原書房 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』のエラー指摘

最終更新日: 2006.9/18 公開日: 2003.5.27


目次

  1. 本ページについて
  2. 資料的価値を落とすエラーについて
  3. 絵の題名の不統一について
  4. 注釈参照番号の位置の不適切について
  5. エルフ語の表記について
  6. その他
  7. 原書房のトールキン本の問題点に関するリンク

1. 本ページについて

原書房から出版されている、 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』 (W.G.ハモンド/C.スカル著、井辻朱美訳)の原著、 『J.R.R.Tolkien: Artist and Illustrator』 (Wayne G.Hammond and Christina Scull) は、 トールキンの味わい深く貴重な絵が多数採録された一級のトールキン資料であり、 詳細かつ正確な記述で広く深い考察が読める一級のトールキン研究書です。

原著は、記述にも絵にも、とても繊細な配慮が行き届いていますし、 現在入手が容易なソフトカバーのペーパーバック版(*1-1)も、 本のサイズがほぼA4の大判サイズで、 中の紙も画集に相応しい質が良いものが使われており、 絵の印刷・発色も良質で、 画集としてトールキンの絵を眺めているだけでも非常に楽しめる本です。

一方、邦訳『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』ですが、 コストを抑えようとしたのか、 残念なことに、本のサイズがA5と普通の単行本サイズに抑えられており、 紙も画集向きのものと言えないものなので、 絵を眺めるとき、原著に比べて、絵の大きさ・印刷・発色が見劣りし、 画集としての価値が邦訳では落ちています(Artist and Illustrator 原著・邦訳 比較画像)。 また本文に関しては、訳文中の、注釈参照番号や絵への参照番号が多数抜けていたり、 日付や、文献の参照ページが間違っていたり、 トールキン著作への理解不足や、原著の細かい配慮及び厳密な情報記述を見逃していることによる、 誤り・配慮不足・情報が曖昧になるなど訳出・編集時点でのエラーが数多く混入していて、 原著の持つ正確な資料・研究書としての価値も、邦訳では落ちていると言わざるえません。

このような邦訳特有の問題があるとはいえ、原著の内容とトールキンの絵が素晴らしいため、 邦訳で読んでも、とても面白く興味深く読め楽しめる本だとは思うのですが、 前述のような原著に比べて薄まっている面があるので、 英語に抵抗がなければ、原著で読むのが一番いいと思います。 とはいっても、英語をすらすらと読めないので、邦訳の方を読みたい人も多いでしょう。 本ページの作成者も英語力に欠けるので、原著をすでに持っていたのですが、 邦訳も発売されたときに買いました。 で、せっかく3800円+消費税も出して買ったのだから、 絵の大きさと紙質・画質はどうしようもないのですが、記述は改善したいと思い、 原著と見比べて気づいたエラーの訂正を、邦訳に書き込んだり(本当は本への書き込みは好きじゃないんですが)、 箇条書きしたテキストを作ったりしています。今回、それらを元にしてHTMLの形に、まとめてみました。

本ページでは、 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』の誤植・誤訳を細部まで洗い出すつもりはなく、 原著では得られる正確な情報が、邦訳で読むと得られなくなったり誤って伝えられていたり、 邦訳読者を混乱させるようなものなど、邦訳のみを読んでいると気づきにくかったり、 おかしいと気づいてもどう間違っているのか原著を見ないと判らないような、 エラーについてまとめたつもりです。 このような問題があると判断しなかったエラーは見つけても記載はしてないです。 記載しなかった例をあげると、p.32「この一からだと、ケルシリアン海岸の後ろにあるはずである」の「」、 p.263「封筒てっぺんにはテングワー」の「テングワー」は、 前後の文脈や記述からそれぞれ「位置」と「テングワール」の誤字・脱字であると、 邦訳のみの読者にも正解が判り易いだろうという判断で記載していません。 こういった判断は恣意的なものですから、記載した中、あるいは記載しなかった中に、 判断違いもあるかもしれませんが。

本ページの作成者は、完全なチェックを行ったわけではないですし、 英語やエルフ語等の語学能力不足やトールキン作品読み込みの浅さ・知識不足から来る、 見逃した重要なエラー、あるいは当方の誤解などあるかもしれません。 また、2002年7月頃に出た本なので、既に重版が出ていて、修正されている点もあるかもしれません (今のところ、本屋で、第1版以外を見かけたことはないのですが)。 本ページの内容に、誤りや拙さなど、 何か気付かれた点がありましたら、 「トールキンと中つ国の世界の掲示板」か、 メールで、 ご指摘頂ければ幸いです。

本ページの作成で使用・参照・参考した、主な書籍とその版を以下に記します。

本ページはUTF-8で記述されている為、UTF-8非対応のブラウザでは表示できません。

表示確認は、Firefox Opera、 IE6 SP2 で行いました。

一部の漢字に、ruby タグを使ってルビをふっていますので、それらは、 ルビ対応ブラウザでは、ルビをふった漢字として見えます。 ルビ非対応ブラウザで見たとき、ルビ用の文字は、 当該漢字の後に《》で括って見えるようにしてあります。

(*1-1) ソフトカバーのペーパーバック版は、 使用・参照・参考書籍に書いた 米国 Houghton Mifflin から出ているもの以外に、 英国 HarperCollinsからも出ています(1998 ISBN:0-261-10360-1)。 作成者は、なぜか両方を所有しているのですが (HarperCollinsの方は保存用として置いてます)、 見る限り同等品で装丁にも中身にも特に差は見られなかったです (違うところは、ロゴ等の社名部分・ISBN・価格表示などぐらい)。 ちなみに、どちらにも印刷場所は香港と書いてましたから、 同じところで作ってるのかもしれません。 (以下は、2004.7/9 追記)作成者は所有していませんが、 英国、HarperCollins からは、ハードカバー版 ISBN:0261103229 も出ています。 ハードカバー版は一時、前述のソフトカバーのものに比べて入手が難しくなっていたのですが、 2004年に入って、増刷あるいは新装されたのか、また手に入りやすくなったようです。 その替わりなのでしょうか、 HarperCollins 版の方のソフトカバーは、現在入手しにくくなっています (米国 Houghton Mifflin 版ソフトカバーはこれまで通り、入手が容易です)。


