緊急アピール/化学物質問題市民研究会2006年11月13日
日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の
関税削減リストから全ての廃棄物を削除すべき

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化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月13日
更新日:2006年11月15日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JPEA/JPEPA_appeal_061113.html


 2006年9月9日に小泉純一郎総理(当時)とフィリピンのアロヨ大統領により署名された日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)には廃棄物が関税削減対象のリストに含まれているということをフィリピン政府高官も認めており、バーゼル条約でその移動が厳しく管理されている有害廃棄物のフィリピンへの輸出の道を開くものとして、フィリピンの市民はもとより国際的にも大きな懸念が寄せられています。日本は1999年にフィリピンへ医療廃棄物を違法輸出して国際的な非難を浴びた末に再輸入(引き取り)をした過去があります。JPEPAにより、廃棄物の貿易障壁が低減されることにより、今後その危険性が更に高まることは必至といえるでしょう。

 日本政府は廃棄物の国境を越える移動の管理に関する1989年バーゼル条約には批准していますが、リサイクル目的であってもOECD/EU/リヒテンシュタインの先進国からそれら以外の諸国に有害廃棄物を輸出することを禁止する1995年バーゼル禁止修正に日本はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどとともに反対し、批准していません。
 また、2005年4月に東京で開催されたG8/3R閣僚会議において、"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を打ち出し、資源の国際循環という名の下に、有害物質を含む中古品や廃棄物を開発途上国へ輸出して、ライフサイクルをほとんど終えた中古品や廃棄物の処分を途上国に押し付けようとしています。
 さらに、日本フィリピン経済連携協定と同様の二国間経済協定をアジア地域の各国と結び、これらの協定を利用して日本の中古品や廃棄物のアジア地域内での処理を推進しようとしていることは明らかです。

 バーゼル条約及びわが国の廃棄物処理法においても、廃棄物の「国内処理の原則」を明確に規定しています。それにもかかわらず、わが国で発生する廃棄物の処理を途上国に押し付けることで、自国の廃棄物問題の軽減をはかり、その結果、途上国の人々の健康と環境を脅かすということは環境正義の観点から許されません。

 そこで、私たちは日本政府に対して、以下のことを求めます。

  1. 日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の関税削減リストから廃棄物を削除する。
  2. 今後締約されるアジア地域内を含む途上国の二国間経済協定に廃棄物を含めない。
  3. 廃棄物及び中古品の処理には厳格に「国内処理の原則」を適用し、開発途上国での処理に依存するような政策をやめる。
  4. 廃棄物の発生削減を最優先として、国内循環を基本にした3R政策を推進する。
  5. 3Rイニシアティブから"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を削除する。
  6. バーゼル禁止修正を批准し、リサイクル目的を含めて有害廃棄物の途上国への輸出を禁止する。
以上
参考資料
  1. Basel Action Network プレスリリース2006年11月8日/日本のアジア地域廃棄物貿易自由化への戦略に懸念−JPEPA"廃棄物植民地化"条項の影響は破壊的
    http://www.ban.org/ban_news/2006/061108_jpepa_pressrelease_japanese.pdf
  2. バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)報告書2006年11月8日 日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)−日本のアジアにおける有害廃棄物貿易の自由化構想の第一歩
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JPEA/JPEPA_Report_BAN.html
  3. 3Rイニシアティブ閣僚会合の問題点
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/G8_3R/G8_3R.html

化学物質問題市民研究会
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参考情報 (2005年11月15日追記)
■JPEPAの関税表
 JPEPA の関税表には、「日本国の表」 と 「フィリピンの表」 がある。「日本国の表」 はフィリピン産物品の日本への輸入関税用であり、「フィリピンの表」 は日本産物品のフィリピンへの輸入関税用である。
 外務省の英語版テキストには 「日本国の表」 と 「フィリピンの表」 の両方が掲載されているが、日本語版テキストには 「日本国の表」 しか記載されておらず、「フィリピンの表」 は省略となっている。
 日本からフィリピンへの(廃棄物)輸出に関しては 「フィリピンの表」 が適用されるので、フィリピンへの輸出物品(廃棄物)の分類と関税を調べるためには英語版テキストを見るしかない。そのために、JPEPAに廃棄物輸出が含まれていることが非常に分りにくくなっている。
 衆参両院での審議が廃棄物の記述のある 「フィリピンの表」 の日本語テキストなしで、十分な情報提供を受けずに行われているとしたら問題である。

◆外務省の日本語版テキスト
附属書一(第二章関係) 第十八条に関する表(PDF)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/philippines/pdfs/fuzoku01.pdf

◆外務省の英語版テキスト
Annex 1 referred to in Chapter 2: Schedules in relation to Article 18 (PDF)
http://www.mofa.go.jp/region/asia-paci/philippine/epa0609/annex1.pdf

■「フィリピンの表」 に示される廃棄物の例
関税率表
番号
JPEPA で関税ゼロになる廃棄物
2620.6000 灰と残渣(鉄鋼メーカからのもの以外)で、ヒ素、水銀、タリウム、又はそれらの混合物を含み、ヒ素又はこれらの金属の抽出に用いられた、又は化学的化合物の製造のために用いられた類のもの
2621.1000 一般廃棄物の焼却による灰及び残渣
3006.80
(3006.8010,
3006.8090)
医療廃棄物
38.25 及び
その小見出し
化学又は類似産業の残渣で、他で特定されていない又は含まれていないもの。都市廃棄物、下水汚泥、その他この節章の備考6で規定されるもの
3825.1000 都市廃棄物
3825.2000 下水汚泥
3825.3010 医療廃棄物−粘着性手当て用品及びその他の物品、ガーゼ包帯、手術手袋
3825.3090 その他の医療廃棄物
3825.4100
3825.4900
有機溶剤−ハロゲン化合物、その他の廃棄物
3825.6100
2825.6900
他の化学物質又は類似産業からの他の廃棄物−有機成分、その他を含む
3825.5000 金属浸漬溶液、油圧作動油、制動油、不凍液、中古衣類、その他中古物品
6309.00 中古衣類及びその他中古の物品
6310.00 中古又は新品の衣類、スクラップの麻ひも、縄類、ロープ、ケーブル、及び、麻ひも、縄類、ロープ、ケーブル、及び紡織用繊維の中古の物品

■「日本国の表」
 日本語テキストにある「日本国の表」には、上記の表に示す品目は示されておらず、次のような大分類項目が示されているだけである。
・第二六類 鉱石、スラグ及び灰
・第三〇類 医療用品
・第三八類 各種の化学工業生産品
・第六三類 紡織用繊維のその他の製品、セット、中古の衣類、紡織用繊維の中古の物品及びぼろ

■原産品の定義(廃棄物関連)
協定書 第二十九条(四八頁)
1 略
2 1(a) の規定の適用上、次に掲げる産品は、締約国において完全に得られ、又は生産される産品とする。
(a)〜(h) 略
(i)当該締約国において収集される産品であって、当該締約国において本来の目的を果たすことができず、回復又は修理が不可能であり、かつ、処分又は部品若しくは原材料の回収のみに適するもの
(j)当該締約国における製造若しくは加工作業又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回収のみに適するもの
(k)本来の目的を果たすことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、当該締約国において回収される部品又は原材料



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