石油発動機


[ 平成24年 東京発動機運転会 ]

[ 平成25年 マグネトーのオーバーホール ]

[ 平成28年 マフラーの改造 ]




・石油発動機
 石油発動機はそれまで人力や牛、馬等に頼っていた農作業の動力部分を機械化することで、  人を農作業の重労働から開放し、能率を画期的に向上する効果をもたらした。  現在の農業機械は原動機(エンジン)と作業機械が組み合わされたものですが、石油発動機は  原動機単体なので、これだけでは何の仕事もできません。
 ベルトによって、動力を脱穀機やポンプに伝えて仕事をします。
 石油発動機は明治時代後期に輸入されて、大正時代には国産の発動機が作られるようになりました。  最盛期には国内に、400社位のメーカーがあったそうです。
 しかし、昭和30年代に入るともっと小型軽量で馬力のあるガソリンエンジンやディーゼルエンジン  が登場して、急速に使われなくなっていき生き残ったのは、ほんの一握りメーカーだけであった。
 クボタ、三菱、ホンダ、イセキ、共立、ヤンマー等はその後も農業機械を製造したが、他のメーカー  は自動車や他の機械メーカーへ転身していきました。
 昭和30年以前は、燃料のガソリンの価格が高くて農業では使用できないため、安価な灯油や軽油を
 燃料に動く石油発動機が盛んに作られました。しかし始動には少量のガソリン を必要とし、エンジンが始動した  あと、灯油(軽油)への切り替えが必要で面倒な操作を必要としました。
 また始動には、重いフライホイールを手で回して始動するので、かなりの労力が必要であったのと
 ケッチンと呼ばれる始動した勢いで手が跳ねられる危険がありました。
 石油発動機は非常に重量(60kg〜200kg以上)がある割りには馬力がなく(2〜十数馬力)、
 今日ではとても実用に耐え得るものではない。  しかし今、この産業遺産を動体のまま保存しようとしてる愛好家の人たちが、定期的に各地で運転会
 を開いている。私も機会がある度に見学に行ったり、地元のイベントに出展している。

 戦後まもなくこの村にも石油発動機が導入されたと村の先輩から聞きました。
 ただ、個人で購入するには高額すぎたので共同で購入したそうだ、子供の頃見たような気がします。
 しかし昭和20年代後半になると、価格が下がってきて個人でも購入する家がでてきたそうです。
 当時の金額で10万円位であったと思われます、今の金額では200万円位になるのでは?
 そんな時期に我が家でも石油発動機を購入し、私が小学校低学年の頃(昭和33年頃)秋の日の庭で
 父と母が稲を脱穀していた光景を今でもしっかり覚えています。
 その発動機が使われなくなって土蔵の中に50年以上も放置され、埃にまみれて錆付いてはいたが
 雨風にさらされず、保存状態が良かったので分解掃除して劣化した部品を代用品で置き換えれば、
 生き返るかも知れないと思い平成22年の1月に修復作業を始めました。
 新三菱重工製の「かつらJ1A」で、昭和20年代の 終わり頃に京都の新三菱重工桂製作所で製造
 されたもので石油発動機としては最新型!!
 錆付いたネジを折らないように分解するのが大変でしたが、約一月で動作させることができました。
 幸いマグネトーと呼ばれる点火装置が無事であったため、わりと順調に修復できました。
 エンジンオイルは当初、車用の10W-30を入れたらオイル上がりを起こして白煙がすごかった。
 今のオイルは冬でも問題ない様、粘度が低く作られています。しかし昔の発動機は加工精度が
 甘いのか、リングがへたっているためか、オイルがヘッド側にかなり回ってしまうようです。
 ピストンリングの交換は簡単にはできないので、粘度の高いオイル(20W-50)を使用してみたら
 オイル上がりは無くなりました。


修復後の動作試験

OHV 4サイクル水冷エンジン

1100-1500rpm 2〜3馬力(原付バイクの半分位)

インパルス・マグネトー方式






この音、排気ガスの臭い、とても懐かしい!!

