BAN COP 8 レポート 2006年12月1日
世界電子・電気廃棄物フォーラムにおける
BANの声明


情報源:Library / 1 December 2006
BAN Statement at the Global E-Waste Forum
http://www.ban.org/cop8/061201_ban_statement.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年12月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/061201_E_Waste_Forum.html


【ナイロビ 2006年12月1日】バーゼル・アクション・ネットワークはこの機会に声明を発表し、世界の電子・電気廃棄物(E-Waste )の危機に立ち向かうためにバーゼル条約により共同で対応する期待を述べたいと思います。もし我々がこの問題を解決しようとするなら、、我々は下流側の問題だけに対処するという誤った方向に向かうのではなく、我々は上流側にあるこの危機の根源と戦わなくてはなりません。

 現在の電子・電気廃棄物危機に対し、我々が現在その渦中いる混乱の主要な二つの理由を認識することによってこそ、最もよく克服することができます。

 第一は、電子・電気機器は有害であるが、それは永久に有害であるとことを許容してはならないということです。産業側専門家は実際我々に、IT 機器は技術的には最早問題なく2015年までに有害物質を使用せずに製造できるが、後はそれを行う意志があるかどうか、そして消費者の要求があるかどうかだと述べました。したがって、我々は電子機器への有害物質の使用を廃止する政策的な日程を設定し、それによって使用済み機器は二度と有害廃棄物とはならないようにしなくてはなりません。

 第二は、BAN が世界中で記録してきたことですが、その大部分が電子・電気廃棄物の富める国から貧しい国への非合法な取引移動の問題であるということです。これらの輸出は貧しい人々を苦しめ利用するだけでなく、上流側の責任としてグリーンな設計を行おうとする意志をくじくものです。BAN は、たとえ開発途上国が環境的に適切な管理技術を持っていても、彼らが相対的に貧しいという理由だけで世界の大量の電子・電気廃棄物を処理する困難を不釣合いに課せられるべきではないことを強く主張します。

 我々は、北から南へ、そして西から東へのこの不法な取引移動が生じることには二つの主要な要因があることがわかりました。
 第一の要因は、バーゼル条約加盟国が、バーゼル条約の実施に真剣に取り組んでいないということです。(このことは、廃棄物と非廃棄物の輸出の区別に関し、当局に法的及び実際的なガイダンスが十分備わっていないということが理由であるというのは真実です。)
 第二の要因はパーゼル条約を批准していないある巨大な国からの発生する大量の電子・電気廃棄物です。その国は世界で最も大量に廃棄物を生成しているだけでなく、同時に輸入を禁止している国にすらそれらの電子・電気廃棄物の輸出を規制することを拒絶している国、アメリカでする。例えばアメリカは、中国はその輸入を禁止していることがよく知られているにもかかわらず、大量の電子・電気廃棄物の中国への輸出と自由貿易を許しています。我々の経験では世界の電子・電気廃棄物の移動の半分以上は我が国、アメリカからのものなのです。

 我々が中国、インド、そして最近ではアフリカで記録した環境的に全く不適切なリサイクリングと投棄の電子廃棄物恐怖ショーが存在するのは、これらの地域では技術が及ばないということが主な理由ではありません。電子・電気廃棄物がバーゼル条約によって禁止されていない自由貿易対象である時には、安くて汚れたやり方を採用することによって他よりも相対的に利益が得られるからなのです。もし、世界のある場所への輸出をやめても、単に世界の他の場所で起きるだけのことです。

 これに関して、1995年にG77及び中国によって初めて提案され、すでに欧州連合によって実施されているバーゼル条約禁止修正条項が早急に世界的に発効することが必要です。我々は、現在の63か国の批准で十分であり、すぐに発効させるべきであるという意見に賛成し、加盟国はバーゼル条約第17条の曖昧さ(訳注1)を早急に解決すべきであると信じています。

