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(2004年1月15日発行)



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神奈川県警に情報公開請求をした


弁護士 鈴木 健



 昨年11月18日、全国の市民オンブズマン組織が一斉に情報公開請求を行い、それに伴う形で、我が警察見張番も、神奈川県警に対し情報公開請求を行った。今回請求をした項目は以下のとおり。

【全国市民オンブズマン組織と共通のもの】
@県警本部監査関係資料
A県警の激励慰労費支出関係資料

【警察見張番独自のもの】
B県警交通総務課の旅費の旅行命令簿・復命書
C加賀町警察交通課の捜査費、参考人費用弁償支出関係資料
D規律違反台帳

このうち、@は公開期間延長決定がなされたため、今日現在でまだ開示されていない。(*近く公開予定)Bは、旅行命令簿は一部開示されたが、復命書は不存在として開示されなかった。Cについても、執行・支出がなく不存在とのことであった。
 したがって、今日現在で開示済みであるのは、Aの県警の激励慰労費支出関係資料、Bのうちの県警交通総務課の旅行命令簿、D規律違反台帳、であるので、これらにつき、どのような部分が非開示とされたのか、開示された資料から読みとれることは何かにつき、以下に気付いたことをまとめてみる。

 県警の激励慰労費支出関係資料について
 非開示とされた部分は二つある。一つは領収書の印影部分(及び科によっては領収書上の個人名)で、理由は、「特定個人が識別され、若しくは識別され得る情報に該当するため」となっている(*資料2)。もう一つは、激励慰労費と他の捜査費の支出伺いが一枚の書面でなされている場合の、他の捜査費に関係する職員の氏名、官職、支出金額・事由、交付年月日及び支出件数が分かる情報で、理由は、「公開することにより、捜査費の個々の執行状況が明らかとなり、捜査活動等の状況が推認され、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがある情報に該当するため」となっている(*資料1)。
 「他の捜査費」に関する情報が不開示とされたことの当否は別として、今回請求したのは激励慰労費支出関係資料であるから、それに限っていえば、ほとんど全部開示されたと評価できるのではないか。以前大内顕さん(元警視庁職員)のお話で、架空の捜査費領収書を電話帳などを使って捏造し、幹部に裏金を流していた事実が明らかにされたが、この激励慰労費に関しては、領収書に記載された店の住所や屋号も墨塗りされていない。激励慰労費の部分で裏金を作り出しているわけではないから堂々と開示できるということなのであろう。

 支出内容を見ると、部長以上の激励慰労会については、大体参加人数×3000円で行うと相場が決まっているようだ(中には2000円のものもあった。もっとも、それだけの人数が本当に集まったかについての証拠はないのであるが)。領収書
の宛名も、新横浜プリンスホテルが目を引くくらいで(それでも換算は1人3000円)、ダイクマやFUJIスーパー、ダイソー(皆さんご存じの100円ショップ)など安売り店のものも散見された。激励慰労の内容によっては、リポビタンD150本やバナナ3箱の支給などもあった。案外、慎ましく執り行っているのかも知れない。

 県警交通総務課の旅行命令簿について
 まず、支給を受けた者の氏名は、警部以上の者は明らかにされているが、警部補以下の者は不開示となっている。行程については、支給を受けた者の自宅が関わっている場合に一部不開示とされ、その場合の「旅行雑費」欄も不開示とされている(*資料3)。
 内容は、総務課を対象としたからか、「交通安全教育」「会議用務」「事務連絡」といったものが多い。一部「事故現地診断」という内容があったが、総務課の者が交通事故現地に何をしに行くということなのであろうか。

 (*なお、仙台市民オンブズマンが、宮城県警の旅費・食料費に対しての情報公開請求をした際、警部補級以下の総務室職員の名前を非公開にしたことを不当であるとして、非開示処分の取り消しを求める訴訟を起こし、仙台高裁は、処分取り消しを命じた。04年1月6日までに「被告の宮城県が上告しない方針を県警に伝え」、仙台高裁の判決が確定した。添付新聞記事参照)

 また、鉄道運賃の他に、旅行1回について200円の旅行雑費が支払われることになっているようだ。

 規律違反台帳について
 所属庁、氏名年齢、刑事手続に付された場合の最終的な処分の内容は、すべて不開示である(*資料4)。これらの情報の中には、既に新聞などに掲載されているものも多く、いまさら不開示とする必要性に乏しいと思われる。それでも不開示としたのは、県警が自ら情報開示するわけにはいかないという面子の問題なのであろうか。
 それでも、2003年1〜10月までの間に、どの階級の警察官がどんな事件を起こし、どのような署内処分を受けたかは見て取れる。まず驚くのは、例年より数は減っているものの、その件数の多さである。10か月間に89件の規律違反が認知されている。最もこの中には、ある警察官の規律違反に対するその上司の監督責任を問われたものもあるので、案件として重なっているものもあるのであるが、それにしても月平均10件近くというのは多くないか。

 規律違反の内容別に見ると、「捜査不適正」「捜査書類提出遅延」「公用品紛失」「留置業務不適正」「手帳証票紛失」「無許可営業」といった、公務の適正な執行に関わる内容のもの約50件、「速度超過違反」「飲酒上の傷害」「酒気帯び人身
事故」「詐欺・窃盗」といった、刑法犯となるもの約30件、「異性関係」「不相応な借財」といった、警察官の私事にかかわるもの約10件、となっている。
 目を引いたのが、「被害届提出失念」「少年事件未処理」「情報漏洩の監督責任」「公用文書破棄及び証拠隠滅」「係会費の流用」といった事実である。これらのことが警察署内部で行われていたのでは、国民の警察に対する信頼は保ち得ない。しかも、上記89件のうち、約半数の37件は、警視・警部・警部補の階級の者によって起こされている。

 まとめ
  今回は、比較的警察の方でも情報開示しやすいと思われる部分に着目して請求をかけた結果、まあまあ無難な開示結果となったように思う。が、「他の捜査費」に関する資料や、規律違反者の所属庁・氏名年齢など、「警察にとって本当に知られたくない事項」についてのガードの堅さは、依然として変わっていないと評価できる。今後も機会を見計らって請求をかけ、徐々に「本当に知られたくない事項」に迫っていきたいと思う。


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