(左側にMedia Player がでて動画が見れるはずですが、
画面が出ない場合は、このページの上部バーに出ている
警告の”ブロックされているコンテンツを許可する”に
クリックして ”実行”をクリックして下さい。)


Youtubeにもアップロードしました(2016.11.13)。



後でわかったことですが、インパルス・マグネトーではフライホイールをぐるぐる廻さなくても 圧縮上死点
の重くなるところで、押し出すように力を入れれば楽に始動できる。
点火位置の所では、強力なゼンマイが磁石を素早く回転させ1次コイルに発電し、コンタクトポイント
の断続で2次コイル に高電圧を発生させます。
エンジンの始動後は、通常の回転マグとなりゼンマイは働かない、実によく出来ています。!!



【 ヘッド部の分解中 】




消音器を外した状態

消音器の構造

 消音器内部には、直接音や煙を外部に出さないよう遮蔽物が入っています。

下側のプラグは廃番のGA-50、上側はG-27

代替品のG-27

 当初、GA-50という点火プラグがついていたがメーカー(NGK)に問い合わせたところ
 既に製造中止とのことで、代替品としてG-27があるとのことで取り寄せました。

左チョークとキャブレター部分

ガソリンと灯油のニードルバルブ

 このニードルバルブが錆付いていて外すのが大変であった、強力浸透剤を数日間しみ込ませてから
 慎重に外しました。

燃料の通路、中にあるのはガバナー

空気/燃料の混合比を調整するチョーク

 ガバナーは、クランク軸の回転による遠心力を検出してフィードバックすることで混合気の量を調整し
 回転数が一定になるよう制御を行っている。
 ガバナーのつまみによって、ある程度はアクセルのように回転数を調整できる。
 キャブレターの通路の清掃には、エアースプレーを噴きかけ清掃しました。

排気と吸気のバルブスプリング

排気と吸気のバルブ本体

 排気と吸気のバルブを分解するのは結構大変なので、片方づつ押してエアースプレーと細いワイヤーブラシ
 で通路を掃除しました。



【 ギアーボックスの分解 】

片側の動輪を外したところ

ギアーボックスの内部

 マグネトーギアの内側に、インパルス・バネが格納されていて点火位置のところで、ギアの中心部のみが
 くるっと素早く回転して点火プラグに火花を飛ばす。
 吸排気制御ギアは、吸気と排気バルブを押しているプッシュロッドを制御している。



【 地元農協の支店祭りに出展した時のスナップ 】

平成22年5月15〜16日



多くのご年輩の方から”懐かしい!”とか”よく動いているね!”とのお言葉を頂戴しました。

インターネットで探したら「三菱かつら」の昭和29年頃のポスターが見つかりました。


当時の宣伝ポスター

当時の宣伝ポスター

ホーロー看板


【石油発動機運転会 in ポートメッセ名古屋】

 平成22年6月12(土)〜13(日)にポートメッセ名古屋で開催された、ノスタルジックカーショー2010
 と同時開催の石油発動機運転会を見学してきました。
 新横浜駅から新幹線”のぞみ”で1時間半、名古屋駅から”あおなみ線”で30分位でした。

会場周辺

会場入り口


小林発動機模型のブース

1/4スケールモデルの部品


クボタの耕運機(昭和30年)

私のと同じ三菱かつらJ1A型


ヤンマー






・今回の運転会で石油発動機は約70台出展されたそうです。
 運転会はお天気に恵まれて、ノスタルジックカーショーの展示されていた建物の外で行われ
 会場に近づくにつれ、例えようのない懐かしい灯油や軽油の焼ける臭いがして昔を思い起こしました。
 運転会は全国各地で行われていて、中には何十トンもある船舶用のエンジンや
 航空機のエンジンも出展されるそうです、一度見てみたいものです。
 

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