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2. 資料的価値を落とすエラーについて

原著の持つ資料的価値を損なう、あるいは、邦訳のみの読者を混乱させるような、 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』のエラーで、 気づいたものを以下の表に記しました。

行はページ内の本文先頭行を1として数えていますが、 マイナスの数字が書いてある場合、ページの本文末尾から数えた行です(最終行だと-1)。 但し、注釈のエラーの指摘の場合は、該当番号注釈の先頭あるいは末尾から数えた行になっています。 原著の頁表記の末尾のアルファベットは、原著の本文が左右の2段組になっているどちらの列であるかを示し、 Lだと左列、Rだと右列です。

[訂正]案の表記は、真鵺道(まぬえど)という校正方式の記法を使用しました。 記号の意味については、以下のリンク先を参照してください。

念の為、再度、断っておきますが、ここで指摘しているのは全て邦訳時のエラーで、原著のエラーではありません。

No. 頁/行 該当文 及び [訂正]案 原著 説明
頁/行 原文
1 4/-5 引用注をつけたトールキンの著作、トールキンについての評論などは、主要参考文献としてさらに完全なデータを示した[/(訳注 邦訳では省略した)]。 7R/14 Works by and about Tolkien frequently cited in notes are identified more fully in the selected bibliography. 「主要参考文献」と訳してあるものは原著では巻末付近にある、 Selected Bibliography のことだが、 邦訳では丸々カットされていて存在しない。 本当はこういう情報はカットしない方がいいと思うのだけれど、 省略するならするで訳注でもつけて省略したことを示さないと読者が混乱すると思う。
2 10/1 八十一[歳の/年の生涯で]トールキンは、何枚も絵を描いている。 9L/23 In his eighty-one years he made many paintings and drawings, -
3 11/-6 〈アマリオンの木々〉[【62】/]と一九二〇年[後半/代後期]の反復パターンの[/]リーズ織り【62】【59】、 10L/7 ´Trees of Amarion´ and repeat-pattern friezes of the late 1920s [62,59], -
4 11/-5 『ホビット』の挿絵(一九三七) [/【108, 124】]の装飾的ふちどり、 10L/8 the decorative borders on some of his Hobbit paintings of 1937[108,124] 絵の参照番号抜け
5 13/2 そのタッチを使って装飾的な草を描いている【[/2, ]196】。 11L/2 , which he translated into decorative pictures of grasses[2,196]. 絵の参照番号抜け
6 17/-2 製作年は一九〇二年[/] 13R/16 then the drawing was made about 1902 -
7 19/13 ホビット[/]の西の〈川〉 14R/8 The Water, west of Hobbiton, Hobbitonを「ホビット庄」と訳している間違い。 評論社の『指輪物語』にあわせようとしたつもりなのだろうが、 評論社の『指輪物語』では「ホビット庄」は the Shire の訳語として使われているのであって、 Hobbiton の訳語として使われているわけではない(Hobbitonの訳語は「ホビット村」)。 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』では、 the Shire も Hobbiton も両方、「ホビット庄」と訳していて区別がついていない。
8 21/-5 (そして後年の『ホビット』の挿絵[/の一部]も) 16R/-4 (and much latter, in some of his Hobbit art) -
9 22/1 エクセター・カレッジの古典学[で賞をもらい/の自由奨学金を与えられることになって]、 17L/2 having been awarded an Open Classical Exhibition to Exeter College. この場合の、Exhibitionは賞ではなく奨学金と訳すべきでしょう。 ちなみに、he having been awarded an Open Classical Exhibition to Exeter College.という文章が、 『J.R.R. Tolkien A Biography』にあるのですが、邦訳の『或る伝記』(菅原啓州 訳)p.65では、 「エグゼター学寮の古典専攻の自由奨学金オープン・イグジビションを恵まれることになった」と訳しています。 訂正案は、この訳を参考にしました。
10 26/-9 トールキンの神話関連の[/著述]でもっとも古いものは、一九一四年九月、 19R/4 His earliest known writing that relates to his mythology dates from September 1914, 絵ではなく、詩 The Voyage of Earendel the Evening Star を書いたことを指しています。
11 27/1 つづりはのちにかわるが、エアレンデルは 19R/-9 Éarendel in time became Eärendil, 邦訳文でも、 Éarendelからエアレンディル(Eärendil)に変化したことを明記すべきだろう。
12 27/2 ミドルアースから[/西方へ]船を出し 19R/-9 sails west from Middle-earth -
13 27/3 ヴァラールの援助を求めに[キングズ・ノートンに/]ゆく。 19R/-8 sails west from Middle-earth to seek the help of the Valar, 何をどう勘違いしたら、 エアレンデル(エアレンディル)がキングズ・ノートンへ行くなどという、 とんでもない訳になるんでしょう。 もちろん原文では行ってません。
14 27/7 一九一三年七月[/八日]にはキングズ・ノートンを見おろすビルベリー・ヒルにのぼって 19R/-1 On 8 July 1913 he was on Bilberry Hill overlooking King's Norton -
15 27/8 そのすばらしい眺望を絵にした[/【16】] 20L/1 painted a splendid view[16] 絵の参照番号抜け
16 33/-2 北ウェールズでの休暇中の三枚[/(注28)] 26L/2 three from a holiday in north Wales,28 注釈番号抜け
17 36/5 自転車をこいでいる姿が二度、[横顔のものには午前八時二五分、後姿には午前九時と書かれている/横からのものには午前八時二五分、背後から見たところには午前八時二七分と記されている。三つめに、午前九時と記されている、立った姿勢を後ろから見ているもの]。 27L/4 Twice he is riding a bicycle, from the side labelled ‘8.25 am’ and a rear view at ‘8.27 am’.In a third view he is seen from the rear, standing, with the caption ‘9 am’. 八時二五分と九時だけになってしまっている。
