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(98/10/13掲載)



ア・カペラ(伊:A Capella
聖堂(Capella) 風に(A) という意味で、教会の聖歌隊のように無伴奏で歌われる合唱のことを指し示します。クラシックに限らず使われる言葉で、ア・カペラが売り物のグループ「シンガーズ・アンリミテッド」1971年に発表したセカンドアルバムのタイトルは、その名もズバリ「ア・カペラ」。ところが最近では一人で歌うときも伴奏が無ければ「ア・カペラ」と平気で言ったりしますが、これはあきらかな間違いです。ただし、一人の場合でも山下達郎みたいにマルチトラックで合唱をやっていれば、「一人ア・カペラ」といって、許される使い方になります。


ジャック・ルーシエ(仏人名:Jacques Loussier
「プレイ・バッハ」で有名なジャズピアニスト。よく見て下さい、ルー・シェ(2音節)ではなくルー・シ・エ(3音節)が正しい(というか、本人が発音しているのにより近い)発音です。同じような誤りをおかしているものに、時計やライターのメーカーのカルチエ(Cartier)というのがありますね。これもカル・チェではなくカル・チ・エが正解です。このような間違った発音が定着してしまった理由について考えてみましょう。元々日本人は日本語にない発音は不得意でしたから、例えばフィルム(film)などはフ・イ・ル・ムと発音してきました。フィ→フ・イと音節が増えるのが、外国語(特に英語)の日本語化に於ける自然な流れでした。これは逆に、音節を少なくした方が外国語の発音に近づいてカッコいいという考えにもつながります。そういった環境では、「ルーシエ」というフランス語の発音は日本語的でカッコ悪いと感じられてしまったのでしょう。そこで「ルーシェ」と音節を少なくしたのです。外国語を気取っていっしょうけんめい頑張った けど、実は全く逆のことをやってしまっていたという、哀れな間違いです。

平均律クラヴィーア曲集(独:Das Wohltemperierte Klavier
言わずと知れたJ.S.バッハの全2巻からなる鍵盤楽器のための曲集です。曲のタイトルは、わが国では何の疑いも無く「平均律」と訳されていますが、原題にあるのは"Wohltemperierte"英語では"Well-Tempered"つまり「良く調律された」という意味の形容詞で、決して"Equal-Tempered(平均律の)"ではないのです。オクターブ間を12に均等分割して半音にするという「12平均律」というものは、バッハの時代にはすでに理論として確立はしていたものの、和音の響きを犠牲にしたこの音律を実際に使っている作曲家は誰もいませんでした。もちろん、これをバッハが発明して「平均律クラヴィーア曲集」でデモンストレーションを行ったという俗説は、全くのデタラメなのです。実際にバッハがこの曲集で使ったのは「ヴェルクマイスター第3」だといわれています。(これがいったいどんなものなのかは私には判りません。深く追求しないで下さい。)ちなみに、彼 の息子が作った"The Short-Tempered Clavier"という曲には、時代が下っていることもあって、堂々と「平均律」が使われています。

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