@ban.org



化学物質問題市民研究会
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