(3) 四酸化三鉄の結晶模型

 1. 四酸化三鉄の結晶構造2. 四酸化三鉄の結晶模型3. プラ板サンドイッチ方式による四酸化三鉄の結晶模型の作り方

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1. 四酸化三鉄の結晶構造

 スチールウールを燃やすと、後に黒いものが残ります。鉄に酸素が化合したものなので酸化鉄の一種です。鉄イオン3個に対して酸素イオン4個の割合で化合しています。化学式はFe3O4とかき、四酸化三鉄と読みます。砂の中に混じっている砂鉄や、フェライト磁石もその主成分は四酸化三鉄です。四酸化三鉄は、自然界に広く存在しており、日常生活でもいろいろなものに使われています。

 

  四酸化三鉄(Fe3O4)には、2種類の鉄イオンFe2+と Fe3+があります。酸素イオン4個あたり、Fe2+が1個とFe3+が2個含まれています。これらのイオンが右の 写真のように配列しています。

 これは、24個の鉄イオンと32個の酸素イオン(O2-)が集まったもので、四酸化三鉄の結晶の最小単位(単位格子)です。

 2億倍の結晶模型では1辺が16.8cm の立方体になります。

 粉のような四酸化三鉄でも、この最小単位が、前後・左右・上下それぞれに数百万から数千万個づつ並んでいます。だから、四酸化三鉄も結晶といえるのです。

 
2. 四酸化三鉄の結晶模型

 発泡スチロール球を使って、はじめて四酸化三鉄の結晶模型を作ったのは、長谷川智子さん(東京都・今戸中学校)と布 正人さん(高知県・周防形小学校)です。(布 正人『分子模型とイメージ1』高知仮説サークル自費出版、1990、pp.8〜13)
 長谷川さんと布さんが作った結晶模型は1億倍でしたが、Fe2+と、Fe3+は同じ大きさの発泡スチロール球を使っています。1億倍の結晶模型は教室で使うには小さいので、2億倍の結晶模型を布さんの作り方で作ってみました。Fe2+と、Fe3+には同じ大きさの発泡スチロール球(直径3cm)を使いましたが、隙間ができたりつっかえたりしてしっくり収まりませんでした。(佐々木修治・榊原郁子「酸化鉄の結晶模型の作り方」北海道地区化学教育研究協議会,1991 発表資料)
 何度か作り直す中で、2億倍の結晶模型では、Fe2+には直径が3.5cm、Fe3+には2.5と3.5cmの発泡スチロール球を使うと良いことが確かめられました。酸素イオン(O2-)は、イオン半径 1.26 Å を2億倍すると、直径が 5.04 cmになるので、 直径が5cmの発泡スチロール球を使います。
 イオン半径の値は、多くの化合物で測定した+と−のイオン間の距離をもとに決められています。はじめに酸素イオンの半径を決めてから、他のイオンの半径が求められています。イオン半径から計算した値と実測値との差ができるだけ小さくなるように酸素イオンの半径が決められています。

 

 四酸化三鉄の結晶の最小単位には、さらに小さな2種類のユニット(A、B)が4個づつ含まれています。(写真)
 ユニットAでは、1個の鉄イオン(Fe3+、2.5cm球)に4個の酸素イオンが接しています(配位数4)。
 ユニットBでは、4個の鉄イオン(Fe2+と Fe3+が2個づつ、3.5cm球)と4個の酸素イオンが互い違いに接しています。これは、塩化ナトリウムの結晶と同じ並び方です。

 ユニットA、B はどちらにも、4個の酸素イオンがありますが、酸素イオンの中心は図ー2のように、小さな立方体の4つの頂点にあります。この4つの頂点を結ぶと正四面体ができます。この立方体の大きさは、ユニットAとBで同じです。ユニットAとBが8個集まったものが四酸化三鉄の結晶の最小単位になります。

 ただし、これでは2.5cm球のFe3+が4個残ります。この4個の鉄イオンは、隣り合った単位格子の間で共有されているもので、図ー3のように立方体の8つの頂点と6つの面の中心にあります。頂点にある鉄イオンは、8個の単位格子で共有されているので、1個の単位格子当たり8分の1となり8つの頂点を合わせて1個となります。面の中心にある鉄イオンは2個の単位格子で共有されているので1個の単位格子当たり2分の1となり、6つの面を合わせて3個になります。これらのFe3+も4個の酸素イオンと接しています。
 これは、逆スピネル構造と呼ばれているものです。

   ユニットA    ユニットB
  

      図ー2

  図ー3

3. プラバンサンドイッチ方式による四酸化三鉄の結晶模型の作り方

  材 料:
    発泡スチロール球   鉄イオン(Fe3+)用・・・ 2.5cm:  8個
               鉄イオン(Fe3+)用・・・ 3.5cm:  8個
               鉄イオン(Fe2+)用・・・ 3.5cm:  8個
              酸素イオン用   ・・・5.0cm: 32個
    プラ板(B-4版、厚さ0.5mm) 2枚
    灰色と赤の水性塗料、木工ボンド

   下図(四酸化三鉄ー2億倍)

  作り方:

1.発泡スチロール球を、鉄イオン用は灰色に、酸素イオン用は赤に塗ってから半分に切る。
  (2.5cm球は切らずに球のまま使う)
2.プラ板を、下図に合わせて切る。(4枚)
3.下図ー2の1段目、2段目それぞれにプラ板をのせて、セロテープなどで止めてから、半分に切った酸素イオン(赤)と 3.5cm の鉄イオン用の発泡スチロール球を、下図に合わせて木工ボンドで接着する。よく乾いてから裏側にも半分に切った発泡スチロール球を、表に合わせて接着する。同じものを2個づつつくる。
4.2.5cm球の鉄イオンを、図ー2の実線の円に合わせて酸素イオンの上にのせて接着する。
5.1、2段を重ねて上下を逆にしたものをもう1組作る。(3、4段目)1、2段目の上に3、4段目を重ねる。
6.残った4個の鉄イオン(2.5cm球)は、図ー3に示した位置に接着する。(面の中心に3個、頂点に1個)
  この鉄イオンはとれやすいので、つまようじを短く切ったものを間にいれて補強する。
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