| (質問)たとえば市民の代表の顔をしたような、権限を握るような、今の政治と一緒ですね、そんなふうな形に変化していく可能性はないのですか。 (松田)それがあったら、住民投票になりますね。市民との乖離現象が起きたら住民投票なんです。だから、住民投票や国民投票の権利というのは、それは伝家の宝刀みたいなもので、それを持っていることが強みなんですよ。市民と乖離したときは住民投票やるぞと。実際イタリアで住民投票や国民投票は、回数は非常に少ないんですよ。仮に一部がリーダーを形成して強引に何かやろうとしても、住民投票やられたら潰されるわけだから、最初からやらない。だから住民投票のもつ抑制的機能、市民社会が国家や官僚や専門家の特権化を抑止する。 日本はまだそこまで行っていないですね。住民投票で決着をつけようというところまで。それを実現する方が先です。日本においては国民主権制度が働かないでしまっている。部分的国民主権しかないということですね。最終的に国民は決定権を持たないのですから。だからそういう意味では住民投票や国民投票の権利がきちっと確立されたとすれば、これは伝家の宝刀で、たとえば消費税なんか一方的に上げるということがあれば、国民投票にかけられれば、潰されるのは目に見えているでしょう。地方議会にせよ、国会にせよ、世論調査で国民の意思の方向と背反した場合にどういうことが起きるかということは予測できるわけですからね。これは憲法問題にしてもそうですね。国民投票かけてどっちがいいかとか。 イタリアの場合は、最近、各国の国民投票の研究が盛んになってきていまして、その抑止機能、それがあることの重要さが認識されてきています。つまり官僚や特権層が一方的にできないことと、あと市民が能動的に参加するというシステムの重要性。だから投票率がとても高いんですね、責任持つわけですから。このあいだの選挙で投票率が90% 割って大問題になったんですよ。87% かな。平均して92、3%だったんですね。これを割って、特に若い層が行かなくなって、9割を下回ったということで大問題になった。 (質問)日本やったら50 %かそこら。このあいだの選挙で4割いってなかった。30何パーセント。 (松田)イタリアの人に言っても信じないですよ。そんなバカなと。向こうは激しい闘いなんです。選挙権を勝ち取ったという意志が強い。それを学校で教えますからね。これは教育の課題なんですよ。国民主権、普通選挙権というのは参政権のもっとも重要なことだから、まず社会科で教えるべきことなんだけど。 (質問)先日、フィレンツェでしたか、反戦50万人規模と言っているのがありましたね。あのあたりの大衆的な運動の広がりということと「人民の家」との関わりはあるのですか。 (松田)いま社会フォーラムがヨーロッパ全体に広がっています。直接、「人民の家」で参加するとかしないとかではなくて、それ以前に議論をする場として重要なんです。彼らは討論というのが大事なんです、好きなんですよ。その中で、参加しようとする人もいれば参加しない人もいる。自分はそういう意見と違うと、いろんな人が出てくる。だから「人民の家」が一つの運動として参加するわけではない。そこは交流と討論の場なんです。 (質問)「人民の家」自身が、たとえば「人民の家」を運営している選挙で選ばれた人たちが、そういった集会に呼びかたりはしないのですか。 (松田)しないです。多元主義ですから。こういう集会があるよという宣伝をそのメンバーがすることはありますけど。それをやったら「人民の家」が「人民の家」でなくなっちゃうんですよ。そりゃ、カトリックから社会党から共産党からノンポリから、あらゆる人が参加しているわけですからね。参加できないのはネオファシスト党だけなんですよ。これだけはやはり、ファシズム経験がありますからね。 (質問)そのへん、かなりきっちり守られているわけですね、そういう原則は。 (松田)それはもう市民社会であれば、多元的な意見を尊重する。しない限り市民社会として成立しないことは当然ですからね。 (質問)当然選挙のときに、地域の選挙でも「人民の家」が応援するとか、そういう関係は絶対にないですね。 (松田)「人民の家」の中でいろんな政党の代表が来て、政党討論会などはしょっちゅうやっていますよ。毎週のように週末、いろんな政党、党派の人が来て、それはイタリアだけじゃなくて外国からも呼んでね、やっています。ヨーロッパ議会選挙などもね。 (質問)地域レベルでの政治意識を高める場として存在しているということですね。 (松田)結果として。出発点は政治的じゃないです。政治的なものは極めて少ないです。基本は、政治的なものは個人の問題ですから。ただ、議論することによって社会的、文化的、政治的な意見を豊かにすることができる。行動は個人の判断です。だからBS放送を見ていて、BSではフィレンツェのデモのことをかなり詳しく報告したんですね、プラカードや横断幕見ていたら、労働組合はかなり広範に参加していました、いろんな産別や地域別があって、それからいろんな市民団体ですよね、そういう人たちはグループで参加している。「人民の家」でまとめて「人民の家」が旗を立てて行くというのはまったくない。フィレンツェというのは大学都市ですから、学生の参加は平和運動、特にイラク攻撃に対する反戦ね。ヨーロッパはアラブ系の人がいっぱいいますからね。イラクに対するアメリカのやり方にかなり厳しい横断幕、スローガンでしたけどね。イタリア語でブッホというのは馬鹿という意味でね、「ブッシュはブッホだ」と。なかなか上手いなぁと。