BAN 2007年3月12日
バーゼル条約不遵守通告報告書 2007-1 日本の二国間経済連携協定 緊急行動が必要 情報源:Basel Non-Compliance Notification Report Case Number: 2007-1 prepared by the Basel Action Network March 12, 2007 Japanese Bilateral Economic Partnership Agreements http://www.ban.org/Library/Japan_JPEPA_BNN2007_1.Final.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2007年3月17日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/070312_Basel_Non-Compliance.html はじめに 最近、バーゼル条約の下における義務違反を行う国々の事件が目余るので、またそのような違反に目を向けて措置をとるべき国際社会及びバーゼル条約事務局がの対応が弱いので、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、NGOによるバーゼル条約不遵守通告制度を立ち上げた。このNGOによる不遵守通告制度は、加盟国会議(COP6)によって採択されたバーゼル条約の公式な不遵守通告制度が市民社会のための制度として機能しておらず、さらに説明責任と執行条項が欠如していることのために必要に迫られて作られた。 これらの通告は一般的に多国間環境条約への説明責任と尊重を、とりわけバーゼル条約下の法的義務を推進するというのが我々の信念である。我々はまた、BAN通告が、違反を行っているあるいは行おうと企てているこれらの国々に対してそのような行為を即刻やめるよう圧力をかけることを期待する。 BAN通告は、a) バーゼル条約の遵守から外れた行為をしている加盟国−または、b) バーゼル条約の不遵守を勧め、助け、扇動する国−について我々が動かぬ証拠を得たときにバーゼル条約不遵守通告報告書として発表される。この報告書はバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)の責任と記述に基づく。そのような通告はBANのライブラリー http://www.ban.org/main/library.htmlに掲載されており、また同時にその写しは下記に送付される。
バーゼル条約不遵守通告報告書 事件タイトル:日本の二国間経済連携協定 事件番号:2007-1 違反国:日本 違反該当条項:4.2.b; 4.2.d; 4.2.e; 4.4; 4.10; 11 日付:2007年3月12日 文書
内容 日本は二国間貿易協定を利用して近隣の開発途上国に有害廃棄物の輸出を促進している 過去数年間、アジアで最も経済力がある日本は、バーゼル条約を回避し、アジアにおける隣国に対する有害廃棄物貿易を自由化し促進するための計画を作成してきた。この計画の重要な要素のひとつは二国間貿易協定の利用である。これらの貿易協定を利用するやり方は、バーゼル条約不遵守であるとみなされると我々は信ずる。 日本は、日本シンガポール経済連携協定(JSEPA)[1]の発効に先立ちシンガポールとの間で外交覚書を取り交わした2002年10月31日に、この方向への第一歩を踏み出した。日本が次のステップを計画したのは、2005年12月31日にクアラルンプールで日本マレーシア経済連携協定(JMEPA)[2]が調印された時である。 脚注[1] 日本・シンガポール新時代経済連携協定(外務省日本語ページ) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/kyotei/index.html The Japan-Singapore Economic Partnership Agreement (JSEPA)(外務省英語語ページ) http://www.mofa.go.jp/region/asia-paci/singapore/jsepa.html 脚注[2] 日・マレーシア経済連携(外務省日本語ページ) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/malaysia/index.html Agreement between the Government of Japan and the Government of Malaysia for an Economic Partnership(外務省英語語ページ) http://www.mofa.go.jp/region/asia-paci/malaysia/epa/index.html これら二つの無害に見える協定の影響は、日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)として知られる日本とフリピン両国の二国間協定がフィンランドのヘルシンキで調印された2006年9月9日の1ヵ月後に明らかになった。 