18 39/-4 〈おお、夏もたけなわのオックスフォード……〉のほうは、その番地の裏側の窓からの眺めだろう。[/(注32)] 30L/-4 Oh to be in Oxford seems to show a view from the rear window at that address.32 注釈番号抜け
19 40/3 一九二八年の夏、その年の8月のスケッチ【26】[/(注33)]の書き込みからすると、一家はライム・レジスの大通りのウォリス氏の家に間借りしていたようだ。 30R/1 In summer 1928 the family probably rented rooms from a Mr Wallis on Broad Street in Lyme Regis, as the inscription on one sketch from August of that year suggests[26].33 注釈番号抜け
20 40/11 一九二八年[/八月]の別の絵 30R/-5 another work from August 1928 -
21 41/-6 一九四七年の[/八月]、 31R/14 In August 1947 -
22 43/-2 トールキンの本にはよく空や天候の描写が丹念にくりひろげられているが、 絵の方で同じことを試みたのは、 この後期の作品[がはじめてのようだ/まではまれだった]。 32L/-4 In his writings Tolkien often gave detailed descriptions of the sky and weather, but rarely until these late drawings did he seek the same effect in his art. -
23 46/3 少年時代には、古い骨粉で服を真っ白にした、セアホールの若い粉ひきを〈白い[オーク鬼/オーガ(訳注: オーガは民話・童話に出てくる巨躯の人食い鬼のこと)]〉と命名し、 キノコをとったかどでトールキンを追いかけた農夫を〈黒い[オーク鬼/オーガ]〉(この男は『指輪物語』の中のマゴットじいさんのモデルの一部ともなった)と呼んだ。 35L/22 As a boy he nicknamed the young miller at Sarehole, whoes clothes were covered with the white dust of old bones, ‘The White Ogre’, and the farmer who chased Tolkien for picking mushrooms ‘The Black Ogre’ (he was partly the model for Farmer Maggot in The Lord of the Rings). Ogre をオーク鬼としているのは、 指輪物語の読者に親しみやすく意訳したつもりだとは思うのですが、 少年時代の時点でオークという言葉をトールキンが使ってたと誤解させる訳はやはり違うかなと。 Ogre は『リーダーズ英和辞典 第2版』によると「(民話・童話の)人食い鬼[巨人・怪物]; 鬼のような人; 恐ろしいもの[事]」、『The Concise Oxford Dictionary (Tenth Edition)』によると'1.(in folklore) a man-eating giant. 2.a cruel or terifying person.' とあります。
24 49/4 ランブーンの聖ミカエル教会[/【13】] 36L/9 St Michael's Church in Lambourn[13]. 絵の参照番号抜け
25 49/-7 フイがその心の思いを読みとるのであった。[/(注5)] 36R/3 Fui reads their hearts.5 注釈番号抜け
26 54/10 一九一一年の一二月[/]から一三年の夏のあいだに、 40R/2 between about December 1911 and summer 1913, -
27 56/14 目覚めの[/]コイヴィエネニ(Koiviënéni) 41L/-1 Koiviënéni the Waters of Awakening -
28 58/-2 [最初の『サンタクロースからの手紙』の初版(一九ニ〇年)/一九ニ〇年の最初のファーザー・クリスマスからの手紙の為にトールキンが描いた絵]に再登場する【64】。 43R/-6 re-used in his art for the first ´Father Chirstmas´ letter in 1920[64]. 原文はつまり、1920年の Father Chirstmas (英国では Santa Claus のことを Father Chirstmas ともいいます) からの最初の手紙に描かれていた絵について書いているのであって、 本としての『サンタ・クロースからの手紙』の初版のことではない。 この1920年以降のトールキンが、 毎年クリスマス頃にサンタ・クロースになりきって自分の子供たちに宛てて出していた愉快な手紙を、 トールキンの死後に編集して出版したものが本としての『サンタ・クロースからの手紙』であり、 1920年に出版されているわけがない。
29 59/2 ロマンティックな〈北方の家〉を描いた六日後[/の一九一四年一月一二日]に 43R/-4 Six days after he drew the romantic ´Northern House´, on 12 January 1914, -
30 59/6 一日か二日[あとに描かれている/早く描かれたのは明らかだ] 44L/6 painted evidently a day or two day earlier, 「あと」では無い。
31 59/12 自作の『なぜなぜ物語』(一九[二九/〇二]) 44R/5 his Just So Stories(1902) この前後の文は、1914年に描かれたトールキンの絵について、 キプリングの『なぜなぜ物語』の絵を思わせるという内容ですから、 『なぜなぜ物語』の出版年が1929年か1902年かで意味が変わってしまいます。
32 59/-4 それから一二月二[/]日には、 45L/1 Then, on 27 December, -
33 59/-2 トールキンは学童時代[/の一九一一年]にすでに、 『カレワラ』をカー[/]ビーの翻訳によって読んでいる。 45L/6 Tolkien had discovered that work in Kirby's translation in 1911, whill still a schoolboy -
34 62/11 [/一九一四年九月の]「あかつきの星のエアレンデルの航海」 45R/15 The Voyage of Earendel the Evening Star, September 1914 -
35 62/-3 一九一七年[/の春]に改訂増補されて 45R/-18 revised and enlarged in spring 1917 -
36 63/12 滝となってなだれ落ちる[/(注24)] 46L/9 cascade.24 注釈番号抜け
37 63/-3 一九[五一/一五]年初期 46R/2 early 1915 -