 皆さん、真の解決は常に上流側にあります。そして今週発表する我々の宣言(訳注2)はまず第一に上流側の問題に目を向けなくてはなりません。バーゼル条約の第一の責務は、電子機器のための越境移動規則と責任を実施することによって安くて汚れたい投棄をやめることです。同時に、我々は廃棄物発生の最小化とグリーン化で有害物質を使わない設計を推進しなくてはなりません。

 バーゼル条約は有害電子・電気廃棄物を含んで有害廃棄物の発生と国境を越える移動を最小にすることを求めていることを思い起こさなくてはなりません。バーゼル条約では、まず第一に先進国は有害廃棄物の自国内処理を実施することを求めています。

 バーゼル条約は、豊かな先進国が寿命を終えた消費者製品の廃棄物の山を輸出することができるようにするために地域内貿易協定を結ぶためにあるのではなく、グリーンな設計、拡大生産者責任、そして自国内のリサイクリング・プログラムを通じて、それらの廃棄物を元から絶つことを求めています。これは難しい先進的な解決方法ですが、”リユース”や”リサイクリング”という誤解を生む言葉の使用によって誤った青信号をともして現在世界中でなされている不正な投棄を正すことができます。
 この問題を世界の人々の前面に持ち出し、この問題を会議の議題とした団体として、この会議からもたらされる我々の宣言は、経済的動機によってなされる富める先進国から開発途上国への廃棄物輸出をやめること、及び同時に、我々の時代の近い将来に全てのIT機器は有害物質を含まず、長寿命の製品設計がなされ、最も安全で最も効率的なリユースとリサイクリングを求めた設計がなされることを確実にするという二つの上流側の目標に目を向けることを重要視しなくてはなリません。

ありがとうございました。


訳注2:
訳注1:
第17条(5)の曖昧さの解決:
 バーゼル禁止修正の問題は、発効のために必要な批准国の数に関する第17条の曖昧な文言に関連している。二つの解釈がある。ひとつは、1995年の採択時に実際に出席していた国(95カ国)の3分の2以上の批准で発効されるとするものであり、現在の批准国は63で十分である。圧倒的に多数の国は即座に発効という解釈である。
 一方、日本、アメリカ、カナダ、ニュージランド、オーストラリアは、最初は、現在の加盟国数(168)の4分の3、すなわち128カ国の批准が必要であるとする国連法務部の標準(default position)を主張して、発効を遅らせようとしている。

バーゼル条約17条抜粋

第17条この条約の改正
1 締約国は、この条約の改正を提案することができるものとし、また、議定書の締約国は、当該議定書の改正を提案することができる。改正に当たっては、特に、関連のある科学的及び技術的考慮を十分に払うこととする。

2 この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。議定書の改正は、当該議定書の締約国の会合において採択する。この条約及び議定書の改正案は、当該議定書に別段の定めがある場合を除くほか、その採択が提案される会合の少なくとも6箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、改正案をこの条約の署名国にも参考のために通報する。

3 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、当該会合に出席しかつ投票する締約国の4分の3以上の多数票による議決で採択するものとし、寄託者は、これをすべての締約国に対し批准、承認、正式確認又は受諾のために送付する。

4 3に定める手続は、議定書の改正について準用する。ただし、議定書の改正案の採択は、当該会合に出席しかつ投票する当該議定書の締約国の3分の2以上の多数票による議決で足りる。

5 改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書は、寄託者に寄託する。3又は4の規定に従って採択された改正は、改正を受け入れた締約国の少なくとも4分の3又は改正を受け入れた関連議定書の締約国の少なくとも3分の2の批准書、承諾書、正式確認書又は受諾書を寄託者が受領した後90日目の日に、当該改正を受け入れた締約国の間で効力を生ずる。改正は、他の締約国が当該改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書を寄託した後90日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。ただし、関連議定書に改正の発効要件について別段の定めがある場合を除く。

6 この条の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る