二年間、フィリピンの市民社会グループは、両国間の貿易協定の本質を理解するために同協定草案のコピーと交渉過程を示す文書を入手しようと試みた。しかしJPEPAの文書が市民社会グループに開示されたのは2006年10月であり、それは同文書の開示を求めてフィリピン最高裁判所に訴えた後で全ての交渉が終了した後のことであった。 JPEPA協定の中で、BANとフィリピン市民社会のグループは、関税撤廃すべき物品の中に、バーゼル条約の下に厳格に管理されるべき様々な廃棄物があることを発見して驚いた。バーゼル条は有害廃棄物の国境を越える移動の最小化を求めており、また同条約の決議 II/12 と III/1 は、OECD諸国(日本もその一員)からフィリピンのような開発途上国への有害廃棄物の輸出の完全禁止を求めているが、新たな法的拘束力のあるJPEPAはそのような廃棄物の取引を暗黙の了解の下に促進することによって明らかに同条約に逆らっている。バーゼル条約は処分用またはリサイクリング用に向けられる有害廃棄物を区別しない−それらはそれぞれ管理可能な廃棄物であって物品ではないが、たとえ日本がそのような区別をしたいと望んでも、リストされた廃棄物の多く(医薬品廃棄物、PCBs、PBTs、及びPBBs[3])はリサイクルすることはできず、また決してリサイクルすべきではなく、破壊すべきものである。 JPEPAはさらに、日本とフィリピンは、この二国間協定に関連するまたはその妨げとなる両国の国内法及び規制の全てを見直し、もしそのような法の存在理由がなくなった、またはもっと非制限的な方法があれば、そのような法を廃止するか修正することを求めている。輸出国に関するバーゼル条約の管理手続き及び義務はこの条項の焦点であり、フィリピンの市民社会グループはこれらの国内法によって確保されている保護が廃絶されるまたはさらに後退させられる可能性があることを非常に懸念している。 さらにこの協定の議論に油を注ぐものとしてJPEPAの下で非関税障壁を課すことを禁止する条項があるということである。同条約の下では日本またはフィリピンは、WTOへの義務と矛盾したことであるが、他国に向けた物品の輸入や販売に非関税障壁の導入またはその保持をしないこととなっている。この条項の根本にあるものは、環境と公衆の健康という理由に基づき望ましくない物品の移動を禁止するという国家の主権をる縮小しようとするJPEPAによる試みである。バーゼル条約やバーゼル禁止修正条項、さらには画期的な合意を実施しようとする他の全ての法は貿易の妨げとなる非関税障壁であり、疑いなく最初に攻撃目標となる。 JPEPAの推進者らは、懸念をやわらげるために、人、動物または植物の生命と健康を守るために必要な措置のような”例外”を設けているGATTの第20条が引用されていると指摘している[4]。しかし、これら推進論者らはこれらのGATT または WTO の安全保護は環境法を守ることについて同第20条及びあいまいな文章構成である他の条項はほとん役に立たないことをすでに証明したとGATT委員会決定が解釈しているということについて言及していない。 脚注[3] バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)報告書2006年11月8日/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA) 日本のアジアにおける有害廃棄物貿易の自由化構想の第一歩 脚注[4] GATT 第20条 (b) JPEPAの下での物品取引の影響を調べるためにBAN は JSEPA(シンガポール)と JMEPA (マレーシア)の貿易条項をJPEPAと比較した。BANの調査は、この3つの日本とのすばらしい貿易協定は似ていることを明らかにした。すなわち、3つの二国間協定は全て同様な有害廃棄物を含んでおり、同様な特恵関税削減を与えている。それらの協定はまた、非関税障壁措置をこれらの有害廃棄物に課すことを禁止する条項をともに持っている。