38 65/12 広間がかかがやく[/(注28)] 47L/15 dazzling halls.28 注釈番号抜け
39 65/-3 「エルフの到来とコールの創造」[/(注29)] 47L/-5 The Comming of the Elves and the Making of Kôr.29 注釈番号抜け
40 76/10 一九二八年[/ 5月]の別の絵【49】では、ドラゴンが戦士と戦って火を噴き出している 53R/15 In another drawing, from May 1928, a dragon is in fiery action, contending with a warrior[49]. -
41 76/-2 グレンデルの住む湖の絵を二枚[ 【51】【52】/【50】【51】]描いており、 53R/-20 he draw two pictures of Grendel's mere[50, 51], 絵の参照番号の誤り
42 78/2 『指輪物語』のエミン・ムイルと〈[死の荒れ地/死者の沼地]〉 54L/8 the Emyn Muil and the Dead Marshes in The Lord of the Rings 「死の荒れ地」という訳では、 『指輪物語』評論社訳の「死者の沼地」のことだとは、 邦訳読者は気づきにくいでしょうし(*2-1)、 Marshes を「荒れ地」と訳すのもどうかと思います。
43 78/13 山のふもとには、海ゆくエルフたち[/テレリ]の街のひとつ[テレリ/]がある。 54L/-6 At the foot of the mountain is one of the towns of the seafaring Elves, the Teleri. テレリを街の名前として訳している誤り。 『シルマリルの物語』を読んでいれば間違えないと思うのですが、 訳者は、まともに読んでいないのでしょうか。
44 80/-2 『ホビット』の霧ふり山脈の絵[/ 【110】] 55L/3 the Misty Mountains in The Hobbit[110]. 絵の参照番号抜け
45 82/11 「トールキン・カレンダー[/ 1974]」(一九七[/]、アレン&アンウィン社) 55R/10 The J.R.R Tolkien Calender 1974(Allen & Unwin, 1973) 原文は、1973年出版の1974年向けカレンダーを指している。
46 82/-3 一九二八年春[ごろ/まで]には 55R/-5 By spring 1928 -
47 83/-6 穴をうがちたり[/ (注61)] 57L/-8 into caves.61 注釈番号抜け
48 86/-2 一九二八年五-[/]月に描かれた 59R/11 painted in May-July 1928 -
49 88/11 〈グレンデルの湖〉の第二の絵[/【51】] 61L/14 the second picture of Grendel's Mere[51] 絵の参照番号抜け
50 97/4 トールキンが彼らに話して聞かせた物語は、[「レゲンダリウム」(どう見てもシンプルとはいえない)よりはシンプルで/トールキンの伝説集に比べたらシンプルで(とはいっても、決してシンプルな物語ではないのですが)]、おおむねユーモアに富み 69L/6 The stories he told them were simpler than his legendarium(though by no means simple), 原文の、(though by no means simple)は文全体にかかっていて、「彼らに話して聞かせた物語」は彼(トールキン)のlegendariumよりはシンプルであるが、「彼らに話して聞かせた物語」がシンプルという意味ではないと書いているんじゃないだろうか。また、legendariumをカタカナにしてしまうのはどうなんだろう? 訳しにくい言葉なのだが、だからといってカタカナでは理解できる読者はほとんどいないのでは。 「レゲンダリウム」は他に p.68, p.275, p.282にも出てくる。 ちなみに、『新版 シルマリルの物語』ではlegendariumを「伝説集」と訳している。
51 101/1 一九[一三/三一]年に送られた絵 71L/5 the pictures sent in 1931 -
52 101/-6 一九[二六/一〇]年に描いたホイットビー修道院の絵 71L/-7 his 1910 picture of Whitby Abbey -
53 101/-5 一九[/]六-七年の『ホビット』の絵 71L/-5 some of his Hobbit drawings of 1936-7 -
54 101/-3 〈石になった三人のトロル〉[/【100】] 71L/-3 The Three Trolls are Turned to Stone[100] 絵の参照番号抜け
55 103/11 自分のソリをひくのは[/十四]頭のトナカイで、 急ぎのときにはさらに白いトナカイを二頭たすと述べている。 71R/-4 his sleigh is drawn by seven pair of reindeer as well as a special white pair he add when his is in a hurry. seven pairなんで、「七対」か「十四頭」。white pair の方は「白いトナカイを二頭」と訳してあるので、訂正案も頭で合わせました。【63】の絵にも、先頭の白いトナカイ二頭とそれに続くトナカイ十四頭が描かれています。
56 108/7 『ホビット』の中の記述[(一九三三年一二月(注5))/]で、 [/一九三三年一二月までには書かれていた(注5)、] 76R/13 by the account in The Hobbit, written by December 1933,5 -
57 115/6 (月世界の風景[/【72】]の場合と同様に) 82R/-1 (as in the lunar landscape [72]) 絵の参照番号抜け
58 117/2 動物の頭を三つ生やした[オーク鬼/オーガ] 83R/1 an ogre with three animal heads ogre については 23 の説明欄を参照
59 117/7 このぎざぎざの剣でもって、[オーク鬼/オーガ]は何をしようというのだろうか。 83R/6 What will the ogre do with his serrated blade? ogre については 23 の説明欄を参照
60 121/-4 一九二九年の「ファーザー・クリスマス」の絵[/(注15)] 86R/-4 a 1929 Father Christmas illustration15 注釈番号抜け
61 124/8 複写による版が出版されたのがトールキンの死後九年にあたる一九八二年である。 [/晩年、トールキンは内輪の冗談として以外は「ブリスさん」を好まなくなって、出版には抵抗していた。] 88L/9 A facsimile edition was published finally in 1982, nine years after Tolkien died. In his later years he came to dislike Mr. Bliss except as a private joke, and had resisted its publication. SF・ファンタジー・ホラー@2ch掲示板 『指輪物語』スレッドで指摘されていた訳抜け