あいつはブッホなんだと。 社会フォーラム、本当に注目ですね。政党主導型じゃないですから。まさに草の根の人たちがインターネットを活用して。固い組織じゃないですね。新しい社会運動の一つの形ですね。非常に柔軟で、固定的組織を持たないですからね。その時のその時の課題で動いて、また散って行くという。そういう意味では現代的な柔らかい多元的な、「組織」という言葉では表せないような、非常に柔軟なやり方ですよね。EUができたことによる効果。もう自由に行けますからね、瞬時に今度はフィレンツェで集まろうと、今度はどこそこで集まろうと。ヨーロッパも高速道路が発達しているから、車でね。 (質問)国内旅行する感覚ですね。大きな国みたいな。 (松田)向こうはドメスチィック・フライトは安いですからね。もちろんヨーロッパエキスプレス(TEE)があるし。 (質問)「人民の家」は食と絡んでいるのが強いんだと思うのですけど。食堂があって皆でワイン飲んでるから強いんだと思うのですけど。 (松田)それがなかったら集まりませんもんね。美味いチーズがあって、美味い飯が食える。これはローマ時代のことわざで、全ての真理は胃袋を通過する。 (質問)賛成だな。 (松田)それから、ワイングラスの底には真理が住んでいる。ワインを飲まないと真理が分からない。これはいかにもイタリア人らしい。 (質問)そうかぁ。じゃぁそういうものがあれば、日本でもできますかね。日本ではやっぱり居酒屋なんかが・・・。時間がないから、場所だけ作っても日本ではなかなかしんどいとは思いますが。注目しているところとか、そういう動きとかありますか。 (松田)時々そういう溜まり場を作ってやりたいんだという相談は受けます。ただ僕はその前に、とにかくイタリアへ行って、まず「人民の家」の見学ツァーをおやりになってはと進めています。体験学習が一番大事ですからね。日本だって地域によって違うでしょ。たとえばボローニア方式をそのまま日本に当てはめてもうまくはいかない。だから、何かやる前にご自身が、いろんなところを見学するのが一番大切だと思います。フランスにも、郊外の赤いベルト地帯に、「人民の家」とは名乗っていませんけど、いわゆる労働者クラブはあるんです。必ずしもイタリアだけではないんです。イタリアは有名なだけで、どこにでもあるんですよ。市民社会が発達しているというのは、市民社会がそれだけであるわけではなくて、それを支えるいろんなアソシエーションがあるんですよ。まずその実体を知ることが大切です。僕は、できればヨーロッパ全体でやりたいんだけれど、やっぱりフィールドワークをやらなくてはならないので、時間的に無理なので、イタリアに限定していますけれども。できれば他のところをやる人が出てくれば、これは面白いと思います。 (質問)そのときは通訳してくれる人とか紹介してもらえますか。 (松田)イタリアで僕の留学時代の友達がおりますから。それから、今どこに行っても若い人はほとんど英語が出来ますから、英語が第二公用語的になっていますから。イタリア語ができれば一番いいのですけれど。ま、フィレンツェなんかは留学生が多いから、フィレンツェやローマは困らないけど、ボローニアとかに行きますと、日本人自身が少ないですからね。難しいのは、イタリア語が分かって「人民の家」のことをある程度分かっている人を見つけるのが難しい。僕の友人で向こうの人と結婚してイタリアに住んでいる人が、比較的このことに詳しい人で、時間が空いたときは通訳でずっとイタリアを回ってくれますけど。そのかわり、通訳が専門職ですから、向こうは結構通訳料高いですからね。だからある程度、費用がかかるのはしょうがないですね。 (質問)そういうツァーというのは、結構取り扱っているのですか。 (松田)ボローニアに3ヵ月行ったとき、ボローニアの人に聞いたら、「人民の家」を対象に来た人はいない。中心は自治体問題。ヨーロッパの自治体の中でもっともうまくいってるのはボローニアだとか、いろんな所で宣伝されて。とにかくこれは日本だけじゃなくて、世界中からボローニアに。特にパーク・アンド・ライドを最初にヨーロッパでやったのがボローニアなんですよね。あれで随分環境汚染をなくして、そういう自治体見学のついでに「人民の家」に行きたいという形でのぞくというのはあるけど、「人民の家」そのものをツァーしたというのはあまり聞いたことがないですね。やっているのかも知れませんけども。 (質問)一日、二日くらい物見遊山に行ってもなかなか把握しにくいとかあるのですか。 (松田)いや。建物に入って皆がどういう風にしているかとか、何食べているのかということでむしろ実感的に分かる面もありますね。子供たちが参加していたり、それを見るだけでも面白いですよ。どうせイタリアへ行ったら食事をしなくちゃいけないんだから、「人民の家」で食事してスパゲティでも食べて、お茶でも飲んで。確かに本格的なのだと一日、二日で無理かもしれないけれど、しかし一日、二日でも、単なる観光旅行でね、若い人たちがブランド品、グッチなんて買物するよりはもっと面白い経験だと思いますね。 できたら、行かれたらどうですか。本当に地域によって違うんですから。それを一言では言えないんです。ボローニア、フィレンツェなど主要な都市の「人民の家」の紹介をやりたいなと思ってはいるんです。ま、ボローニア、フィレンツェ、ミラノ、トリノ、ローマくらいをと思っているんですけどね。資料は膨大に出てきています。 |
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