BANはJPEPAとその有害廃棄物貿易の影響に関する報告書と批判書を作成し、同協定にリストされている有害廃棄物のリストも含めた。 BAN 報告書 2006年11月8日/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)−日本のアジアにおける有害廃棄物貿易の自由化構想の第一歩 BANはフィリピンの市民社会グループと連携してフィリピンでこの問題を公衆に知らせることに着手した。最近数週間の本件に関する国内での議論を受けて、フィリピン政府は日本がJPEPAは全てか無かの協定であるとして同協定から有害廃棄物条項を削除するどのような可能性をも阻止したことを明らかにした。 日本がこのような方針に立つので、フィリピン市民社会グループは現状の協定草案をフィリピン上院が拒否し同協定を再検討するよう要求した。しかし、医療介護労働者の市場開放のようなフィリピンに対する経済的な約束を協定中に盛り込むにあたり、日本は国際法違反となるような大変な交渉影響力を行使した。それは商業捕鯨産業を排除するという世界の合意に反して経済的関心事項で開発途上国を脅して国際捕鯨条約(IWC)を支配しているのと同じやり方である。日本は有害廃棄物の先進国から途上国への移動を禁ずるためのバーゼル条約の合意を回避するために同じような戦術を使っているように見える。 JPEPAは環太平洋諸国の中で日本が交渉中または締結を急いでいる一連の二国間協定の中で最新のものであり、これらの協定の批准のペースは急速となっている。日本側はフィリピンと日本の両国市民社会グループによる声を無視して、有害廃棄物条項には手をつけずそのままにして、調印後わずか3ヵ月後に日本は2006年12月にJPEPAを批准した。フィリピン側は2007年中期の選挙のためにフィリピン上院はJPEPA批准に関する動きはない。しかし、フィリピン大統領は2007年7月に議会が再開したら上院が直ちに批准を行うべき重要な協定であると考えていることは明らかである。 2007年の第1四半期に日本はタイとの日本タイ経済連携協定(JTEPA)に関する交渉を終了した。JPEPAとその有害廃棄物貿易に反対するにフィリピンの市民社会グループの声はアジア地域中に響き渡り、タイの仲間達に協定草案を開示するようタイ政府に要求することの原動力となった。タイ外務省はJTEPAに有害廃棄物が含まれていることを認めた。残念ながら草案文書の全ては公衆には公開されておらず、有害廃棄物条項もJTEPAから削除されていない。 日本は現在、インドネシア及びインドともそれぞれ二国間協定の交渉を行っている。もし、日本のシンガポール、フィリピン及びタイとの協定がインドネシア及びインドとの協定の指標となるなら、有害廃棄物がそれらの二国間協定に含まれている可能性は高い。インドネシアとインドの市民社会グループはそれぞれの政府から情報を入手するための行動を起こしている。 今日まで、日本はフィリピン及びタイと交渉中の二国間協定から有害廃棄物条項を削除するようにとの市民社会の要求に回答しておらず、またアジアに廃棄物植民地を構築するという意図をやわらげる気配はない。これは日本の真の意図とバーゼル条約とバーゼル禁止条項を無視する態度をとり続けている。 最近、BANは、2006年8月に日本政府によって作成された日本とアジア諸国の”有害廃棄物の双方向移動”に、二国間協定を利用することに関する調査委託事業の公募を実施したことを知った。 2006年8月の公募は、日本政府の唯一の取組というわけではない。日本政府はまた少なくとも他の一つのシンク・タンクである地球環境戦略機関(IGES)に資金提供をしているが、このIGESは、バーゼル条約は厄介な手続きであり、循環資源の国際流通の障壁となっているとバーゼル条約を非難するペーパーを発表している[5]。このIGESのペーパーは、3Rイニシアティブの利用を通じて、また JPEPA、JMEPA、JSEPA 及び JTEPA のような二国間自由貿易協定を通じて循環可能な有害廃棄物の国境を越える移動の拡大を提案している。 脚注[5]:国際リサイクル特区とアジア域内ネットワークの構築 http://www.iges.or.jp/jp/pub/pdf/policybrief/001.pdf さらに、ケニヤのナイロビで開催された最近の会議で、日本政府は同時に開催されたサイドイベントにおいて日本から開発途上国への有害電子廃棄物の輸出を支持するのかどうか問われた。彼らははっきり肯定の回答をした。さらに、日本は、会議中にバーゼル禁止条項を受け入れることができないとしてバーゼル禁止条項非難の発言をした唯一の加盟国である。 国際法専門家によれば、最も新しく最も具体的な二国間協定はより古いバーゼル条約を打ち負かすというような貿易紛争議論での裁定があり得るとして法的正当性の懸念がある。現在日本は、バーゼル条約懐疑国という一線を越えて矛盾する二国間協定の展開を通じて不遵守を含む同条約との戦争に公に入ったということは明らかである。そして彼らは強力な経済力を武器に、彼らの廃棄物植民地構築の野望を受け入れさせ、不遵守を助けそそのかすために世界の近隣者の腕をねじ上げようとしている。 バーゼル条約違反