62 129/-2 〈スロールの地図〉の最初のスケッチは、[なんと/]『ホビット』のもっとも初期の下書き原稿(注5)の断片に描かれている[/] 92R/3 The first sketch of Thror's Map appears on the earliest surviving scrap of Hobbit manuscript.5 原文は驚いていないです。
63 133/-8 「わたしはトーリンの地図の写しに、トーリン同様にこの場所に印をつけておきました。 もちろん魔法使い(ガンダルフのこと)が初めて地図を手に入れたときには、 こんなしるしはついていなかったのですがね」。[/(注7)] 95L/-14 ´I have marked the place on my copy of Thorin's map, as he did himself, though of course it was not shown there when the wizard [Gandalf] first got it.´7 注釈番号抜け
64 135/12 たとえば、1章、2章では読者にホビット[/]のおおよその姿を理解させてくれる。 ホビット[/]とは、理想化されたイギリスの田園の村で、 ビルボ・バギンズは〈お山〉のてっぺんにあるぜいたくなホビット穴、袋小路屋敷に住んでいた。 95R/-17 For example, chapters 1 and 2 give the reader only a general idea of Hobbiton, the idealized English country village in which Bilbo Baggins lives in a luxurious hobbit-hole, Bag-End, at the top of The Hill. 7 と同じ間違い。 (chapters 1 and 2 give the reader only a general idea of ... あたりの訳も、 違う気がするんですが、それは次回更新時にでも)。 Hobbitonをホビット庄としている間違いは4章では多数出てくる為、 ここに4章での出現ページと行を、まとめて書いておく。 ()内の数字は行。 p.135(-5), p.136(-6), p.141(-1), p.143(絵の題), p.144(絵の題), p.146(-8), p.146(-6), p.147(絵の題), p.149(11), p.150(絵の題), p.151(-4), p.157(10), p.172(7), p.197(-9)。 以上の位置にある、「ホビット庄」は全て「ホビット村」(Hobbiton)の間違いである。 但し、p.146(-6)の記述 「ホビット庄はいきいきと描かれ、『指輪物語』のホビット庄の描写にも影響を与える」 に2箇所ある「ホビット庄」のうち1つ目の原文は、 'the Hobbit village'であった。
65 137/6 〈闇の森〉は『ホビット』の[初版/第一刷]で唯一、はさみこみの絵となり、 [二版/第二刷]以降省かれてしまった。 97L/-7 Mirkwood was the only inserted plate in the first printing of The Hobbit and was omitted after the second printing. 原著は、edition と printing を正確に使い分けているが、 邦訳は訳し分けが出来ておらずどちらも版と訳されている為、区別がつかなくなっている。 ここも、原文は first printingと、second printing であり、 『ホビット』第一刷、第二刷とでも訳すべきと思われる。 ちなみに、原著の使い分けが意図的で正確であることは、 詳細なトールキン書誌本である、 J.R.R.TOLKIEN - A Descriptive Bibliography や、 The Hobbit の改訂について詳細がある、 The Annotated Hobbit を見るとよく判ると思う。
66 137/12 〈トロル〉 [【101】/【102】] 97R/1 The Trolls [102] 絵の参照番号の誤り
67 138/13 奇妙なことに、『ホビット』のアメリカ版では、 トールキンの〈闇の森〉の絵[のかわりに別の画家の絵がはいっており/は、別の画家によるそっくりで非常に優秀な模写に差し替えられており]、淡彩の味つけは、こまかな線描にとってかわられている。 98L/6 Curiously, in the American edition of The Hobbit Tolkien's Mirkwood was replaced by a close and very competent copy by another artist, in which the wash tones became textures drawn in line. close and very competent copy が訳されていないため、 〈闇の森〉とは全く違う絵が入っていると誤解されるように思う。
68 148/7 [初版/第一刷] 104L/-12 first printing 65 と同じ間違い。
69 148/8 [第二版/第二刷] 104L/-11 second printing 65 と同じ間違い。
70 149/-5 [第二版/第二刷] 107L/13 second printing 65 と同じ間違い。
71 153 100 [トロルたち/三人のトロル、石になる]
[/鉛筆 ]黒インク[ ホワイト・ボディカラー/]
109 100 The Three Trolls are Turned to Stone
Pencill,black ink
絵【100】の表題や画材が p.155の【102】のものと同じになっている。絵【100】の表題は、同ページの本文中では、〈三人のトロル、石になる〉と訳されているので、訂正案はこれに合わせた。
72 166/-2 『ホビット』の三[版に、/番目の]水彩画[/]霧ふり山脈を 120L/-7 the Misty Mountains in the third of his Hobbit watercolours [113] 邦訳はthirdの意味を取り違えている。原文は、トールキンが出版用に描いた五枚の水彩画の、 3番目であることを書いてあり、三版の為に描いたという意味ではない。 これは、同じ章の記述からも明白である(特にp.149、原著では p.107)。
73 166/-2 霧ふり山脈を描いている[/【113】] 120L/-7 the Misty Mountains in the third of his Hobbit watercolours [113] 絵の参照番号抜け
74 171/6 ゴードンの[/1927年刊]『古代北欧[/]入門]』 124/9 Gordon's 1927 An Introduction to Old Norse -
75 204/3 目は構図全体ではなく、その赤にのみ吸い寄せられてしまう。[/(注42)] 149L/-6 the eye is drawn to those elements rather than to the design as a whole.42 注釈番号抜け
