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P.D.Q.バッハの復活

(98・4・7掲載)
全CDリスト
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シックリー教授

肖像 ヨハン・セバスチャン・バッハ、すなわち大バッハには20人あまりの子供がいましたが、最後の子であるP.D.Q.バッハ(1807-1742)?は、後の音楽史に影響を与える重要な作品を数多く作曲したにもかかわらず、その存在は長い間無視され続けてきました。
 この孤高の作曲者に光を当てたのは、南ノースダコタ大学の教授、ピーター・シックリーという作曲者・音楽学者です。彼は
1954年にバイエルンの古城で、管理人がパーコレーターのフィルターに使っていた紙が実はP.D.Q.バッハのカンタータの自筆稿だったことをつきとめました。それ以来、シックリー教授は世界中を巡り歩いてP.D.Q.バッハのおびただしい作品を発掘し、それらを校訂して出版することに全精力を注いだのです。彼は、その成果を専門的な文献として一部の研究者の間だけのものにしておくのはもったいないと考え、コンサートで発表したりレコーディングを行ったりして、一般の聴衆にも広く聞かれるようにつとめました。
 最初にアルバムとしてリリースされたのは
1965年のことです。"An Evening with P.D.Q. Bach"というタイトルのこのLPは全世界であたたかく迎え入れられました。自分の研究成果が大衆に受け入れられたのに気を良くしたシックリー教授は、これに続いて1983年までにヴァンガード・レーベルから全部で10枚のアルバムを発表することになります。さらに1989年からは、レーベルを超優秀録音で知られる「テラーク」に移し、そこからも今までに6枚のCDを出しています。
 ところで、ヴァンガード時代のカタログは、
10年ほど前に一度はCD化されたものの、会社自体が業績悪化のため人手に渡ってしまうという状態に陥ってしまっていたため、しばらく入手が困難でした。それが、最近ではどこの輸入CD屋さんでも簡単に手に入れることができるようになりましたので、この際全CDをまとめてご紹介してみようと思います。(このページ参照)
 さらにこのページには、今までに出版された全ての作品のリストが掲載されていますので、ご覧ください。
 ところで、冒頭で「後の音楽史に影響を与えた」と申し上げましたが、次の曲などはまさにその好例と言えましょう。
Liebeslieder Polkas声楽曲):
 のちにヨハネス・ブラームスがこの曲に触発されて
"Liebeslieder Waltzes"を書いたというのは、最近では研究者の間ではもはや定説となっています。
1712 Overtureオーケストラ曲):
 多くの研究者が、この曲がチャイコフスキーの「
1812年序曲」のモデルだと指摘しています。
The Short-Tempered Clavier独奏曲):
 
P.D.Q.バッハが長い間楽壇から無視されていたのには理由があります。それは、父ヨハン・セバスチャンが、息子のこの曲のアイディアを借用して「平均率」(The Well-Tempered Clavier) を作曲したことを世間に知られることを恐れ、各方面に圧力をかけたからなのです。


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