日本はフィリピン及び他のアジア諸国に有害廃棄物が輸出しようとしており、日本は有害廃棄物管理の国内処理を求める条項に違反しようとしている。また、それは有害廃棄物の日本からアジアの他の開発途上国への国境を越える移動を増大させるものであり、これは有害廃棄物の国境を越える移動を最小にするという義務に違反する。 さらに、有害廃棄物の開発途上国への国境を越える移動は有害廃棄物の環境的に適切な管理がないと高いリスクが生じるということが認められてバーゼル禁止修正条項が加盟国の合意によって採択されているのに、日本の行為は有害廃棄物の環境的に適切な管理を確実にするためのバーゼル条約の義務に真っ向から反するものである。 日本は、この条約の条項を実施し執行するために、この条約に違反する行為を防止し罰則を科する措置を含んで、適切な法的、手続き的、及びその他の措置をとる義務がある。日本とアジア諸国との間の二国間協定または有害廃棄物の双方向移動を利用することについての調査によりバーゼル条約に反することを求める日本の2006年8月の公募は、同条約に違反する行為を罰することをしないだけでなく、日本自身が犯罪者になり、同条約に違反する行為をそそのかすことになる。 貿易の道を開き有害廃棄物貿易のための市場環境を作り出すことを通じて有害廃棄物のアジアの隣国への移転を促進することにより、日本は日本が生成した有害廃棄物を管理するための責任を二国間協定の相手国に転嫁している。バーゼル条約の第4条10の下では日本は輸入国または通過国に責任を転嫁することはできない。 同条約は二国間の、多数国間の又は地域的な協定又は取決めを締結することができる。当該協定又は取決めは、この条約により義務付けられる有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理を害するものであってはならないとしている。当該協定又は取決めはこの条約の定める規定以下ではない環境上適正な規定を定めるものとするとしている。その二国間協定の中で、”廃棄物”を”物品”として再定義することにより、日本はバーゼル条約の下に確立した自由貿易から明白に分離した世界の管理対象である廃棄物とみなされる対象物または物質の管理を直ちに回避した。さらに、加盟国は二国間協定は現在も将来もバーゼル禁止修正条項を回避するために使用することができないという強い意見を表明していた。しかし、このことは日本が意図していることを正確に表している。 もし規制されるべき有害廃棄物を自由化される物品として含むことが許されるなら、、日本の二国間協定自身、バーゼル条約を法的に無効にするかも知れないので解決のための議論が必要である。すでに議論されたように両国は、JPEPAの下で貿易を阻害する、または存在理由がなくなった国内法や規制は廃止または修正することが求められる。このような条項をもって、バーゼル条約よりもっと新しくもっと具体的な二国間協定が1992年に発効したバーゼル条約の国内実施法を無効にすることができるような状況を想像することは難しいことではない。 備考 日本の二国間協定はバーゼル条約との法的矛盾だけでなく、ストックホルム条約やモントリオール議定書やワシントン条約(訳注:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約/CITES)など他の多国間環境協定とも矛盾する。全ての日本の二国間協定は有害廃棄物の貿易を促進するだけでなく、CFCs や DT、象牙、べっこう、など国際的に禁止または管理されている他の物質の貿易をも促進することになる。さらに詳しい情報: BAN 報告書 2006年11月8日/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)−日本のアジアにおける有害廃棄物貿易の自由化構想の第一歩 勧告される行動
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