76 207/1 『ホビット』の[初版/第一刷]は三ヶ月で売りきれ、 (略)急遽、が刷られた。 153L/1 The first printing of The Hobbit sold out within three months of publication and a second was ... 65 と同じ間違い。
77 207/-2 『ホビット』の[二版/第二刷] 153L/-21 second printing 65 と同じ間違い。
78 210/14 『指輪物語』の[第一部『旅の仲間』/1巻『旅の仲間(上)』]の5章 155L/7 book 1, chapter 5 of The Lord of the Rings 通じなくはないが、『旅の仲間』の5章には book 2 のchapter 5もある。この book の訳は他にも多数紛らわしい箇所あり。どうやら本書の訳ではbook1~book6 を第1部~第6部、volume1~volume3を第一部~第三部と、数字表記を変えて表現しようとしているようなのだが、訳注もなく読者にとって非常に紛らわしいのみならず、訳者・編集者まで混乱しているようで、必ずしも統一されていない。book3を "第3部(「王の帰還」)" と訳したエラーまである(後述 96 )。
79 211 146 [バラド=ドゥア/無題(ブランディワインの渡し場)]
鉛筆 色鉛筆[ 黒、赤のインク/]
154 146 Unititled(Brandywine Ferry)
Pencil, coloured pencil
絵 146 のタイトルと画材が 145 と同じになっている。
80 212/16 『シルマリルの物語』のために<柳じじい>【147】を描いた 156L/13 On occasion he made more careful drawings for The Lord of the Rings, for his own pleasure as well as for reference, as he had done earlier for 'The Silmarillion'. Old Man Willow [147] is a fine example. <柳じじい>は『シルマリルの物語』のために描かれたものではないが、 原文の問題ではなく誤訳である。 『シルマリルの物語』と同じなのは、前の文"『指輪物語』~絵を描いた"ことであり、<柳じじい>はその『指輪物語』で絵を描いた例である。
81 223/-0 [/この絵は、2巻『旅の仲間(下)』の6章で、エルフのレゴラスによって描写されたロスロリアンの春を、厳密に描いています。] 164R/14 The picture closely illustrates spring in Lothlórien as described by the elf Legolas in book 2, chapter 6: 最終行の後、あるいは次頁の先頭に本来入るべき一文が訳し抜けている。
82 229/6 山々に谷が切り込んでゆくのだった。[/ (注29)] 169L/3 a gorge opened in the hills.29 注釈番号抜け
83 233/-8 そこから最後のオルサンクのヴィジョン、つまり建造者があたかも山塊をえぐって石塔をけずりだしたかのような驚異的な最終デザインまでは、ほんの一歩で足りた。[/(注35)] 170L/-2 From there it was a short, brilliant step to his final vision of Orthanc as a tower carved out of stone, as if its builders had excavated a mountain.35 注釈番号抜け
84 235/-9 誰にも読み取ることはできなかった。[/(注37)] 172L/6 none could read.37 注釈番号抜け
85 246/-4 ホビット[/]の東の[バイウォーター/水の辺村]近く 178R/15 near Bywater east of Hobbiton ホビット[/]は、7 と同じ間違い。 ちなみに、p.246に出てくるその他の「ホビット庄」の原文は、'the Shire'だからそのままでいい (同じページ内で訳し分けができていなかったわけである)。 また、「バイウォーター」に関しては、エラーではなく訳者の判断で意図的に評論社訳の 「水の辺村」を使わなかったのかもしれないが、 「バイウォーター」では、 邦訳のみの読者が混乱しやすそうなので一応訂正しておいた(*2-1)。
86 247/-3 ホビット[/]の農場屋敷 178R/-3 the Hobbiton Grange 7 と同じ間違い。
87 249 179 [「旅の仲間」/「二つの搭」]のカバー・デザイン
鉛筆、黒、赤のインク[ 色鉛筆/]
180 179(bottom) Dust-jacket design for The Two Towers
Pencil, black and red ink
タイトルと画材が 177 と同じになっている。
88 255/-1 4章)。[/(注64)] 184R/-1 chapter 4)64 注釈番号抜け
89 262/12 アルダリオンの物語 [/(注7)] 189R/11 the Story of Aldarion,7 注釈番号抜け
90 266/-8 一九[/]〇年代初期に 192L/-5 in the early 1960s -
91 267/-1 【189】を一九六〇年一二月[/一四日]に 192R/-4 [189], dated 14 December 1960, -
92 268/3 イドリルのしるしに書かれたハイ・エルフの言語[/クウェンヤ]をあらわすテングワール文字は次のようなものである。 193L/1 The tengwar inscription on Idril's plaque is in Quenya, the High Elvish tongue: Quenya が訳し抜けている。
93 269/-6 r(赤)、[/y(黄色)、]o(オレンジ)。 193R/12 r[ed],y[ellow],o[range]. -
94 282/6 さらにそこから発展した[物語「レゲンダリウム」/伝説集]では、[文字/テングワール」は最初にエルフのルーミルが考案し、 201L/-8 in the more developed legendarium the tengwar were first devised by the elf Rúmil, -
95 284/1 配置や強調のしかたは、わたしが思うに、人々に好まれるでしょうが、 わずかに不安定な感じがあって、これはもう少しわたしが若ければ、もっと精密に書くことができて、 コピーする上でも改善できたかもしれません。[/(注6)] 201R/19 In placing and weight the copy remains, to my mind, much to be preferred, in spite of its slight unsteadiness, which I hoped that a younger hand might have removed with more delicacy.6 注釈番号抜け
96 286 注8/1 『指輪物語』[第3部(「王の帰還」)/ 3巻『二つの搭(上)』] 6章 33 The Lord of the Rings, bk.3, ch.6 二つの搭の前半を指し示しているのであって、王の帰還の章を指しているわけではない。
