BAN ニュース 2019年9月8日
有害廃棄物の発展途上国への
輸出の世界的禁止が法になる


情報源:BAN News, September 8, 2019
Global Ban on Exporting Hazardous Waste to Developing Countries Becomes Law
https://www.ban.org/news/2019/9/8/global-ban-on-
exporting-hazardous-waste-to-developing-countries-becomes-law


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年9月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/190908_Global_Ban_
on_Exporting_Hazardous_Waste_to_Developing_Countries_Becomes_Law.html

【シアトル, 米国ワシントン州 2019年9月8日】クロアチアの9月6日の1995年バーゼル禁止令(1995 Basel Ban Amendment)の批准書の寄託により、この世界的な廃棄物投棄禁止令がついに国際法として発効することとなった。1995年にバーゼル条約締約国により採択されたバーゼル禁止令は、欧州連合加盟国、経済協力開発機構(OECD)加盟国、及びリヒテンシュタインから全ての他の国への有害廃棄物の輸出を禁止するものである。クロアチアの批准により、現在、 97か国が同禁止令を批准したことになるが、最も決定的なことは、発効のための必要条件である 1995年の COP3 会議に出席し投票した締約国の 3/4以上が批准したということである訳注1:2011年カルタヘナにおける COP10の結論との齟齬)。 その禁止令はバーゼル条約の新たな条項になり、90日後、2019年12月5日に97か国に対して発効する。


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北アメリカ及びヨーロッパから輸入された修理できない、使用できない電子廃棄物(e-wast)の投棄場で収集する子ども。投棄物は日常的に燃やされ、その結果、毒性の高い有害物質を大気に放出する。アラバ市場、ラゴス、ナイジェリア Copyright Basel Action Network 2005
 バーゼル禁止令の作成に尽力したデンマーク、スリランカ、インドネシア、スイス、グリーンピース、及びバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)を含む多くの国と組織は、今日という日を盛大に祝福しなくてはならない。1990年代の初めに環境及び人権団体からの強い支援の下に欧州諸国及び発展途上国によって求められた同禁止令は、世界の環境正義のために画期的な協定として支持された。そして、最近多発している北アメリカ及びヨーロッパ諸国から、最終的にはアジアやアフリカに持ち込まれる、望まれない廃棄物輸出に鑑みて、その禁止令は今日においても30年前のように有意義であると考えられる。

 ”世界レベルで環境正義を推進するために、かつて心に描かれた最も重要な考えが今、法になる”と、30年間禁止令の達成と実施のために活動し、現在、シアトルでバーゼル・アクション・ネットワークを運営するジム・パケットは述べた。”我々は、今日までにその協定を批准したクロアチアと97か国の全てを称賛し、他の全ての国もなるべく早い時期に批准することを望む”。

 いまだに禁止令の批准国リストにない主要国は、アメリカ、カナダ、日本、オーストラリア、ニュージランド、韓国、ロシア、インド、ブラジル、そしてメキシコである。アメリカは一人当たり最も多くの廃棄物を生成しているのに、バーゼル条約を批准しておらず、禁止令に積極的に反対してきた。 BAN によれば、この国際的な廃棄物取引ルールの順守の欠如がアメリカの回収業者に毎週、有害な電子廃棄物の数百のコンテナーを発展途上国にリサイクルのためという名目輸の下に輸出することを許してきた。


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輸入された廃船を解体するバングラディシュの作業者たち。船はアスベスト、重金属、及び可燃性ガス/油を含んでおり、海岸を汚染し、労働災害死及び病気を引き起こしているので、船主たちはバーゼル条約の管理を回避するのに苦労している。 Copyright Greenpeace 2006.
 この原始的なリサイクルでは、労働災害に対して無防備な作業者による激しい汚染を伴うやり方で電子廃棄物を焼却、溶解、化学的剥離する作業が行われる。また、今日の大きな懸念は、大部分の船会社が多くの鉛、有害アスベスト、PCBs、可燃性ガス/油などが除去されていない廃船を南アジアに送り込み、海岸に乗り上げて解体しているが、そこでは火災や爆発などのために汚染、労働災害・疾病及び死亡が発生しているという事実である。

 ”富める国から溢れる有害物質のために発展途上国を投棄場所として利用することについて言い訳はできない”とパケットは述べた。”禁止令は今、法的根拠となったので、今日まで批准を拒絶してきた国々は今後批准し、リサイクルという名前の下になされた有害廃棄物帝国主義の悲劇の幕を閉じるであろう”。


訳注1:2011年カルタヘナにおける COP10の結論との齟齬
 発効のための必要条件が 1995年の COP3 会議に出席し投票した締約国の 3/4以上が批准とする本記事の内容は、カルタヘナにおけるバーゼル条約第10回締約国会議(COP10)に関する BAN プレスリリース(2011年10月21日)の1995年における締約国であった90カ国のうち68カ国(4分の3)が同条約を批准したときに発効するとする COP10 の結論と齟齬がある。COP11 以降に条件に変更があったと思われるが、経緯が不明なので、今後調査の予定。

訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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