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(2002年11月11日発行)



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警察の理念と情報公開


弁護士  佐久間哲雄



 日本道路公団を初めとする道路4公団の民営化を目指す作業が本年6月から進行している。新日鉄の今井会長をトップとする委員会は,公開で審議を続けている。議事録も要約ではなく,審議のやり取りを全文載せる方式である。当初,些細な資料の提出にも応じない姿勢を示した公団側も,国民注視の中にあって抵抗しきれず,最近は大分素直に資料を出しているようである。

 次々と驚くような事実が明らかにされている。4公団の負債40兆円に対してほぼ見合う資産があるとされていたが,固定資産税の負担がどの程度になるか検討をつけるために改めて評価させたところ,何と20兆円程度という数字が出た。
 以前から道路公団の調査・研究している猪瀬委員も,恐らくこの数字にはびっくりしたのではないか。道路族の国会議員の先生方の意見も一本調子のものでなくなりつつあるようだし,道路建設計画の見直しに断固反対と云っていた多くの県知事の中から,2車線を1車線に変更しようという声が,最近では大分上がっているそうだ。

 国民の批判もさることながら,新たに明らかにされた事実・数字を前にして,従前の考えに変化を来たしているのではないかと思う。改めて情報公開の威力を感じるのは,私だけではないだろう。

 神奈川県警を震撼させた覚せい剤事犯もみ消し事件の記録を調査したとき,関与した本部長以下,県警上層部が「警察の威信」に金縛りになっていることを痛感し,憐れを感じた。威信とは,広辞苑によれば,威光と信望をいう。警察,その構成員である警察官に市民からの「信望」が寄せられ,市民の信望に支えられことは,不可欠であろう。
 「威光」の方はどうか。威光があったほうが警察の業務は一見効率的に進むように思われるし,個々の警察官としても気分は良いかもしれない。考えるべきは,「威光」という理念が現代社会における警察に相応しいかどうかだろう。行政情報は,できる限り公開されたほうがよいとされるのが現代社会の潮流である。警察,警察官もこの流れに抗うことはできない。
 そうとすれば,市民に情報公開をし,相互理解のうえに立った市民からの信頼のうえに立った警察の姿を模索すべきではないか。警察当局は,新しい理念への転換は終わっているというかも知れない。そうならば,「警察の威信」に金縛りになっている実態はないのか。日本の警察そして神奈川県警の名誉回復は,警察の理念の再点検・その地道な実現の努力にかかっていると考える。
 情報が公開されさえすれば,多くの市民は,協力を惜しまない。


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