97 286 注8/4 [Silmarilrion/The Silmarillion] 33 The Silmarillion 定冠詞の抜けはともかく、Silmarillionの綴りを間違えている。
98 286 注9/1 プリシラ・トールキン[/と著者達]との往復書簡 より。 33 Priscilla Tolkien, correspondence with the authors. -
99 286 注20/-1 再録[/【11】]のときにも写りこんでいる。 33 intruding into the reproduction[11]. 絵の参照番号抜け
100 287 注25/3 一九一四年[/]月 33 June 1914 -
101 287 注25/5 一九[二三/三二]年 33 1932 -
102 289 注15/1 八〇葉から成るもの[/でサイズは278×215mm]。 65 with 80 leaves, 278 × 215 mm. -
103 289 注25/-2 The Book of Ishness の中の波の絵のことをさしているのだろう[/(注20参照)]。 66 the drawings of waves in The Book of Ishness(see note 20, above). -
104 290 注30/4 トールキンの記憶よりは二ヵ月ほど早く書かれていたことがわかる。[/The Book of Lost Tales, Part Two, p.271 参照。] 66 in fact was written some two months earlier than Tolkien recalled. See The Book of Lost Tales, Part Two, p.271. -
105 292 注63/1 The Lays of Beleriand,[pp.67-8/p.227] 67 The Lays of Beleriand, p.227. -
106 292 注67/4 一九二八年[/]月の「ドラゴンと戦士」の絵【49】 67 the ´dragon and warrior´ drawing [49] dated May 1928 -
107 293 注1/1 『ファーザー・クリスマスの手紙』(一九七六)(邦訳『サンタ[/]クロースからの手紙』瀬田貞二[、田中明子/]訳、評論社、一九[九五/七六]) 89 The Fathre Christms Letters(1976) 1995 年に出版された、瀬田貞二、田中明子訳のものは『クリスマスレター付き サンタ・クロースからの手紙』(Letters from Father Christmas (with real pull-out letters)(1995)の邦訳)で、1976年出版の、瀬田貞二訳『サンタ・クロースからの手紙』("The Farther Christmas Letters"(1976)の邦訳)とは原著が異なり、内容にも差がある。
108 294 注8/1 本文[五三/七十四~七十六]ページ参照 89 cf.above,p.53 原文の原著自身への参照ページが使われているので、正しく参照できない。
109 294 注4/1 一九三[/]年一月四日付スーザン・ダグノールへの手紙。 150 Letter to Susan Dagnall, 4 Junuary 1937 -
110 295 注8/1 アメリカ版の[初版/第一刷]では、 150 first printing 65 と同じ間違い。
111 296 注20/6 川のむこうのホビット[/] 150 Hobbiton across The Water 7 と同じ間違い。
112 296 注20/-2 英国版の[第二版/第二刷] 150 second British printing 65 と同じ間違い。
113 296 注22/1 [/22 ]このおなじページにスマウグのスケッチがある。 150 22 On this one page are a sketch of Smaug, 注釈番号の抜け
114 297 注42/-1 『ホビット』のReset Unwin Books 版(一九[/]五) 151 reset Unwin Books edition of The Hobbit, 1975 -
115 297 注3/2 Letters of J.R.R.Tolkien[/, p.24]. 184 Letters of J.R.R.Tolkien (hereafter Letters), p.24 -
116 297 注8/1 Letters of J.R.R.Tolkien [p.118/pp.42-3] 184 Letters,pp.42-3 -
117 299 注35/-2 『二つの搭』[[一七九 - 一八〇]/]のカバー・デザインのオルサンクの絵[/【179-180】]も参照されたい。 185 Cf.also Orthanc as drawn on Tolkien's dust-jacket designs for The Two Towers[179-180]. 本邦訳で絵への番号参照は【英数字】の形が取られているが、ここでは漢数字が使われ、括弧記号も異なり、さらに挿入位置も適切でない為、分りにくい。
118 299 注52/5 Sauron Defeated, p.[14/41] 185 Sauron Defeated, p.41 -
119 300 注57/2 [J.R.R.Tolkien:Life and Legend/Letters of J.R.R.Tolkien] 185 Letters -
120 301 注14/1 一九六〇年一二月四 - [/]日。 199 dated 4-7 December 60 -
121 301 注31/1 [The Lord of the Rings,bk.1,ch.11/指輪物語 1巻『旅の仲間(上)』11章] 199 The Lord of the Rings,bk.1,ch.11 こういう場合、他は指輪物語 第X部 X章と訳しているが、なぜかここだけ訳していない。 しかし、訳していないところの方が紛らわしさがないのが皮肉である。 尚、左記の訂正案は、紛らわしさを避けるため、 78 の訂正案で使った表記に合わせた。
122 311/4 [『J・R・R・トールキン-その生涯の解読』/J.R.R.TOLKIEN - A Descriptive Bibliography](1993) - - 巻末の著者紹介の中で、ウェイン・G・ハモンド氏の著書の一冊として紹介されているが、 "J.R.R.TOLKIEN - A Descriptive Bibliography(1993)"のことだろうか? 原著者達のBibliographyを調べてみても、 1993年著作に他に該当しそうなものはなく、他の年の著書にも見つからない。 しかし、"A Descriptive Bibliography"を『その生涯の解読』では意訳にすらなっていない。 原書房の編集者が訳したのかもしれないが、お粗末なことに、 "Bibliography"を"Biography"とでも思いちがいしたのか? Descriptiveを解読と訳しているのも意味不明だが、decrypt(暗号解読)あたりからの連想か? 原書房では、辞書引くことすら手を抜くのだろうか。
123 カバー折り返し(後) [『J・R・R・トールキン-その生涯の解読』(1933)/J.R.R.TOLKIEN - A Descriptive Bibliography(1993)] - - 122と同じだが、こちらは、出版年も間違っている。1933年には「ホビットの冒険」初版すら出版されていない。

