アカペラコーラスの夢と野望 (4) 挫折篇 (2001.08.31)


(前回はこちらでも一応簡単に前回までのあらすじ...
《難曲
『バークリースクエアのナイチンゲール』は確かに難関ではあったが、その洗練された響きゆえ、4人の手探りの練習もおのずと熱が入ったのだった。そして企画から1年、いよいよ発表の日は来た...(効果音: 「ジャーン」)...》)

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いきなり挫折篇という書き方もないのだが。しかしこれがまた。

追い込みの練習はといえば、それはそれは緻密なものだった。改めて響きを一つ一つ、あるいは一小節ずつ止めながら確認し、難しい部分を集中練習し、更にはキャンプに向かう車の中でさえ各人が銘々パート練習を重ね、しまいには最終の合わせ、世に言う「ゲネプロ」までやった。しかもその最終テイクの出来と来たら、まあ録音してなかったのが惜しまれるくらいの完成度に達していたというのに。ああそれなのに。

やはり「キャンプ」という場がいけなかったのだろうか。いや、厳密に言うと「あの」キャンプでの発表というのがリスキーだったのかも知れない。

そこは、元々食事を提供していた会員制のテントサイトだっただけあって、キッチンにはガスコンロと豊富な調理器具、基本調味料各種、更には素朴なテイストの素敵な食器類までが揃っており、ダイニングテーブルもどっしりした木製のアウトドア用テーブル&チェアが、しっかりと大地に据え付けてある。だからここでのキャンプとなると、ついつい手間暇かけた大御馳走を並べての大宴会にしてしまうのである。つまり、酒量と食事の量がハンパではない。そういう状況の中「宴たけなわですが」と切り出して、満腹のオナカとほろ酔い加減の意識と酒疲れの喉でアカペラコーラスを披露しようと言うのである。敗北は予め決まっていたのかも知れない。

つい先日、決して多くはないオーディエンス、つまりキャンプのメンバーの一人が、演奏途中からハンディカム回して撮った記録を4人で観た。あの時は酔いが回ってたからより悲惨に感じたんだろう、などという甘っちょろい考えは微塵に砕かれた。4人は皆苦笑しながら観てたが、内心凍りついていたはずである(私だけでないことを祈ろう)。演奏後の各人の反省の言葉も一通り入っていて、イベントの記録としては見事なビデオであったが、音外しはもちろんのこと、満腹過ぎて息が続かなかったのも痛恨だった私としては、しばらく遠慮したい映像作品となった。

だが、それを観てメンバーの一人が発した言葉:「やっぱり、酒が入ってても完璧に出来るようになるまでやらないとダメだ。」これに残りの3人も深く頷いてしまったのだが、何か間違ってるような気がしないでもない。これでは益々ハードルを高くしているようなものではないか。いや、所詮プライベートな娯楽としてやってるのだから、まあいいか。かくて苦難の道はまだまだ続くことになったのである。おまけにレパートリー拡大計画まで始動させて...。

ではまたいずれ、「リベンジの第2部」でお会いしましょう。ごきげんよう。

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余談: 実は今回、1曲だけではサマにならないと、2曲目を用意していった。'So Much In Love' と言えば Timothy B. Schmidt、山下達郎など各種カバーで有名なポップチューン(Doo-Wopとも言い難いのでこう呼ぶ)だが、'Nightingale' に比べればカンタンだということで選んで、直前までは「こっちは楽勝」などと思っていたのだ。まあしかし、Nightingaleの敗北の後というシチュエーションも手伝って、これも成功からは程遠い結果に終わった。のである。ついでにやっぱ私はリードボーカルはいやですもう。いや。

(end of memorandum)



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ただおん

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