(*2-1) 訳者自身が、あとがきで、 「読者が混乱しないように、物語中の人名、地名など固有名詞は評論社の訳本の数々と岩波少年文庫版のホビットの冒険に統一した。」「基本的には新訳の『指輪物語』に拠った。」と明言しているんだから(p.310)、 意図的に合わせてない固有名詞で、 「バイウォーター」(邦訳『指輪物語』では「水の辺村」)や「死の荒れ地」(邦訳『指輪物語』では「死者の沼地」)などのように、 評論社・岩波訳語と極端に異なり読者が混乱しそうなものは、 訳注などで断わる等の配慮をするべきじゃないだろうか?


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3. 絵の題名の不統一について

表には入れなかったが、絵の題名の不統一が、非常に多く紛らわしい。酷い例だと、p.35 【23】"ジプシー・グリーンでの雅な生活"(原文 "High Life at Gipsy Green")で、同ページ本文中では、"ジプシー・グリーンでの古風な暮らし"になり、p.37 7行目のこの絵を指す、原文 "High Life"は、〈古風な生活〉と訳されている。


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4. 注釈参照番号の位置の不適切について

表にはいれなかったが、 注釈参照番号の位置が適切でないと思われる箇所が多い。 特に多いのは、文節の終わりに入れるべきと思われる注釈参照番号を、 原文では文節の最後にあり邦訳では文節の途中にあるような、 固有名詞等の直後に、単純に参照番号を挿入しているケース。 例えば、p.45にある注1への参照は、妖精物語についてからの引用部分の末尾にくるべきであるが、 原文の末尾の語、the Gjallarhorn の訳語であり、邦訳では引用文の途中にある、 「ギャラールの角笛」の直後に参照番号があり、配慮に欠ける。


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5. エルフ語の表記について

明かに規則に沿ってないものや本書内で表記が統一されていないものなど、 乏しい知識の範囲内で気付いたものを以下の表に記しました。

No. 頁/行 該当文 及び [訂正]案 原著 説明
頁/行 原文
1 70/10 [ヒュリンの子どもたち/フーリンの子ら] 49R/-5 The Chirdern of Húrin ú は、yoo と発音してはいけない。 また、統一が取れておらず、p72,p82では、フーリンの子らと訳されていて(訂正は、これを使った)、他の場所の Húrin もフーリンと訳してあった。
2 71/7 [ヒシローム/ヒーシローメ] 50L/-2 Hisilómë -
3 71/-7 [タンゴロドリム/サンゴロドリム] 50R/11 Thangorodrim -
4 72/6 [グローラング/グラウルング] 50R/-9 Glaurung p.73 では評論社訳と同じグラウルングと訳してあった。
5 81他 【54】[トール・ナ・フィン/タウア=ナ=フーイン] 58 Taur-na-Fúin。 Taur-na-Fúinは、Taur-nu-Fuinの誤植ではなく初期形。 トールでは、AUはtownのowのように発音するというエルフ語の発音規則にそってない。 尚、Taur-nu-Fuinは、シルマリルの物語(旧訳)では、 タウア=ヌ=フゥインと表記されている(ちなみに、 新訳シルマリルの物語では、タウア=ヌ=フイン)。
6 84/1 ドル・ナ・[フォークリス/ファウグリス] 57L/-2 Dor-na-Fauglith -
7 84/1 [アンフォークリス/アンファウグリス] 57L/-1 Anfauglith -
8 90/-2 [クリス・トロナス/キリス・ソロナス] 62R/7 Cirith Thoronath -
9 265/2 [トゥルゴン/トゥアゴン] 191L/2 Turgon -

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6. その他

原著は絵のサイズまで繊細な配慮がしてあるぐらいですから(実寸より大きくならないようにしてある)、 当然そんなことはないのですが、邦訳では絵のトリミングに配慮が足りないケースが見うけられ、 p.8「3 春 1940」や、p.165「111 霧ふり山脈」などで、絵の中の題字の一部が切れています。 トールキンの巧みな字体も作品の一部として、切れないように載せるべきでしょう。 そもそもこの本自体が、トールキンのカリグラフィについても考察(*6-1)しているような本なのです。

記述エラーの話しではないんですが、 『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』、 カバー外した状態の裸の表紙の青の着色が取れやすいです。 カバーの裏の白い部分への着色写りが酷いですし、 それだけならともかく、カバーがずれた状態で他の本に接触させたりすると、 色がその本にまで写ることもあるので、気をつけてください。 本ページの作成者は最初そのことに気づかず、原著と見比べチェックしていたとき接触させてしまい、 大事な原著の中に青い筋をつけてしまいました(原書房に弁償してもらいたい気分)。 ちなみに、本屋で見かけた何冊かも、カバーの裏に着色写りがありましたし、 本の下の部分など擦れやすいところの着色が剥げていたりしたので、 購入した分がたまたまそうだったというわけではなさそうです。 この作りのチープさは、3800円+税もする本だとは思えないですね。 帯の着色やインクも同じく取れやすく写りやすそうなので、 本屋で別にカバーをつけてもらったら、それを外さないでおく方が無難です。

(*6-1) エラー表には入れなかったが、 邦訳で、p.281~の「カリグラフィーについての補遺」(原著では、Appendix on Calligraphy) は、 目次では「カリグラフーについての補遺」という誤植になっている。


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8. 原書房のトールキン本の問題点に関するリンク

困った本
高橋誠さんの「赤龍館」内の、 誤訳、誤解の多い困った本に付いて纏めてあるページです。 原書房の本に関しても、 山本史郎氏訳『ホビット』と、井辻朱美氏訳『トールキン─『指輪物語』を創った男』について、 誤訳や問題点が的確に指摘されています。

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